- 組織名
- 沖縄諮詢会
- 開催日
- 1945年08月20日
(昭和20年)
- 会議名
- 第2回仮沖縄人諮詢会 1945年8月20日
- 議事録
- 第二回仮沖縄人諮詢会 〔諮詢委員選挙・陳情〕
一九四五年八月二十日
一、受付状況
午前八時半より受付を開始し定刻九時半迄に之を終了せしも会員以外の者会議場に入場せる者あるやに察せられしを以て、山田係長人員点呼を行ひしに果して一人の会員外傍聴者ありしにより退場せしめたり。
総受付人員数百二十四人なりき。
二、開会
1 午前九時五十分、志喜屋議長「これから開会致します。皆様本日も御揃で御出で下さいまして新沖縄建設のため御尽力下さる事は御同様気強く思う所であります。軍の報道に因ると平和の条件も以前より安心の出来る状態にある様でありますから将来の建設に全力を注ぐべく邁進せられん事を希望致します。是れから十五日の協議の経過を軍政府に報告致しますから、幹事をして経過報告書を一読させる事にします。
2 事務報告
當山幹事「十五日の会合の経過を記録について十六日に整理をし、十七日の午后二時志喜屋議長から軍政府に報告致しましたから、その報告を一読致します。」と挨拶して約十五分間を要して之を朗読し「之に対する軍政府の御所見は本日午后本会場で開陳せらるゝ事になって居ります。」と附言す、議長「本報告に対して質問はありませぬか」と一同に尋ねしに質問なかりき。
3 諮詢委員に対する各地区の与論
議長「先日持ち帰えられた諮詢委員二十四名の候補者につき各地区に於ける与論を隔意なく御発表下さい。」
一同に諮れば九十一番より「今の話は充分分らないが十五日の会議に於て、直ちに全委員によって十五名の委員を選挙させずに詮衡委員を設けて二十四名の候補者を挙げて必ずその中から十五名を選挙せよと云ふが如き面倒なる方法を取ったのは如何なる理由によるかと反問せり。
之に対し議長より「ただ今の質問は穏当を欠いているのではないか、質問者自身も当日出席して二十四名の候補者を詮衡して連記投票によって選挙すべき事を承認して居ながら、今になってこんな質問を発するとは何事ですか。」と反省を求めたり。
九十一番再び立ちて「当日は承認した形になって居るけれども、キャンプに帰ってから皆にも聞き自分も熟考した結果、それではいけないから直ぐ此の場で詮衡した候補者二十四名を眼中に置かずに二十五名の委員を選挙してもらいたい。」と強調せば、
議長 「九十一番の主張に同意せらるゝ方は外にありませぬか、軍政府は一人でも不服者があってはいけないから、大事をとってくれと注意して居られるので御遠慮なく意志を発表して下さい。」と一同をうながせば「進行、進行」と、議事の促進を要求する声あり。
次に五十五番、五番、二番、六十九番より、各地区の委員選挙に対する希望として、一、委員候補者の数を三十名まで追加する事。二、追加する候補者は軍政府に協力して成績を上げたる比較的若き人々より挙ぐること。三、各地区に按分し且つ各部門に専門の適材を配する様考慮すること等、主張し五番の如き田井等地区に於ける仮投票の模様をも語りて、民意を強く反映せしむる様主張せり。
議長 「この問題に関し軍政府の方々からも御所見の発表がありますから、暫く休憩の後、御静聴を願います。」少憩を宣す。
モードック中佐起ちて、「私は軍政府を代表して本日の会議に列し議事の進行振りを見て最も嬉しく思う。率直に且つ当を得た意見の発表に対し感心している。皆の意見発表上より伺えば候補者二十四名に対して或る一つの点に於て代表的でない。
つまり若い者を代表して居る者がない。此の点については今朝初めて聞いたのではない。先日の会議後或地区の代表から報告があったので今日の会に出るまで此の点について相談して善後策を考究している。軍としては、皆から十五名の諮詢委員を選ぶ。
或方の意見では候補者三十名から軍が十五名を選べということもあったが軍としては、皆で選んでもらいたい。老人とか若い人とかの区別もない。
兎に角委員になる人は働かなければならぬ。各地区について詳しく知らねばならぬから旅行したり調査したりするに差支えない健康体でなければならぬ。
要するに最後の決定は皆がすべきで軍政府は干渉したくない。唯意見を聴かれたから言っているに過ぎない。若し二十四名では少ないと云うことなら三十人前後に増やしてもよいと思う、部門部門に適当な人を得る便宜的なやり方として一回に十五名を選挙せずに、二回に分けて最初に八名乃至十名を選挙して当選した人々を退場させて、それ等の人が果して各方面の代表者であるかを批判して後の五名乃至七名はこれをよく頭に入れて選挙することにしたら各方面の代表者を選出することが出来るのではないかと思う。
尚、此所に居られる方で少数を代表する方は強く意見を発表することにしたら少数を占めて居る人の代表者も選ばれることになると思う。此所で意見を発表せずに後になって軍に批評を持って来ては困る。
忌憚なく強く発表されたい。軍としては皆を代表して真に皆の信頼を受けた諮詢機関を得たい。妨碍するということはされたくないと力説せらる。
議長 「ただ今軍からの御所見に分かった事と思う。
外に五十五番、五番、二番、六十九番からも候補者の数を増やしたいとの意見もあり軍も独りの不服者もない様に和やかな空気の中に重大事項を決議したいとの御希望もあったが候補者を増員するか又は先日決めた通り二十四名の中から連記投票によって決めるか又投票の方法として第一次に八名乃至十名を選んで第二次に五名乃至七名を選ぶ様に二回に亘って投票するか、皆様の意見を承りたいとはかれば九十八番、五番、百二十一番、五十四番、百十番より夫々意見の発表ありしが、第一回の協議通り二十四名の候補者より十五名を一回で連記投票することに決定せり。
4 選挙
議長 「それではこれから十五名の連記投票に移ります。」と宣して投票用紙を配布せしむ。議長一般の投票を終りし頃開票委員に、横田英、平良吉盛、喜納豊昌、泉良慶、仲泊良夫、喜世川可誓、塩浜康盛、仲村清栄、高江洲良保、山城由松、久保田盛春、伊佐常喜、新里銀三の十三名を命じて開票せしめたり。
右開票の結果を仲泊良夫氏より左の通り発表せり。
投票総数 一二四票
内有効投票数 一一七票
無効投票数 七票
得点数
一一六 志喜屋孝信
一〇六 護得久朝章
一〇三 山城篤男
一〇一 仲宗根源和
一〇一 又吉康和
九七 仲村兼信
九四 糸数昌保
九〇 大宜見朝計
八五 比嘉永元
八五 安谷屋正量
八三 知花高直
七一 平田嗣一
六八 前上門昇
六四 松岡政保
五九 山城東栄
五九 當山正堅
五七 山田政功
五四 伊礼正幸
五三 金城増太郎
四七 金城紀光
四四 仲本為美
三九 山田有幹
三五 石川逢篤
三四 富山嘉本
議長 「得点五十九点の山城東栄氏と同点の當山正堅氏の二人について決戦投票により当選を決定します。」と宣して投票用紙を配布せしむ。
斯くて再び曩に任命せし開票委員十三名をして開票せしむ。
右開票の結果
投票総数 一二三票
内有効投票数 一一八票
無効投票数 五票
得点数
六二 當山正堅 五六 山城東栄
なる旨、仲泊良夫氏より発表せり。
議長 諮詢委員に、志喜屋孝信、護得久朝章、山城篤男、仲宗根源和、又吉康和、仲村兼信、糸数昌保、大宜見朝計、比嘉永元、安谷屋正量、知花高直、平田嗣一、前上門昇、松岡政保、當山正堅の十五名当選せる旨発表し、選挙を終了せる旨宣言せり。
5 陳情に対する軍の所見
議長 「選挙はこれで済みましたから次にうつります。十五日の会議に於ける皆様からの陳情(質問)に対し軍政府の方から御所見がありますから御静聴を願います。」
モードック中佐 「軍政府に対して質問(陳情)したことに対して回答の出来る範囲内に於て発表致します。軍に於ては公式の回答で此所に翻訳してしたためてありますから、議事録には翻訳文を書いてもらいます。」と前置きして丸本中尉をして通訳せしめつつ、懇ろに左の通り回答せられたり。
イ、分散家族を取纒める方法を遠からず講ずることが出来るや否や。
右答 軍政府の幾多の社会救済問題の一として分散家族の取纒めに関する方法を講ずるために軍政府社会救済部と相談する委員を諮詢委員会の社会救済係に於て選定せられたい。現在或区域に於ては試験的に調査が行われている。軍政府社会救済部は右区域に分散家族の名簿と分散家族を発見したる地方役員の提出すべき書式を掲示して居る。
ロ、尋ね人を探すために中央登録制度を設けることが出来るや否や。
右答 此の質問は一に関連した問題であり本部に於ては中央登録制度の社会救済事業促進上に緊要なるを認め、これを計画して居る。斯かる制度の設置に至るまでは現在石川の登録係に於て採用されて居る非公式の登録制度の拡張、統一及び一般的使用方法を諮詢委員会に於て考慮せられたい。
ハ、沖縄住民家族を従前の居住地に落付かせるために沖縄本島及び離島間の移動が許さるべきや否や。
右答 事情がこれを許し運輸機関が手に入るに従い住民の居住が許される地域に限り離島民を従前の居住地に帰還さすべく出来る限り努力する。これは軍政府の分散家族を取り纒める方針に基くものである。
ニ、日本内地に疎開せる沖縄人家族及学童を至急帰還せしむる方法を講ずる事が出来得るや否や。
右答 現在に於てはこの質問に対しては回答は与えられない。事態がもっと安定して後、再度本問題を提出せられたい。
ホ、田井等地方に於ける住民は現区域に引続き居住することを許されるや否や。それとも辺土名地域に移動されるや否や。
右答 現在に於てこの質問に対し確答は与えられない。
軍政府は田井等地方を住民居住地として維持すべく許可を得ることに努力している。然し軍事上の必要は果して可能ならしむるや否や判然としていない。
ヘ、衣食住の標準改善、特に食糧配給の増加につき手段が講ぜられるや否や。
右答 軍政府社会救済部は規定の食糧が実際上充分なりや否やを確めるために住民の食糧につき研究委員を設くるよう上層部に請願して居る。此処に明示しておかなければならないことは、沖縄の食糧問題は戦禍を受けて食糧に困っている。他の世界各国を含む全体の食糧分配問題の一部であることである。
現在の食糧は上層部に於てこれを規定し他の太平洋各区域の標準と同様である。現在に於ては一日一人当り一、五三〇カロリー、労働者には二、〇〇〇乃至二、五〇〇カロリー、児童及妊婦には特別の食糧が規定されているのである。
衣服類は注文され現に運送中である。これは到着次第各区域の救済部により必要に応じ分配される。
軍政府の方針として現在まで輸入されたる建築材料は住民の住宅用には供せられていない。住宅の改善は連合国の船腹不足のために引続き地方材料の使用によらなければならない。
ト、民間の医師は避難壕にある医薬器具の蒐集を許可されるや否や。
民間医師名簿を作製し各住民区域に医師の適切なる配置が可能なりや否や。
軍政府本部は民間医師の公衆衛生指導、疾病予防運動参加のために医師会を開催するや否や。
右答 現在医薬医療器具は充分にあるが民間医師に於て蒐集することは奨励する。斯かる蒐集を統一的に行う方法を諮詢委員会より提示されたい。
本部に於ては既に民間医師名簿を作製して居る。然し諮詢委員会にそれを追加してもらいたい。
又各区域の医師の配置を適切ならしむるために諮詢委員会よりその方法につき提示せられたい。本部に於て諮詢委員会を通じて軍政府と衛生医療問題を議するために沖縄人医師会を開催する。
チ、沖縄島内、沖縄諸島及び軍政府下の南西諸島間、沖縄島及び米本土及びその属領間の郵便施設の設置が可能なりや否や。
右答 本部に於ては沖縄島における民間の郵便施設に付き考慮している。沖縄に於て住民使用による郵便制度設置につき諮詢委員会に原案を提出せられたい。現在に於て軍政府下の離島との郵便通信は各区域の軍政府当局を通じて民間役員の公用通信に限らなければならない。
琉球諸島外宛の郵便は現在に於ては之を取扱う施設がない。斯かる設置が出来次第住民に通知する。
議長「ただ今の御発表に対しまして御質問がありますならば」と質問を促せしに質問する者なかりき。
丸本中尉「こういう問題は諮詢委員会を通じてしてもらいたい」と促されたり。
6 諮詢委員会に対する軍の計画
モードック中佐「この諮詢委員会に対する軍政府の計画を説明します。役割は今日直ぐしなくとも最初の集りで出来ることと思います。委員が石川に住むことに対しては既に住宅その他の準備にとりかかっている。事務所の準備各部門の委員の集合に便ずるための宿泊所の設備も準備中である。十五名の委員に対しては同居家族を一緒にする考えであるから、その氏名、年令を書類を以て直ちに報告されたい。」ことを通告せり。
7 民間代表機関の組織方法如何
議長 「次に第二の問題たる民間代表機関の組織方法について御諮りしたい。」と、宣して幹事をして説明せしむ。
百二十一番より質問ありたりしに対し、モードック中佐起ちて「今回の会合の第一目的たる十五名の諮詢委員を選ばれたがこの諮詢委員会以外に民間の皆様の代表機関を設けることを欲するならば受入れる準備がある。若し必要となれば地方的にするか、人口的にするか具体的に皆様からその方法を指示してもらいたい。代表機関を設立するということや諮詢機関との関係又は代表者の選出等に対しては皆様の御意見に任したい。今回軍の方では率先してこの会合を開いたが、それは十五名の諮詢委員を設くるために開いたが今後の代表者会については必要があれば皆様から述べてもらいたい。」と代表的機関の説明と之が設立に対する軍の方針とを述べられたり。
議長「諮詢委員会の外に民意を代表する機関も必要と思われますが、その組織は如何なる方法によったらよいでしょうか。」と意見の発表を促す。
五番「先日の会合に於て民意の反映機関としてはそのままこの会合を永続したいとの意見があったが、出席議員の選出は一般の選挙にしたい。」と前置きして今回の戦争に於て日本の敗戦したる原因は民間の意志を封じたがるためなりと主張して公選の必要を力説したり。
丸本中尉、モードック中佐に代わり「今回の集りの人選については色々落度があることを予期した。真に沖縄人を代表して居ないかもしれないが現状に於て出来るだけの努力はした。代表機関はこんな組織にしてくれとは軍は言わない、率直に沖縄人の声を聴くことの出来る機関の組織について意見を具申してもらいたい。」と希望せらる。
三番「我が石川市に於ては班長以上の会合を催して十五日の会合の経過を報告した後、十名の委員をあげて委員選出の問題や本問題についても意意を纒めたが本問題に対しては此所に成文にしてあるのでこれを一読することにする。」と述べて左の成文を朗読せり。
民間代表機関組織案
一、名称 沖縄代表議員会
二、目的 沖縄の全住民を代表し、沖縄更生に対する与論に鑑み之を討議して軍政府に建言し、以てその促進を計るものとす。
三、組織 (1) 代議員 住民五千人に対し一人の割を以て二十五才以上の男子より選出することとし、その方法は選出地区の公選か詮衡委員制かその地区住民の総意によるものとす。
(2) 役員 議長一人幹事若干人を置くこととし、議長は互選により幹事は議長指名によるものとす。
(3) 任期 一年間とし欠員あるときは補欠選挙をなしその任期は前任者の残任期間とす。
(4) 会期 三ヶ月に一回定期開会し必要に応じ臨時開会するものとす。
(5) 附則 地区の決定、会場の選定その他会議開催に必要なる事項は軍政府の内示を受け議長之を決定するものとす。
二十九番、七番、四十七番より意見の発表ありしもこれが組織方法につきては諮詢委員会に一任することに満場の賛成を得たり。
8 山中に避難中の住民及び日本軍人の救済方法如何。
議長より本問題を提出すべきことを宣し丸本中尉より提案の理由を説明せば七番「住民の山間に避難せる者を救済することは容易であるが、軍人の救済には困難を予想する。軍人は之を捕虜にするのか或は一般避難民同様の取扱いにするのかその点を明瞭にしたいと思う。」と所見を述べたり。
之に対しモードック中佐「私は軍の代表者として民間の者を救い出すことは容易であるということを喜ぶ。軍に属する者の取扱いは米軍と同様の取扱いをうける。国際法上時期が来たら本国に帰す。総てはジュネーブ条約に規定されている通りにする。」と説明せらる。
議長 「ただ今御説明の通りの取扱いで出来るだけ救済策を講じたいと思いますから、御意見の発表を願ひます。」と促せば六十七番、一番、三十三番等より「各地に於ける有識者が責任を負うて探し廻るなり呼びかけるなりして誠意を以て現在の戦況を説いて投降を促せば軍人と雖も之に応じて降ってくると思うから、一日も早くこれを決行したい。」旨述ぶ。議長「兵か民かの鑑定はC・I・Cに於てするから急いで之を行いたいと思うがその促進方法はないか。」
三十三番、四十二番「當山氏の主張通り土地の人々が誠意を以て当れば出来ないことはないと思うから、村の識者が人類愛から出発して一つ心になって山に入ったら容易に出来ると思う。」とその促進を主張す。
議長 「時間もまいりましたから、これで纒めたいと思いますから各委員の発表した方法を参考にして各地区に於て方法を講じて成るべく早く実行したら如何ですか。」と諮れば、満場之に賛成す。
丸本中尉「実は軍では捕虜を使って呼び出す計画はしてゐる。或る部分では軍関係の人を使ってやっている方法もある。軍より依頼があったら部落で相当の協力が出来るか否か出来るとすれば軍から具体的方法を示すから各地区の将校と諮って決行してもらいたい。決して民間のみで勝手に行動しないように名案があれば軍に連絡をとってもらいたい。」と注意せらる。
三、閉会
モードック中佐「閉会するに当たり、ムーレー大佐の代りに軍を代表して挨拶する。本日は周到に率直に忌憚なく意見を発表して議事を進行したことに対して感謝します。」と挨拶せらる。
議長 「時間も迫ったので本日はこれで閉会します。相当ややっこしい問題もあったが皆様の熱誠な態度により会議を終了することが出来、軍政府よりも懇切なる指導援助を賜ったことに対して感謝する。私の如き不拙者が二日間に亘る会議に議長としての責をふさぐことの出来たのは全く御厚情、御後援の賜物と御礼申します。」と挨拶せらる。
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