戦後初期会議録

組織名
沖縄諮詢会
開催日
1946年04月01日 
(昭和21年)
会議名
諮詢会協議会 1946年4月1日 目録詳細 画像を見る
議事録
諮詢会協議会 〔郵便・知花委員・軍民協議〕

  四月一日(月)午前九時。
  出席  志喜屋、松岡、又吉、安谷屋、平田、大宜見、前門、護得久、比嘉、仲宗根、山城、諸委員。
  公用他出 當山(恩納へ)、糸数(渡久地へ)、仲村の諸委員。
  病欠  知花委員。
協議事項
 平田委員
  郵便法案審議の件(別紙印刷物配布)。
  平田委員説明す。
  日本の郵便法を一部省略して其通りにして居る。
  関連事項は郵便法の中に部長の権限で決定する事項があるが其れを参考に挙げてある。
  第一、二条は主体を記し、第三条から十六条迄では秘密、及び迅速を発揮するために決めた。
  第十七条以下は郵便の種類を決めた。
  料金を決めてある。
  料金は戦前よりも殆ど各種共倍になって居る。
 又吉委員
  郵便料は外国との関係は如何なるか。
 金城書記(通信部書記)
  弐拾銭である。
 又吉委員
  島内も外国も同一でよいか。
 金城書記
  郵便料は物価の関係と睨み合せ又将来独立会計を考慮して計画した。
 護得久委員
  郵便料を倍額にしたのは高くないか。
 比嘉委員
  従来の様に請負局とは考へて居ないのですね。
 平田委員
  考へて居ない。官営として計画した。
 護得久委員
  小委員会を設けて検討をしたら如何ですか。
 志喜屋委員長
  日本、台湾方面とも料金の事は睨み合はす必要はないか。
 平田委員
  財政、法務、商務、総務、通信、工務の六部で小委員会を組織し研究して後全委員会に審議をお願ひします。
 志喜屋委員長
  平田委員が小委員長になって下さい。
 志喜屋委員長
  山城金造氏から陳情書が来て居るが如何しますか。
 松岡委員
  私の所にも英文和文と二通宛来て居るが英文が不完全であるから軍政府に提出する事は出来ないと云っておいた。
 大宜見委員
  本人に返へしたら如何ですか。
 安谷屋委員
  軍政府への陳情なら諮詢会で抑制する事は如何ものでせうか。
 志喜屋委員長
  仲村委員に関する事であるから彼氏に委したら如何です。
 志喜屋委員長
  知花委員よりの手紙を津嘉山書記をして朗読せしむ。
   謹啓、各位益々御健闘の段賀し奉ります。
   偖而昨日は志喜屋委員長、當山、仲宗根委員が各位を代表して遠路且つ雨天にも拘はらず親しく御見舞下され御手厚き物品を御恵与に相成り重ね重ねの御厚意誠に有難く深謝奉ります。
   私の一身上に対し万事御高配下され此際帰任しては如何と御勧めに相成りたる御心情誠に有難く御礼の辞もありません。
   重責の任に就く事は私の現況では至難の事と存じますので他に適任者を御考慮相成るが諮詢会としても沖縄としても得策かと存じます。
   何れ健康恢復の節は改めて御願ひ申上げる事もあらうと思はれます。
   右御礼申上げます。
    三月廿八日
                  知花高直
   志喜屋委員長
   外 各 位 殿    (写)
 志喜屋委員長
  知花労務部長の後任の件は全委員集りの時にお願ひしませうか。
  本日午后一時から開会します。
  (午后一時再会)
  出席  志喜屋、松岡、又吉、山城、仲宗根、安谷屋、平田、大宜見、當山、前門、護得久、比嘉、仲村の諸委員。
  公用他出 糸数委員。
  病欠  知花委員。
協議事項
 志喜屋委員長
  津嘉山書記をして知花委員の辞任届を朗読せしむ。
   辞任届 (写)
                   小職儀、
   今般病気相煩ひ其任に堪へず候条
   此段及御届候也。
    一九四六年一月六日
                  知花高直
   諮詢会委員長
    志喜屋孝信殿
 大宜見委員
  医師の診断書を添付して軍政府に提出す。
 志喜屋委員長
  知花委員が恢復したら重要な地位に就く様云ひませう。
 志喜屋委員長
  労務部の部長を推薦する様にとの軍政府の意向ですが。
  仲宗根委員、何かあったらどうですか。
 仲宗根委員
  伊芸徳一氏を第一候補に挙げたいと彼氏の略歴を述ぶ。
 又吉委員
  山田有幹氏を推したいと彼氏の略歴を述ぶ。
  山田氏は労働研究者で実際労働者と生活を共にして居た。
 仲宗根委員
  労働運動と労務事務とを混同したくない。
 平田委員
  當銘由伸氏を推薦したいと彼氏の人格略歴を述ぶ。
 護得久委員
  投票は如何。
 志喜屋委員長
  人事は満場一致でやりたい。
 護得久委員
  執行機関を担当しても諮詢委員には加入しない様に軍政府に進言したら如何。
  例へば軍政府から斯く斯くせよと云ふ時はお互は斯くしてよろしいと願ふたら如何。
  諮詢を受ける場合は始めからの諮詢委員でやってよいではないか。
 當山委員
  護得久委員の説に賛成である。
 仲宗根委員
  労務、水産、運輸も外から部長が来る事になるが護得久委員の説に賛成す。
 前門委員
  其部の諮詢に対しては不便にならないか。
 仲宗根委員
  執行機関の部長に諮詢やればよいではないか。
 志喜屋委員長
  本日軍政府に質しませう。
 護得久委員
  諮詢は諮詢会に諮って之を執行に移す事にやったら如何ですか。
 安谷屋委員
  執行部長は在って委員が不足であるが部長を委員に編入しないのは如何なる理由か。
 護得久委員
  百二、三十人から選ばれた委員であるが故に、商務部長を選ぶ時三人の候補者を推薦せよと云って、後で委員長に糸数委員を任命したらと云ったと。
  ワッキンス少佐の言は信頼出来ない。
 前門委員
  去年は八月十五日の選挙の時モードック中佐の言によれば委員の欠員の予測を考へ、十五名の委員で補充出来る意味の事を言外にあったのではないか。
  (午后二時)
  軍政府 ワッキンス少佐。
諮詢事項
 軍政府
  大宜見委員へ、中央病院の看護は帰米の手続はすんだ。
 護得久委員
  来る四日の会議の車の手配につき説明す。
 又吉委員
  四日の町村長会の時地方総務を呼ぶや否や。
 軍政府
  又吉委員の考へに委す。一緒に呼んだ方がよいだろう。
 軍政府
  船員の事であるが、布哇に問合せて技術者は米国人にして船員は沖縄人にしたいから船員を調査し名簿も早く作る様に。
  船四隻を置く。
  安谷屋委員へ、宮古に居る技術者呼寄せの件はローレンス少佐と打合はされたい。
  水産部長は如何なったか。
 志喜屋委員長
  一昨土曜日に推薦して軍政府(ローレンス少佐)に届けました。
 松岡委員
  第一候補者 山城東栄。
  第二候補者 玉城 瑩。
  第三候補者 上原真松。
 軍政府
  労務部長は如何なって居るか。
 仲宗根委員
  三人候補者を挙げたが其の順序は後刻にして本日協議します。
 軍政府
  明日回答出来るか。
 志喜屋委員長
  明日午后回答します。
 軍政府
  重要性を帯びて居るから急いで貰いたい。
 志喜屋委員長
  重要であるから遅れて居ます。
  知花委員は病気で諮詢会でも辞任を承認し近日医師の診断書を添付して軍政府に辞表を提出しようと思って居ますが。
 軍政府
  委員長に辞表が出て居れば其れでよろしい。
  委員として活動してくれて感謝するの意味の手紙を委員長から出し、又、カールドウェル少佐からも出す事にする。
 志喜屋委員長
  軍政府の云はれる言葉で結構であります。先日、私と仲宗根、當山両委員三人で御見舞に参りました。
  其時ワッキンス少佐殿にもよろしく申上げてくれとの事でした。
 志喜屋委員長
  労務部長になる人が同時に委員になり得ると云ふ事であるが、之は吾々は百二、三十人の選挙によってなったが其部長が委員になると云ふ事は当を得て居ないと思ひ執行部長と委員とは別々にする事がよいのではないかとの委員の意見が一致して居ますが如何なるものでせうか。
 軍政府
  百二、三十人の人を集めたのは軍政府が沖縄人を知らなかったから便宜上集めたのである。之等の人々は何の権力も順序も有って居ない。
  諮詢会も軍政府が必要でなければ解散してもよい。
  此の百二、三百人の人々に拘束される必要はない。
  軍政府が人を知って居れば直ちに任命してもよい。
  百二、三十人の人々は軍政府の地区隊長が知った人であって其外にも良い人が居たかも知れない。
 護得久委員
  諮詢の時は吾々が対へ得るから執行部長まで参加させる必要はないと思ふ。
 軍政府
  此の問題は考へてみる。
 護得久委員
  吾々の希望も入れて貰いたい。
  諮詢委員には部はなくともよいと思ふ。
  1.便宜上部に分けたのである。
  2.八月十五日以来苦楽を倶にして来たから委員に欠員があっても外から増員したくもない。
 當山委員
  委員欠員の時十五人の委員で選ぶ事は当を得て居ない。吾々委員は各キャンプで選ばれて来たので、欠員を十五人の委員で選ぶ事は民意を欠いて居る。
 護得久委員
  中央機関が出来れば諮詢会は当然解散なる時機が近い内に来るから吾々の歴史を破りたくない。
 軍政府
  考へ方によると労務の専門が部長に来るとグループを作る事になる。見方によると諮詢委員はグループをなして居るとも見える。
  例せば、委員で推薦した村長を以てコザ、糸満市にやった。
  或地区の如きはかくかくの人を村長にせよと云ったら隊長は私の様に事情を知らないが如何なる意味でワッキンス少佐は村長を更へるかと。
  私は地区で反対の所では隊長のよいと思う人を選べと云った。
  軍政府では十五名の委員の外は誰も沖縄の人の事を知らないだろうと思ったが而し地区隊長はさうではない。
  例へば三人の村長を推薦して行ったら地区隊長から此の人をよく知って居るか、此の外にも立派な人が居るがと云はれたとの事である。
  護得久委員の話の様に執行部長も議決機関も出来る時は諮詢委員は無用になる。
  現在の委員を継続するには幾多の理由がある八月以降組織して経験もあるから外から新しく参加する事は如何と思ふが而外部から見た時は如何思ふか。
 護得久委員
  どうぞよく考へて下さい。
  此の問題は之で打切ります。
 軍政府
  昨日三時間に亘りカールドウェル少佐と二人でバックマスト少将に対し沖縄の将来につき案を立てゝ話した。
  考へた結果政治機構は戦前に近い機構が最も良いではないかとの結論になった。
  行政機構を戦前に還へす機構の理由は、
  1.軍政府の目的を達成するに副ふ機構である。
  2.戦前の機構は皆がよく知って馴れて居るから。
  3.以前の機構にすると機構に対し疑問もなく円滑に行く。
   新しい機構になると知らないから面倒になる。
  4.従前の組織を持って来ると大島、先島も同一機構に行ふ事が出来る。
  5.布告によって土地の慣例風俗は其儘継続する事になるから。
  6.例へば新らしい機構にすると上層部に一々許可を得なければならないから従来の機構にすると馴れてやり易い。
  7.選挙法は一つ今までのものと変更になるであろう。
  政治運動によって人を得ず、本当の人物を得たい其方法に変更したい。
  理想選挙は急に行はれないからゆっくりゆっくりとやって行かう。
  例へば自動車運転手も馴れないと自分で身を滅ぼす事になると同様に選挙も日月を要するのである。
  選挙は運転手と同様で、デモクラシーと云ふ事を相当知らなければならない。
  支那が一九一二年にデモクラシーを取入れたが国情に合はないために投出した。
  第一次欧州戦争の時欧州でも、デモクラシーを取入れたが国情に合はないために殆んど投出した。スペインも一九三一年にデモクラシーを取入れたが国情に副はないため一九三四年に投出した。
  デモクラシー政体は使い方を誤ったら却而破壊するから相当の基礎教育をした後でなければならない。
  部長等の推薦決定を急ぐ理由は今の軍政府将校は今夏どうなるか知らない。
  故に沖縄人に関する事は沖縄人によって行きたいと思って急いで居る。
 軍政府
  渡久地の工場は重要性を帯びて居るから此所の工場長は委員会で諮って貰いたい。
  川平氏がよければそれでもよい。
  金武村の分村はなったが境界の道路の責任は誰が負ふか。
 比嘉委員
  両村の共同責任になる。
 軍政府
  誰が共同責に命ずるか。
 比嘉委員
  両村長が相談してやる。
 松岡委員
  上層の土木係から命ずる。
 軍政府
  金武村の市を区に変更してくれと陳情が来たが又吉委員どうするか。
 又吉委員
  村長に任した方が良案と思ふ。
 軍政府
  伊芸徳一氏は新らしい二人の村長を知らない様だから又吉委員から注意して貰いたい。
 又吉委員
  宜野湾村長の件であるが、松岡委員も見て居るし又私の信頼した人からも話があったが、始め桃原氏を村長に推薦したが、久保田氏に変更したいと思って居るが如何ですか。
 全委員
  異議なし。
 又吉委員
  宜野湾村長に久保田氏を軍政府に推薦す。
 津嘉山書記
  四月の各部の行事の許可を得。
  (ワッキンス少佐帰府)
  (當山委員所用のため帰へる)
 志喜屋委員長
  労務部長を推薦する事にします。
  伊芸徳一氏、山田有幹氏、當銘由伸氏。
  此の三人挙げられて居ますが。
 護得久委員
  伊芸徳一氏に賛成。
 又吉委員
  満場一致でなければならないと思ふ。
 仲宗根委員
  伊芸氏を推薦したのは知花氏の意志である。
  又吉委員は伊芸氏が労務部に居ると云ふ事は諮詢会職員の俸給査定の時承知の事である。
 前門委員
  伊芸氏も立派な人物であるが而し當銘由伸氏を推そうではないか。
 仲宗根委員
  知花委員が休む時、側に居た大宜見委員が仲宗根委員で仕事をやらないかと云はれたので私もよろしいと引受けた。
  傍で又吉委員が私にやらしてくれと話された。
 又吉委員
  知花委員が比嘉委員、及び私の所に相談に来る途中、仲宗根委員が私にやらしてくれと云はれたので仕方なくやらした。
 比嘉委員
  又吉委員は知花氏の話を引用したが、知花氏が私にやってくれと云はれたから私もやってよろしいと答へ、又仲宗根委員が私がやってもよろしいと云ったので私も忙しかったから仲宗根委員に頼んだのである。
 大宜見委員
  其時仲宗根委員を推薦したのは部門を分けたのは十五人の便宜的であったので、多数の部員を有った所がよいと思って推したのである。
 山城委員
  當銘由伸氏に賛成者が居る様だがその方に進める様にしたら如何です。
 比嘉委員
  漁夫の利を占めると云ふ事になるのか。
 仲宗根委員
  部長であるとなしに伊芸氏を働かしたい。
 志喜屋委員長
  伊芸氏を労務部書記長として賛成か否か。
 全委員
  異議なし。
 志喜屋委員長
  當銘氏に賛成ですか。
  伊芸氏は書記長に。
 全委員
  異議なし。
 松岡委員
  第二候補者に高嶺朝光氏を推す。
 全委員
  異議なし。
 安谷屋委員
  第三候補者に大城元長を推す。
 全委員
  異議なし。
 津嘉山書記
  第一候補者 當銘由伸氏
  第二候補者 高嶺朝光氏
  第三候補者 大城元長氏
  書記長   伊芸徳一氏
  以上決定せる事を読上ぐ。

知花委員四月一日軍政府の承認を得て辞任す。
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