戦後初期会議録

組織名
沖縄諮詢会
開催日
1945年10月23日 
(昭和20年)
会議名
市長会議 1945年10月23日 目録詳細 画像を見る
議事録
市長会議

  十月二十三日(火)午前十時。
軍政府主催の市長会議。
 石川市沖縄諮詢会事務所に於て十二市長会開催。(前原市長欠席)(平安座市長代理出席)諮詢会より委員長始め各部長列席。
 軍政府よりハセ中尉臨席、直ちに開会。
 ハーセー中尉
  第一、諮詢委員会の地位に就いて。
   諮詢委員は沖縄に於て最も信用あり名誉ある人々であるから軍政府は之に色々諮詢します。又専門家を求める時誰がよいかと相談します。
   然し命令権はありませぬ。何となれば執行機関ではないから。
   命令系統。ムーレーが最高で(プライス少将は海軍航空隊全部の司令官だが軍政府の司令官はムーレー大佐)政治部長はストリート少佐。
   其命令が各地方隊長に伝はり市長は其命令によって政治を行ふ。
  第二、移動について。
   移動に就ては軍政府では分って居るやうだが飛行場、海軍用地の為めに或地域を要する為め無理に行くと海軍が不許可にする。殊に越境者があると軍部の感情を害ふて却而後れる恐れがあるから各地区の隊長と協力して取締をして下さい。急いではならない。
 軍政府(ハセ中尉)
  諮詢会の仕事。
   一、諮詢すること。
   二、専門家を求むる時よい人を知ってゐる。
    諮詢会は行政府でない。故に市長に命令することは出来ない。
    若し問題が起ると地区隊長に聞く。
    ムーレー隊長が全部の責任を持って居る。
    地区の隊長が地区の命令をしなければならない。
 田井等市長
  中央機関は当分置かないのか。
 軍政府(ハセ中尉)
  当分置かない。之は沖縄の帰属が平和会議によらなければならない。故に行政府を作ることは出来ない。
  只軍政府を作ることは出来る。
 護得久委員
  宜野座地区では隊長が引上げて一人の隊長が統一して居る様だが其為め労務連絡も不充分の様であるが、元の各区に隊長又は代理人を置くべく願ったら如何。
 軍政府
  住民は野菜や其の外の物を取るため南の方に行ってゐる。
  係の隊長は移動について一生懸命である。而し移動はゆっくりしなければならない。
  南の方は陸海軍の将校が居て移動前に許可を得なければならない。
  物探することに戦闘部隊の方では怒ってゐる。全住民のために出来るだけ現在の地区に居なければならない。
  物探しすることを止めさせて下さい。戦闘部隊の所へ行って物を探させるな。
 委員長
  越境防止をする前に如何なる準備や方法をしなければならないか市長方に教へて下さい。
 知念市長
  南部では已に移動準備をしてゐる(国頭よりの移動者を受け入れる)。
 軍政府
  南部の移動につき民間に漏すな。
  資材や先発隊の必要があるが軍政府から現地部隊に願ってやる。
 知念市長
  戦闘部隊が焼き棄てる資材(テント等)を残して貰いたい。
 軍政府
  係将校が居て戦闘部隊に行って焼棄てる物を貰ふことにしてゐる。
  若し物を焼く事があれば市の隊長に話して下さい。
 知念市長
  戦闘部隊の居る元住家は焼かないようにして下さい。
 軍政府
  焼くことは違反である。地区の隊長に話して下さい。
 安谷屋委員
  島尻方面では利用出来る物が焼かれて居る。軍政府からも焼かないように御願ひ出来んでせうか。
 軍政府
  焼くのは違反である。地区隊長に話しなさい。
 漢那市長
  金武でも焼いて居る。
 仲宗根委員
  其を貰って中央倉庫に入れ之を地方に配給してゐる。
 軍政府
  外国に居る(例布哇等)家族から沖縄に居る親戚のことを聞きたいと手紙が来る時は仲宗根委員まで通知して下さい。
 仲宗根委員
  軍からの訊ね人を早く各市長より報告して貰いたい。
  次に行衛不明者も一週間分宛でも早く送って貰いたい。
 軍政府
  捕虜名簿には屋嘉に居る沖縄の捕虜名を記してある。
  二四〇〇名程居る(病院の六〇余名を含む)。
  各市長が知ってゐる捕虜は出所してやることが出来る。
  三〇人宛纏めて出す。直ぐ出す。地区隊長に出して下さい。
 知念市長
  捕虜を引取る親戚等の居ない者は友人が引取ってよいでせうか。
 軍政府
  説明書を添付して引取の友人を記してくれ。
  布哇にも居る。其半数程は帰へった。
  南洋方面で捕へられた者は加入してゐない。
 大宜見委員
  捕虜を帰へすは何時頃か。
 軍政府
  地区隊長が分る。成るべく早くやってくれる。
  平安座市長へ、水産部の会合のため自動車を屋慶名へ午后三時頃廻送するから待って居るように。
 又吉委員
  区長を選挙させずに居る所もあるが。
 軍政府
  コールド大尉の関係である。話によると地区隊長の責任であると云ってゐる。
 又吉委員
  ペン、鉛筆、紙類等を与へてくれとの瀬嵩市長よりのお願があるが。
 軍政府
  地区隊長へ願へ。
 瀬嵩市長
  市長へ送られた物を中途で軍が引抜く。之は何如?
 軍政府
  地区隊長に申して受け取る。
 當山委員
  隊長から市長に渡る間に二世や性の悪い兵達が引抜いてゐると云ふ噂があるから之を軍政府でも止めて貰いたい。
 軍政府
  噂を聞いてゐるから事実を調査しなさい。
 仲宗根委員
  物品を送る時は書付を送るから其に御注意下さい。
  員数は分らぬ。車何台と出してゐる。
 知念市長
  知念市役所は志喜屋に在るから間違なきよう願ひます。
 田井等市長
  食糧が緊迫して役職員も欠勤者多し。
  本月は殆んど配給なし。十六日芋一人当り二十二匁あっただけである。
  病人を調査すると八〇〇〇人余り(殆んどマラリヤ)。
  最低の食糧を与へて貰いたい。
 軍政府
  暴風のため道が悪かったため。
  諮詢会からストリート少佐にお願ひするから。
  全島を公平に配給す。出来るだけ早く配給す。
 辺土名市長
  食糧問題の実情を説明し、二人餓死す。ソテツ中毒者三人、生命は取止めた。
 軍政府
  十月中に配給されたものを仲宗根委員まで出しなさい。
 瀬嵩市長
  移動すべき地区が分ったら移動すべき順序を知らして貰いたい。
  病人の多いのは大川区でマラリヤより余病を発し七〇〇人死す。
  瀬嵩は90%程の病人が居ると思ふ(マラリヤ)。
  優先的に瀬嵩より移動させて貰いたい。
 軍政府
  係の将校に話します。
 久志市長
  本部今帰仁は移動準備で、隊長は来週から開始せよとの事である。
  テントを多数拝借出来るよう御取計ひ致したい。
 軍政府
  出来るだけテントを配給して貸与する予定である。
 古知屋市長
  農耕地なき地区から優先的に移動せしめて貰いたい。
 漢那市長
  隊長より労務者欠勤なき様督励するが七、八時間は働けないから労務時間を減じて貰いたい。
 軍政府(ハセ中尉)
  ハセには知らない。
 護得久委員
  先月廿七日の最初の市長会議の席上に於て現金調査を御願した調査表を至急御願致します。
 仲宗根委員
  午后引続き社会事業部の衣食住問題に就て御協議を御願ひします。
 大宜見委員
  来月一日衛生課長会議を催します課長の出席方と資料を御願ひします。
午后の部。
 糸数委員
  左の五項目の報告あり。
   A、漁場拡張。B、夜間作業申請中。
   C、冷蔵設置のある母船を与へる。
   D、機関士の必要。E、綱糸、造船用杉、木材等注文済、来年漁期迄に如何なる準備が必要であるか。
 仲宗根委員
  衣食住問題に就ては直接地方隊長に交渉、陳情されたし。日報を作成して一週間三回本部迄で送られたし。
  食糧問題は病人とも関係あるにつき病院とも連絡とられたし。
  全体の状態を研究し軍に交渉したし。
 安谷屋委員
  壺屋の焼物、兼城の筵に就て優先的に移動を申請したるところ近日中に先遣隊が行くやうになった。
  商工業関係の統計資料がありましたら拝借を乞ふ。
 當山委員
  各市教育部内に文化主事を設置され大に社会教育に御尽力されたし。
  芸能部員に来月十日に御参集を御願し各地区に移動演劇をやる予定に就き御協力を乞ふ。
軍本部よりハセ中尉出席。
 比嘉委員
  トラックターを使用したし。運転手の斡旋を御願ひします。
 委員長
  各市長殿、ハセ中尉、諮詢会に御参考になる御意見はありませんか。
 瀬嵩市長
  毛布の配給方御願ひします。先に配給がありましたが軍がとりあげて市民には一枚も配給はありません。
 軍政府
  地方隊長に伝へる。
 宜野座市長
  福山方面より来たる者は毛布なし。来冬が思ひやられる。中央部に於て御配慮を乞ふ。
  食糧配給状態悪きため労務の出席率悪し。毛布、食糧の配給方御配慮方御協力を乞ふ。
 田井等市長
  食糧問題に就て各市長名にて陳情書を軍本部に提出したら如何。斡旋方を仲宗根委員に御願ひします。
 仲宗根委員
  私では都合悪い。石川市長に御願ひします。
 軍政府(ハセ中尉)
  陳情は各地区の隊長になさい。自分は側面的に援助します。
 平安座市長
  人口移動は準備中です。輸送問題に就き本部に於て御配慮御願ひします。
 軍政府(ハセ中尉)
  地区隊長に交渉しなさい。
 田井等市長
  将来賃金制度を実施したらどんなものかと思ふ。
 軍政府(ハーセ)
  労務の方に御聞き下さい。
 田井等市長
  市に主事、視学を置いてよきか。区に技手を配置してよきか。
 又吉委員
  置いてよきと思ふ。
午后一時五三分閉会。
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