- 組織名
- 琉球臨時中央政府立法院
- 開催日
- 1952年01月09日
(昭和27年)
- 会議名
- 第1回立法院本会議 1952年1月9日
- 議事録
- 第一回立法院本会議会議録
第八十七日目
一九五二年一月九日(水曜日)
午後一時三十一分開議
議事日程
一、琉球臨時中央政府厚生局設置法案について
二、輸入砂糖消費税法案について
○議長(泉 有平君) 本会議を開きます。
議題は厚生局の設置法案についてでありますが、この法案の逐条審議は大体に於て一通りやったのでありますが、それに対しまして冨名腰参議から修正の動議が出されておりますので…。
○冨名腰尚武君 厚生局設置法に関する厚生委員会の案を拝見致しますと、医療面、衛生面の仕事は医政課一本槍で行くような案になっているのであります。ところが近代予防医学の躍進的な発達に伴って、各国とも予防衛生面に関しては従前に例を見ないほどの力の入れ方をし、又国民保健上も寧ろ病気に罹ってどうこうするというよりは、病気に罹らないような面に力を入れているといった状況を見ている訳であります。琉球に於きましても終戦後アメリカの衛生面に於ける特殊な働きとして、特にこの予防衛生面に重点を置き、又環境衛生などに対する考慮も大きく払われているような状況にあるのであります。仕事の面から申しましても、普通医事行政と予防衛生行政とは別個なものにした方がそれぞれの効果を発揮するという意味に於ても効果的であるという風に考えられますので、この際衛生面の医政課、社会事業面は民生課といったような機械的な分け方をしないで、普通医事行政と予防衛生の面とを分離して、それぞれの所管課を設け、その面に一層の努力を払って貰うという意味に於て医政課から予防衛生、環境衛生面を分離して別に予防課を独立させるという風にして行った方が琉球衛生の進歩向上という面からしても亦国民保健の向上という面からも極めて必要ではないかとこう考えられますので、今申上げましたように医政課から予防衛生、環境衛生に関する面を分離して新たに予防課を設置するようにしていただきたいと思います。
以上が修正動議を提出する所以であります。
○議長(泉 有平君) 委員会案では医政課の中に予防と環境衛生が含まれておりましたのですが、これは寧ろ予防というようなものに相当、厚生関係としては留意すべきだといったような、従ってそれに伴ってそれを所管する一課を形成すべきであるといったような修正動議でありますが、それについて外に御意見はありませんか。
○松田賀哲君 今冨名腰参議から修正の動議がございましたのですが、誠に適切な御動議でありまして重ねて私から種々理由を申上げるまでもなくこの修正によって初めて厚生局の活動というものは伸びて行くものだろうと思います。それで私は賛成致します。
○議長(泉 有平君) 只今松田参議から修正動議に対する賛成意見がありましたが、これで修正の動議は成立したものと認めますので、この点については更に委員会の方で検討していただきたいと思います。
休憩致します。
(午後一時三十六分休憩)
(午後一時三十七分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。先の動議に対して、修正意見について委員会の御意見を拝聴したいと思います。
○大濱國浩君 冨名腰参議の修正動議に対しまして我々委員会でも慎重審議致しましたところ、現在の世界の医学の動向から考えましても矢張り治療の医学の面と予防の医学の面とをはっきり区別しまして各の持つところの個性即ち、特徴を発揮して行くことによって全琉住民の衛生、健康状態も自から向上されるものと信じまして、原案の医政課を第七条とし予防課を第八条と致しまして各の分担事務を分けていただきます。
(事務局長比嘉良男君「第七条、第八条」朗読)
○議長(泉 有平君) 結局第七条、第八条が新たに編成替をされた訳でありまして、先ず第七条から逐条審議を致します。
休憩します。
(午後一時四十分休憩)
(午後一時四十一分再開)
○議長(泉 有平君) 再開致します。
(事務局長比嘉良男君「第七条」朗読)
○冨名腰尚武君 第七条の各号とも既に前の本会議に於て第七条医政課の点で審議を終了した項目ばかりであります。別に異議はありません。
(事務局長比嘉良男君「第八条」朗読)
○議長(泉 有平君) 第八条について何か御意見がありましたら…。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(泉 有平君) では厚生局設置法の逐条審議はこれを以て終ることに致します。次の措置を委員会の方に取っていただきたいと思います。
休憩します。
(午後一時四十二分休憩)
(午後一時四十七分再開)
○議長(泉 有平君) 再開します。
○大濱國浩君 第二条の誤植訂正をお願い致します。「厚生局は政府所管に属する左の事務をつかさどる」こういう風に訂正していただきます。
○議長(泉 有平君) 続いて輸入砂糖消費税法案の発議が冨名腰参議からありましたので一応本法案を上程して審議を進めたいと思います。発議理由の説明をお願い致します。
○冨名腰尚武君 先にメッセージを以て砂糖消費税の立法方に関して要請があり、財政委員会にその審議が付託されたのでありますが、財政商工委員会では数回に亘ってこれを慎重審議した結果、輸入砂糖消費税の立法が必要であるということを完全に諒解して本日の本会議に発議した次第であります。発議理由を申上げます。
御承知のように、只今外国糖は輸入を許されていない状況でありまして、住民の必需品としての砂糖の輸入がないために僅かに法網を潜って入って来る闇砂糖を高い値段で消費しているという極めて困難な状況に置かれておりますことは皆様御承知の通りであります。一方必需品であるからという点からして、砂糖の輸入禁止を解除し無税で入れてもいい訳でありますが、然しながら島内の黒糖産業の保護面も考慮する必要があり、全然これを無税で入れるということは、琉球の経済政策上必ずしも当を得ていないという面も考慮されるのであります。で委員会としてもその間の事情を十分に考慮した上で輸入砂糖消費税法を立法して、これによって輸入禁止の状況にある外糖の輸入を解除すると同時に、又その面から来る黒糖生産の打撃を防ぐ意味に於て若干の税率を課することも必要であるという意味合で、輸入砂糖消費税法をここに発議した次第であります。
なお一般質問に入ります前にお手元に差上げました、輸入砂糖消費税法案についての説明を致したいと思います。
本法案は、前に立法されました輸入煙草消費税法、輸入酒類消費税法と、その法としての性質に於ては同一でありまして、徴収技術面から見た規定が主であるのであります。他の面は、先ず前の煙草消費税法、酒類消費税法と大体符合しておりますので、問題はないかと思いますが、この法案での問題の所在は消費税を課するということに於ては先ず異論がないとしても、その税率をどうするか、という点が論議の焦点になるんではないかとこう考えられるのであります。その点について委員会としては、大体こういう風に考えたのであります。砂糖というものは、これは国民の食糧として必需的なものである。従って砂糖は輸入は白糖若くは双目の輸入はどうしても図らなければならないという点が一つ、今一つは、これは軍の方が特に重視しているのでありますが、闇貿易の防遏という点であります。それから、更に世論が極めて強く要請しております。島内黒糖産業の抑圧にならないように考慮しなければならないという点、この二つの点から委員会としても審議を進めたのであります。先ず黒糖保護という立場から考慮しました点は、これは御承知のように貿易庁の軍に対する進言も六十パーセントを主張しておりますし、それから恐らく生産者の利益代表と見るべき農林省の意見も六十パーセントを主張致しているのであります。それに反して正式の申出ではなかったのでありますが、委託商関係の方は輸出意欲の低下を恐れて、もっと低率でありたい、二十パーセントか十パーセントでよろしいといったようなことを個人的に申出て来られた方もあるのであります。一方大量消費者としての酒造組合は税率の低きは低きを欲するけれども、兎に角何にもないのだから税率については痛烈に強く要望はしないという意見があったのであります。そこで委員会としては黒糖生産の抑圧にならないような、言葉を換えて申しますと、黒糖生産を保護するという建前の線に沿って色々考えたのでありますが、これを極めて高率課税をすることによって、いわば禁止課税的な形態を取ってでも構わないから黒糖生産に対して十分にその保護の役割を果し得るようにするかどうかという点についてであります。その点については、色々審議しました結果、沖縄経済の大宗である黒糖の生産に対して、これは政府としては勿論政策的に大きな保護を必要とするものではあるけれども、ただひとりこの輸入砂糖消費税法のみを以てその保護をするということ、保護政策面を完全にカバーするということは、これは出来ない相談である。何故かならば琉球に於て白糖の生産も可能であるならば、他の需要面もそれによってカバー出来るから問題はない、黒糖に対して禁止課税をもって行くのは妥当を得ているのでありますが、不幸にして白糖生産は未だ行われていない、従って必需品である白糖が民需として必要であるということは、これ亦言うまでもないことでありまして、、一方を立てれば一方が立たないという反対現象を生じて来る、そういう面を考慮して出来得る限りこの消費税法を以てしても黒糖生産の保護の目的が達成せられるようにはするが、必ずしも本法のみを以て黒糖生産の効果を百パーセント挙げ得るというところまでは考慮すべきでないという風なところに大体落着いた訳であります。殊に財政当局の希望としては、この税率は他の税法とも睨み合せた上で考慮して貰わなければならない。例えば煙草だとか酒だとかいったような贅沢品が百パーセントの課税であるのに必需品たる砂糖がそれにほぼ近い六十パーセントという高率課税となるということは、税の均衡上望ましくないといった風な意見もあったのであります。
それから更に高率課税にすることによって琉球市場に於ける輸入外糖の値段が高価格で維持されて行く場合に、それに刺戟されて島内産の黒糖価格も吊上げられ、そうした場合に輸出意欲を殺ぐといったような面も亦考慮されなければならない。今日日本が琉球黒糖に対して特恵待遇を与えている点、又琉球オンリーといった行き方をしている面からしても相当数の輸出額が確保されるような方策を講じなければならないといったような面からも、この農林省の要求している六十パーセントは少し高過ぎるのじゃないかという風に考えられた訳であります。一部業者からは日本が琉球黒糖に対して無税の特恵措置をとる、琉球オンリーの特恵措置を講じている際に輸入糖に対して琉球が六十パーセントも課税したという場合、これが向こうに対して好感を以て迎えられるかどうかということも憂慮しているといったような声もあった訳であります。そこで結局のところ、税率の置き方の基準を今琉球の島内黒糖の価格操作に大きな役割をつとめている購買者としての酒造業者側の取引価格に大体の目安を置いて双目が、酒造原料である双目の値段と黒糖との値段の開きが、ほぼ七円程度の開きが維持出来れば酒造業者としては双目を使用しないで黒糖を依然として使用して行くであろう、それによって農家の庭先渡価格を輸出業者、委託業者の不法に黒糖の値を叩くことによって生産者側に極めて不利な状況に至らしめるという点も防止出来るという見解に立って大体黒糖と輸入外糖の中で一番安い双目糖の開きが七円を維持出来るような税率に持って行こう、こういう風な方針に委員会としては税率設定の基準を置いて行った訳であります。その結果台湾双目の輸入価格基準をポンド当り十セントと算定して見まして、それでいろいろ価格を算定して見ましたところ、三十五パーセントでは少し安過ぎる、四十パーセントではまあいくらか歩がいいというような数字が出ましたので、結局多少でも黒糖生産者に有利な方を採ろうという訳で委員会としては税率を四十パーセントと、財政局案の三十五パーセントよりも五パーセント引上げて四十パーセントという率に決定致した訳であります。問題であります、税率の点に関しての大体の委員会の審議経過若くはその方針などについて御説明申上げた訳であります。後の分は大体前に立法しました、煙草、酒の消費税についてほぼ出来るだけ一致させるように同じ点は表現の面に於ても一致させるように努力した次第であります。相当問題がいろいろな面に影響してくる法案でありますので、参議各位に於かれては慎重に御審議いただかんことをお願いする次第であります。
○議長(泉 有平君) 議案の朗読を致させます。
(書記長川畑秀志君 朗読)
○冨名腰尚武君 ちょっと誤植訂正をお願いします。第六条「砂糖が保税地域内に於て消費された時又は公売若くは公売せられた」とあるのを、「された」と御訂正願います。それから一番最後の第二十三条の第七号「第十九条の規定により作成された」を「制定された」に御訂正願います。
○議長(泉 有平君) 一般的な質問に移ります。
○吉元榮光君 この法案を提出された今先の冨名腰参議の説明は諒と致しますが、これは消費税さえ納めればいくらでも砂糖を輸入し得るというようなことが第一の点、それから消費税の、今先の御提案の御説明にもあった通り沖縄黒糖を圧迫しないという程度の税率を設けという風な話を承ったのでありますが、然し今の四十パーセントでは何としても沖縄の黒糖を圧迫すると見るのが妥当でないかとこう考えているのであります。と申しますのは双目が今先の御説明では一ポンド当り十セントで入れられるだろうということであるが、その場合にも黒糖は圧迫せられる。更に又もっと安くて入れる場合にはより黒糖は圧迫されるということを、その点は現在の沖縄の糖業事情が戦前のように生産コストを下げ得ないという憾みがある現状に於ては、もう少し税率を高く考えた方が妥当だと思うのでありますが、この点についてもう少し詳しい御説明をお願い致したいと思います。
○冨名腰尚武君 只今の御質問にお答え致します。
本税法が公布されることによって外国糖輸入の禁止が解除され量的にはこれを無制限に入れることになるだろうという御質問に対してでありますが、これはこの法のみを以てすれば結局業者の欲するそのままにLCが組める、従って量的制限という面は業者の欲するままに入れられるという形になるのであります。言葉を換えて申上げますと、本法案に於ては輸入量の制限ということは考慮していないのであります。それを考慮しなかった理由は税法に於て輸入量を制限するということを考慮するということは、規定するということは妥当でないという見解を取った訳であります。輸入量の抑制という面に関しては、これは他に行政措置を以て出来得ることだ、こういう風に考えたからであります。例えて申しますれば、毎期の輸入割当などに於て砂糖に対するドルの割当を琉球が必要とする消費量に応じて按配して行くということは行政措置によって可能ではないか、こういう風に考慮したからであります。それから第二の四十パーセントでは矢張り黒糖圧迫になりそうだ、それに対してもっと詳細な説明を聴きたいとこういうお話であるのであります。この点については、台湾双目が十セント程度で入って来る場合を考慮しました時に、大体卸価格がどの程度まで行くかということを計算しますと、三十五パーセントの場合が二十一円六十銭、四十パーセントにすると二十二円四十銭という価格になります。これに対してCIF値段にした場合に、三十五パーセントでは二十三円七十六銭、四十パーセントでは二十四円四十銭という数字が出て来たのであります。大体黒糖が、酒造業者が黒糖を現在取引している相場が、十七円内外で取引されているような状況に対しまして、これから十七円を押えて見ました場合に、三十五パーセントの場合は六円二十四銭開き、四十パーセントの場合が七円四十八銭の開きとこうなるのであります。酒造原料として双目を使う、黒糖を使うといった場合の採算面から見ました場合に財政局長の証言では五円程度の開きがあればこれは絶対的に黒糖を使うという御意見でありますが、然しそこを黒糖生産側の立場から立ってその保障をもっと濃厚にするために、少くとも七円を見なければならないという與儀参議の御意見もありまして、七円を押えて見た訳であります。そうすると三十五パーセントにした場合は七円に七十六銭足りない、四十パーセントにした場合は七円より更に四十八銭上廻る大体五円の開きがあれば双目は使わないといったような証言のあるところを、更に二円、もっと強度に保障する意味で上げようといって考えた訳でありますが、更に後五十銭位、この計算によると殖えるので、この分ならば先ず酒造業者は絶対に双目は使わない、黒糖を使う、そうすと現在の黒糖相場は維持出来る、輸出業者が糖価を決めて低落させるといった手を講ずる余地がないように、これならば操作出来るのではないか、酒造原料としての黒糖の消費高が全琉的に約六百万斤と見られておりますが、この六百万斤の酒造に対する価格を十七円台に大体据置けるように仕向けて行けば輸出業者がその価格操作によって、これを思いきり叩いて行くというような、余地を存せしめないようにすることが出来るのではないかという風に考えた訳であります。一ポンド十銭という取り方も従来の例から見ますとこれは少し低目に取っているのでありますから、これが十セント四十になったり、十一セントになったら、この開きは更にぐんと上って来るのであります。こういう風に計算した訳であります。
○吉元榮光君 沖縄の生産事情で砂糖を是非保護して行かなければならないという意思を持つものでありますが、然らば七円ちょっとの開きがあるので黒糖の生産圧迫にならんという御説明を伺ったのでありますが、然らば黒糖の生産原価をどの位見ておられるのであるか。
○冨名腰尚武君 生産原価については農林省から提出された資料の十五円台というのを見ております。
○吉元榮光君 輸入は何とか許可制に行けないものかどうか。もう一つは量的にも時期的にも許可制に出来ないものかどうか。
○冨名腰尚武君 その点は先程申上げましたように、輸入公表に際して割当で抑制して行くことは行政措置としては出来るのではないかと思います。
○大濱國浩君 沖縄の酒造原料が六百万斤と云いますが、大体六百万斤は島内の砂糖と輸入糖によって間に合せているのですか。
○冨名腰尚武君 全部島内糖だけの需要を六百万斤と見ております。
○大濱國浩君 島内糖だけで間に合せているのですね。
○冨名腰尚武君 これだけの開きがあれば双目を使うことはまずない。酒造原料に必要な原料は全部黒糖を使うことになる。
○大濱國浩君 それ以外の日常一般が使用するものは…。
○冨名腰尚武君 後は製菓原料で、後は一般民需としての砂糖です。
これは双目だからこの程度の二十四円四十八銭という卸価格になりますが、白糖になりますと、少くとも三十五円から三十八円位になるのではないかと思います。
○城間盛善君 この砂糖を輸入するという問題は非常に関係するところが深いように思います。
第一琉球が、吉元参議がおっしゃったように黒糖の産業が主なる生産品でなければならない。その砂糖生産に従事する人達との関係、それから更に戦前に於ても沖縄で生産はしていながら、なお輸入もしておった、それから消費者から見ての必要性も考えられるし、それから製菓業者といった方面からも見なければならない。こういう工合に黒糖の生産に従事する者、砂糖を用いていろいろな事業を行う者、消費者、各面にいろいろ関係を持つものであるが、極めて重大な問題であるので、結局これは総合的に考えて行くべきものであると思いますが、委員会に於ても十分御検討を加えられたと思うが、お伺いしたいのは、こういった利害関係者、例えば農林若くは農業を代表する団体とか或は製糖業、現在のところは農民自身がやっているようですが、近く製糖会社も設立されるようですが、そういった製糖業者とか農連とかこういった生産関係の人達の意見、或は商業面との関係もありますが、その方面の意見、消費者側の意見といったものを正式に公聴会なり証人喚問なりで、公聴会でも開いておれば結構ですが、時間がないのでそこまで行かなかったことは止むを得ないと思いますが、証人喚問とか、文書によって意見聴取はどの程度やられたか、又その内容は、その点もう少し詳しく御説明願いたいと思います。
○冨名腰尚武君 この面については、本法案が今先もお話がありましたように、各面に重大な影響を及す点があるということは重々承知致しまして出来得るならば公聴会規則も出来たばかりでありますので、公聴会も開いて行こうという風に考えたのでありますが、丁度これを受けた時は二十四日で会期を終了するといったような切羽詰った形にありましたので、委員長としては審議に時間を要するような審議の仕方は一応避けた方がいいと思って初めから公聴会を開催することは諦めていたのであります。只今御質問のどの程度の意見書を得たか、又その意見書の内容についてはどうであるかという面についてお答え申上げますと、先ず最初に製菓業組合からの意見書が参って来ているのであります。これは税率に対しての意見は述べてなくて要するに砂糖の輸入が禁止状態にあるために製菓原料が皆無の状態になっている現在極めて少量に流通している闇糖を使ってやって行っているしかない。従って高い原料を使っているために製品の価格も高くなっている。一方に於ては砂糖の輸入を禁止していながら菓子の輸入は許されている。従って外国製菓子に島内菓子が圧迫されるような状況になって業者としては極めて悲境に際会している。速かに消費税を課してでもいいから砂糖の輸入が出来るように取計い願いたいという意見書でありました。これは業者が直接参っておりましたので、私としては税率の面についても意見を求めたのでありますが、税率に関しては、それは製菓原料であるから業者としては低い方が望ましいが、然し税率を低く要求することによって又他面との摩擦面を業者としては非常に心配しているようであります。即ち黒糖生産者側からの高率要望があるので、自分達が低率の税率を要求した場合にこの法案の審議が遅延すること、場合によっては審議未了になって砂糖の輸入も望めないというような事態になることを大変憂慮しているようでありまして、税率についてはもう問わないという風な考え方をしているようでありました。それは勿論税が高くなってそれだけ原料費が高くなれば業者としてはそれを消費者に転嫁するだけでありますから、その面についての心配は製菓業者としてはそれ程していないのじゃないかとこう見た訳であります。それから前の砂糖輸入の陳情問題に関して既に私の留守中にいろいろ公聴会じみたようなものを開いて各所の意見を聴いたようなこともあったと承っておりましたので、その最後的な総合的に纏めた貿易庁の意見を参考にした訳であります。これは民政府に貿易庁総裁の名に於て提出された意見書がありましたので、これを取寄せて参考にしたのであります。この貿易庁の意見書は大体黒糖と白糖との値開きの差を基準にして算定したようであります。それは戦前に於て黒糖と白糖との開きが十対六、即ち白糖に対して黒糖の価格は六割を維持していたという点から逆算して行って現在の黒糖価の六に対して外糖を十にするような数字を見つけ出して行って、それで六十パーセントが妥当であるといったような見方をしているようでありました。なお、貿易庁の意見書で、その他参考として我々が頭においていいと思ったのは、戦前の砂糖の輸入量がほぼ二千トンであったそうであります。ところが、それが五、六、七の三ヶ月、この間どっと民需用として民貿易によって入った砂糖が三ヶ月間で二千トンあった。そのために糖価が低落したという面が、これは輸入量としては考慮しなければならない。国民生活の向上という、生活水準の向上ということも考慮しなければならないので、必ずしも戦前並の量に釘付けする必要はないだろうけれども、三ヶ月で二千トンという輸入になれば、これは必要量を随分超過している訳で沖縄としては大体四千トン位を年間需要量として考えていいんじゃないかといった風な意見があったのであります。それから農林省の意見書も拝見したのでありますが、これは委員会に対して提出されたものでなくて、吉元参議の参考資料として提出されたものを、私も拝見さしていただきましたが、農林省の場合は生産コストを割らないような糖価維持面を考えなければならないという点に主眼を置いておったのであります。即ち庭先価格を大体十五円に釘付けにしておいて、それから逆算して行って白糖の小売価格が税率六十パーセントと見て、三十円台、これが妥当であるという見方をされている訳であります。で貿易庁の場合にしても農林省の場合にしても、その御意見に対して私がちょっと賛同いたしかねた点は、専ら黒糖という面ばかりに重点を置かれて、これが一般民需としての生活必需品であるという面への考慮が余り払われていないという点に多少の不満を感じていた訳であります。なお、その外先程申上げました、戦前に於て白糖と黒糖との値開きが六割であったといったような貿易庁の算出の基礎についてでありますが、これは昨年の十一月三十日東京の砂糖現物相場によりますと、大体精白糖、白双、中双相場は黒糖の特等、一等相場は最低が七割九分、最高が八割二分といった風に大体八割見当を維持しておるのであります。それから同じく黒糖の二等との開きも最低が七割四分、というとこれは分蜜糖の場合、最高の八割七分、これは並の中、精製白糖、白糖の二級品であります。この場合に八割七分の高率を示している。大体総合しまして黒糖の特等一等の場合は十対八、二等の場合は十対七・五若くはそれ以上、これは寧ろ八に近いのであります。こういう風な開きが現状に於てはあります。それから照屋さんといって貿易会社の看板を掲げてありますが、実際は戦前の砂糖委託商であった人でありますが、この方からの意見書も出て来たのでありますが、この人は専ら輸出貿易面を考えて先程申上げました時にちょっと申上げたように現在の日本の琉球黒糖に対する特恵措置によって琉球政府としても、これに酬いるようなことを考えなければならない、という点を強調されたのと高率課税をすることによって輸入糖の価格が高く維持された場合に、これに伴って黒糖の価格も高くなる、そうなれば勢い黒糖の輸出価格というものは国際市場によって決定されるので、いくらここで島内価格を操作しても向うで叩かれればどうにもならない。ここで敢て黒糖の相場を高く維持するような方策を採ったために輸出意欲が抑制されて琉球オンリーというような特恵を与えられている面が十分に果されなかった場合には日本としては直ちにこれを取消す、若くは無税輸入ということも日本としては考慮しなくなるといった場合に黒糖の輸出面に極めて大きな影響を与えるから、これはもっと低率にして貰わなければならない。三十五パーセントでは高過ぎるという風な意見があったのであります。なお、照屋氏の意見に関しては、今日の沖縄タイムスにも掲載されていたように考えております。なお、黒糖生産者側の意見も徴したいと思いましたが、これは大体農林省の意見と一致する面があるだろうと思いましたので煩雑を避ける意味で強いてお呼びするということはしなかったのであります。
それから酒造者側の意見も徴したいと思いましたが、この面に関しましては財政局長も十分な知識を持つ方であるし、又與儀参議もそれに関する知識と情報とを豊富にお持ちでありましたので、この面も省略致したのであります。なお、軍のマグナソン氏に対して軍が特に三十五パーセントを要望した趣旨について伺いましたところが、向うは闇価格、闇取引を防遏するということが、この税法の狙いでなければならない、外糖、輸入糖の価格が高く維持された場合は闇貿易は絶えないということも特に考慮されているようであります。それから更に又先程の御説明で申し遅れたのでありますが、現在の日本の糖価は斤当りB円に換算して二十二円台であります。普通白糖であります。そうしますと、この四十パーセントの税率に行きますと、どうしても白糖が四十パーセントでも三十五円台位になる、日本との砂糖とこっちの砂糖の開きが十三円の開きが出て来るこの十三円の開きは一般消費者の犠牲に於て黒糖保護の方に廻されている、こう考えられるのであります。これが仮に六十パーセントにでもなりますと、もっとこの開きが大きくなりますので、その面も、各面を総合調整して委員会としては四十パーセントに持って行けば、これで黒糖保護の使命も一応は達成されるし、又一般民衆に対しても少々の負担はあっても現在何もない状況に比べればそれで助かる訳だから、この程度ならば我慢して貰えるだろうといった風に考えたのであります。
○城間盛善君 委員長にもう一つお伺いしたいのは先程の御説明の中にも菓子類は無制限に許されている、こういったお話がありましたが、そういった製菓業面から見た場合に輸入されて来る菓子類そういうものとの比率といいますか、関係といいますか、そういったものを勘案した結果が結局四十パーセントになったという風に諒解していいのですか。
○冨名腰尚武君 四十パーセントになったのは、その数字を出してある根拠は酒造原料として消費される黒糖の価格と双目の価格の開きを大体七円で押えて行けば、黒糖保護の目的は達成されるという点から、四十パーセントにした訳であります。それは黒糖保護という面からいえばこの税率を上げれば上げる程保護にはなるのでありますが、然し一般民需というところも考えて、そこをぎりぎりのところまで持って行ったのが四十パーセントであります。それから製菓原料たる砂糖は税をかけるのに製品である日本菓子には税をかけないという矛盾について、これは財政局長に証言を求めたのでありますが、寧ろこの際砂糖の中に菓子も含むという風にしたらどうだと云う風にもいったのでありますが、この点については財政局長としては物品税を考慮している、その物品税の中に輸入菓子も入れるように考えている。但し、今議会にはそれが間に合わないので、新立法院の発足を俟って直ちにこの面の考慮は払うということでありました。
○議長(泉 有平君) 以上で大体質疑を終ったようでありますので、本法案は財政金融委員会に付託しまして、審議していただきたいと思います。
これで、今日の本会議を終ります。
(午後二時四十七分散会)
出席者
議 長 泉 有平君
参 議 松田 賀哲君
〃 城間 盛善君
〃 冨名腰尚武君
〃 大濱 國浩君
〃 吉元 榮光君
〃 嘉陽 安春君
〃 田畑 守雄君
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