戦後初期会議録

組織名
沖縄群島議会
開催日
1951年12月17日 
(昭和26年)
会議名
第12回沖縄群島議会(定例会)第二部委員会 1951年12月17日
議事録
  第二部委員会議事録
   一九五一年十二月十七日
     午前十時四十分開会
○委員長(玉城泰一君) 只今から第二部委員会を開きます。出席八人、欠席一人であります。
○委員長(玉城泰一君) 本日は議会から付託せられました議案第八十七号、第八十八号、第八十九号の審査を致しまするが、議事進行の順序は先ず議案第八十九号を先に致しまして、次ぎは第八十七号それから第八十八号の順で進めたいと思いますが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(玉城泰一君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。それでは議案第八十九号の群島並びに地区選挙管理委員会委員及び職員諸給与条例の一部を改正する条例を議題と致し、当局の説明を求めます。
○総務部長(幸地新蔵君) 群島選挙管理委員会委員長の給料は五、二〇〇円以内と規定せられていたのでありますが、今回の政府職員の増俸に伴いまして軍布令に依り同委員長はRGの時給二九円になり、月俸に致しまして五、九一六円となりますので従来の「五、二〇〇円以内」を「六、〇〇〇円以内」に改正致したいので提案致した訳であります。
○宮城久栄君 選挙管理委員会の委員長以外の職員、即ち委員書記とかの給料についてはどうなっておりますか。
○総務部長(幸地新蔵君) 委員長は常勤になっており、外の職員は兼任になっておりますので改正の必要はありません。
○稲嶺盛昌君 本案は政府職員の増俸に伴うものでありまして別に異議はないと思いますが……。
○委員長(玉城泰一君) 本件は布令第七号に充てはめた丈でせうね。然し外の職員は均合(ママ)上どうなりますか。
○総務部長(幸地新蔵君) 同委員会の外の職員は兼務になっておりますので改正の要はないと思います。
○新里銀三君 本改正に伴う増俸予算は計上されておりますか。
○総務部長(幸地新蔵君) 計上されております。
○委員長(玉城泰一君) 質疑を終了致しまして、討論に入りますが、討論を省略致しまして、原案通り可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(玉城泰一君) 御異議ないと認めます。依って本案原案通り可決致します。

○委員長(玉城泰一君) 次ぎは議案第八十七号沖縄群島医療扶助条例制定についてを議題と致します。一応各条文を朗読してから質疑に入りたいと思います。朗読致させます。
  (社会事業課事務官「外間宏栄君」条例案朗読)
○委員長(玉城泰一君) 本議題の質疑に入ります。
○与儀清秀君 別表第一の記載金額は月給ですか、年額ですか不明ですが如何。
○社会事業課事務官(外間宏栄君) これは月額であります。記載漏れでありますから御記入願います。
○新里銀三君 この条例に基く医療扶助費は本年度予算に計上されておりますか。
○社会事業課事務官(外間宏栄君) 医療扶助費として予算は計上されております。
○新里銀三君 現在治療を受けている被救済者はどれ位いるか。
○社会事業課事務官(外間宏栄君) 一、五〇〇人から二、〇〇〇人程度であります。尚現在の被救済者は約一万二千人程になっております。
○宮城久栄君 第四条に一人三千円の扶助限度が規定されているが、病気によってはこれ以上の者が相当あると思うがどうか。
○社会事業課事務官(外間宏栄君) 御説の通りであります。この件は政府の法規、審査委員会でも問題となりましたが、政府予算との関係もあってこう規定致したのであります。
○宮城久栄君 但書で知事の権限において増額できる様伸縮性を持だしたがよいと思うがどうか。
○社会事業課事務官(外間宏栄君) 結核みた様な長期治療を要する者もあり御意見尤でありますが予算の都合でそう致しました。
○稲嶺盛昌君 扶助を受けそうな員数を予想して、予算は計上してありますか。
○社会事業課事務官(外間宏栄君) はいそうです。
○稲嶺盛昌君 予算の都合がつけば宮城委員の意見通り但書を入れた方がよい、その儘では予算はあってもそれ以上は扶助できないことになるが。
○普天間俊夫君 第三条の急迫した事情のある場合とはどういう場合ですか。
○社会事業課事務官(外間宏栄君) 急患の場合であります。病気の急迫した場合を意味しております。
○新里銀三君 第十三条の医者が拒んだ場合、医者を制裁する規定かこの案にはないがどうなりますか。
○与儀清秀君 医は仁で医者が拒むことはあり得ないと考える。
○玉城泰一君 第二十一条の扶養義務者とはどの範囲ですか。
○社会事業課事務官(外間宏栄君) これは三親等内の範囲で民法の規定の範囲と解釈致します。
○宮城久栄君 別表の第二の薬価は普通薬価とはどうなっているか。
○社会事業課事務官(外間宏栄君) 普通の薬価の半額程度となっております。
○与儀清秀君 第二条の条文は廻りくどく分りにくいがその趣旨はどうなっているか。
○社会事業課事務官(外間宏栄君) 御説の通りくどくて分りにくいがこれが条件となっており、この条文がないとこの案が意味をなさない。廻りくどい様ですが、日本の法規もこう謳われております。
○委員長(玉城泰一君) 質疑を終了致しまして討論に入ります。原案に対して御異議ありませんか。
○宮城久栄君 第四条末尾に「但し知事は必要と認めた場合予算の範囲内で増額することができる」と但書を挿入し、別表第一中「一人世帯」の下に「月額」を挿入し以下同様とする。別表第二往診料中「片道半里を越ゆる場合は端数毎に」とあるを「片道一里を越ゆる場合は半里又はその端数毎に」に修正することにして、その他は原案通りとし、本案一部修正で可決せられんことを望みます。
○委員長(玉城泰一君) 只今の宮城委員の本案一部修正可決の動議に御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(玉城泰一君) 御異議ないと認めます。依って本案は宮城委員の意見通り一部修正可決致します。午前はこれで散会致しまして午後一時から再開致します。
  午前十一時四十分散会

  午後一時十五分開会
○委員長(玉城泰一君) 開会致します。午後の出席七人、欠席二人であります。

○委員長(玉城泰一君) 議案第八十八号沖縄群島消防条例制定についてを議題と致します。当局の説明を求めます。
○消防課長(下地寛忠君) 曩に消防法案として議会に諮問し、議会の答申をつけて民政府に申請しました処、民政府から群島条例として制定しなさいという訳で今回は御手元に配付してあります民政府からの指令にあります通り修正を致しまして消防条例として制定すべく提案致したのでありまして、曩の案と違います点を説明申上げますと第一条では前のは「法律」となっておりましたのを「条例」に修正しました。以下各条文中同様に修正致しました。
 それから第二十二条であります。先の場合は軍布令として公布せられる予定でありました関係上気象台長から群島知事に対する気象報告の義務を負はしてありましたが、今回の場合群島条例でありますため任意通達のことに致したのであります。条例で義務を負はすことはできなくなったためであります。それから先の第三十七条、第三十八条、第三十九条の重罪、罰則規定は群島の権限外になりますので民政府からの指令によりまして削除致しました。尚本条例第三十九条の十一号は新に挿入致しました。以上修正を加えました点を報告申上げました。よろしく御審議の程お願い致します。
○委員長(玉城泰一君) 本議題の質疑に入ります。
○新里銀三君 本案第二十二条の趣旨はどうか。
○消防課長(下地寛忠君) 乾燥した場合とかを意味するものであります。
○稲嶺盛昌君 第八条の行政庁とは何か。
○消防課長(下地寛忠君) 現在の処市町村長となっております。
○宮城久栄君 本案は曩の議会で慎重審議を重ねたもので、当局において軍の指示に依り修正したものでありますので質疑討論を省略して原案通り可決せられんことを望みます。
○委員長(玉城泰一君) 只今宮城委員から質疑討論を省略して本案原案通り可決方の動議がありますが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(玉城泰一君) 御異議ないと認めます。依って本案原案通り可決致します。本委員会に付託せられました案件全部終了致しました。御苦労様でした本日は之で閉会致します。
  午後二時十分閉会
          (終)

 沖縄群島議会
  第二部委員会議事録
  一九五一年十二月十九日(水)
     午後二時十分開会
○委員長(玉城泰一君) 只今から第二部委員会を開きます。本日の出席五人、欠席四人であります。

○委員長(玉城泰一君) 本日お集りを願いましたのは軍用土地使用料の問題について御審議願いたいためであります。一昨日の軍民連絡会議において軍から軍用土地使用料六〇万弗を六月一杯に支払われることになっているが、その内容については軍の方でもはっきり分らない様でありまするが、本件は沖縄にとって至極重要な問題であり、議会として善処しなければならないので本委員会において対策を考え、即ち軍に対して質問或は要望事項等を取纏めたいと思います。就きましては、一応軍民連絡会議の模様を当局からお聴きした上で御審議願うことに致します。
○副知事(山城篤男君) それでは私から此の間の軍民連絡会議における軍用土地の使用料の問題につきまして会議の模様をお話し申上げます。
 軍民連絡所長のゼンキンスさんからの知事宛、口答示達でありますが、米国政府から六〇万弗の軍用土地使用料を送って来たが、これは六月迄に精算しなければならない。それ迄に精算し切れなければ米国政府へ返さなければならないので知事は是非協力して遺憾のない様に、でこれは土地所有権の登録が済まないといけないことになっているので登録の方を早く済ます様にとのことでありました。これに対して知事は使用料の発効期日は何時かと質問されたが向うでは分らないとの返事でした。それから大体単価はいくら位になるかと質問されたが、それも分らないとのことでありました。知事は現在の軍用地の大体総坪数から割出して六〇万弗は余りに安いとのことで民間でも心配しており、軍用地の地主が経済力の損失を蒙らなければならないのでこれが増額について善処方を願ったら、軍では現在民の支払っているのは高いという評判があると言っていたが、金が来て居ることは事実の様であります。以上の通りであります。
○稲嶺盛昌君 軍使用地に田畑が潰れて使用不能のものとか道路拡張のための潰れ地についても使用料を支払う様ですか。
○副知事(山城篤男君) それは分らない。
○宮城久栄君 内訳明細があって始めてこの六〇万弗の支払が生れて来たと思うが、その算定基礎は分りませんか。
○副知事(山城篤男君) 軍では未だはっきり分らないといっている。
○稲嶺盛昌君 西原の飛行場の如き、砂辺の浜一帯の元の畑地の如き労力を加えても使えない使用不能の分、完全な潰地の使用料については分りませんか。
○副知事(山城篤男君) 向うでも区別的にはっきりしたことは分らない様です。
○委員長(玉城泰一君) それでは軍に対して質問或は要望すべき事項を取纏めたいと思いますが。
○稲嶺盛昌君 今日は二部委員会としての案を纏めてそれを明日の全員協議会に諮ることになりますか。
○委員長(玉城泰一君) そういう風に致したいと思います。私の腹案を申上げて、それに依って検討を加えて貰いたいと思います。一応読み上げて見ます。
 一、軍使用地の使用料は何年何月分から支払うか。
 二、支払われる土地の範囲はどうか。現に軍が使用している使用料は勿論、支払われると思うが、
  (い)立入禁止区域の土地 (ろ)道路のため潰れた土地 (は)使用不能となった潰地の使用料はどうなるか。
  右各種の軍使用地の総面積地目別はいくらか。
 三、使用料の単価はいくらか。
 四、使用料六〇万弗の算定基礎
 五、使用料額の決定は現在群島府令に依る賃貸価格評定委員会規程に準拠したものと差があってはならない。
○委員長(玉城泰一君) 右の事項について軍の方へ質問をしてその回答を得てから要望を致すことにしたいが御異議はありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(玉城泰一君) 御異議ないと認めます。依って左様に決し明日の全員協議会に委員長から報告することに致します。本日はこれで散会致します。
  午後三時四十分散会
          (終)

  一九五一年十二月二十一日
  午後一時十五分開議
◎議長(知花高直君) 開会致します。出席十五名、欠席五名であります。

◎議長(知花高直君) 諸般の報告を致します。
 今期議会初日の本会議に於て議決されました講和会議後に於ける米国の琉球統治に対する要望についての陳情書は、議長に於て関係宛先にそれぞれ書類進達致しましたから報告致します。第一部、第二部委員長及び十六番議員からそれぞれ陳情案の送付について議長宛文書が参っておりますので書記長をして朗読致させます。
  (書記長「新垣良正君」朗読)

 一九五一年十二月二十一日
   第一部委員会
    委員長 石 原 昌 淳
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  陳情案送付について
日本杉材輸入促進の件について陳情書を提出致したいので今期議会に提案方御取計下されたく別紙陳情案を送付致します。

 一九五一年十二月二十一日
   第二部委員会
    委員長 玉 城 泰 一
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  陳情案送付について
軍用土地使用料の件について陳情書を提出致したいので今期議会に提案方御取計下されたく別紙陳情案を送付致します。

 一九五一年十二月二十一日
   十六番議員
        新 里 銀 三
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  陳情案送付について
公安委員会制度存置方の件について陳情書を提出致したいので今期議会に提案方御取計下されたく別紙陳情案を送付致します。

○議長(知花高直君) 知事から議長宛公文が参っておりますので書記長をして朗読致させます。
  (書記長「新垣良正君」朗読)

沖総第八七二号
 一九五一年十二月二十一日
  沖縄群島知事
       平 良 辰 雄
沖縄群島議会議長
    知 花 高 直 殿
  提出議案の撤回について
第十二回沖縄群島議会に提出議案中左記議案は都合により撤回したいと思いますので御了知願いたく御通知致します。
    記
 議案第八十四号沖縄群島税犯則取締条例制定について

沖総第八七三号
 一九五一年十二月二十一日
   沖縄群島知事 平良 辰雄
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  急施事件提案について
開会中の第十二回沖縄群島議会に急施事件として左記二件を提案したいので議会の議決を得たく別紙の通り議案を送付致します。
    記
 議案第九十号 沖縄群島映写技士免許試験並びに映写技士免許証交付手数料徴収条例制定について
 議案第九十一号 群島財産処分について

◎議長(知花高直君) 書記をして追加議案修正案並びに陳情案を配付致させます。
  (書記配付)

◎議長(知花高直君) 本日の議事日程を報告致します。
  議事日程第二十七号
第一 一九五二年度沖縄群島歳入歳出追加更正予算について
  (知事提出議案第八十二号)
第二 沖縄群島税徴収条例制定について
  (知事提出議案第八十三号)
第三 沖縄群島砂糖及び砂糖容器検査手数料徴収条例制定について
  (知事提出議案第八十五号)
第四 沖縄群島鮮魚卸売市場条例制定について
  (知事提出議案第八十六号)
第五 沖縄群島医療扶助条例制定について
  (知事提出議案第八十七号)
第六 沖縄群島消防条例制定について
  (知事提出議案第八十八号)
第七 群島並びに地区選挙管理委員会の委員及び職員諸給与条例の一部を改正する条例について
  (知事提出議案第八十九号)
第八 沖縄群島映写技士免許試験並びに映写技士免許証交付手数料徴収条例制定について
   (知事提出議案第九十号)
第九 群島財産処分について
  (知事提出議案第九十一号)
第十 災害復旧援助のため特別資金設定方に関する件につき陳情書を提出することについて
  (第一部委員長提出陳情第十三号)
第十一 日本杉材輸入促進の件につき陳情書を提出することについて
  (第一部委員長提出陳情第十四号)
第十二 軍用土地使用料の件につき陳情書を提出することについて
  (第二部委員長提出陳情第十五号)
第十三 公安委員会制度存置方の件につき陳情書を提出することについて
  (十六番議員提出陳情第十六号)
 以上であります。

○本日の会議に付した事件
 日程第一 一九五二年度沖縄群島歳入歳出追加更正予算について
  (知事提出議案第八十二号)
 日程第二 沖縄群島税徴収条例制定について
  (知事提出議案第八十三号)
 日程第三 沖縄群島砂糖及び砂糖容器検査手数料徴収条例制定について
  (知事提出議案第八十五号)
 日程第四 沖縄群島鮮魚卸売市場条例制定について
  (知事提出議案第八十六号)
 日程第五 沖縄群島医療扶助条例制定について
  (知事提出議案第八十七号)
 日程第六 沖縄群島消防条例制定について
  (知事提出議案第八十八号)
 日程第七 群島並びに地区選挙管理委員会の委員及び職員諸給与条例の一部を改正する条例について
  (知事提出議案第八十九号)
 日程第八 沖縄群島映写技士免許試験並びに映写技士免許証交付手数料徴収条例制定について
   (知事提出議案第九十号)
 日程第九 群島財産処分について
  (知事提出議案第九十一号)
 日程第十 災害復旧援助のため特別資金設定方に関する件につき陳情書を提出することについて
  (第一部委員長提出陳情第十三号)
 日程第十一 日本杉材輸入促進の件につき陳情書を提出することについて
  (第一部委員長提出陳情第十四号)
 日程第十二 軍用土地使用料の件につき陳情書を提出することについて
 (第二部委員長提出陳情第十五号)
 日程第十三 公安委員会制度存置方の件につき陳情書を提出することについて
 (十六番議員提出陳情第十六号)
 日程追加 軍用土地使用料に関する別紙陳情書調制(ママ)並に今後の措置もなさしめるため特別委員会を設置するの件
       (議会議長発議)

◎議長(知花高直君) 只今から本日の会議を開きます。
 日程第一知事提出議案第八十二号を議題と致します。
 この更正予算案は第一部委員会に付託してありましたので第一部委員長の審査結果報告を求めます。
◎第一部委員長(石原昌淳君) 委員会に於ける審査結果の報告を申上げます。先ず財政部長からこの追加更正予算案の内容について詳細な御説明を承ったのであります。結論から先に申上げますと今度の追加更正はルース台風災害の後でその復旧に対して政府として折衝した所、資金がないとの理由で差当り軍補助金から復旧事業費として出す事が出来ないという回答がありまして、その被害は非常に深刻なものがあり、早急に実施しなければいかない事情があり、これらの災害復旧に充てるために予算に徹底的再検討を加えて能う限りの財源をねん出しこれに備える経費を出し、それと農林省からの補助金に基く内容のものであります。軍補助金の支出が出来ない以上緊急にして止む得ないものとして原案を承認したのであります。そこで尚審議の内容について主として論議、検討されたことについてあらまし申上げたいと思います。経費節減は、群島政府も近く解消しようとしている事情にありますので、緊急にして止む得ないもの以外は繰延べ等で出来るものは出来るだけそうして節減する方針を取ってあります。その結果備品消耗品が主たる対象になっています。次に油脂燃料費の節約ですが、節減の理由は車が悪くなって廃車して台数が減ったという事、及び工務部の所管である臨時部の方にこの油脂燃料費の振り替えをしたということ、及び予算編成当時は各部で別々にこれを処理することになっていましたが、一括して工務部で取扱ったことによる節減で油脂燃料費が節減された訳であります。次は賃貸料からの節減ですが、これは愛楽園を工務部の臨時費からやりましたのでそのための節減であります。以上のように行政費からの節減を加えて軍補助金からあてがって貰えません所の緊急な災害復旧事業諸要(ママ)費の場合に対しては軍補助金から九百万円余り貰うことになっていますが、愛楽園及び結核療養所などの経費は軍補助金から廻わせないのでこの節約された行政費の中から廻わされることになっています。
 尚内部の更正予算経常部の方での追加更正の面で刑務所の方に百一万八千余円の食糧費としての追加がありますが、これについては理由など訊した訳ですが特に受刑者の人員が増えて千名にも達するような状態にありまして食糧費の不足を埋めるという事でこの経費については必要やむ得ないと考えられますが、この予算の検討に当って刑務所職員の待遇がまずいのも原因して勤務の上で支障を生じているという新聞の報道などもあることに対して人員が増えて諸手当の如きものまで減額、これで予算の運営に支障を来さないか、尚待遇改善が叫ばれている時にこれは適当かという論議もされましたが、当局として非常に窮屈ではあるがこういう必要な方面に相当無理な節減をしているという答弁でした。以上のような論議がありましたが先程申しましたように原案通り可決された訳ですが、次に申し述べるような要望がなされました。先ず刑務所の件について受刑者の労務が完全に消化されていないような話しですが、これに対しては収入のためにも彼等の授産指導施設を整備して彼等の労務の消化を図ると共に、将来の授産指導のためにも設備の整備を図ることに今後意を用いて努力するようにという要望がなされました。
 それから警察関係の事で悪質事件が論議されました。離島勤務手当の計上或は赴任手当の支給などについて早急にこれを考慮し、治安の完璧を図るようにということと、それから四、五、六月分の差額給料が未払いになっている事について、政府としてその威信のためにもあらゆる努力を払って是非約束を履行するようにという要望がなされました。尚公務員の災害補償などについても早急に支払いを図るようにという要望がなされたのであります。政府側はこれらの点について充分意を用いて予算案の執行に当って貰いたいということを要望して原案を承認したのであります。以上甚だ簡単ではありますが報告を致します。
○議長(知花高直君) 只今の審査報告に対して質問御意見を伺います。
◎新里銀三君 本年度の追加更正予算は余にも急場凌ぎで近視眼的予算編成だと思います。もう少し視野を広くして解消間近にある群島政府は過去に於ける全ての問題、今後の問題をここに現わすのが当り前だと思います。一例は住民に対しては四月にさかのぼって土地使用料を払いなさいという規則を出しながら政府自体は沢山の土地使用料を支払うべきであるにも拘わらず予算面に現わしていない点、又千二百万円の俸給の未払いなどもここに現わすのが妥当と思います。
 次の更正予算があるからその時だというかも知れませんが、その時果して更正出来るかどうか疑問であります。
 こういう膨大な土地を使用しているし、膨大な家屋を使用しているからには常平生から当然払うべきものを組入れてやるべきが当然でありまして、これについては誠に遺憾である。この点政府はどう考えているか。或は来る更正予算までには是非計上する自信があるかどうか承りたい。
○財政部長(仲宗根秀俊君) 今後の予算処理問題についての御意見でありますが、今回出してある予算は緊急必要であるという面に現在重点をおいてこれを出したのです。今御質問の将来に向っての土地使用料の問題、それから建物使用料の問題、俸給五割増俸に対する未払い問題などについて、なお退職手当の問題の方も軍から出して戴きたいということを強く要請してありますが、これもどういう結果になるか、そういう面も合せ考えて将来の収入面とも勘案して一月或は二月までにこの問題もけりをつけたいと思っています。
◎新里銀三君 ちっと待って下さい。今の財政部長の話しはよく分りました。そういう条件でならこの案に賛成しますが、住民に非難されず飛び立つ鳥は後をにごさないようにして下さい。その点条件をつけて来る追加更正でやるという条件つきでこれを賛成するものであります。
○財政部長(仲宗根秀俊君) 土地問題については色々これから徴収するのもありますし支払いするものもありますが、大体今の課税面の収入財政収入の面において後三ケ月の期間を要してはどうしても処理は出来ないと思います。今の考え方ですが、これは恐らく中央政府に引継ぐべきものと思っています。それからその他の給与問題は是非二月までの議会に於て全てのけりをつけて有終の美をなして引継ぎたいと思っています。
◎宮城久栄君 採決に入る前に伺いますが議案は可決、否決か或は修正かであると思っています。条件附きで議案を可決するというのは議事法にかなうかどうか伺いたい。
○議長(知花高直君) 条件附可決ということはありません。暫時休憩致します。
  (午後一時四十二分休憩)

  (午後一時四十四分再開)
◎議長(知花高直君) 開会致します。議案第八十二号は第一部委員長の審査結果報告通り原案可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って本案第一部委員長の報告通り原案可決致します。

◎議長(知花高直君) 日程第二の知事提出議案第八十三号を議題と致し第一部委員長の審査経過並に結果の報告を求めます。
最終案
  沖縄群島税徴収条例案
 (一九五一年十二月二十四日付沖縄群島公報第五七号に登載済に付省略)
 (注 四七六頁に掲載)
◎第一部委員長(石原昌淳君) 御報告を申し上げます。審議に入る前に財政部長からこの徴収条例制定の必要について、その骨子について詳細な説明を聴取致しました。本条例制定の必要があるかどうかについて審議を致したのでありますが、その制定の要否については色々と論議されましたが、祖根議員が文書で以てここに提出してありますが、以下読み上げる理由で反対の意見を述べられたのであります。
  (石原昌淳君祖根宗春君提出の文書朗読)

税徴収条例制定に反対する理由
 一、税法制定が実質的に議会の権限外であるのに徴税法のみ制定するのは不合理である。
 二、時期外れである。三月迄存続する群島政府の仕事として完璧を期せられない。滞納処分の差押えをしても公売は五月以降の確定申告によるから、それに携わる職員はない。
 三、四十八年度所得税未納者に対する処置が放棄されている。
 四、五十二年度申告所得税の課税は地区別に税務署別に業種別に不公平としてでこぼこが多く不満な点が多い。特に南部地区は平均高過ぎる。予算は前年度比三倍であるが、南部は六倍平均になって過重である。
 五、日本の国税徴収法の如く完璧を期したものではない。又犯則条例も制定しないと片手落である。
 六、集成刑法の処分規定と本条例と二本建ての法規があるのもよくない。集成刑法の税の処罰条文を廃止すべきである。

○第一部委員長(石原昌淳君) 以上のような反対意見を述べられたのであります。これに対して当局からの御説明もあり、又議員間の論議もあって、例えば祖根議員の税法改正が議会の権限外だからこの徴税法のみ議決するのは不合理だということも成程議会は税法を改正する権限はないが、少くとも一応これを議決するという権能は持っており、それに対して軍の拒否権がある事は遺憾ですが、こういう理論の立て方は当らない。或は時期外れだということも、これは公共団体の性質上当然新中央政府に引継がれるべきだという理論が考えられます。この一九五二年度の所得税は異議申し立てがあり、不公平だという理由もありますが、それがあるからこの条例制定の必要はないということはないので色々と論議の結果は成程時期的に遅れて所期の徴税成績を挙げる目的を達しられないという恨みもあり、或は旧日本の滞納処分法が適用出来るならそれによって処理したいというのもありましたが、群島解消を控えてその後始末をつけるためにはどうしても大きな財政上の問題もあるし、これをみたして処理を円滑に運ぶためにも又滞納者の中には成程一九五二年度の所得税に対しては異議申立てもあり訂正すべき面も多々あることは分ります。それについては当局に対して要望として強く訴えてあります。この中には悪質な滞納者もおるので是等に対しては必要な行政処置を以て督励に当り、そして最後に処置をつけるのが必要であります。そして悪い者はこれを戒しめ善良なる納税者に対しては慫慂し是正すべきは是正して極力納税思想の涵養を図るべきであるという点、それから戦前の滞納処分法に比較してより民主的に出来ている規定であるという点から致しましてこれが制定の必要は充分認められるのであります。時期が遅れており又一九五二年度の所得税に対してとかく論議が多い時であります関係上委員間に於いて活溌に論議されたのであります。結局は要望すべきは要望して解消前の財政処理を円滑に進めるためにも又前述の理由のもとに本条例を制定して、その実施面については積極的な処置を取って戴くということに意見一致を見て本案を承認致したのであります。
 次に十一条の差押えることは出来ないという規定、農業に必要な器具、肥料、種子ということとそれぞれの最低生活を維持するために必要な器具、その他という十の項目については、他の関係は最低生活を維持するためとなっているから農業に対してもこれが加えられるのが適当ではないかという意見もありましたが、農業の重要性と又器具、種子、肥料などについて差押え出来ないとしたのは重要な農業の生産を減らさない意味だから原案通りでいいだろうというのでこれを承認したのであります。次は十四条の質権の設定された物件に対して納期前これは税金の徴収が優先であるということについて、納期前三月前に設定された質権にまで優先させることは善良な質権設定者の一権利を侵害する嫌いはないかということでしたが、日本の国税徴収法でも一年まで差支えないということで原案を承認したのであります。
 次は附則の方ですが、この条例は公布の日から施行することになっていますが、これは群島税ということになって、それでは民政府に対し適用はあるかどうかという疑問がありましたので、これをはっきりさせるために一九五〇年度以降の沖縄民政府税からこれを適用するということを附加えたのであります。
 以上論議検討の経過を申上げたのであるが、結局結論は附則の所を一部修正して原案を可決致したのでありますが、先程も申しましたように徴税の完璧を期するためには適正なる課税ということが第一義的なものであります。然しここに徴収条例を制定して悪質滞納者に対する行政処分のできる様にするのはやむを得ないことです。然し乍らこれが、実施に当っては特に本年度所得税の異議申立に対して速にこれを審査決定して、是正すべきは是正し納税者に納得を与え極力納税成績の向上を図って戴く様要望することになったのであります。以上甚だ簡単ではありますが報告と致します。
○議長(知花高直君) 只今の委員長報告に対して御意見を伺います。
◎祖根宗春君 本員がこの案に反対する理由は先程委員長が述べられた通りですが、多数の力で本案は通過すると思いますので(笑声)、通過後に於ける当局のこれに対する取扱いについては、一九五二年度の申告所得税は不公平で過重であり、特に南部地区は前年度の六倍平均だからこういうのを是正するため再査定をやって戴く様希望します。
◎議長(知花高直君) 本案は第一部委員長の審査結果報告通り一部修正可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 十四番議員以外は御異議ないと認めます。依って本案は第一部委員長の審査報告通り一部修正可決致します。
◎新里銀三君 希望があります。今の条例は政府予算運営上必要止むを得ないからいいと思いますが、これについてお願いがあります。これを必要とした場合は一九五〇年度の予算は六百八十一万円残り、一九五一年度は九百七十二万円残って計千六百五十三万円未徴収であり、これをこの条例によって徴収するという事になるので更に今十四番議員から言われた一九五二年度の不当所得税について、知事、財政部長からは新聞にも度々発表して税務官吏にもよく徹底して再審査の要求があった場合は相談に応ずるよう示達していることを新聞で拝見しています。所が実際は官僚的な色彩が濃厚でありますので今からでも全住民に呼び掛けて異議を受付けることにして、その後に条例を適用するという親心を持って欲しいということを要望するものであります。

◎議長(知花高直君) 次は日程第三の議案第八十五号を議題と致し、第一部委員長の審査結果の報告を求めます。
◎第一部委員長(石原昌淳君) 本案の審議に当っては、先ず当局の説明を聴取した後制定の要否について検討致しましたが、先に検査条例を制定した以上当然だとしてこれを認めた訳です。論議の主な点は第二条で容器の検査について手数料を取るという条項でした。即ち戦前の例は砂糖のみから手数料を取って容器からは取らなかったのだし又戦後でも当時は重要な産業として育成すべきものであり、これを取らないようにしたらという意見もありましたが、これについては一にして検査の権威あらしめるという事、又そう高くもない実費の範囲であるということが分ったのでその程度ならやってもいいという事になったのであります。今一つは紙箱を使用したらどうかという論議が起ったのであります。これは検査条例を制定した時にも論議されましたが、矢張り検査を実施することが品質の劣悪化を防止し市場に於ける信用度を保持するという目的のための検査だから、紙箱は著しく品質を損するので矢張りこれでいった方がいいだろうし尚念のために現在試験的に紙箱によって出す程度にするか。この面は試験的にやるということを認めて紙箱使用問題はここに入れなかったのであります。結局本案は原案可決致したのであります。以上であります。
○議長(知花高直君) 委員長の報告に対して質問、御意見があれば伺います。
◎新里銀三君 この条例の出る前、経済部長の話では箱は一個七十六円位いで出来ると言っていましたが、実際は百十五円になっています。樽でもこの例でいくと百五十円を下らないと思います。そういう見解の相違は実際の調査をしないで自分の認定によったのか。それから現在樽(榑カ)板、輪竹は必要な分だけ獲得されているか。又問題の紙箱は使用を禁止されていますが、向うから見本として送るとなれば千箱までは許すとなると、その場合は砂糖の検査をしないで一商人が例えば十人の商人に一万箱持って来た場合はそれについての検査料もとらない。手数料も取らないとか。以上伺います。
○経済部長(呉我春信君) 一番目は箱の値段ですが現在でも七十五円程度で用意している商社があります。それが用材など色々な問題はありますが一箱百十五円というのは聞いていません。大体私の方の調べでは七十五円、場合によっては九十円というのもあります。もう一つ紙箱による試験の方法ですが、これは商社が全部まちまちに出すのでなく、検査をうけ正当な手続きを経てでないと出来ない訳です。又私の方では黒糖の紙箱試験要項というのを使ってやっているので、これによって規定出来ると思っています。それから資材の用意はどうかという御質問でありますが、大体箱で既に配布されたものは、一八、七八八箱になっています。樽は五、三〇〇既に配布完成された分で中には農家の手に渡っているものが大部分です。それから予定の分が箱で九万箱、樽で四万四千になっていますが、これは入荷中のものがあるし、又LCを組んだものがあり農林省では既に帯竹などの来るのを期待している。総計では五万丁とみると余るんじゃないかという状態です。
○議長(知花高直君) 暫時休憩致します。
  (午後二時十五分休憩)

  (午後二時十八分再開)
◎議長(知花高直君) 開会致します。議案第八十五号は第一部委員長の審査結果報告通り原案可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って本案は第一部委員長の審査結果報告通り原案可決致します。

◎議長(知花高直君) 日程第四の知事提出議案第八十六号を議題と致し、第一部委員長の審査結果報告を求めます。
◎第一部委員長(石原昌淳君) 報告致します。この条例案の審議に入る前に市場設置の理由及び市場設置が生産者、消費者に如何なる具体的な利点を齎らすかという事について詳細な説明を聞いた後、制定の要否について審議した所、市場を設けて公正妥当な取引きを図ることによって生産者、消費者共に利益を齎らすものであるということで、本条例制定の必要があるということを認め内容の審議に入ったのであります。
 所で市場設置に当って論議されたものは市場を設置すると今迄は生産者、仲買人、小売人という三段階だが卸商という一段階では却って値が高くなる恐れはないかという事も論議されましたが、生産者が卸商に渡す手数料は最小限度持たして知事の監督の下に定められるから結局はふえないということでした。それから少量の生産者が自分で小売りし、或は自分で卸売りしている現状だが、この条例によると取引き出来ないことになって不便を齎らさないかということも論議されました。然し市場は一粁以内では出来ないということ、又市場は大量生産地と大量消費地しか設けないという方針で是等の不便も生じないということで、制定の必要を認めて審議に入ったのであります。
 主として論議された点は第二条の市場取扱いの五分三以上、生産高の五分の三以上という標準だがこれを何所から持って来たかという点ですが、これは当該市場に於ける平均取引きによって規定されるという訳で差支えないというので原案を承認しました。次、第五条の市場経営者は左に掲げる事項を云々の左記規定を第七号で仲買人指定の条件という条項がありますが、その知事の承認さえ得ればそうした場合、経営者と仲買人が結託して値段を釣り上げ或は釣り下げする恐れはないかということで論議されましたが、これについては後で十九条以下の監督規定で充分是正出来るということと、それからその場合に仲買人を誰でもなれるようにしたらという事もありましたが、そうすると、市場経営者として不安定で却って経営者の経費を割高にし円滑な市場取引きを図る事にはならないという事で原案通りとして、後は知事の監督によって調整するようにしました。次は九条の不正行為をしてはならないという事も、不正をした場合はどうするかという事ですが、これは十九条によって許可を取消す事も出来るし罰則規定もあるので差支えないというので承認しました。次に十二条の委託販売する場合の手数料は知事が決める事になっていますが、二項で各代表の意見を聞く事も出来るとなっていますがこれは聞かねばならないという事にしたらどうかという事も論議されました。しかし聞かねばならないとなると却って拘束されて適正妥当なものを生み出すのに支障が起るので知事の伸縮性を持たすという意味で原案を承認したのであります。
 次は十七条の方で色々と経営者に報告義務を負わしていますが、これは自由経済の建前の所に余り干渉が細かいじゃないかという論議もありましたが、市場設置そのものが公正な取引きを保つという公共性の精神から出発していますので、これ位いは適当であるというので原案を承認しました。次は二十条の罰則規定の二万円以下の罰金に処するという事について、これは軽罪か重罪かが論議されましたが、研究の結果、群島議会で定める条例の中に決める罰則としては何等差支ないので原案通りとしました。以上論議されましたが結局原案通り承認した次第であります。
○議長(知花高直君) 委員長の報告に対して質問又は意見を伺います。
  (「質問なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 質問や御意見がない様ですが、本案は第一部委員長の審査結果報告通り原案可決する事に御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って本案は第一部委員長の報告通り原案可決致します。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第五の議案第八十七号を議題と致し、第二部委員長の審査結果報告を求めます。
最終案
議案第八十七号
  沖縄群島医療扶助条例制定について
住民の健康で文化的最低生活を保障するため群島組織法第二条第二項P項(号カ)の規定に依り沖縄群島医療扶助条例を別紙案の通り制定いたしたいので議会の議決を得たく提案致します。
 一九五一年十二月十三日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
沖縄群島医療扶助条例案
 (一九五一年十二月三十一日附沖縄群島公報第五八号に登載済に付省略)
 (注 四八二頁に掲載)
◎第二部委員長(玉城泰一君) 議案第八十七号審議の経過並に結果を報告致します。本議案提出の理由を訊した後に各条文を審議しましたが、提案の理由について当局の説明を聞きますと七月までは病院診療所が総て公営のためこの条例の必要はなかったのであります。即ち病気にはなったが金がなくて治療することが出来ないという人達は公営の病院診療所で無料で治療していましたが、七月以降は自由開業が認められましたのでその結果無理をして開業医師に治療して貰うことが出来ないのでこの条例公布が必要になったという説明でした。これは社会政策の立場からその重要性を委員会でも認めて逐条審議に移ったのであります。審議の結果は四条ですが原案には医療補助一年三千円見当に限定されていますが、委員の意向によって但し書を加え「但し知事は必要と認められた場合は予算の範囲内に於て増額することが出来る」という事を附加えました。その理由は三千円を補助しても尚治療中途で全快まで至らない場合が予想されますので、その但し書を入れて幅を持たした方がいいと思います。年三千円の予算が計上されていますので、三千円使わずに済む患者も出て来る訳ですから予算は狂わないというので、但し書を加えたのであります。
 次は別表の一であります。別表には一人世帯六百円、二人千百二十五円として総て年であるか月であるか分りませんが月額だという事でありましたので、これをはっきりさせるため一世帯月額という言葉を加えました。この救済される範囲は現在食糧配給を受けている救済者外にも拡大されているという説明でした。それから別表二の二号往診料ですが、片道一里以内三十円の次の「片道半里をこえる場合は端数毎に二十円を加う」を「片道一里をこゆる場合は半里又はその端数毎に二十円を加う」と改めました。この表に現れているものは現在の開業医の治療費に比べて約二分の一又は三分の一だそうです。それから診療に従事する医師、歯科医師又は介輔は医療券を提示して診療を求めるものがあった場合は正当な理由が無ければこれを拒んではならない。診療費が安いので断る医師が出てこないとも限らない。これを考えると、只これだけではいけないから罰則をという意見もありましたが、これは医師の人格を尊重して罰則を設けない方がいいということで原案通りとしました。以上の様に修正を加えその他は原案のまま可決しました。甚だ簡単ではありますが報告と致します。
◎議長(知花高直君) 本案は質疑討論を省略して只今の第二部委員長報告通り一部修正可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って議案第八十七号は委員長の報告通り一部修正可決致します。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第六の議案第八十八号を議題と致し、第二部委員長の審査結果報告を求めます。
◎第二部委員長(玉城泰一君) 議案第八十八号の審議の経過並に結果を報告致します。これは今年の七月第九回の議会に提案された消防法の内容と全然同じであります。その際も第二部委員会に付託されて慎重審議し本会議において報告し可決されたのであります。前に提案された時は消防法として民政府布令で公布される予定でしたが、その後命令があってこれは条例で公布しようというという(ママ)ことになって今回提案された訳です。従って委員会では先に議会に提案した内容と今度のものとどこが違うかという点丈けをただして原案通り可決致したのであります。内容の異なる点は、前回提案の場合の第三十七条、三十八条、三十九条は何れも重罪に相当する刑罰が規定されていましたが、重罪は条例で規定することが出来ないので、この三条文は削除されております。第三十七条には七年以下の懲役が規定されており、第三十八条には五年以下と規定されており、第三十九条には二年以下の懲役二万円以下の罰金が規定されています。そういう訳で組織法によると軽罪だけが条例で規定出来る関係でこの三条項は別に布令によって公布するということになっています。これが前回と異る所です。次は第二十二条は前回では気象台長に通報の義務を負わせてありましたが、布令ならそういう義務を負わすことは出来るが、条例では知事と気象台長とは命令系統が異るからというのでその内容を替えているのであります。それから布令で出すはずのものが、条例に替ったので文句で法律というのを総て条例に替えてあります。
 又、条例という文句を布令に替えてあります。更に第三十九条の十一項も法律を条例に改めたために追加をした訳です。尚四十一条の施行期日を当局が修正して公布の日から施行することになっています。先も申しましたように内容は九回の議会で通過した議案と同じであります。
◎議長(知花高直君) 本案は只今の二部委員長の報告通り原案可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第七の議案第八十九号を議題と致し、第二部委員長の審査経過並に結果報告を求めます。
◎第二部委員長(玉城泰一君) この条例の内容は群島選挙管理委員長の給与五千二百円を六千円に改正することですが、これは布令七号一部改正に伴う当然の改正であります。即ち一部改正によって管理委員長の給与は十二級となって時給にして二十九円です。従って五千二百円ではいけなくなって六千円以内にと改めるのでありまして原案通り可決致しました。以上報告と致します。
◎議長(知花高直君) 本案は質疑討論を省略して第二部委員長の報告通り原案可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第八の議案第九十号を議題と致し当局の説明を求めます。
議案第九十号
  沖縄群島映写技士免許試験並びに映写技士免許証交付手数料徴収条例制定について
群島組織法第一四六条の規定に基き沖縄群島における映写技士免許試験並びに映写技士免許証交付手数料徴収に関する条例を別紙案の通り制定いたしたいので議会の議決を得たく提案する。
 一九五一年十二月二十一日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄
 沖縄群島映写技士免許試験並びに映写技士免許証交付手数料徴収条例案
 (一九五一年十二月三十一日付沖縄群島公報第五八号に登載済に付省略)
 (注 五〇五頁に掲載)
◎警察本部長(仲村兼信君) 先に興行条例が交付され又只今上程された消防条例が通過することになると、勢い映写技士の免許並びに試験をしなければならないものであります。これはもっと先に提案して審議を願う筈でしたが、その技術者がいなかったために控えていた訳です。幸、今技術者が来ておりましてこの際映写技士の免許、試験を行った方が適当だというのでお願いした訳であります。
○議長(知花高直君) 本議題の質疑に入ります。
◎仲井真元楷君 二十年前の発声映画の出来るまでは興行の主体は弁士と技士の二つでしたが、発声映画が出来て以来発声の智識、電気の智識、映写機の智識が要望されて今日まで映画の映写機を扱うものは従来映写技士という名称で云われていましたが、先程申し上げたように科学的技術を持つ文化人としての教養が今日要望されて映写技士と云われないで映写技術者と云われていると聞いています。消防条例の十五条には映写技術者と謳っています。それから興行条例を見てみますと映写技士とも映写技術者ともなって二通り使用されていますが、これは何れが正しいか。又消防条例で技術者と謳っていますが、これに免許の事で興行条例にも映写技術者の免許を受けない者に映写をさせない事となっており、映写技士というと封建的な匂いの強いものは嫌われています。
 今日の日本では未亡人の映写技術者もあって非常に精細な感覚によって優秀な映画興行が行なわれているようですが、この点当局のお考えを伺いたい。
○警察本部消防課長(下地寛忠君) 只今の質問にお答え致します。映写技士の文句が正しいかどうかというのですが、映写技士が本当であります。なぜこういう行き方をするかというのは先刻興行条例並に消防条例によると映写技術者と書れているし、消防条例によっても知事がその技術の資格規定を作らない限りこういう文句は使われません。しからばどうして手数料を徴収させたかというと早急に実施しなければならないのでこういう戦前の規定を準用してこういう文句を使っている訳です。将来技術者の免許資格試験規定が布令として出る時には当然映写技術者という名称に変わるのでありますが、取敢ず暫定的処置としてこうしたのでおかしいものになっていますが、御諒承願います。早急に技術者という名称に変えたいと思います。
◎仲井真元楷君 それから興行に関する諸手続き或は一切の事は今日まで弘報室に連絡していましたが技術者の件はどこに事務管轄があるものか、又何故にそこでやるかという事を伺います。
○警察本部消防課長(下地寛忠君) 今先可決なった消防条例の方に危険物の条項がありますので技術者は危険物を扱う者として当然消防条例の施行の任に当るものが事務をやるものと思っています。
◎新里銀三君 制度はいい制度ですが、試験をする人の資格ですが、如何なる資格を持っているものか又誰が認めたものですか。
○警察本部消防課長(下地寛忠君) この資格は戦前の規定によって定められていますし、又映写技士免許試験規則というのがあって、これで決っています。これによりますと警察部長は試験委員長になり、それから保安課勤務の警部並びに技士は委員になるという構成になっています。しかし現在は警察部長も保安課もありませんが、この警察部長に代るものが本部長であり又保安課に代るものが消防課であるというのでこの委員を定めてあります。
 尚その他適当な人がない時は他の技術員からこれを嘱託にしてもいいという規定があって、この規定に基いて今大阪から来ている日本の国家試験委員をやっている人が今度オリオン興行の招へいで来ていますのでこの人にお願いして発令しました。現在沖縄に試験を実施する資格を持つ人はいない訳です。
◎新里銀三君 出張した機会につかまえて試験した事は結構ですが今後出張などないとするとどうしますか。
○警察本部消防課長(下地寛忠君) 消防関係で消防技術員を消防課に置くことになっていますので、こういう人を日本に派遣して技術を習得させた上でやりたいという計画をもっています。
◎議長(知花高直君) 質疑を終了して討論に入ります。原案に対し御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って本案原案通り可決致します。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第九の議案第九十一号を議題と致し、当局の説明を求めます。
議案第九十一号
  群島財産処分について
群島有財産たる建物及車輛(三輪車)
別紙内訳書の分売払処分を致し度いので議会の議決を得たく提案する。
 一九五一年十二月二十一日提出
   沖縄群島知事 平良 辰雄

◎財政部長(仲宗根秀俊君) 只今議題となりました議案第九十一号の群島有財産処分について御説明致します。工務部と厚生部の用に供していた建物五棟ですが、これは将来政府としては使用をしないというものであり、又現在相当古くなっていますのでこの際売却した方がいいという考え方から建物五棟を売りたいと思っています。それから車輛、三輪車三十七台を売却処分にすることになっています。これは経費節約の面からしても、その中には使用に堪えないもの、相当の修繕費を要さないと使用に堪えないものがありますのでこれもこの際売却処分をしたいと思っています。この群府財産を処分する場合の注意として民政府から通牒が来ています。それは十二月一日附ですが……その通達によると群府又は中央政府の動産又は不動産は前以て民政官の認可がなければ売却若しくは他の方法により譲渡してはならないということであります。今回議会の協賛を得ると更に軍に認可手続きをして処分をしたいと思っています。
○議長(知花高直君) 本議題の質疑に入ります。
◎新里銀三君 第一の建物の売却はこれを公売に附するかどうか。次は三十七台の車輛だが、これについては何時かの新聞に運転手が処分する場合は何とか吾々の手に渡して呉れという陳情がありましたが、それに対する見解対策を伺います。
○財政部長(仲宗根秀俊君) 建物については当然補助で作った面に於ては所によると地元が労務を出してやったり彼是しているものもありますから、それを勘案してそういうのがあるなら一応そういう方面にやったらどうか。未だ方法については決定していませんが、そういう事も考えています。三輪車の方でもそういう事情がありますなら検討して適当に処分したいと思います。
◎祖根宗春君 売却する建物をみますと診療所は一個所になっていますが、その他にも相当あると思います。その点はどうですか、それから台帳坪数と実測坪数が食違っている点はどういう訳ですか。
○財政部長(仲宗根秀俊君) 自由開業が認められた結果、診療所が相当廃棄されたのもありますが、目下開業医の方で使用しているのも大部あり、それから地元の役場でこれを管理している所もありますのでそれは追って処置を考えたいと思います。台帳坪数と実測坪数の食違いは工務部からの報告が台帳坪数になっていますが、財政部から派遣して実際調べた結果がこういう食違いになっていますがこれは一応調べたいと思います。
○工務部(ママ)副部長(神谷米信君) これは随分古いもので台風に潰されたものも二、三あり、又吹き倒されたものもあってこういう数字が出ている訳です。
◎議長(知花高直君) 質疑を終了して討論に入ります。
 原案に対し御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って議案第九十一号は原案通り可決致します。
◎新里銀三君 現在群府の管理している財産は是非群府の予算に入れて貰うよう特別の御努力をお願いします。
○財政部長(仲宗根秀俊君) それについては私も出来るだけ知事を煩わして売り払い代を入れるよう努力したいと思います。
◎新里銀三君 当局自体が積極的に出て貰って獲得するのは並々ならぬ努力と思いますので、議会もこの辺には万全を尽してはどうかと思いますので、次の議会でも陳情の形を取るか或は議長、副議長が代表して民政府に行くかして適当な処置を講ずる様希望致します。

◎議長(知花高直君) 次は日程第十の陳情第十三号を議題と致し、第一部委員長の審査経過並びに結果の報告を求めます。
◎石原昌淳君 未曾有の戦禍を受けこれの復旧が出来ていない所に打続く暴風災害のために沖縄周辺の護岸工事及び幹線の道路その他用排水施設等及び校舎の復旧、民住宅の復興ということが、沖縄復興の上で基本的なものであることは申上げるまでもありません。所がルース颱風の大損害に当って軍は資金がないという理由で復旧に対して補助金を出さないという事情にあることは沖縄復興の上から、これらの基本施設、或は民住宅、学校の復興が今まで遷延していることは復興の前途に住民の希望を失わしめるものであり、これが、復旧を一日も早くやりたいということは全住民の念願と思います。そこで第一部委員会では特別資金の設定方を民政府にお願いして復旧の促進を図りたいということになりまして、この陳情文と関係資料の蒐集のために平良議員、仲村議員と私は起草委員に選ばれここに提案しているような陳情文と資料を揃えて出した訳です。陳情文の骨子は初めに今までの陳情に対する感謝を述べ災害復旧施設の現状を第一表に現わしてこれを訴えてあります。それから住民の経済力の現状を五表に纏めて住民の現在の経済力を以ては到底この第一表のような復旧事業はなし得ないということを訴えています。
 それから戦前の沖縄の基本施設の状況又は災害復旧に対して国庫補助がなされていた状況と十五年振興計画の状況を二表として纏めて述べてあります。それから、戦後の日本の公共事業の殆んどが国庫によって行われている状況を述べて参考に供しています。最後に全体の復興が出来ないため古い災害が益々拡大累積している状態を訴えて吾々の基本施設の復旧や、学校復旧、住民生活の安定の基礎である住宅復興の緊急性と重要性を訴えて、これら施設の復旧を図ることが沖縄自立経済の促進を図る唯一絶対の手段であり、住民の力では解決する途がないので是非特別資金を設定して戴き、この促進を図って戴きたいという切なる住民の念願を訴えてその促進を図りたいという風に纏めてあります。この形で纏めた案文及び資料については委員会でも充分慎重に審議してこの通りに致した訳であります。後は民政府副長官を経て民政長官及びアメリカ上下院議長宛に提出致したいと思っています。尚委員会に於て審議の場合、公共用建物については、例えば役所、部落等戦前の事務所等の整備についても、訴えたらよくはないかという意見もありましたが、吾々として必要最小限度の所はこれ丈で是非政府と軍でやって戴きたいと云う風に取り計ったのであります。以上陳情書作製の経過と審議の状況を申上げて報告に替えます。
◎宮城久栄君 この特別資金の内容について伺いたいと思いますが、これは「ガリオア」から出して貰うことになると、思いますが、長期貸付けをして欲しいという意味は、又補助して戴きたいという性質のものは、もう一つはこの表で災害の数字を詳しく調査して大変御苦心の後を拝見していますが、一体この資金はどの位のものであるか、どう現れているかどうかです。
○石原昌淳君 特別資金の設定は一九五二年度でガリオアは打切られる訳です。そこでこれに対して後に続くものとして或はこれと並行して別送(ママ)の資金を取計って欲しいという趣旨です。従って資金は基本施設と校舎の復旧については飽くまでも政府事業でやって戴きたいという趣旨です。住宅については資金の融資と資材の調達をやって欲しいという趣旨です。金額は表に予想所要金額を現わしているので之丈けの事業が出来るという総額の累計はしてありません。
○議長(知花高直君) 暫時休憩致します。
  (午後三時十二分休憩)

  (午後三時十四分開議)
◎議長(知花高直君) 再開致します。
 只今第一部委員長の報告通り陳情第十三号原案通り可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って陳情第十三号は原案通り可決確定致します。

◎議長(知花高直君) 次ぎは日程第十一の陳情第十四号を議題と致し、提出委員長の説明を求めます。
陳情第十四号
  日本杉材輸入促進の件につき陳情書を提出することについて
日本杉材輸入促進の件について別紙の通り陳情書を提出致したく議会の議決を得たいので提案する。
 一九五一年十二月二十一日提出
   第一部委員長 石原 昌淳
  別紙は議長一任
◎第一部委員長(石原昌淳君) 沖縄の各種復興の上で住宅の復興が遅れており又住民生活の上に政治的にも、経済的にも、大きな圧力を持っていることは言うまでもありません。その復興のために木材が割高であります。
 それは正式ルートで日本から戦前は一年六十万石位入っていたものが、殆んど正式ルートでは入らないため闇で入る杉材が高いということに原因していることはよく云い尽されたことであります。そこで先にもこれは陳情しましたが、講和会議が発効した場合には日琉の通商貿易が大幅に緩和されるだらうということが、伝えられています。そこでその実行の機会を捕えアメリカ民政府の援助を得て、日本政府の理解ある協力を得正式ルートで復興資材が入る途を開きたい。この問題については、貿易庁としても、手を打っているようだし、又民間の団体でも努力中であり、更に市町村長会議でもこれを正式に取上げて訴えたいという気運にあるし、議会としてもこれを取上げて、一日も速に所要量の日本杉材が正式ルートで入って欲しいという考え方です。そういう考え方で陳情文を出したいと思いますが、文案は準備していませんので、これを議長一任としてやっていきたいと思います。更に宛先は副長官に宛なお日本政府にも宛てたいと思っています。
○議長(知花高直君) 本議題の質疑に入ります。
  (「質問なし」と呼ぶ者あり)
○議長(知花高直君) 質疑を終了して討論に入ります。
◎崎山起松君 希望があります。今の杉材の輸入陳情書、並びに講和会議後に於ける日米両国政府への要望、陳情書の問題でありますが中でも日琉に関する重要問題が、解決されることによって沖縄復興並びに経済再建が、一層力強いのは今更述べるまでもない事です。よってこの陳情書が出されることは結構ですが、更にこれに拍車をかけねばならないと思う。そのためには政府首脳部或は議会代表が行って貰って、日本政府に直接交渉する。或は各個に交渉するか、各政党にも交渉する。そして日本政府に当って出来ない問題は総司令部に交渉することによって難なく解決出来ると思います。一例を申上げますと日本の関税問題は沖縄へ日本から来た細米の輸入、或は今まで滞貨していた蔬菜の輸出などこれは当局の心配とその協力を得て日本政府国会或は政党更に総司令部に当って難なく解決を見たのであります。尚、今の杉材の問題について高嶺先生のお話によると日本は相当の資材があり、又これを出したがっているし、この問題を解決するためには現地からも代表が来て日本政府に当り日本政府の首脳部と共になって、総司令部の天然資源局に当れば解決出来るだろうという話しでした。それで私が知事に希望し、更に中央政府にお願いしたいのはどうしても陳情書を出す丈でなく政府首脳部、議会代表を送って欲しいと思います。尚、日本には商務官もいますが、これらの人々も大いに努力すると思いますが、更に政治的に力の強い政府首脳部並びに議会代表が行けば解決すると思う。
 更にこの運動には相当の費用を掛けて惜しまないもので、是非恒久的中央政府としても相当予算を取るよう要望して欲しいとお願いをするものであります。
○知事(平良辰雄君) 只今の杉材の問題ですが、実は早く行った方がいいと話しは何遍も聞いています。ずっと前に経済部長をやる予定でしたが、許可が出ずズルズルになっています。そういう関係で吾々としても東京在住の先輩代議士などに頼って色々側面的に運動していますが、その内容については、発表し兼ねますが、木材などは農林省でも相当同情して何とか救済したいという考えが強いようであります。そして密輸出が非常に多いそうでそのため濫伐が多くなってそれを一つの理由として輸出計画を建て直して沖縄の復興を助けたいという意向だという通信も来ています。そういう訳で知事としても是非お願いしたいという公文を出したい積りです。それで兎に角沖縄のどういう方面に使うかという問題つまり旅館とか、飲食店など許りに使っては困るという気持ちは向うももっています。いい方面に良く消化出来ればいいがという話しをしているようです。
 それで問題は密輸入を徹底的に取締って貰いたいと要望していますが、議会がこの陳情をやると私などの方も力強くやれるので来月からは何とかなると思います。
◎祖根宗春君 今日これを議会が可決したという電報を打って議決を東京の具志頭議員に伝え運動して貰ったらと思います。それから陳情書は議長一任となっておりますが、陳情書は言葉丈の陳情でなく数字を挙げて今後復旧するものは幾何、復旧率は何%と、具体的に挙げて陳情書が出来たら市町村長会長と知事、議長が、ここの民政府の首脳に当ってこれが実現するまで継続して強力にやって戴きたいと思う。
◎仲村栄春君 今の陳情案は議長一任となっていますが、日本政府丈でなく総司令部及び日本の両院それに各政党にもこれを出して欲しいと思います。
◎議長(知花高直君) 討論を終了致します。陳情第十四号原案通り可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。

◎議長(知花高直君) 日程第十二の陳情第十五号を議題と致し、提案者の説明を求めます。
陳情第十五号
  軍用土地使用料の件につき陳情書を提出することについて
軍用土地使用料の件について別紙の通り陳情書を提出致したく議会の議決を得たいので提案する。
 一九五一年十二月二十一日提出
   第二部委員長 玉城 泰一
  別紙は議長一任
◎第二部委員長(玉城泰一君) 二部委員会の経過報告を致します。割当土地に関する臨時処理条例が出来て以来民は土地使用料が取れるのに軍の使用している土地の使用料は貰えるかどうか或は何時貰えるか、又どれ丈け貰えるかという事について民間でも論議され、又地主側でも関心を持っている問題ですが、特にさる十七日軍民連絡会議の席上知事とゼンキンス中佐の会談中軍用の土地使用料予算は六十万弗と発表されて以来、僅かそれ丈なら不当に安いという不安が出たので、これらの軍用地の地主側の聞きたいと欲する所を吾々議会の名に於て陳情書を出して回答を求めたいという訳で委員会で内容を纏めましたので、これを皆さんに諮って御賛同を得られるなら陳情文を議長に一任してやりたいと思っています。纏めた質問事項は
一、軍用地の使用料は何年何月分から支払われるか。
二、軍から使用料を支払われる土地でこれは勿論現在軍が使用しつつある土地もだが、疑問に思うのは、(イ) 立入禁止区域、(ロ) 民有地それから道路修築のため潰された民有地、(ハ) その他軍命によって使用を制限されている民有地そういう全部に払われるかどうか。
三、軍使用地の使用料額の決定は現在布令によって各市町村にいる土地評定委員会の評定額に準じて軍と民の間に使用料の差があってはならないと思うがどうか。
四、軍使用地の使用料を六十万弗と聞いているが、その算定の基礎について、(イ) 一坪一月の使用料は平均何円か、(ロ) 軍使用地の地目別の総面積はどれ丈か。
 以上四項目について軍のはっきりした意向を聞きたいために陳情書を出したいと考えています。陳情文はこの内容をもって議長一任にしたいと思っています。
○議長(知花高直君) 本議題の質疑に入ります。
◎平良幸市君 軍使用地の使用料は市町村評定委員会で決めた額と差があってはならないというが、差があるという事は土地の状況によって差があるんじゃないですか。
○第二部委員長(玉城泰一君) 不当に安くしてはいかないという意味です。
○議長(知花高直君) 暫時休憩致します。
  (午後三時三十五分休憩)

  (午後三時五十三分開議)
◎議長(知花高直君) 開会致します。陳情第十五号の質疑を終了して討論に入ります。原案に御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って原案通り可決致します。

◎議長(知花高直君) 次は日程第十三の陳情第十六号を議題と致します。提案者の提案理由の説明を求めます。
陳情第十六号
  公安委員会制度存置方の件につき陳情書を提出することについて
公安委員会制度存置方の件について別紙の通り陳情書を提出致したく議会の議決を得たいので提案する
 一九五一年十二月二十一日提出
    十六番議員 新里 銀三
  別紙は議長一任
◎新里銀三君 群府解消に伴って公安委員会制度が廃止になることが報ぜられて以来、各新聞及び一般社会でも是非警察民主化を図るため存続させて欲しいという要望が強くなって来た訳です。よって立法院でも法曹会代表、政党代表を呼んで意見を聞いた際全員が一致して公安委員会制度の存続を強く要望したのであります。員数や選任については後で決めるとして制度自体はなくてはいかん。成程専門家の上に素人が来て指導監督することは矛盾した所があるかのようにも思いますが、日本時代の警察国家制度に慣れ甘んじておったからであります。それでもし公安委員制度がなくなったと仮定した場合今後の政治は政党政治によって動くことが予想されるので、この制度がなかったら警察官が知事の直属になるという事が既に非民主的警察に後戻りする事になります。それで警察官自体でも政治警察を見た時は知事の交代する度に警察官の異動が頻繁になり常に戦々恐々落ち付いて職務を取ることは出来ないことになります。よって警察が公安委員会の下に政治的色彩を持たないということは常に民衆から公正を信頼される所以と思います。警察民主化がああ強く要望されるのは既に過去において警察国家を形成し、民衆を欺むいた歴史から見て異論のない所であります。折角民主的な制度が与えられ乍ら、これを中途で放棄することでは沖縄の民主警察が前進することはないと思います。よってその場合沖縄の警察官千百名だから公安委員も千百名要望するという極端な説まで出ている位で、兎に角来年は特に選挙の年だから全く知事から左右されない人格高潔の士を公安委員にすることが、警察民主化を早くする途と思うのであります。この二部委員会でも議会の懇談会でも是非必要だというので陳情文は議長一任になっていますが、この制度はまだ一年の実績で見るべきものはありませんが、然し制度は必要であって、その制度と同時に予算面を獲得して運営面の強化を図って行けば円滑に運営され、警察の民主化が実現すると思って是非存続させたいと思うのであります。
◎議長(知花高直君) 時間を延長します。
○新里銀三君 皆さんの御意見を聞いて御賛成なら陳情したいと思います。
○議長(知花高直君) 只今十六番から趣旨の説明がありました。本議題の質疑に入ります。
◎祖根宗春君 今公安委員会は欠員があるようですが、知事としてはどういうお考えで補充されないのか。それから委員長の山田さんが辞められたのを新聞では見ていますがその経緯について伺いたい。尚又一年余りの実績についても伺いたい。
○知事(平良辰雄君) 山田さんが辞めた理由は充分御承知と思いますが、軍から出来ないという事でした。実績について、どういう実績が上ったかということは申し兼ねます。それは警察本部長から話しがあった筈です。それから補充しないのは今はっきりしないので十二月頃軍から組織法が改正になるかどうかも分りませんし、又折角推薦するにしても先の見通しがなくてはやるわけにはいかんので保留してあります。
○議長(知花高直君) 暫時休憩致します。
  (午後四時三分休憩)

  (午後四時九分開議)
◎議長(知花高直君) 開会致します。陳情第十六号の質疑を終了して討論に入ります。原案に対し御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って陳情第十六号は原案通り可決致します。

◎議長(知花高直君) お諮り致します。先程可決されました陳情第十五号の軍用土地使用料の件について別紙陳情調制(書調製カ)並に今後の措置をなさしめるため特別委員会を設置致したいと思います。就きましては本件を本日の議事日程に追加致したいですが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って日程は追加せられました。
◎議長(知花高直君) 只今追加せられました日程の軍用土地使用料に関する別紙陳情書調製並に今後の措置をなさしめるため特別委員会を設置するの件を議題と致します。
 軍用土地使用料の支払等につきましては軍使用地内に土地を有する地主の最大関心事であり、問題の重要性に鑑みまして、特別委員会を設け別紙陳情書作成は勿論、民政府への交渉その他を同委員会に一任致したいと思うのであります。依って特別委員会を設けたいと思いますが、御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って特別委員会を設けることに致します。その委員数は十名に致したいと思いますが、御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って委員数は十名に決定致します。それから委員は議会の選任となっております。就きましては本特別委員会の委員の選挙を致さねばなりませんが如何取計いますか。
◎宮城久栄君 委員は選挙の手続を省略して議長から指名されんことを望みます。
◎議長(知花高直君) 只今七番議員から選挙の手続を省略して、議長指名にして欲しいという動議がありますが、御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決し議長から本特別委員会委員を指名致します。
 議長、副議長、第一部、二部各委員長と中部地区出身議員、仲村君、平良君、長浜君、崎山君、野原君、それに仲井真元楷君以上十名を指名致します。以上十名にお願いすることに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決しました。

◎知事(平良辰雄君) 全部の議案が終了しましたが、永い間慎重審議に努力していただき結構な決定をしていただきまして有難うございます。
◎議長(知花高直君) 今期議会に提案された案件は全て真剣に審議されたことを厚く御礼申上げます。全部終了したので今期議会はこれをもって閉じることに致します。
  午後四時十二分閉会

 出席者は左の通り
  議 長  知花 高直君
  副議長  稲嶺 盛昌君
  議 員
  仲村 栄春君 石原 昌淳君
  普天間俊夫君 宮城 久栄君
  平良 幸市君 玉城 泰一君
  長浜 宗安君 祖根 宗春君
  山城 興起君 新里 銀三君
  新城 徳助君 崎山 起松君
  仲井真元楷君
  群島知事   平良 辰雄君
  総務部長   幸地 新蔵君
  財政部長   仲宗根秀俊君
  経済部長   呉我 春信君
  工務部長   渡嘉敷真睦君
  警察本部長  仲村 兼信君
  法務部長   知念 朝功君
  公安委員   桃原 亀郎君
  〃      新垣 義常君
  財政副部長  久場 政彦君
  工務副部長  神谷 米信君
  警察本部次長 西平 宗清君
  主計課長   板良敷朝基君
  消防課長   下地 寛忠君
           (終)
 一九五二年三月十八日
    沖縄群島議会議長
      知花 高直 捺印
 一九五二年三月二十五日
    会議録署名人
      長浜 宗安 捺印
 一九五二年三月二十六日
    会議録署名人
      松本 恭典 捺印
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