- 組織名
- 沖縄群島議会
- 開催日
- 1951年03月17日
(昭和26年)
- 会議名
- 第6回沖縄群島議会(定例会)法務警察委員会 1951年3月17日
- 議事録
- 第六回沖縄群島議会(定例会)法務警察委員会議事録
一九五一年三月十七日
於 政府会議室
午前十時十九分開会
○委員長(山城興起君) 只今から法務警察委員会を開会致します。出席五人、欠席一人であります。
本日は議会から当委員会にその審査を付託されました知事諮問第六号の割当土地に対する所有権の制限について御審議を願います。本諮問は議会本会議においてその提案理由の説明がありましたが、慎重を期する意味で本委員会として休会の上更に詳細に亘り当局の説明を聴取致し、それから審議を進めたいと思いますが御異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(山城興起君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。休会致します。
(十時二十分休会)
(十時四十五分与儀清秀君出席)
(十時五十六分開会)
○委員長(山城興起君) 開会致します。割当土地に対する所有権の制限について、知事提出諮問第六号を議題と致します。
一の制限の理由のところから私が逐次読上げますから、それについて若し御質疑がありましたら提案者に質問して下さい。
(委員長朗読)
○委員長(山城興起君) 御質問はありませんか。
○新里銀三君 賃貸借契約を締結したものと看做すというのは、この賃貸価格というのは三のところに来て審査委員会が設定した賃貸料に基いて決定するという訳ですね。
○法務部長(知念朝功君) そうです。
○野原昌彦君 賃貸契約を締結したものと看做すということでありますが、軍の一九五〇年一月五日に出た号外によると一九四五年四月一日から五〇年六月三十日までの分は軍が使用した土地は賃貸料を払うとなっていますが、そうなると軍が現に自分の土地を使っている場合は一九四五年四月一日からの賃貸料を貰える訳でありますね。
○法務部長(知念朝功君) 左様でございます。
○野原昌彦君 そうすると、締結と看做すということでなくて、これも遡っていいんぢゃないですか。
○新里銀三君 今、野原委員のおっしゃるのは、この問題とは少しく趣を異にしているようです。これは民間に於いて個人と個人の間に於ける賃貸契約であって、土地賃貸料審査委員会が賃貸料を決定するが軍との問題は民政副長官がこの金額と支払の日を決定することになっているのであります。
○野原昌彦君 軍が決定する以上は無茶なことはせんだらうと思うが、軍に貸したのは賃貸料を貰えて民お互が使ったのは貰えないということは矛盾ではないかと思う。この法の出来ない先に賃借していたものは貰っておった。村長が権限を以ってやったのは貰えんというのはおかしいと思う。
○法務部長(知念朝功君) これは何も法律上の議論ではなく実際を中心にして考えたからであって、割当を受けた日を以て締結の日と看做すか、公布の日を以て締結したものと見做すかということは、これは政策的な問題であって合衆国は富裕な国ですから土地の所有者に対して、その使っている土地の使用料を遡って支払うことは大したことではないと思う。然し今他人の土地を使用している者は自分が土地を全然持たないか、或は持っていても、その土地が使えないという風な人であり、合衆国みたいな金持でなく、従って遡って支払えといった時に払えないのが十中八、九ではないかと思う。例えば賃貸料の請求権を許しても実際に請求すると裁判沙汰になる、そして判決しても亦行政執行になる、そういう時に差押物件があるかないかも問題であって色々と混乱を来しはせんかと思うのが、交付の日を以て締結にしようとした理由であります。
○新里銀三君 この契約を締結したものと看做すということは、締結したということになりますが、賃貸料の支払については別個ではありませんか。私は賃貸料を遡って取るということとは別であって、その日から賃貸料を受取るということではないのぢゃないかと思っておりますが、その辺の御見解は。
○法務部長(知念朝功君) 賃貸借契約は、賃料を支払うということがなければ賃貸借にはならん訳でありますから勿論このように締結されれば必ず賃貸借の場合には賃料請求権が発生するのであります。
○新里銀三君 そうなると契約によって遡ってもいけないという風に解釈できますね。
○法務部長(知念朝功君) そうであります。
○新里銀三君 民の価格と軍の価格はそんなに差はないということでありますが。
○法務部長(知念朝功君) 軍から来た、それに対する回答と見られるものにはこういう風になっております。賃料の支払に関しては地価を評価する(戦前の地価、現在の地価の評価)、それに当っては経済状況、B円の交換価値、諸外国に対する為替的な価値を考慮してやる。それを決定するために只今日本勧業銀行から溝口という調査課長外二、三名が来て、検分して歩いている訳です。
○与儀清秀君 これは文の解釈になりますが、この文によりますと、特別に所有者と借りた者が個々に契約しないでも所有者は設定された借賃をすぐ請求することができる訳でございますね。
○法務部長(知念朝功君) これは最後の方に「借賃の設定は土地賃借料審査委員会(仮称)の定める基準による」となっておりまして賃料請求権は発生していますけれども、その額は決定していないのであります。
○新里銀三君 日本の勧業銀行から派遣された人と土地賃貸料審査委員の連絡は極く密にして貰って、できるだけ軍の方にも亦個人に対しても損のないよう、あらゆる角度から平行して行けるところをとって貰いたい。
○法務部長(知念朝功君) 溝口という方は農林省総裁の台湾時代の同期生であって、向うでも中央土地委員会の方々とお会いしてお互にバランスを保つように非公式的にやらうと考えているようであります。
○新里銀三君 制限の一、賃貸契約の締結した日、四月一日の予定になっていると思いますが、その日から小作料を取るということになる訳ですね。そうすると軍が使用した土地は四五年に遡って支払うということになると、そういうところは再考の余地がありませんかね、今まで使っていても取れないということになるが、要するに後二週間はただで使えることになる、少し問題が起るぢゃないかと思いますが、そこらに対する適当な御見解はありませんか。
○法務部長(知念朝功君) 実際には取れないというのが見解であります。然し実際は今までもお互の間に贈与関係がありはしませんか。
○野原昌彦君 所有権証明書交付の日というのは四月一日に一斉に渡すということですか、日附が四月一日になる訳ですか。
○法務部長(知念朝功君) 見込でありますが交付の日からということであります。若し厳密にいうとすれば証明書記載の交付月日よりと訂正致しませうか。
○与儀清秀君 五年以後は所有権を行使していい訳ですね。
○法務部長(知念朝功君) そうなっております。
○野原昌彦君 どういう御見解で五年になさったのですか、何か根拠がありますか。
○法務部長(知念朝功君) これはぴしっとした基準がある訳ではありませんが大体公用、公共の用に供されている土地は一個人に対するそれよりも公益に関することが多いというので少し年数を多くしております。それから公用、公共の用に供されている以外の土地についても余程事情が変更しない限り賃貸契約の更新はむつかしいものぢゃないと思うのであります。社会状勢が落付いて参りますれば結局貸しておいても損にはならないという風になって来るし、立ちどころに出て行けという結果がこの期間の終了と同時に起らないだらうという予想であります。大体賃貸借の期間は日本の民法では制限がありまして二十年を超える事ができません、最短期は別にありませんから何日間でもいい訳です。又この土地の割当は市町村長権限に基いてやったのでありまして、これは民法で例をとると六百二条にありますが、例えば不在地主のために財産を管理しているということは、その人に管理権はあるけれども処分権はない訳です。市町村長も勿論ある意味では管理を委任されたということになりまして、割当てたということは委任されたということで市町村長がその土地の処分はできない訳です。日本の場合は土地の賃貸借五ヶ年、建物三ヶ年、動産は六ヶ月という風に余り長く許してはいない。然しその間には所有者と使用者との間に話合ができて期間を更新したりするのです。
○与儀清秀君 実際にこの項についての状況を見ると公共建物の中でも、まだ仮の建物も多うございますが、中には恒久的な建物に変えたところもあります。そういうものについても五年後は所有者がどうしても貸さないという意思があれば、これは非常に重大な問題になりはせんかと思うのですが、これでもよろしうございますが事情々々によって、例えば建物が既に立って又新しく移転するための費用を公で負担しなければならんとなる場合も起ると思うのですが、これはできるだけ公共用に賃貸されなければならないというような但し書でも欲しいと思いますが。
○法務部長(知念朝功君) そのことに関しましては色々特殊の事情を取上げて但書或は特別規定を設けることは殆んど不可能なのです。これでやって見て二年、三年、五年ございますからその間には状況の変化によって又新しい立法でこれを排除して適用することもできると思う、これは最初の切出しであって、将来立法で欠陥は是正できるという意味であります、最短二年もありますから。
○新里銀三君 この期間は適当と思う。その理由は混乱状態にあった場合の過渡期に市町村長が人の土地を勝手にやったことですから、これでいいか、若し例えば住宅の場合、三年たって地主は出ろ、本人は出ないという場合に立退命令をしますね。その場合に大体予告は何ヶ月になりますか、そうした場合には移転費がないという場合にこの家の移転費を地主に対して請求し得るものであるかどうか。
○法務部長(知念朝功君) 賃貸借の場合にはそういう特約を結べば特別でありますが、そういうことは建前ではありません。然し借地法というのが別にありましてそれには出て行けという時には買取請求権というのがあります。借地借家法とか、これを持って来たのでは却って統一ができませんから一応は単なる賃貸借にして置こう、そして世の中の事情が変れば又改めてやるという考であります。
○新里銀三君 どうしても出ろ、いや出ないという場合に問題は結局どうなるのですか、立退命令は明渡の三ヶ月前に出して、それでもきかない場合は。
○法務部長(知念朝功君) 期限の定めのある場合は期限が来たら当然出ます。三ヶ年と決めて、出なければ執行される訳です、期限が定められない場合には不動産についてはいくら、動産についてはいくらという告知期間があります。然し期限がはっきり決ってからは告知する必要はありませんから更新を交渉するとか、然しどうしても見込がなければ引越さなければならない。
○新里銀三君 那覇の料亭では恐らく三年では出ないと思う、地主は泣寝入りということになる訳ですね、地代だけ取るということになる訳ですね。
○法務部長(知念朝功君) 裁判所で行政執行します。
○新里銀三君 旧の法律と同じですね。
○法務部長(知念朝功君) そうです。
○野原昌彦君 学校なんか、私有地に建てたところがあるが五ヶ年では少いと思う、永久建築でセメントなんかでやっているところもあるし五年では短い、公共のものは十年位には延ばせませんか、土地収用法というのはまだ実施できる訳ですか。
○法務部長(知念朝功君) それはできます。
○新里銀三君 土地収用法は事前ですか、事後ですか。
○法務部長(知念朝功君) 事後です。
○稲嶺盛昌君 二の文の意味がちょっと分り難いのですが、これを「所有権証明書の交付を受けても左に掲げる期間割当土地に対する所有権を行使することができない」という風に直したらと思いますが。
○委員長(山城興起君) この公用と、公共の法律的な解釈はどういう風になっていますか。
○法務部長(知念朝功君) 公用というのは行政の主体が行政目的を達するために自ら使用する官庁の建物(例えば群島政府建物)これは一般公衆が使えません。公共というのは例えば道路、河川ですが、行政主体者の所有には属するが、然し、一般公衆が使用するもの、そういう違いがあります。
○新里銀三君 沢山の学校がありますがその敷地は文教関係は現在群島政府で負担していますが、その小作料はどうなるか。
○法務部長(知念朝功君) 法律上の建前からすれば政府が支払うものです。
○委員長(山城興起君) 御質問ありませんか。
○与儀清秀君 「所有者は所有権証明書交付を受けても左に掲げる場合にはその期間割当土地に対する使用の権能を行使することができない」この二の文句は直す必要はないですか。
○法務部長(知念朝功君) この文章はこれ以上には。
○委員長(山城興起君) それでは、イ、はこれでよいですか、口、もこれでよいですね、ハ、宅地以外の土地については二年。
○新里銀三君 これは一年でいいぢゃありませんか。
○委員長(山城興起君) 大茎種なんか二年に亘る場合がありますからね、農作物の関係がありますから。
○法務部長(知念朝功君) 次のイのところは「使用地にたいする権利を所有者の承諾なくして転貸又は譲渡した場合」に訂正した方がはっきり致します。
○稲嶺盛昌君 四月一日交付であると先のものは問わないということですね。そうすると所有権認定委員会の場合の問題解決には適用できませんね、遡ってできない訳ですから。
○法務部長(知念朝功君) 大体法を出す場合には経過規定というのが必要であります。ある一定の法が出た場合にその以前にこの法規に該当するものを施行細則で決定すべきであります。
○与儀清秀君 土地の割当を受けてその土地を又他の人に宅地として貸してある場合にはこれは本当の所有者からすぐその土地の明渡しを請求することになっておりますがそうすると、又貸されたところの個人にとっては三ヶ年という適用を受けることもできずにすぐ立退をしなければならんということになるのですか。
○法務部長(知念朝功君) 交付の日以後にそういうことがあれば立退かなければいかん訳ですが、この法実施以前において割当を受けた人が他の人に転貸した場合の措置を落しているのであります。
○委員長(山城興起君) 暫らく休憩致します。
(十二時十五分休会)
(十二時三十五分開会)
○委員長(山城興起君) 委員長の手許で皆様の御意見を勘案致しまして一応答申案を調製致しました。これを読上げまして若し工合が悪いところがあれば又訂正して貰います。
(委員長答申案朗読)
答 申 案
答申第六号
割当土地に対する所有権の制限について
一九五一年三月十五日付諮問第六号首題の件左記の通り追加又は修正の上米国琉球民政府へ進言し布告発布方手続き相成りたく沖縄群島議会の議決により茲に答申する。
一九五一年三月二十七日
沖縄群島議会議長
知 花 高 直
沖縄群島知事 平良辰雄殿
記
第二項「制限」中
一、第1号中「所有権証明書交付の日」の下に「(証明書記載の交付年月日をいう)」を挿入する
二、第2号但し書左記イ号を左の通り改める
イ、使用地に対する権利を所有者の承諾なくして転貸又は譲渡したとき
三、第2号但し書左記ハ号中「土地を有するとき」の下に「但し一年の告知期間を置かなければならない」を加える
四、第4号として左記の通り追加する
4、割当を受けた者との合意によりその土地を使用している者と所有者との関係についても同様とする
その他は原案通りとする。
○委員長(山城興起君) ただ今読上げました答申案について御異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(山城興起君) 御異議ないと認めます。よって左様に決しました。これを委員会の答申案と致し来る十九日の本会議において委員長から報告致します。
長いこと有難う御座いました、ではこれで閉会致します。
(午後一時散会)
一九五一年八月二十八日
沖縄群島議会議長
知 花 高 直 印
三番議員
稲嶺 盛昌 サイン
二十番議員
仲里 誠吉 サイン
▲予算中「目」、「説明」及び「明細表」は省略した。
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