戦後初期会議録

組織名
沖縄群島議会
開催日
1952年03月15日 
(昭和27年)
会議名
第13回沖縄群島議会(定例会)第二部委員会 1952年3月15日
議事録
  沖縄群島議会第二部委員会議事録
  一九五二年三月十五日 午前十時四十分開会
○委員長(玉城泰一君) 只今から第二部委員会を開きます。
 本日の出席五名、欠席四名であります。本日は議会から本委員会に付託されました決議第一号の市町村制の改正についてを御審議願うことに致します。
 審議に入ります前に本件立案の経過につきまして総務部行政課長の説明を求めます。
○行政課長(総務副部長カ)(稲嶺成珍君) それでは市町村制の改正立案の経過につきまして私から説明申上げます。
 現行市町村制につきましては幾多矛盾する所や不適当な所がありますので吾々の方から軍へ之が改正方を要望したのであります。軍では之が改正の必要を認め各群島議会の方へ照会し右改正法案の調製方を要求されたのであり、決議第一号添付の別紙にもあります様に行政課で一応の立案をなすことになったのであります。吾々の方としては市町村長会に出席し市町村長側の改正希望事項を聴取、尚今期議会初日において書記長から朗読報告がありました市町村議会議長会長からの改正要望事項をも取入れて、一部改正よりは全面的改正を行った方がよいと考えまして、日本の地方自治法を主体にして沖縄の実情に即する様に立案致したのであります。吾々の方で立案致しました市町村制改正試案は二〇〇余条の厖大なものとなっておりまして条文の研究整備につきましては尚相当の時日を要しまするが、群島政府も近く解消せられることになりますので議会としては軍からの照会に対する回答は改正要望事項を纏めて提出した方がよいと思われまして議長とも連絡して左様に取計われた様な次第であります。そこで別紙の改正を要すべき主なる事項につきまして第一項から順を追うて御説明申上げることに致します。
 先ず第1項の現行第二条には「市町村はその公共事務及び法令により市町村に属する事務を処理する」と概括的に規定され、市町村の事務か群島の事務であるのか分らないので日本の地方自治法に規定されている様に例示的にした方がよいと思いまして、これを取上げたのであります。
 第2項でありますが、これは市町村の廃置分合は関係市町村議会の意見を徴して知事が定めるとなっておりますが、群島議会の議決を経ることに改訂した方がよいと思いまして、これを日本の地方自治法に準じて左様に取上げた訳であります。
 次ぎの第3項は、市町村の境界に関する争論については現行規定は関係市町村議会の意見を徴して知事が裁定するとなっているのを関係市町村が裁判所にその確定の訴を提起する様にする、争論がない場合は知事が裁判所に境界の決定を求めることができる様にするのであります。日本でも府県知事はその権限がなく直接裁判所に持って行く様に規定されているのであります。
 次ぎの第4項ですが、現行市町村制では市となる要件、町となる要件に関する規定がありませんのでこれを新たに制定する必要を認めます。現在八重山群島では全部町となっている実情であります。
 第5項ですが、現行第十一条、第十二条、第十三条に条例及び規則の制定規定がありますが、その条例に罰則制定の件が謳われてないので条例違反、規則違反に対しての措置ができないで支障を来たしておる現状であります。即ち委任罰則制定権を織込む必要を認めるのであります。尚条例、規則の公布方法も具体的に決めた方がよいと思います。自治権拡張の意味合いからどうしても必要と思います。
 次の第6項でありますが、現行第八条の市町村条例の制定又は改廃の申請権、市町村の事務監査申請権、及び第九条の市町村議会の解散申請権、市町村長、市町村議会議員の解職申請権について申請に関する事項は別に法律で定めることに規定されているが、その法律は未だに出ないし、至急出して貰う様軍に対して再三再四交渉しているが何にもやって呉れないのであります。群島組織法では申請に関する事項も明示されておりますが、市町村制にはないので非常に困っている、どういう風にしてよいか分らない現状であります。本事項は市町村議会議長会長からの要望もありました。どうしても市町村制の中に請求権発動に関する規定を設ける必要があります。
 次の第7項は議員定数の件でありますが、現行規定の定数は余りに少ない。本件も市町村議会議長会長からの陳情もあり色々理由も挙げられております。日本の地方自治法規定の数は余り多過ぎるんじゃないかと思うが現在定数の倍位が適当だと思われますので、人口二、〇〇〇未満は八人、二、〇〇〇-五、〇〇〇未満一二人、五、〇〇〇-一〇、〇〇〇未満一六人、一〇、〇〇〇-二〇、〇〇〇未満二〇人、二〇、〇〇〇-五〇、〇〇〇未満二六人、五〇、〇〇〇以上三〇人に変更するのが適当と思われます。尚条例で減少ができるようにする、定数変更は一般選挙の場合からとする、という風に改正する必要があります。
 次の第8項は議員の任期の件でありますが、現行市町村制では市町村議会議員の任期は「本人の選挙後十五日に始まり後任者の選挙後十五日に終る」となっているのを「市町村の議会の議員の任期は四年とする」という風に改正したい。尚任期の起算、補欠議員の在任期間及び議員の定数に異動を生じた場合新たに選挙された議員の在任期間については左記として列挙する様に致したい。即ち一般選挙において選挙された議員の任期は一般選挙の日から起算する。但し任期満了による一般選挙で議員の任期満了の日前に行なわれたときは前任者の任期満了の日の翌日から起算する、補欠議員は前任者の残任期間在任とする、という風に改めたいと思います。
 次の第9項は議会の事務調査に関する規定でありますが、現行第二十三条に抽象的に規定されておりますのを具体的にした方がよいと思いましてこれも取上げたのであります。
 次の第10項は議会に委員会設置の件でありますが、現行では委員会設置の規定がありません。市町村議会においても矢張り常任委員会制度を設けて議会運営を活溌ならしめた方がよいと思われますのでこれを設けたいのであります。
 次の第11項でありますが、議会の会議を開く条件については現行規定では議員定数の過半数が出席しなければ出来ないことになっているが、定数の少い現状ではどうしても半数出席すれば会議を開ける様にしなければ議会運営上色々支障がありますので日本の地方自治法にならいまして左様に改正致したいと考えているのであります。
 次の第12項でありますが、これは市町村長の任期に関する規定が第8項の所で議会議員の任期の規定と同じ様に現行では「市町村長の任期は本人の選挙後十五日に始まり後任者の選挙後十五日に終る」となっているのを市町村長の任期は四年とする、その他任期の起算についても第8項と同様に改訂致したいと考えているのであります。
 次の第13項でありますが、市町村に副収入役、出納員を置くことができる様に致したい。日本の地方自治法にならってそういう風に致したのであります。
 次の第14項は、職員任用に関する規定を日本の地方自治法に準じて変更した方がよいと考えます。即ち「吏員に関する職階制、試験、任免、給与、能率、分限、懲戒、保障、服務、その他身分取扱に関してはこの法律及びこれに基く府令に定めるものを除く外別に市町村の職員に関して規定する府令の定めるところによる」という風に公務員法制定を考慮して改正を致したいと考えております。
 次の第15項は、現行第八十九条に市町村議会の議決又は選挙が権限を超え又は法令若しくは会議規則違反は再議を要求し再議後尚違反を認めるときは知事の裁決を請うことができると規定されているのを、日本の地方自治法に倣い議会を被告として裁判所に出訴せしめる様に致したい。即ち裁判所に直接訴える様に改めたいのであります。
○委員長(玉城泰一君) 中食時間となっております。本日は土曜日でありまして当局は十二時迄となっております。つきましては委員会はこれで散会致しまして十七日の月曜日午前十時開くことに致します。皆様御苦労様でした。これで散会致します。
    十二時二十分散会

  一九五二年三月十七日 午前十時五分開会

○委員長(玉城泰一君) 只今から第二部委員会を開きます。
 本日の出席六名、欠席三名であります。

○委員長(玉城泰一君) 本日は決議第一号の市町村制の改正についてを御審議願いますが、未だ立案経過説明が終えておりませんので前日の続きを即ち第16項から行政課長の説明を願うことに致します。
○行政課長(稲嶺成珍君) 第16項は、選挙管理委員会に関する規定を新たに設けたいと思います。現行市町村制中には選挙管理委員会に関する規定が全然ありません。日本では選挙管理委員会に関する規定は公職選挙法及び地方自治法の両方に夫々重複しない様に規定されておりますので日本の法規に倣って、そういう風に新たに規定したいのであります。
 次ぎの第17項ですが、これは監査委員に事務補助をさせる書記を置くことができる様に致したい。現行第九十四条には市町村は条例で監査委員を置くことができると規定されているが事務補助職員として書記を置くことができる様に致したいのであります。
 それから次ぎの第18項は、市町村職員に退隠料、退職給与金、死亡給与金、遺族扶助料を受けることができる様に致したいのであります。
 次ぎの第19項は、市町村の条例で定める特に重要な財産又は営造物については当該市町村の選挙人の投票において、その過半数の同意を得られないときは当該財産又は営造物の独占的な利益を与える様な処分又は十年を超える期間に亘る独占的な使用の許可をしてはならないことにする。即ち旧市町村制では基本的財産の処分は知事の許可を受けていたのであるが、民主政治の在り方からどうしても最後の決定は住民投票に待つべきでありますので市町村の条例で定める特に重要な財産又は営造物の処分については選挙人の投票に訴える様に改訂致したいのであります。
 次ぎの第20項ですが、分担金徴収に関しては予め公聴会を開かねばならない様にする。即ち分担金を徴収する条例は、市町村の議会の常任委員会又は特別委員会において予め公聴会を開き真に利害関係を有する者又は学識経験を有する者等から意見を聴かなければこれを設け又は改正することができない。前項の公聴会を開く場合においてはその開催の日前二十日迄に開催の日時、場所及び案件を適当な方法で公表しなければならないという風に規定致したい。現行市町村制では公聴会に関する規定がないので新たにこれを設けたい。
 次ぎの第21項ですが、これは市町村の起債については別にこれを府令で定めることに致したい。即ち市町村は別に府令で定めるところにより議会の議決を経て市町村債を起すことができるという風に規定したいのであります。
 次ぎの第22項は、公金支出の制限規定を設けることとする。現行市町村制では公金支出に関する制限規定がありません。公金支出の分野がはっきり致しませんので群島組織法第百五十五条にある通り、即ち宗教上の組織若しくは団体の便益若しくは維持のため又は市町村の支配に属しない慈善、教育又は博愛の事業に対し公金を支出してはならないという風に制限規定を設けたがよいと思っております。
 次ぎの第23項でありますが、現行第一二三条の補助の規定中、その施設を一般に開放する公益(共カ)事業に対し補助することができるとなっており、補助の条件としてその施設を一般に開放する公益(共カ)事業に対するもの丈に限定されておりましてその他の色々な勧業方面の事業があっても補助ができない現状で非常に支障がある訳で、これをその条件を取って公益上必要がある場合においては寄附又は補助することができる様に改正致したいのであります。
 次ぎの第24項でありますが、財産の売却及び貸与、工事の請負、並びに物件、労力その他の供給は競争入札に付する様規定致したい。群島組織法では雑則第百六十七条に右の様な規定が明記されているが市町村制ではこの規定がないのでどうしてよいか分らない。群島組織法の様に規定する必要があると思いまして、ここに取上げた訳であります。
 次ぎの第25項及び第26項は、市町村長の協議会、地方自治委員会に関する規定でありますが、この規定はこの際削除した方がよからうと思いまして取上げたのであります。日本の地方自治法でもこの規定は全然ないのであります。尚又実際において活用されてない地方自治委員会の如きは何等意味をなさないと思います。協議会の方も法制化されたものは実際どうかと思われます。寧ろ廃止した方がよいと思うのであります。
 以上簡単ではありましたが立案の経過を申上げました。尚詳細に付ては御質問に応じて御答え致します。
○委員長(玉城泰一君) 行政課から立案の経過の説明を聴取致しましたので、本議題の質疑に入ります。
 第1項から逐条的に進めることに致します。先ず第1項について御質問がありましたらどうぞ。
○玉城泰一君 市町村の事務を例示的にした場合、漏れる恐れはないか。
○行政課長(稲嶺成珍君) 前項の事務を例示すると概ね次の通りであるとして、そこに弾力性を持たしてありますので差支ないと思います。
○委員長(玉城泰一君) 第2項に移ります。
○宮城久栄君 市町村の廃置分合については知事は慫慂できますか。
○行政課長(稲嶺成珍君) それはできます。
○委員長(玉城泰一君) 次、第3項、第4項に移ります。
○玉城泰一君 第3項の争論がない場合には知事が裁判所にこの通り境界を決定して呉れと頼むのですか。
○行政課長(稲嶺成珍君) そうですが裁判所では色々調査検討をして決定する、或は知事の要求通りにいかない場合もあり得ることです。
○宮城久栄君 村が市や町に昇格した場合、住民の権利義務の関係はどうなりますか。
○行政課長(稲嶺成珍君) 市や町になったからといって別に住民に特典がある訳ではありません。市では監査委員会を設けることができるが町村では任意であり、そういった点の違いはあるが権利義務には何等変りはないのであります。
○宮城久栄君 第4項の市や町になる要件を制定した場合、今迄できた市や町がこの要件に適合しない場合どうなるか。
○行政課長(稲嶺成珍君) そういった問題については附則で措置を講じたいと思う。然し乍ら八重山群島では全部町になっている現状ですが、こういった所は特に考慮すべきだと思います。
○新里銀三君 そういった問題は全琉統一して一様に条件に当てはめて処理した方がよいと思います。
○委員長(玉城泰一君) 次ぎは第5項、第6項、第7項を一括して質疑に入ります。
○普天間俊夫君 議員定数ですが現在はどうなっておりますか。
○行政課長(稲嶺成珍君) 現在の定数は人口五千未満の市町村においては六人、五千人以上一〇、〇〇〇人未満の人口を有する市町村は八人、一〇、〇〇〇人以上二〇、〇〇〇人未満は一〇人、人口二〇、〇〇〇人以上の市町村においては市町村議会において3/4以上の議員の賛成投票があれば人口七、〇〇〇人を増す毎に議員一名の割合で議席数を増すことができるとなっているのであります。
○宮城久栄君 現在定数の少ないことは承知できますが、それについて軍の方の意向はどうか。何か理由があるのでせうか。
○行政課長(稲嶺成珍君) 米国では少ない様です。軍の方では亜米利加の代議制を採用しているためだらうと思います。
○委員長(玉城泰一君) 次ぎは第8項、第9項、第10項、第11項を一括致します。
○宮城久栄君 第11項の会議を開く条件ですが、過半数と半数ではそう大した差異はないと思われるが実際市町村から要求がありますか。運営上困るからという理由であれば結構だが。
○行政課長(稲嶺成珍君) 市町村側からの要求はあります。例えば粟国村の様な議員定数の少ない村では過半数の条件で今迄会議を開くことができなかった場合が間々あった様です。日本の地方自治法でも半数が条件となっておりますので左様に改めたいのであります。
○委員長(玉城泰一君) 次ぎは第12項、第13項、第14項、第15項を一括して質疑に入ります。
○宮城久栄君 収入役の身元保証の制度は現在日本はありませんか。それは必要だと思うが。
○行政課長(稲嶺成珍君) 日本にはありません。
○新里銀三君 収入役の身元保証の件は市町村によっては市町村条例で規定してある様です。第14項の職員任用に関する規定については市町村長側の意見はどうか。
○行政課長(稲嶺成珍君) 市町村長側からも希望がありました。職階制、試験、任免、給与、能率、分限、懲戒、保障、服務、その他採用条件等日本では公務員法によって処理せられているのでありまして此所でもそういう風にした方がよいと思います。
○新里銀三君 市町村吏員の採用は現在、市町村の事務の便宜、地域的関係を考慮して市町村長で適当にやっている現状だが、只今の改正は沖縄の実情に即さないと思われるがどうか。
○宮城久栄君 吾々の方では市町村長に或る程度の権限を持たした方がよいと思うが、若し本制度を採用すると厄介なことになりはしないか。中央政府の人事についてはそれでよいと思うが。
○行政課長(稲嶺成珍君) 日本では中央公務員法と地方公務員法の二本建となっております。此所では矢張り市町村の実情に即応する様に公務員法を作ることによって職員任用に遺憾ない様に致したいのであります。
○宮城久栄君 第15項でありますが、これは市町村長と市町村議会との対立の場合でありますが、実際問題として裁判所に出訴する位に行くことはないと思われるので、現行の通り知事の裁決を請うことができるにしたらどうですか。
○行政課長(稲嶺成珍君) 日本の地方自治法でも裁判所に出訴せしめる様になっていて知事はこれにタッチしないことになっているので日本の地方自治法に倣ってそうした訳ですが、現行通りでもよいと思いますが委員会の方で適当に取計い願います。
○委員長(玉城泰一君) 次、第16項、第17項、第18項、第19項を一括致します。
○新里銀三君 選挙管理委員会の規定は市町村議会議員及び市町村長選挙法の中に謳われているが市町村制の中にも規定する必要がありますか。重複しはしないか。
○行政課長(稲嶺成珍君) 日本では公職選挙法と地方自治法の両方に重複しない様に夫々規定されております。
○新里銀三君 監査委員に事務補助の書記は必要ないと思うがどうか。
○行政課長(稲嶺成珍君) 置くことができるであって市町村の実情に応じて置いてもよいし、置かなくてもいいのです。監査委員については日本の都道府県は必置機関になっており、その他は任意となっております。
○宮城久栄君 監査委員は必置機関として、書記は市町村の任意にした方がよいと思うがどうか。
○玉城泰一君 日本でも市町村は必置機関でないのを沖縄で必置機関としなければならないとする理由はどうか。
○行政課長(稲嶺成珍君) 現行通りとして必置機関としない方がよいと思います。
○新里銀三君 第19項について何か具体的に一つの例はありませんか。
○行政課長(稲嶺成珍君) 例えば或る村に大きな村有林があって、その村の条例でその村有林を処分するについて規定してある場合は選挙人の投票で過半数の同意を得られないときはその村有林の独占的な利益を与える様な処分又は十年をこえる期間に亘る独占的な使用の許可をしてはならないのであります。要するに重要財産の処分は選挙人の投票に俟たねばならないのであります。
○宮城久栄君 民主々義の線に沿って結構なことだと思います。
○委員長(玉城泰一君) 次、第21項、第22項、第23項を一括して質疑に入ります。
○新里銀三君 第22項の公金支出の制限規定を設けるとあるのは具体的に分り安く書いた方がよいと思われますが。
○行政課長(稲嶺成珍君) 群島組織法の第百五十五条の「群島」を「市町村」に置替えて、その条文を入れる様にした方が分り安いと思います。
○委員長(玉城泰一君) 次、第24項、第25項、第26項を一括致します。
○玉城泰一君 市町村長の協議会廃止の理由を聴きたい。
○行政課長(稲嶺成珍君) 現行市町村制は群島組織法のできない前に、即ち一九四八年七月二十一日に公布されておりまして当時は公選に依る公職は市町村長、市町村議会議員であったので公選市町村長の協議会を重視し、軍政府の政策若しくは軍政府の政策に基く民政府の政策に依る事務の連絡調整を図る目的で法制化された協議会が設けられたと思いますが、現在では公選による知事があり議会があってこれらの事務は政府でやるべきであり、又日本でも斯かる制度はないのであります。状勢が違って来ておりますので廃止したい訳です。
○玉城泰一君 第26項の地方自治委員会の廃止理由について伺いたい。
○行政課長(稲嶺成珍君) 理由は先程も申上げたのでありますが、実際に現在活用されていない。同委員会の職責は第百五十九条に市町村の指導監督について知事の諮問に答え及び知事に進言するとなっているが自治権の拡張に伴って廃止すべきだと考えます。市町村長側の意見も廃止した方がよいとのことであります。こういった仕事は政府の仕事として差支えないと思います。
○委員長(玉城泰一君) それでは質疑を終了致しまして、討論に入ります。決議第一号原案について御意見を伺います。
○稲嶺盛昌君 今迄の行政課の立案経過説明によりまして本決議案の趣旨、骨子についてよく分りましたが、聊か不備の点と、沖縄の実情に即さない点等があると認めます。依って本員は原案修正意見を述べたいと思います。
 先ず回答文の第五項でありますが、これは削除した方がよいと考えます。理由は議会として要らぬ御節介は言わぬ方がよい。この五項は民政府で考え様と考えまいと向うの執るべき措置であって何もこういうことを議会から言うべき筋合のものではないと思います。それで現在の五項は削除して新たに行政課から回付された改正案をその儘参考のために添付送付する方がよいと考えますので、五項を「参考のため行政課において調製した市町村制改正案を送付致します」と置替えたいと考えます。
 それから別紙の方の第8項でありますが「現行第十六条規定の議員の任期のことを改訂する」と謳われて如何様に改訂するのか不明瞭でありますので、も少し具体的にした方がよいと考えます。それで第8項を『現行第十六条の「市町村議会議員の任期は本人の選挙後十五日に始まり後任者の選挙後十五日に終る」となっているのを「市町村の議会の議員の任期は四年とする」に改正し、尚任期の起算、補欠議員の在任期間及び議員定数異動の場合新たに選挙された議員の在任期間について具体的に列記する様にする』こういう風に修正致したいと考えます。
 それから第14項でありますが、これも8項と同じ様に不明瞭でありますので『現行第八十七条の「前十(十一カ)条に定める者を除く外市町村に必要な吏員を置く。前項の吏員は市町村長がこれを任免する」となっているが、公務員法制定を考慮して職員任用に関する規定「吏員に関する職階制、試験、任免、給与、能率、分限、懲戒、保障、服務、その他身分の(ママ)取扱に関しては、(ママ)この法律及びこれに基く府令に定めるものを除く外別に市町村の職員に関して規定する府令の定めるところによる」を新たに設ける』こういう風に置替えた方がはっきりしてよいと考えます。
 次ぎは第15項でありますが、これは現行通りの方がよいと考えますので削除致したい。成程日本の地方自治法では市町村長が議会を被告として裁判所に出訴せしめることに規定されているが沖縄では市町村長と議会とが対立して裁判沙汰に迄行く様なことは余りないし、実情に即さないと思いますので、知事の裁決を請うことができるに止めたがよからうと思います。それで本項は削除した方がよいと思います。
 それから第22項の「公金支出の制限規定を設けることとする」となって、これでは明瞭を欠きますので、群島組織法第一五五条にあります制限規定の様にはっきり謳った方がよいと考えますので『公金の支出については左記の通り制限規定を設ける。「市町村は宗教上の組織若くは団体の便益若くは維持のため又は市町村の支配に属しない慈善、教育又は博愛の事業に対し公金を支出してはならない」』こういう風に修正致したいのであります。
 次ぎは第25項でありますが、『現行の「第七章市町村長の協議会」は削除する』となっているがこれは削除した方がよいと考えます。現行市町村制の公布は一九四八年の七月二十一日付となっており当時公選に依る公職は市町村長、市町村議会議員であって軍政府としては公選による市町村長の協議会を設けて軍政府の政策による事務連絡を調整する目的で法制化された協議会が出来た訳でありまして、大分現状に即さない憾みはあるけれども同協議会は組織も充実し諸施策に協力折角努力中でありますので、議会からこれを削除の要望を出すのは余り良くないと思います。それで本項は削除して民政府の裁量に任した方がよくはないかと考えるものであります。
 以上の様に本決議第一号はその一部を修正して可決せられんことを望みます。
○委員長(玉城泰一君) 只今稲嶺委員から本案一部修正可決の動議がありましたが、これに対し御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(玉城泰一君) 御異議ないと認めます。依って決議第一号は稲嶺委員の修正意見通り一部修正可決致します。御苦労様でした。本委員会はこれで閉会致します。
    午後二時十分閉会

  一九五二年三月二十日 午前十時二十三分開会

◎議長(知花高直君) 開会致します。出席十七名、欠席三名であります。

◎議長(知花高直君) 諸般の報告を致します。
 今期議会初日の本会議に於て議決されました十四番議員提案に係る陳情第一号肥料販売値段据置の件別紙陳情書につきましては、議長一任となっておりますので議長において陳情書を調製致しまして目下知事経由書類発送の手続きを取っております。書記長をして右陳情書を朗読致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

宛:琉球列島米国民政副長官
発:沖縄群島議会議長
題:肥料販売値段据置について

農民へ販売されている肥料は現在は一弗対B券六〇円の換算率に依つているが之を一弗対百二十円に改訂されるやに仄聞するが、是は金詰りに困つている農民を益々苦しめ延いては離農者を激増せしめる原因となり農村の疲弊を深刻ならしめるので、左記理由を御考慮下されて現状通りの換算率によつて販売価格を据置いて貰いたい。
    理 由
一、一九四〇年農家一戸当り耕作面積は平均二千坪程度のものが一九五一年一月調査では平均一千坪に低減し、九〇〇坪以下の零細農家が全農家戸数の七五・四%を占め農家の経済状態は益々窮迫しつつある。
二、一九五二年二月末現在で見ると、農家の生産率を基準とした配給比率は三五%以下が農家全人口の六〇%を占め五〇%以下が七四・六%となり一〇〇%が僅かに〇・九%にしか過ぎない。之を見ても農民が自活困難である事が判るし農家自ら補給食糧を購入している現状であるから益々農民は金が詰つている。
三、毎年少くて三回多くて六、七回に亘る暴風雨被害や旱魃などに災難をうけ換金作物の収量は微少であり農業はどの部面よりも極めて不安定であり、自由貿易に依る食糧品等の輸入品に圧迫されて農産物の価格も変動甚しく時に生産費を下廻る事が多々ある。
四、資金が貿易商や消費面や商業に殆んど吸収され、富は都市商工部面に偏在して農村は非常な金詰りを来たし現価格ですら必要量の肥料が買えない農民も多々ある。
五、現在農業収入では生活困難である為に離農者が年々増加し荒廃地も多くなりつつある反面に消費面の都市へ人口が集中しつつある事は憂慮されるべき現象である。肥料の値段を上げる事は前記の状態を益々誘致する事になり、食糧増産を阻害する事になる。
 右第十三回沖縄群島議会の議決により陳情致します。
  一九五二年三月 日
    沖縄群島議会議長
       知 花 高 直

◎議長(知花高直君) 群島監査委員会委員長からその後二回に亘って議長宛に監査結果報告書の送付がありましたから書記長をして公文丈を朗読致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

監委第九二号
  一九五二年三月十三日
    沖縄群島監査委員会
      委員長 金城 研一
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  監査結果報告について
一九五一年十二月十八日より同五二年一月二十六日迄群島組織法第一一七条の規定に依り中央病院外各地区病院の特別監査を執行しましたのでその結果は別紙の通りであります。
右群島組織法第一一八条第二項の規定に依り報告致します。
  (別紙省略)

監委第九六号
  一九五二年三月十六日
    沖縄群島監査委員会
      委員長 金城 研一
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  監査結果報告について
二月二十八日より群島組織法第一一七条の規定に依り本年度第三回目の財政部定例監査を執行しましたので其の結果は別紙の通りであります。
右群島組織法第一一八条の規定に依り報告致します。
  (別紙省略)

◎議長(知花高直君) 群島選挙管理委員長から選挙管理委員の異動について議長宛報告が参っておりますので書記長をして朗読致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

沖群選第七十一号
  一九五二年三月十九日
   沖縄群島選挙管理委員長
        仲 本 朝 昌
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  委員異動について
当選挙管理委員会委員中、左記の通り異動がありましたから御報告致します。
    記
 委員 山田有幹、一九五一年八月二十四日辞任により補充員玉那覇良信補充せり。
 委員 野波棟次郎、同 玉城徳成、三月十七日辞任により補充員花城清珍、同本田清を補充せり。
    残り補充員は富村受福、岸本利男、二名であります。

○議長(知花高直君) 書記をして修正案を配付致させます。
  (書記配付)

◎議長(知花高直君) 本日の議事日程を報告致します。
  議事日程第二十九号
 第一 二番議員請暇の件
 第二 一九五二年度沖縄群島歳入歳出追加更正予算について
   (副知事提出議案第一号)
 第三 一九五一年度沖縄群島歳入歳出決算認定について
   (副知事提出議案第二号)
 第四 琉球政府設立による沖縄群島政府及び琉球臨時中央政府の退職者並びに地区病院、診療所の廃止による退職者の受ける退職金に対する所得税の免除に関する条例制定について
   (副知事提出議案第三号)
 第五 救済事業に充当のための贈与金受領について
   (副知事提出議案第四号)
 第六 群島道路の承認について
   (副知事提出議案第五号)
 第七 市町村制の改正について
    (議長提出決議第一号)
 第八 琉球政府へ要望すべき重要事項について
    (議長提出決議第二号)
 第九 沖縄群島選挙管理委員補充員の指名発令について
 以上であります。

○本日の会議に付した事件
 日程第一 二番議員請暇の件
 日程第二 一九五二年度沖縄群島歳入歳出追加更正予算について
   (副知事提出議案第一号)
 日程第三 一九五一年度沖縄群島歳入歳出決算認定について
   (副知事提出議案第二号)
 日程第四 琉球政府設立による沖縄群島政府及び琉球臨時中央政府の退職者並びに地区病院、診療所の廃止による退職者の受ける退職金に対する所得税の免除に関する条例制定について
   (副知事提出議案第三号)
 日程第五 救済事業に充当のための贈与金受領について
   (副知事提出議案第四号)
 日程第六 群島道路の承認について
   (副知事提出議案第五号)
 日程第七 市町村制の改正について
    (議長提出決議第一号)
 日程第八 琉球政府へ要望すべき重要事項について
    (議長提出決議第二号)
 日程第九 沖縄群島選挙管理委員補充員の指名発令について
 日程追加 副知事政務報告
 日程追加 警察本部長政務報告

◎議長(知花高直君) 只今から本日の会議を開きます。

◎議長(知花高直君) 日程第一の二番議員請暇の件を議題と致します。二番議員与儀清秀君から議長宛請暇願が来ております。丁度今期議会の会期が八日間に亘るので議会の承認を得なければならない訳ですが、本件許可することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。

◎議長(知花高直君) 日程第二の副知事提出議案第一号を議題と致し、第一部委員長の委員会における審査の経過並に結果の報告を求めます。
◎第一部委員長(石原昌淳君) 委員会付託になった一九五二年度沖縄群島歳入歳出追加更正予算について審議の経過及び結果の報告を致します。予算の追加更正の理由及び内容について当局から詳細に説明を聴取した後各部を追って質疑を尽しました。結論から先に申上げますと本予算は群府解消に伴う後始末のための支出であります。琉球政府の発足に伴う群府解消に当り政府職員の失職者に対する退職金給与の必要について、尚失業者のその後の職業斡旋については重要な社会問題ですから色々と論議の上万遺憾のないよう、次のような要望を附して原案を承認したのであります。
 先ず政府職員をできる丈琉球政府への就職を確実に進めることについて充分努力して欲しい。殊に残務整理に残る職員について、その残務整理を充分にさせるため、又本人の将来の職を保障するために琉球政府と充分連絡を取ってその対策を講ずるよう、及び議会事務室の職員も当然政府職員として同様遺憾なきよう取計って欲しい。尚申告所得税について異議申立てが相当あったようでありますので琉球政府に引継ぐ前にそれを処理して、一面納税者に安心を与えると共に引継の際確定した税額として引継ぎ得るよう充分善処すること。以上のような要望を附して原案通り可決致したのでありますが、特に論議された点を概略説明して御参考に供したいと思います。
 歳出から審議しましたが、六頁四款政府職員給与費の第一目職員給与費一、〇八二万円は前民政府当時増俸発令しましたが五、六、七の三ケ月分未払いになっているものに対する追加であります。政府職員は薄給に甘んじて精励したのでありますし、又既に発令されて当然給与されるべきものであって政府解消に当ってこれを支給することは当然の措置として承認致しました。次に五款退職給与金、これは特に慎重に論議検討されましたが、要はこれらの政府職員が失職する者がより少くなるように、又失職に対する退職金を相当払うようにと論議されましたが、三ケ月分の給与金は日本の例からしても少いじゃないかという論議も交されましたが、一面軍の指示にもそうなっている、又一面政府資金からこれ以上支給する見通しはつかないという立場から止むを得ないとしてこれを承認したのであります。次ぎは八頁十四項の車輛賃貸料返還金五八一、二五〇円が追加増となっていますがこれはその性質について質疑されましたが、これは民政府時代に軍に納付すべき筈の賃貸料金は当時の民政府に収納し、その年度末の残金は軍政府に引継がれているという事が分ったのでこれを承認したのであります。次ぎは十頁経済部の十項で六六七、三八〇円の予算減になっていますが、これは少い予算の中から農村振興のために追加編成した大事な事業費が減を見ることについては甚だ遺憾でありこれについて色々論議されましたが、一つには螟虫駆除費の如きは暴風、螟虫の被害が少なかったこと、又一面ルース颱風の結果緊急に復旧費を支出しなければならないものが、軍からの支出が出来ない事になったので、各方面から不用な面を抑制してその支出に充てるということでこれ又承認致しました。更に造林費の件についても論議されましたが予定通り種子が入手できず、そのため種苗圃の育成が出来なかったことが分り今後充分注意するということで止むを得ないものとして、これを承認しました。次ぎは十二項の建築費の件ですが、これも大事な農業関係の施設を減にすることは遺憾に思われましたがこれも颱風の災害復旧費捻出のため止むを得ないとしてこれを承認しました。次ぎは十二頁の工務部十項建築費五一、八四五円一〇銭の追加を極東木材株式会社からの購入について為替組料として追加が出ていますがこの性質について即ち政府歳出として出さる(ママ)べきものかどうかについて論議されましたが、軍からの木材代は軍から支出するがこれを購入するに要する諸係費は行政費によって賄うようにという指令があって止むを得ないものとしてこれを承認したのであります。次ぎは十四頁十項建築費で二、三三六、〇〇〇円の追加を見ていますが、これは中部農林に割当てがないことについて質疑されましたがこれは恒久建築に補助されるものであり、中部農林がこの計画になかったため補助がないというのでこれを諒承したのであります。次、十七頁第三款第二項第一目消耗品費五一七、七五〇円の減がありますがこれは消耗品費として大きいので質疑がありましたが、当初行政部門として決めたが軍補助金から支出されたことが分って諒承したのであります。
 次ぎの十八頁第十三項に駐在所の建築費が計上されていますが、この駐在所の建築費については将来の方針として二ケ所の建築費が計上されていますが、これは将来どうなるかが論議されましたが当局としては原則として飽く迄政府の責任においてやるべきだが財政の都合上順を追ってやっていく予定だというので委員会としても諒承しました。次ぎは十九頁警察署費諸手当、特別手当関係が大幅に追加になっていますのでこの点について色々検討されたのであります。これは一つには軍補助金を予定していたものが少くなったということと、一つには当初の予算編成において過剰見積りをしていたという率直な説明でこれを諒承したのであります。次ぎは二十二頁第十三項に五万円の追加がありますが、これは渡嘉敷診療所は民家を借りて使用していますが所有者の都合で売るということになった処、地元村が二万五千円負担して後五万円を政府が支出すれば政府の財産としてよろしいという諒解があるので十八坪の建物であり、これを購入することを適当という訳で認めたのであります。
 以上は歳出について説明申上げたのであるが、次ぎは歳入について申上げます。税外収入、没収金一、五〇七、〇〇〇円が追加になっていますが、大口の追加は今まで四回に亘ってありましたが十二月以降に生じた新事実による追加が、それ以前にあったものが今追加されたかと訊したのでありますが、事実はそれ以前から生じたものも含まれているということであり群府解消を控えて年度末で追加更正を予定されていたので、いくらか残額を残してあったという説明がありましたが、こういう事は将来に於てないようにと注意して承認しました。あらまし以上のような点が特に論議されたのでありますが、先程の要望を附して原案を承認致したのであります。以上甚だ簡単ではありますが報告と致します。
○議長(知花高直君) 本議題の質疑に入ります。
◎新里銀三君 質問があります。近く解消する群府の総括りですから、予算が過不足した場合どうなるかについて伺いたい。一九五二年度の歳入見込表を見るに、これを全部収入するものと見て、本予算を編成したものと思いますが若し予想通りいかなかったらどうしてやっていくか。例えば申告所得税は十一億二千万円も予算額を計上して実際は五八%が取れる見込みであるとなっていますが、若しその通りいかなかった場合政府はどうするか。又余った場合これを職員退職金に充てるものかどうか。これは私の希望ですが、退職金は少いと思う。それで若し予定以上の申告所得税が取れる場合はそれを退職金に向ける意志があるかどうか。大体予算の当初編成で申告所得税が余り厖大で不当が叫ばれましたが、その異議申立ての処理も良くいってないので是非、異議を申立てた場合は聞いて貰って喜んで納められるようにしたらいいと思いますがこの不足の場合が問題です。それから職員公務災害補償費の三十万円ですが、これは軍に申請中だといっていますが群府が解消されます場合誰がその支給条例を作って誰が支給するかということです。私の考えでは条例を作ったからには支給しなければならないが結局警察官九、学校職員三名の犠牲者もあるし、又死に至らない犠牲者もありますのでそれらに対してはやっておいてもよい。本議会は四月以降は陳情、請願はできるが予算に対する審議権はないので今回で夫々の被害者に支給した方がいいと思いますが、その点について当局の御意向を伺いたい。それから昨年三ケ月分の増俸未払いの分は何時呉れるか、その金が果してあるかどうか。現在すぐやるかどうかについて伺いたい。
○第一部委員長(石原昌淳君) 委員長としてお答え出来る問題について答えます。見込みによると相当額の収入が四月、五月に予定されていますが予定通り入らない場合どうするかという質問ですが、これについては委員会でも訊しましたが過不足が生じた場合は債権、債務共に琉球政府に引継ぐべきものであるという通牒が来ていますのでそれによって処理されると予想しております。それから増俸額の給与を何時支給するかという質問ですが、結局三月一杯に生じた債権、債務は出納閉鎖期迄に群府で処理されると思います。若し都合で出来ない場合は引継がれて琉球政府で処理されると思います。その他については当局から答弁願います。
○人事課長(比嘉幸安君) 今先の職員公務災害補償費三十万円の件ですが、一九四五年から一九五一年度迄の警察関係の公務のための死亡者は八名ですがこれを計算すると大体四十万円程度金がないと災害補償は出来ないという状況でありましてこれは警察関係の分丈の計算となっていますが、その他政府関係の職員として結核に感染した職員が六名います。又その他厚生部関係で外傷に依る障害が三名いますし、これらを合せますと少くとも予算が七十万円程度ないと災害補償は出来ないという現状にあって、三十万円の予算の範囲でやるとその実を挙げる事は出来ないのでその点について政府も近く解消の段階にあるし、これについては布令四十一号の趣旨に沿うような実を挙げるためにはこの問題は中央政府に移管して向うでやった方がよくはないかという風に考えています。
◎新里銀三君 折角当初予算で計上した三十万円を公務のため災害にあった人がいるに拘わらず、これを今日迄支給出来ない。本員はこれ迄三回に亘り本議会において之が早期支給方促進を致しており当時は近くやると言明していましたが今迄やれないことは甚だ遺憾に思います。必ずしも七十万円ないと出来ないというのはどうかと思う。予算の範囲内で与えておいて条例に予算の範囲内でやると書いておけば三十万円は少くはないから三十万円を該当者に与えて、そしてこの問題は琉球政府で更に予算を計上して額も増やして与えた方が適当と思う。それでこの予算を折角計上したから是非平等に全該当者に割当てて支給して貰う様要望するものであります。
◎祖根宗春君 この申告所得税に対して滞納処分法を適用していますがこれに拠って差押えしたものは五月で債権債務が確定する。従ってこれに対する滞納処分、競売等の最後的処理は六月以降になると思いますが、これを中央政府で引継いでやる場合に法令適用の問題ですが今の税徴収条例だがこの問題については米国民政府布令第六十四号の二月二十六日付群島政府の任期という題で、その中の四項で群島組織法三十七条一項は廃止するとあります。それは群島条例の改廃を決めた条項で、従って群島議会で決めた滞納処分法が四月一日廃止するとなると中央政府に引継いだ場合これを適用して滞納者を処分することは出来なくなると思いますがこの点について当局の見解を伺いたい。併せて今日で群島議会の議事は終了しますが今迄議会で決められた条例の有効期間、廃止などについても説明願いたい。
○主税歳入課長(祝嶺春徳君) 四月から統合なった場合新立法院による税法が出来る迄は各群島で施行している条例はその儘施行するということを臨時中央政府の方から軍に出して六月まで各群島税法を適用することになっています。それから申告所得税の収入見込みについては色々徴収法が施行された後の実績を勘案して可能限度を考え四月に中央政府になった場合は税務署は中央政府に所属して現行の法律で現在と何ら変らない方法で歳入を確保することが出来るという意味から三月の収入見込みを挙げた訳であります。
○行政課長(総務副部長カ)(稲嶺成珍君) 各群島で決められた条例については各群島で当分それが施行されるということになっています。これは近く布令が出るということは聞いています。或は二、三日前に出たとも聞いていますがまだ公文に接していません。兎角色々な法規が制定される迄条例は夫々施行されることになると思います。
◎新里銀三君 今の公務員の災害補償金だがこれは自然消滅させる積りか、私はある丈使った方がいいと思いますが。
◎石原昌淳君 休憩して協議会でやったら如何ですか。
○議長(知花高直君) 暫時休憩致します。
  (午前十時十一分休憩)

  (午前十時三十七分再開)
◎議長(知花高直君) 開会致します。議案第一号の質疑を終了して討論に入りますが、討論を省略して委員長の報告通り可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って議案第一号は第一部委員長の審査結果報告通り原案可決致します。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第三、議案第二号を議題と致し、第一部委員長の審査結果の報告を求めます。
◎第一部委員長(石原昌淳君) 議案第二号一九五一年度沖縄群島歳入歳出決算認定については、第一部委員会付託になったので委員会における審議の経過及び結果について報告致します。審議に入る前に財政当局から決算の経過と内容についてお手元に配付された資料により説明を聴取し休憩の上審議方法について慎重討議を進めたのであります。というのは監査委員会が出来ており、その監査と、決算について監査委員会と議会との関係はどうなるか、監査委員会の監査は法定条件になるかどうかを検討し審議方法を検討した結果、本決算内容の事務的面については既に監査委員会の監査を経て公報登載報告済になっているので本議会の認定のための審議は提出された決算書からその過不足及び運営方法について訊し、要すれば意見を附して承認の運びに持っていくということにすべきであらうという結論になって款を追って審議を進めたのであります。結論として次のような要望意見を附して原案を認定することに致しました。知事は会計長(ママ)から提出に係る決算書を審査の上意見を附して議会に提出すべきであると規定されておりますのでこの議案に対して知事の意見を附して貰う様にということ、それから軍補助金が含まれていないのでこれは行政の計画性を阻害し支障が多い、それで軍補助金は年度当初で総括的割当てをなし政府をして自主的な運営をなさしめるよう折衝方を要望するように、尚事務的な面ですが予算の過不足については説明を附して貰う様に、以上の要望意見を附して原案を承認しました。特に過不足の大きい面で内容について論議された点を概略報告申上げて審議の参考に供したいと思います。歳入四頁五目衛生費補助金で一五、九〇五、〇八五円五〇銭という歳入減を見ていますがその理由について訊した所、事業が翌年度に繰越されたためこれ丈補助金が減ることになったというので諒承しました。次ぎは五頁一番下の雑収入四六一、五一〇円九一銭の内容について質疑した所、その殆んど全部が寄附金であるというのでこれを諒承しました。次ぎは歳出四頁一番下段就業費が減になっていますがこの減少の理由を訊した所、収入減の方は刑務所で生産された煉瓦を売るようになっていたのが修理工事に使われたのでこれは自然減だというので承認しました。七頁四目及び五目は廃目になっていますがこれは間違いじゃないかと訊した結果、前の頁で支出済になっており、つまり予算編成の場合費目の設定を誤った結果によるというのでこれを承認しました。次ぎは八頁の油脂燃料費一、八〇九、五六一円〇九銭の減を生じていますが、その理由は行政費で賄う予定が軍補助金で賄うようになったので減になったというのであり、同時に各部に亘っても同じ理由であります。次ぎは十頁第三目で六九五、六三六円の不用額減を生じていますので論議されましたが調査の結果、待遇が悪いため退職者が多く欠員を生じたためこうなったというので諒承しました。次ぎは十一頁七目の廨庁食糧費で各費目から相当の流用がなされていますがその内容はどんなものかについて訊した所、これは救済費の中の食糧を無償配給した費用であり不足を生じたため流用支出をしたというのでこれを諒承しました。次ぎは十五頁警察部関係で五、七六七、六四二円九六銭という不用額が生じていますがその理由について訊した所、これも軍補助金で賄われた結果であるというので諒承しました。次ぎは十八頁二十二款自動車賃借料一、一四四、三四一円四八銭の不用額を生じていますが、これも同じ理由であるというので諒承しました。歳出二十頁第二十八款選挙管理委員会の一、〇三六、〇七二円六〇銭も軍補助金関係であります。同じく二十五頁第三十三款衛生費一五、九〇五、〇八五円五〇銭も保健所関係の事業繰越による費用であります。後、油脂燃料費は先程申上げた通りであります。二十八頁文教部関係も三〇〇万円の不用額を生じていますが、これも軍補助金から支出された結果であります。二十九頁三十七款五、三三七、〇八三円七〇銭も軍補助金から支出された結果であります。三十頁第四十款一、八七六円九四銭は食糧品代の未払いであります。一般会計については以上の通りであります。特別会計については別に大きなものはなかったので大した論議はありませんでした。
 以上が主な論議の中心でありますが先程申上げた様に原案通り承認致したのであります。
◎議長(知花高直君) 議案第二号は質疑討論を省略して只今の委員長報告通り原案認定することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って議案第二号は第一部委員長の報告通り原案認定致しました。

○議長(知花高直君) 只今中食の時刻ですから午前はこれで終って午後一時再開致します。
  (午前十一時五十分休憩)

  (午後一時二分再開)
○議長(知花高直君) 開会致します。午後の出席十四名、欠席六名であります。

◎議長(知花高直君) 軍用地の地代について民政府から回答が参っていますので書記長をして朗読致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

 琉球列島米国民政府
    副 長 官 室
 一九五二年三月十九日
  民政官
  米国陸軍准将
   ゼイムス・エム・ルウイス
沖縄群島知事代理殿
  軍使用地の地代について
一、沖縄群島議会議長からの地代に関する情報通知方申請書を同封せる貴覚書第三十九号に対して次の通り回答する。
二、右の情報通知方申請書に対し次の通り部分的に回答する。この回答文が遅れたのは資料が未だ入手出来なかつたからであり、又小官は之に対しては完全に回答し度いと思い回答を延して来たのである。然し最近貴官から要請があつたので現在の処私がお答え出来る回答を左の通りお知らせする。
 a 軍用地借地代支払いの最大遡及日付は一九五〇年七月一日である。
 b 左の土地に対しては借地代を支払う。
  1 一九五〇年七月一日現在で軍が占有している土地又は同日以降はその占有目的に依る。
  2 貴官が立入禁止地区として分類した地域、即ち柵で囲れた地域内の私有地。
  3 道路若しくは他の目的のために使用されている軍使用地域内における私有地。ガリオア資金に依る公道については琉球政府は右道路に必要な土地を新に獲得し之を財政的に決済する責任がある。
  4 軍の使用又は使用予定地である旨を地主に適切に通知し且つ米国が或る制限された占有権を行使して来た土地に対しては地代を支払う。
    然し其の地域を米国代行機関が実際上、又は実質上占有していないで地主が該土地を十分に使用し、且つ管理している場合地代は支払わない。
   (a) 借地代は日本勧業銀行が実施した評価研究に基いて沖縄地区工兵団が之を決定する。
   (b) 目下審議中の地代は陸軍及空軍の割当予算から支払われ、且つ一九五〇年十二月五日付指令第一項-dの(G)号の規定を適用する。
 c 測量がまだ完了していないので総面積の確実な数字を示すことは出来ない。然し貴官が見積つた坪数は控目の数字になるものと信ずる。
 d 地代は日本勧業銀行が沖縄地区工兵団に提出した評価研究を基礎にする。
 e 土地を原状に修復し又は土地の修復に対する賠償支払に関しては計画されていない。これは米国と日本の平和条約の条文に依るべきものである。
 f 地代支払のため金は既に割当てられたが所有地以外の私有財産の借用料支払に関する規定は判定されていない。

◎議長(知花高直君) 日程第四の議案第三号を議題と致し、第一部委員長の審査結果の報告を求めます。
◎第一部委員長(石原昌淳君) 本案は群島政府解消によって失職した者、その他ここに列挙されている職員の失職者に対しては財源さえ許せばもっと高率の退職金を支給したいという希望をもつものですから、ここに免税の処置を取ってその実収所得を補償することを適当として原案通り可決致したのであります。以上簡単ではありますが報告と致します。
◎議長(知花高直君) 本案は質疑討論を省略して、只今第一部委員長からの報告通り原案可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って議案第三号は第一部委員長の報告通り原案可決致します。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第五の議案第四号を議題と致し、第一部委員長の審査経過並に結果の報告を求めます。
◎第一部委員長(石原昌淳君) 本案は夫々贈与者の方からその使途を指示しての贈与でありまして、それに基き既に予算も承認したので贈与者の意志に従って原案を承認したのであります。
◎議長(知花高直君) 議案第四号は質疑討論を省略して、只今の委員長報告通り原案可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第六の議案第五号を議題と致し、第一部委員長の審査経過並に結果報告を求めます。
◎第一部委員長(石原昌淳君) 本案の審議に際し最初群島政府解消に当って取急ぎ認定の必要があるかどうかについて慎重に論議されたのであります。それは先般ルイス准将を軍用土地使用料の問題で訪問した時、道路用地に対する補償について訊した所、今の所分らないという回答であり、尚これは多分取れないだらうという話があったので、当然群島道路として認定するとその敷地たる民有地の補償はすべきだがその始末は今つけられない実状にあるのでその点から認定した方がいいかどうかについて論議されましたが、然しこれは何れにしても解消前にやるか或は移管後であらうと何れ解決しなければならない問題として残るものであり、一面群島条例は作っておいて解消後の移管に当って認定道路が一つもないということは適当でなからうという考え方から本案を審議して認定した方がいいという結論に到達しました。そこで認定の条件について慎重に検討した結果、群島道路条例第九条の一項から七項までの認定条件を備えており、そういう観点から戦前に県道として認定され、又予定線は先ず原則として特別の変化がない限り承認すべきだということと、次ぎに戦後は戦前の県道以上に交通価値があると認められる線について、そういう点を基本条件として審議を進めることにして当局提案の内容を審議した所、何れも認定条件に叶うものとして原案通り承認致したのであります。以上甚だ簡単ではありますが報告と致します。
◎議長(知花高直君) 議案第五号は質疑討論を省略して、第一部委員長の報告通り原案を承認することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って議案第五号は原案承認致しました。

◎議長(知花高直君) 日程第七の決議第一号を議題と致し、第二部委員長の審査経過並に結果の報告を求めます。

最終案

宛 :沖縄主席民政官
経由:沖縄群島知事
発 :沖縄群島議会議長
題 :市町村制の改正について

一九五一年四月四日付沖縄民政官府副官から知事宛の依命通牒に係る首題の件について沖縄群島議会は左の通り回答致します。
    記
一、市町村制の改正については第七回議会の本会議(一九五一年四月二十六日)において議会の承認を得て群島政府総務部行政課で之が改正の立案を致すことになりました。
二、行政課においては慎重審議の上漸く成案を得此の程議長宛に右改正案の送付がありました。この改正案は二百余条に亘る厖大なものとなつており、之が条文の研究整備迄には今後相当な時日を要するものであります。
三、処が本年四月一日を期して琉球中央政府が発足することとなり之に伴い群島政府は解消せらるることになつたのであります。
四、従いまして同改正案中群島と市町村との関連事項について考究するに今改正をしても群島政府解消後更に改正を要しますのは必定であり、従つて本議会としては行政課係員、市町村長側の改正要望意見や日本の諸法規、現行民政府令並びに指令を参酌し、現行市町村制中改正を要すべき主なる事項を別紙の通り調製致したのであります。
五、参考のため行政課において調製した市町村制改正案を送付致します。
  一九五二年三月  日
    沖縄群島議会議長
       知 花 高 直

  現行市町村制中改正を要すべき主なる事項調
1、現行第二条の市町村は法人とする「市町村はその公共事務及び法令により市町村に属する事務を処理する」とあり、概括的に称えてある事務を例示的にする。
2、現行第三条の「市町村の廃置分合又は境界設定(注 欠落のため挿入)は関係市町村議会の意見を徴して知事がこれを(注 挿入)定める」は「関係市町村の申請に基き知事は群島議会の議決を経てこれを定める」こととする。
3、現行第四条市町村の境界に関する争論は関係市町村議会の意見を徴して知事がこれを(注 挿入)裁定することになつているのを、関係市町村が裁判所にその確定の訴を提起するようにする。争論がない場合には知事が裁判所に境界の決定を求めることができる様にする。
4、新たに市になる要件、町になる要件を制定する。
5、現行規定の「条例及規則」の事項を増制する。
  主なるものは条例に違反したものに対しては条例の中に罰則が設けられる様にする。規則についても同様である。尚条例、規則の公布方法も具体的に決める。
6、現行規定の住民の権利である第八条、第九条の請求権の発動に関する規定を設ける。
7、議会議員の定数を左の通り変更する。
  人口 二、〇〇〇未満 八人
  〃  二、〇〇〇- 五、〇〇〇未満 一二人
  〃  五、〇〇〇-一〇、〇〇〇未満 一六人
  〃 一〇、〇〇〇-二〇、〇〇〇未満 二〇人
  〃 二〇、〇〇〇-五〇、〇〇〇未満 二六人
  〃 五〇、〇〇〇以上 三〇人
  但し条例で減少ができるようにする。定数変更は一般選挙の場合からとする。
8、現行第十六条の「市町村議会議員の任期は本人の選挙後十五日に始まり後任者の選挙後十五日に終る」となつているのを「市町村の議会の議員の任期は四年とする」に改正し、尚任期の起算、補欠議員の在任期間及び議員定数異動の場合新たに選挙された議員の在任期間について具体的に列記する様にする。
9、現行第二十三条の議会の事務調査に関する規定を具体的にする。
10、市町村議会に委員会を置くことができる様に新たに規定する。
11、現行第三十二条の規定では議員が過半数出席しなければ会議を開くことができないことになつているのを半数出席すれば会議を開ける様にする。
12、現行第五十八条の市町村長の任期の規定を改訂する。即ち市町村長の任期は四年とする。任期の起算については一般選挙の日から起算する。但し任期満了による選挙が市町村長の任期満了の日前に行われたときは前任者の任期満了の日の翌日から起算することとする。
13、市町村に副収入役、出納員を置くことができる様にする。
14、現行第八十七条の「前十(十一カ)条に定める者を除く外市町村に必要な吏員を置く。前項の吏員は市町村長がこれを任免する」となつているが、公務員法制定を考慮して職員任用に関する規定「吏員に関する職階制、試験、任免、給与、能率、分限、懲戒、保障、服務、その他身分取扱に関してはこの法律及びこれに基く府令に定めるものを除く外別に市町村の職員に関して規定する府令の定めるところによる」を新たに設ける。
15、選挙管理委員会の規定を新たに設ける。
16、監査委員に事務補助をさせる書記を置くことができる様にする。
17、市町村職員に退隠料、退職給与金、死亡給与金、遺族扶助料を受けることができる様にする。
18、市町村の条例で定める特に重要な財産又は営造物については当該市町村の選挙人の投票においてその過半数の同意を得られないときは当該財産又は営造物の独占的な利益を与える様な処分又は十年を超える期間に亘る独占的な使用の許可をしてはならないことにする。
19、分担金徴収に関しては予め公聴会を開かねばならない様にする。
20、市町村の起債については別にこれを府令で定めることとする。
21、公金の支出については左記の通り制限規定を設ける。
  「市町村は宗教上の組織若くは団体の便益若くは維持のため又は市町村の支配に属しない慈善、教育又は博愛の事業に対し公金を支出してはならない」
22、現行第一二三条の補助の規定中、その施設を一般に開放する公共事業に対し補助することができるとあるを「市町村は公益上必要がある場合においては寄附又は補助することができる」に改正する。
23、雑則に市町村は原則として財産の売却及び貸与、工事の請負並びに物件、労力、その他の供給は競争入札に付する様規定する。
24、現行の「第九章地方自治委員会」は削除する。

◎第二部委員長(玉城泰一君) 二部委員会に付託された市町村制の改正について去る十五、十七の両日に亘って審議した経過を報告致します。この改正案を立案した行政課長の出席を求めて改正の趣旨、根拠を詳しく聞いた上で一項から二十六項迄逐条的に審議しましたが、最初に原案に修正を加えた点を申上げたいと思います。前文の五項を削除してお手元に配付した修正案の通り訂正しました。その理由は五項に書いてあるのは民政府の考えるべきもので、容喙すべきでないというのが理由です。その代り改正案全文を参考として送付するという事に修正しました。それから十五項は削除してあります。その理由は行政上の論争は成るべく行政的に解決したいというのが理由の一つで、二つは沖縄の習慣として問題を裁判に掛けることを嫌う風習があるという理由で十五項を削ることに致しました。次ぎは二十五項も削除しました。原案によると現在の市町村長協議会に関する条文を削除するというのだったですが、これは更に市町村長協議会の意向も聞いた上慎重審議の必要があるというので保留し、改正の要があれば次ぎでいいというのでこれを削除したのであります。改正の要点に修正を加えたのは以上です。その一つ一つの説明は省略して起案者が改正案をつくる手続について話しましたが、第一、日本に於ける地方自治法を尊重しております。第二に市町村長協議会の要望並びに市町村議会議長会長の陳情の趣旨を取入れて改正を加えたのであります。以上二点を特に申上げておきます。尚この改正について市町村議会議長会長から本議会議長宛陳情書が出ていますが、その陳情書の要旨は改正案に充分反映されています。従って陳情に対しては文書で回答しなければなりませんがその回答文は議長に一任したいと思います。以上簡単ではありますが報告と致します。
◎議長(知花高直君) 決議第一号は質疑討論を省略して、只今の委員長報告通り一部修正可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って決議第一号は委員長の報告通り一部修正可決致します。

◎議長(知花高直君) 日程第八の決議第二号を議題と致します。

決議第二号
  琉球政府へ要望すべき重要事項について
琉球政府へ要望すべき重要事項について別紙の通り議会の議決を得たいので提案する。
 一九五二年三月二十日提出
    沖縄群島議会議長
       知 花 高 直

◎議長(知花高直君) これは琉球政府へ要望すべき重要事項についてですが、昨日午後の合同協議会でも色々と論議が交わされました。更に過去一年有余のお互いの議会として歩んだ事を振り返って見ますとどうしてもこの際琉球政府に対し沖縄群島における重要事項を要望しなければならないという観点から本案を提案したのであります。別紙の方は若し議長に一任となれば議長としては委員会をつくってここで案を練りたいと思いますが如何ですか。又本日の議事日程の事項が済んでから今日引続き合同協議会でも開いて別紙を調製して見て、更に纏らないときは委員会を作っても結構だと思いますが如何取計いませうか。
◎仲村栄春君 本案は是非やらなければならない問題でありますので質疑討論を省略して原案可決の上、別紙の調製に関しましては昨日の合同研究会の経過から見ても全員で研究をした場合長時間掛ると思われます。就きましては特別委員会を設定して貰い、各位の希望条項を斟酌して特別委員会に一任せられんことを望みます。
◎議長(知花高直君) 只今四番議員(仲村栄春君)から決議第二号は原案可決の上別紙については特別委員会に一任方の動議がありますが御異議ありませんか。
  (「異議なし」「賛成」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って本案は原案通り可決致します。尚特別委員会委員数並びに委員の選任については後刻お諮り致します。暫時休憩致します。
  (午後一時二十六分休憩)

  (午後一時二十八分再開)
◎議長(知花高直君) 開会致します。決議第二号の別紙調製に携わる特別委員会の委員数は六名に致したいが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。それから只今決定されました六名の委員の選任については如何取計いませうか。
◎宮城久栄君 只今の委員六名の選任につきましては選挙の手続を省略して議長から指名せられんことを望みます。
◎議長(知花高直君) 只今七番議員(宮城久栄君)から議長指名の動議がありますが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決し、議長から指名致します。三番議員稲嶺盛昌君、五番議員石原昌淳君、九番議員玉城泰一君、十四番議員祖根宗春君、十六番議員新里銀三君、それに議長を加えまして六名であります。以上の方々に御願いすることに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第九の沖縄群島選挙管理委員補充員の指名発令についてを議題と致します。補充員は先程書記長が報告した通り現在定員五名に対して二名しかいません。結局三名の欠員となっています。そこで三名の補充を致さねばなりませんが立法院議員選挙法第六条によって群島選挙管理委員会委員及び補充員については群島議会が夫々銓衡、指名発令を行うと規定されています。目下欠員となっている補充員については本議会で銓衡、指名発令致さねばなりませんが如何取計いませうか。
◎平良幸市君 補充員が全部なくなった場合に補充する訳ではありませんか。
○議長(知花高直君) 別にはっきりした規定はない様ですが、欠員の補充はして置いても何等差支ないと思います。
○平良幸市君 未だ二名は残っているでせう。その間は補充せんでいいじゃありませんか。
○議長(知花高直君) 暫時休憩致します。
  (午後一時三十一分休憩)

  (午後一時三十二分新里銀三君出席)

  (午後一時四十三分再開)
◎議長(知花高直君) 開会致します。只今の選挙管理委員補充員の銓衡につきましては議員から銓衡委員を挙げて三名の方を銓衡して貰いたいですが御異議ありませんか。
◎宮城久栄君 本件は選挙管理委員長から議長宛に人物の内申もあらうと思われますので選挙の手続を省略して議長に於て指名して戴きたい。
◎議長(知花高直君) 只今七番議員(宮城久栄君)から議長指名の動議がありますが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決し、議長から指名致します。比嘉幸安君、比嘉準栄君、小渡信一君の三名であります。以上三名の方々にお願いすることに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。発令手続きについては議長にお任せ願います。
 暫時休憩致します。
  (午後一時四十五分休憩)

  (午後一時四十七分具志頭得助君出席)

  (午後二時五分再開)
◎議長(知花高直君) 開会致します。お諮り致します。本日の議事日程は全部終了致しましたが、只今副知事及び警察本部長から政務に関し報告したいので発言を求められております。就きましては、副知事政務報告並に警察本部長政務報告、以上二件を本日の議事日程に追加致したいですが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決し、日程は追加せられました。

○議長(知花高直君) 只今追加せられました日程について副知事から政務の報告を願います。
◎副知事(山城篤男君) 今度の群島政府解消に当って特に皆さんも御関心を持っておられる退職金の問題を中心にして疑義のある所を今日連絡官ゼンキンス中佐に面会して訊した結果を皆さんに御報告致します。第一に四月以降残るべき職員の種類であります。どういう人を残すべきか、これは知事、議会の全員、他知事室事務局、財政部、これ丈ははっきり分っていましたが、今日の会見の結果は工務部と法務の一部をその中に加えるようにという口頭の指令がありました。人数は大体君等が必要と思う人数、但し三、四名でいいだらうと自分達は思っている。それを計算すると約十五、六名から二十名以内であります。これは群島政府職員として残って俸給の支給は全部中央政府で支払うという建前であります。次ぎの問題は六月まで残留する職員は是非共中央政府に七月以降も採用して貰いたいという吾々の強き要望に対して向うの返事がありました。それは成るべくそうしたい。然し保障は出来ない。次にはこの職員は全部退職金を四月に与えたと同様な額を与えて欲しいと申しました所、支給するという返事でした。次は議会の議員の中で十四名の方々は新立法院に属さないことになるがその退職金は他と同様に取扱ってよろしい。又是非そうして呉れという要求に対して色々聴き訊し交渉の結果、同様に支出するという条件を得ました。それで最後に結論としては将来書き物にして残したいから何かの形で特に議員の方は多少疑義があったからはっきりさせるため書きものにしてよこして欲しいと要求しますと、そうしたいという返事でした。尚議会事務局のメンバーも二、三名残して宜しい、そして退職金は先と同様であるということでした。
 以上報告致します。
◎稲嶺盛昌君 只今の副知事の報告、大変有難く感謝致します。この軍の連絡官との確かな打合せの結果只今の報告と相成っているのですが、それを根拠にして中央政府に対しこれからも充分折衝をして戴き残留職員の採用方について力強く推進して戴く様お願い致します。
○副知事(山城篤男君) これについては二、三日前非公式で既に交渉を開始していますが、向うとしては各群島の関係もありますから近い中に如何なる人ということ迄指定し、人数を明記して知らせたいということでした。多分近く来るものと期待しています。今日もゼンキンス中佐はそういう返事をしていました。それは何故誰々かまで分るかというとここからリストを出してありますから何某という名前まで来る筈です。
○稲嶺盛昌君 その中に是非残留職員が入っていけるように折衝方お願いします。
○副知事(山城篤男君) 承知致しました。

○議長(知花高直君) 次ぎは警察本部長からの報告を願うことに致します。
◎警察本部長(仲村兼信君) 公安委員会はその発足と共に警察の民主化と重点主義による治安の完璧を二大目標として基本政策を樹立し、これを強力に実施して来たのであります。即ち警察の民主化につきましては警察基本規定その他の諸規則を制定致しまして、警察の行政運営に関し制定すべき規則は、これを殆んど完備し、以て従来とその面目を全く一新し、機構の民主化は殆んど出来上ったのであります。これと共に運営管理につきましても、その民主化の基本となる警察官職務執行法及び行政代執行法を立案致しまして、布令として公布して貰うべく軍に提出してあるのでありますが、その公布を見ない中に今回の政府統合となりましたのでこれを琉球政府に引継いで早急に立法化すべく努力を致す積りであります。昨年三月から五月にかけて各警察署管内で公安委員と一般住民との懇談会をやったのでありますが相当効果があったのでありまして、今後も民意を尊重し、それによる警察の民主的運営という事について考えていきたいと思います。次ぎは重点主義による治安の完璧についてでありますが、御承知の通り現在沖縄は犯罪及び各種事故が多く治安維持は重要な地位を占めているのでありますが、その重要性に比べまして警察官の数や警察の施設等は日本のそれに比較致しまして悪条件下にあると言わねばならないのであります。斯かるが故に、これを克服し、治安の完璧を期するためには重点主義に依らねばならない事は申すまでもありません。先ずこの見地から警察署の廃止統合、その他機構の整備をすると共に、これに伴う警察官の重点的配置を思い切って断行し、特に那覇、胡差の両警察署を増員すると共に、特別警邏隊を設けて犯罪の予防、暴力の鎮圧に相当の効果を挙げたのであります。
 次に治安対策要綱を樹立致しまして縦と横の連絡を有機的に統合し、能率的に重点的な指導、取締りを実施して来たのであります。以上申上げました警察運営の基本政策は琉球政府に引継いで益々その完璧を期する積りであります。
 現在各種犯罪が激増し、その数が戦前の比でないことは申すに及ばず、戦後におきましても益々増加し、特に殺人、強盗、強姦のような悪質犯や青少年の犯罪が激増しつつありますことは誠に憂うべきことであります。これにつきましては警察の全力を挙げてその予防と防圧に努めているのでありますが、元来犯罪は環境に由来するものが多く、警察による防犯にも限界があるのでありまして、社会政策、経済政策を樹立し政治的解決の途を講じなければならないものと痛感している次第であります。
 捜査を民主化するためには捜査を科学化しなければならぬことは申すまでもありません。それには鑑識施設を十分充実しなければならないのであります。指紋及び写真鑑識につきましては先に日本に警官を派遣してその技術を修得せしめ、更にこれらの者をして数回に亘り講習を実施して技術員の養成に努めると共に施設も多少は出来、それ相当な活動をしているような情況ではありますが予算の関係で未だ十分とは云えないのであります。理化学鑑識につきましては、僅かにウソ発見機その他僅かなものを備えた丈で物的並びに人的にこれからという所であります。特に法医学鑑識につきましては人的にも物的にも絶無であります。それで法医学的鑑識を要する場合には開業医やその他を利用していますが沖縄には法医学を専攻した者がなく非常に不便を忍んでいる実情でありまして将来何とかせねばならないと痛感している次第であります。
 外人犯罪について一言申上げたいと思います。外人の住民地区への立入禁止が解かれました一九四八年の末頃から外人による沖縄人に対する犯罪は急激に増加し、而も悪質犯が頻発する状況で、最近はこれにつきましてMP、CIDと緊密な連絡を取ってその防止に努めている次第であります。
 売淫につきましては強力にその取締りを実施しているのでありますがその数は益々増加する一方でありまして殊に軍施設附近におきましては特殊部落をなしているような次第でありまして、最早警察力のみではどうにもならない状況で、この点につきましては風俗、衛生の面から適切な処置が講じられなければならないと思います。
 海上保安につきましては水難の救済と海上における法令の励行に重点をおいてやって来たのであります。御承知の通り沖縄は暴風地帯でありますので水難救済については、その施設は十分充実すべきでありますが警備艇八隻を警察本部並びに六警察署に配置したのと水難救済会を設置してある外、見るべきものがありません。警報伝達施設、通信施設等の充実強化を図らねばならないと思っています。警備艇につきましても予算の関係で修理も思うように出来ず、且つ乗組員の待遇も十分でないため思う様な活動が出来ないのは遺憾に思っている次第であります。密航、密貿易につきましては対外貿易が再開されましてから日本との密貿易は減少しておりますが、今尚一獲千金を夢みて非鉄金属、砲弾類を持ち出して香港への密貿易は後を断たないのは誠に遺憾に思います。これについては今後共、徹底的に取締りを強化する積りであります。交通事故の頻発は今や深刻な社会問題となっていますが、これについては主要道路に対する交通専務員の配置、交通安全協会の設立、十数回に亘る交通安全運動の展開と一斉取締り、又昨年八月那覇主要道路の車輛の一方通行制の実施等によって若干その成果を挙げつつありますが、更に本年一月から二月に掛けて従来軍免許になっていた沖縄人軍労務員運転手の民免許への切替の実施を致しまして、これらの技術の向上と遵法精神の昂揚に多大の効果を挙げ得たのであります。尚琉球政府への統合を機会に従来の指導取締りに検討を加え科学的に真に適切な計画を樹立すると共に車輛の登録、検査の事務を運輸局に移し、負担の軽減を図り、その余力を取締りに向けると共に警察官並びに運転手の再教育を実施し、交通法規を改正し、以って事故防止の万全を期したいと思っています。
 戦後の消防が戦前のそれと異なる特色はそれが科学化されたということであります。斯かる見地から消防条例を立案し、皆様方の御審議、議決を得まして去る十二月三十一日公布致したのでありますが、それに基き火災予防規則、危険物取締規則、映写技術者試験規程等諸規則を制定して、或るものは公布済みで或るものは近く公布の運びに至っておりまして消防行政の科学化の地盤は既に出来上った訳ですが、その本格的な活動は将来に期待さるべきものであります。
 警察音楽隊は防犯、各種事故防止及び火災防止運動その他公の団体の催し並びに刑務所、厚生園、病院等の慰問演奏に活動を続け、民警融和の一体化に大きな貢献をなしつつあります。
 綱紀の粛正ということは、警察の生命でありますので特に監察官をおいて信賞必罰を明らかにして来たのでありますが、琉球政府になりましてからは更に監察事務を強化していく積りであります。最後に警察の職務には当然危険を伴うのでありまして既に九人の殉職者を出しているのであります。その遺家族援護につきましては琉球政府になりましてから法的にも適当な処置を講じなければならないと思っております。
 この機会に報告申上げたいのは去る十六日の晩那覇署の松尾派出所巡査比嘉兼才君の殉職状況についてであります。殉職の場所は浮島ダンスホールの中であります。状況は十六日午後九時半頃と推定されるのでありますが、ホール内で白人同志の乱闘が起っているから直ぐ来て欲しいということで女給が派出所に来た訳であります。当時三人の巡査がいて一人は残って二人行った訳であります。比嘉巡査と金城巡査の二人であります。丁度ホールに行くと十名位の白人が入り乱れて喧嘩をしており、金城巡査はその中に飛び込んで引分けようとしましたが比嘉巡査は十名程の喧嘩の中に二人ではどうにもならないというので玄関で非常警笛を鳴らしたのであります。応援信号を鳴らしたようであります。それを聞きつけて逃げようとしたのか、MPが来たと思ったのか突如一人の白人が打突かると同時に喉元にナイフを刺したのであります。比嘉巡査は急所をやられたので一言も発せず二、三歩行って倒れてしまったのであります。倒れた所に多量の出血であります。それから元気を出してテーブルの所迄来ましたが、そこでも多量の出血をして倒れたのであります。金城巡査はそれを抱き起し通り掛りのハイヤーを頼んで病院に連れて行きましたが二、三分後には事切れたというのであります。この二人の警察官はそれ程の乱闘なら拳銃でも用意したらうが、いきなり白人の喧嘩があるというので仲裁したらおさまると思って行ったと思いますが、持っていたのは制服に警棒であります。相手は昼の二時からホール内でウイスキーを飲み、酔い潰れて挙句喧嘩になって四人と三人組が一緒になって後三名と喧嘩したのであります。白人同志にも傷つけられた者があるということです。ここで特に申上げたい事は白人同志の喧嘩に警察官がよくも飛び込んで行けた。この二人の巡査、特に比嘉巡査は殉職したから褒めるのではありませんが大変勇敢な責任感も大変旺盛で、普段から褒められていたのであります。白人のみの喧嘩なら飛び込まんでもいいじゃないかという見解もあるかも知りませんが其所には十数名の女給がいるのであります。この二人の巡査も相手は凶器を持っているし身辺も危いと知りつつ飛び込んだものと思います。誠に警察官としては当然の職務を執行するために生命を落してしまったのであります。この犯人ですが、その晩私もCIDの支部に行って捜査の状況を見ましたがその晩全部の容疑者は手錠を掛けて連れて来られました。今調べられていますがこことしても民政府に色々要望した結果CIDがどんな調べをしているか見せたいという所から、昨日はナイフを持って来た犯人を交えて六人の兵隊を那覇署の玄関前の道路に横隊に立て当時ホールにおった女給十二名に玄関から一人一人首実検をさせ犯人は誰だという捜査方法を見せて呉れたのであります。軍のCIDの説明によると犯人は自供しているし尚凶器も発見されたからそれを総司令部に送って鑑定するということであります。職務執行のため殉職者を出して誠に残念であります。当然の職務執行とは云い乍ら生命を落したということは誠に断腸の思いがする訳であります。こういう事件が頻発する訳ではありませんが軍に対しても相当の要望をしなければならないと思い、このような事を要望して置いたのであります。軍人、軍属の犯罪、犯行については重要事件は民警察に逮捕権を与えてあります。所がそれ以外の普通の事件は民警察には職権行使の権能はないのであります。それで事故があれば直ちにMP、CIDに通信出来る施設を造って欲しい。尚住民地区で軍人、軍属が遊ぶ限りその範囲をMPが厳重に警戒して欲しい。若し軍が手不足で広範囲に廻ることが出来ないというなら軍人、軍属の立入り範囲を決めて欲しいという要望をしたのであります。もう一つは軍人、軍属の教育を徹底して欲しい。民家ではどういうことをしてもいいという考えでは迷惑だ。これでは治安の維持が出来ないということを要望したら、そういう事は前にも話して置いたので軍としては新兵が来たらそういう点を真先に教育している。君達は出先の外交官だ、その積りでアメリカの体面を傷付けずにやって欲しいということを言っているという話しでした。それで悪質犯は減っています。それから例えば今回の事件でCIDがどういう捜査をしているか発表して欲しい。住民は軍がそれを調べているかどうか分らないでは疑惑を持って見られる、それは軍のためにも宜しくないというと近く発表するという事でした。次は軍人、軍属によって受けた事件の裁判の結果の発表です。従来これも再三要望した事項ですが、一頃は発表がありましたが最近はないので理由を聞くと副長官の意志で発表することも、しない事もあるという事でした。それは軍のためにも民のためにもよくない、是非発表して欲しいという要望をしておいたら今後はそれを発表するということでした。次にそれらの住民の被害に対する災害の補償であります。今回の比嘉巡査に限らずそれは相当数ある訳でそれに対する損害の補償は以前から交渉を続けていますが講和会議後でなければ解決出来ないというので政府としても住民がどの程度の傷を受けたという記録を残して置け、それによって賠償委員会が出来た時払うという訳で今回も同様であります。これまで警察官の殉職は九名ですが政府からの援助は何もありません。そこでスキウス保安課長の肝入りでこれまで起った八名の遺族に対しては軍からの慰問が相当あります。住宅を造って呉れた所もあります。近くはカリホルニヤのマギーさんから無線機六台が来て配付したし、尚正月、盆は相当の品物が遺族に送られて来ているし、又ここにあるアメリカ婦人会、アメリカ人学校からも相当な贈物を貰っております。尚警察としても共済組合が出来ており俸給の百分の一宛の組合費で相互援助をしていますがこれからも見舞をしていますし、又毎年一人五千円の生活援助費も出しています。
 以上御報告申上げます。
◎祖根宗春君 吾々議会としても今度の比嘉巡査の殉職について深甚の弔意を表したい。尚併せて軍にも遺憾の意を表すると共に今後起らないように吾々も気を付けるし、又軍もこれの対策をやって戴きたいということを議会の名でお願いしたいと思いますが、序でに現在迄兵隊によって殺傷された沖縄人の数、或は琉球人によってアメリカの軍人、軍属が殺傷を受けた数、沖縄民政府が出来てからの数字が分れば伺いたい。
○議長(知花高直君) 暫時休憩致します。
  (午後二時四十二分休憩)

  (午後二時四十八分再開)
○議長(知花高直君) 開会致します。
◎新里銀三君 警察本部長にお願いがあります。警察官の人事の交流についてのお願いですが給料も稍々安定の域に達しており、住宅もあるのでこの際人事の交流を断行して欲しい。特に若い巡査が自分の地元にいる事は威信の面、或は職務執行の面、或は本人の将来を考えた場合、若い警察官は忙しい、繁華な所でやった方がいいので自分の郷里にいることは本人の将来のため遺憾に思うので是非勤務地の移動をして欲しいと希望するものであります。これは全地区に亘ってこの傾向はあるのでこの点是非実現して欲しい。それからもう一つは叱事かも知れないが官紀の粛正であります。この点色々投書が来たりして当局でも大体の所は御気付と思いますが、特に職権を大きく持っている警察官、税務署或は企業免許局の事務を取っている人は監察官制度もありますがもっと深く掘り下げて万遺憾なきよう善処方をお願いします。
○警察本部長(仲村兼信君) 人事交流は大変結構です。私もその点痛切に感じ非常に無理な状況にあり乍ら、これまで相当多数の交流をして来ました。今後全琉統合にもなれば更にこれを大幅にやりたいと思っていますが、何しろ転勤させる場合は旅費が要る訳ですがその旅費を支給する規定がないのであります。従来は赴任旅費がありましたが今日全然ないという状況で、更に行った先でもなかなか家もないという状況で苦しい中を相当やって来た訳ですが今後そういう制度が出来れば大幅に出来ると思っています。綱紀粛正の問題ですが相当厳格にやっている積りです。恐らく警察程この点はっきりし懲戒免職を出し絶えず職務の監視をしている所は失礼な言分だが他になからうと思います。極めて厳格にやった積りです。所が警察丈厳格にやるのは大変困難で社会の環境にも左右されますが吾々の中には相当多数の懲戒免、減俸或は戒告などやっております。

○議長(知花高直君) 予定の日程を終了致しましたので閉会に先立ち副知事から御挨拶があります。
◎副知事(山城篤男君) 閉会に当って御挨拶を申上げます。
 群府設立以来十三回に亘る会議を此所に御列席の各位が終始熱心に御出席になり御審議、決議に、或はその他民衆の福祉のために御奮闘下されたことに対し厚く御礼申上げます。皆さんの立てられた条例は各方面に実施され非常な恩恵を施している事は自他共に認める所であります。
 私は開会の時にも申上げましたが皆さんの中にはこれから再び今の議会よりもっと重大な方面に御活躍される方が六名おられる訳であります。尚その他各方面に活躍される方もおられる訳であります。何れの方々も六月三十日迄は矢張り群島議会に籍をもっておられ、この間別に何時とは言えないが軍の意図する所によると時にはあるかも知れないということを申しています。どうかその間に何か集って戴かねばならない場合は宜しくお願い致します。条例その他に対する審議権はありませんが、色々な事でないとも限らないのでこの点を申添えて置きます。過去に於ける皆さんの御功績に対し一同を代表して御礼を申上げます。将来の活躍を御期待申上げ皆様方の御健闘を祈りまして、御挨拶と致します。

◎議長(知花高直君) 今期議会に提案になりました総ての案件を慎重審議して戴いたことを厚く御礼申上げます。尚又各位が至らない私を援助して下された事を厚く御礼申上げます。
 今期議会はこれで閉会致します。
  (午後三時閉会)

出席者は左の通り
    議 長 知花 高直君
    副議長 稲嶺 盛昌君
議 員
 仲村 栄春君  石原 昌淳君
 普天間俊夫君  宮城 久栄君
 平良 幸市君  玉城 泰一君
 松本 恭典君  具志頭得助君
 長浜 宗安君  山川 宗道君
 祖根 宗春君  新里 銀三君
 野原 昌彦君  崎山 起松君
 仲井真元楷君
     副知事 山城 篤男君
    財政部長 仲宗根秀俊君
    厚生部長 宮城 普吉君
   警察本部長 仲村 兼信君
 知事室事務局長 宮城 寛雄君
   監査委員長 金城 研一君
 選挙管理委員長 仲本 朝昌君
   総務副部長 稲嶺 成珍君
   財政副部長 久場 政彦君
   経済副部長 知念忠太郎君
   厚生副部長 大森 泰夫君
    人事課長 比嘉 幸安君
  主税歳入課長 祝嶺 春徳君
    主計課長 板良敷朝基君
    会計課長 本村 朝宜君
    土木課長 伊佐 真人君
           (終)

一九五二年三月二十七日
   沖縄群島議会議長
        知花 高直(印)
一九五二年三月二十八日
   会議録署名人
    十四番 祖根 宗春(印)
一九五二年三月二十九日
   会議録署名人
    二十番 仲井真元楷(印)
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