- 組織名
- 沖縄群島議会
- 開催日
- 1951年12月17日
(昭和26年)
- 会議名
- 第12回沖縄群島議会(定例会)第一部委員会 1951年12月17日
- 議事録
- 第十二回沖縄群島議会第一部委員会
一九五一年十二月十七日(第一日目)月 於議会々議室
午前十時二十分開議
○委員長(石原昌淳君) 開会致します。出席九名、欠席一名(出張中)であります。本委員会に付託になりました事件の審査を致します。先ず最初に議案第八十五号沖縄群島砂糖及び砂糖容器検査手数料徴収条例制定についてを議題と致し、当局の説明を求めます。
○経済部長(呉我春信君) 御説明申上げます。
先の議会に於きまして、沖縄群島砂糖及び砂糖容器検査条例が制定されましたので、それに関連して今回は其の手数料の徴収条例案の審査を御願いした訳であります。此処で御断りしておき度い事は前の議会に於て産業、生産の保護育成の立場から又議会からの御要望もありましたので、砂糖樽の検査手数料は徴収しないと申上げておきましたが、法制審議会に於て検討した結果、検査の権威を持たすためには実費程度の範囲内で徴収すべきであるとの意見がありましたので取る事にしてあります。よろしく御審議の程を願います。
○委員長(石原昌淳君) 質疑に入ります。何か御質問ありませんか。
○祖根宗春君 条例では砂糖容器は木箱としてあるが、最近の新聞によると紙箱を使用するとか報道されているがどう云う訳か。
○経済部長(呉我春信君) 御説の新聞報道の件は単なる試売のためでありまして紙箱を使用すると云う訳ではありません。
○石原昌淳君 砂糖容器の手数料は生産者に転嫁されるから、取らぬ様に規定すべきであると特に要望しておりましたが、本条例に取る事になっているが、どう云う訳ですか。
○経済部長(呉我春信君) 御説明でも申上げました通り法制審議会での検討の結果、検査の権威を持たすために実費程度の手数料を取る事にしております。
○祖根宗春君 本条例に依る手数料はどのくらいの収入を予定しておりますか。
○経済部長(呉我春信君) 大方の予定で二十四万円程度を見越しております。
○石原昌淳君 群島政府が解消になった場合、検査員は中央政府に移管なる見透しがあるか。
○経済部長(呉我春信君) そのまま移管なると思います。
○石原昌淳君 手数料は実費以上にはなりませんか。
○経済部長(呉我春信君) 検査員の費用を賄うための実費程度であります。
○石原昌淳君 砂糖の検査はどこで誰が受けるか即ち生産者が受けるのであるか移出業者が受けるのであるか、此の点について伺います。
○経済部長(呉我春信君) 目的からして移出するのが対象でありますから移出者が受けるのであります。
○祖根宗春君 砂糖樽が百円程度それに手数料となると生産者の負担が尚重むことになるので紙箱の使用をも考えられないものか、若し手数料を徴収せないですむなら免除してはどうか。
○経済部長(呉我春信君) 紙箱使用により生産費を少くする必要はないかと云う御説の様ですが、商品としての価値を高める意味からして容器もまちまちでなく、樽に統一したのであります。容器が不統一のため即ち紙箱使用等により品質を悪くした場合、却って損失を招く結果になると思います。砂糖は世界の市場で競争するので容器の統一、品質の保持向上等をも考えて商品価値を高めねばなりません。尚コストの低減等をも行政其の他別途の方法で考えております。
○平良幸市君 検査費用を賄うため手数料を取るのでなく、検査の完璧を期するため又は権威を持たすために取るとの部長の御説明の様でありますが、生産者の負担を軽くするためには手数料を取らぬ様にしては完璧を期することは出来ないものか。
○経済部長(呉我春信君) 実費以内程度の手数料は検査の完璧を期する上からよいと思います。
○祖根宗春君 アメリカからザラメ糖が二重封筒に入れて来ますが、あの包装は二ケ年以上ももてる。生産者の負担も軽くする意味からして、その空袋に黒糖を入れる事についても経済部に於て尚研究して貰いたい。
○委員長(石原昌淳君) 尚別に質疑ありませんか。
(「質疑なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(石原昌淳君) 質疑がなければ討論を省略して表決に入ります。
本案は原案通り可決したいと思いますが、別に御異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(石原昌淳君) 御異議ないと認めます。依って議案第八十五号は原案通り可決致します。
○委員長(石原昌淳君) 午前はこれで終える事に致しまして午後一時再開致します。
午前十一時四十分休会
午後一時十分再開
○委員長(石原昌淳君) 開会致します。議案第八十六号沖縄群島鮮魚卸売市場条例制定についてを議題と致します。当局の説明を求めます。
○経済部長(呉我春信君) 鮮魚市場条例について簡単に御説明申上げます。現在の鮮魚介類の取引状況は生産者より仲買人の手に渡り、仲買人より小売業者に更に一般消費者にと云う段取が不安定であり、漁獲の少い時は高く多い時は安くなる状態であります。
生産者は泊港に鮮魚を揚げて来た場合、仲買人まかせであるため生産者には値段の取り決めがなく仲買人の勝手で値段が決められている。更に小売業者は一斤から二円乃至三円をもうけ斤量な(ママ)十二斤を十斤勘定で受取っているのであります。それで生産者は売るのに苦労をし、仲買人の勝手の儘に取引をし、或は金策のために前借等をもしている状況であります。一方又消費者は其の日の出廻り状況により相場の変動があって、一般消費者は日々の相場がわからず、従って市場に寄り付かない状況であります。
生産者と市場は高く売ろうとするし、小売業者と消費者は安く買うとする。この調節を計るためには是非共販売機構を整備し、取扱を叮寧にし、商品価値を向上せしめねばならんのであります。其の便宜発達を計るためには健全なる公共的市場を持ち、生産者が水揚をしたら入札をして相場を定める事によって、値段の不安定も解消し、生産業者も安定し、一般消費者も助かるのであります。それで本条例案を提案したのであります。尚本機構の整備に対しては或程度の補助をも考慮していきたいと考えております。よろしく御審議の程を御願い致します。
○委員長(石原昌淳君) 質疑に入ります。
○石原昌淳君 現在のアチョウルー(ママ)はどうなりますか。
○経済部長(呉我春信君) セリ又は入札によって中間業者が取ったものを小売業者の手に渡る事になります。
○石原昌淳君 仲買人は小売をすることも出来るか、又法人も個人も出来るか。
○水産課長(銘苅清徳君) 仲買人は小売をすることも出来ます。次に法人も出来るかとの御質問ですが方針としては法人であるが個人も出来ます。
○祖根宗春君 第三条第六号の取扱手数料第七号の市場使用料両方共取るのですか。
○水産課長(銘苅清徳君) 市場使用料は取扱数量の五分の三以上の鮮魚を市場に上場した場合であります。
○石原昌淳君 第五条第七号は経営者が仲買人の指定条件として知事の認可を得る事になっているが、仲買人は企業免許を受けた者は誰でも出来る様に自由にさせたらどうか。
○水産課長(銘苅清徳君) 経営者が指定の条件をせないと仲買人が自己の都合のよい様に自由にしたら経営者が困るからであります。
○経済部長(呉我春信君) 仲買人の指定には保証制度があります。
○祖根宗春君 経営者と仲買人が談合するおそれがあるが、何か之を合法的に規制することは出来ないものか。
○水産課長(銘苅清徳君) 仲買人は資本とか、人望とか、経験等を勘案して指定するのでありまして、誰にも自由に出来るとしたら経営者が困難致します。
○祖根宗春君 仲買人の推薦を経営者にして知事が認定する事にしたらどんなものですか。
○経済部長(呉我春信君) 第五条第七号の仲買人の指定の条件については政府の監督で是正出来るから原案通りにして戴きたいのであります。
○祖根宗春君 第十二条の手数料はどの程度を見積っていますか。
○水産課長(銘苅清徳君) 仲買人の手数料は斤二円は決まっているが、生産者と小売人との値段は十円程度の開きがある様であります。それで単価に対し手数料は三分か五分以内と考えております。
○石原昌淳君 第十二条第二項に於て手数料を定める場合、知事は代表者の意見を聞くことが出来るとありますが、そうした場合一方聞かなくてもよいと解されますので第二項はおく必要はないと思います。若し第二項を置く必要があればむしろ代表者の「意見を聞かなければならない」と修正したらどうかと思います。
○経済部長(呉我春信君) 第十二条第二項の意見を「聞くことが出来る」とは「聞くことを得」の口語体であるからよいと思います。
次に意見を「聞かなければならない」と修正することは却って知事の伸縮権限をせばめられる事になると思いますので原案が適当と思います。
○祖根宗春君 第二十条の罰則についてでありますが、条例では軽罪とか規定出来ない。又群島組織法では軽罪は一万円以下の罰金刑となっていると思うが、本条に於て二万円以下の罰金を規定してあるが適法であるかどうか。又罰金に「処する」と「科する」とは法律用語に於てどう違いますか。
○経済部長(呉我春信君) 罰則については法制審議会で関係法文等調査の結果、差支えないとの事であります。「処する」と「科する」ははっきりした事は知りませんが、直接間接の違いではないかと思います。
○委員長(石原昌淳君) 以上で質疑を打切り、討論に入ります。何か御異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(石原昌淳君) 別に御異議がなければ表決致します。本案を原案通り可決することに御異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(石原昌淳君) 御異議ないと認めます。依って本案は原案通り可決致します。
○委員長(石原昌淳君) 本日の委員会はこれで終了致しまして明十八日午前十時より本委員会を開催致します。
午後三時二十分散会
一九五一年十二月十八日(第二日目) 於議会々議室
午前十時開議
○委員長(石原昌淳君) 開会致します。出席九名、欠席旅行中の一名であります。本日は議案第八十二号一九五二年度歳入歳出追加更正予算についてを議題と致します。当局の説明を求めます。
○財政部長(仲宗根秀俊君) 議案第八十二号に対し簡単に御説明申上げます。本案は主としてマージ、ルース颱風災害復旧費に関してでありますが、マージ颱風の場合は軍と共に被害現状調査をやり、災害現場に於て知事が直接説明し、軍は其の災害復旧に対しては五〇〇万円の補助をする旨の話がありましたので、其の件に付き軍と再三交渉した結果、軍は既定予算の道路維推費から出せとの事であります。而し吾々としても道路予算は予定しておりますので、従って他の費用から縮減してやろうと計画中のところ、たまたまルース台風が襲来しましたので、知事が更に災害復旧費に関し、交渉を致しましたら、今度は資材はやるが資金はやらないとの事であります。そこで仕方なく既定予算より大幅の節減をして災害復旧補助費より一、二〇〇万円、行政費より八一七万円計上して軍と折衝した結果、与根、奥武は九、二七九、二〇〇円の補助に対し二、六五五、九五七円の補助削減になったのであります。更に補助金に対しては八八棟の校舎完了後に検討するとのことになったのであります。それでマージ、ルースの台風被害復旧費に関しては別紙第一号表(ママ)の通り各部の消費的経費を節約して充当し、其の他各部に於ける追加更正は別表第二号の通りその部内でのやりくりをしたのであります。
農林省からの補助についても条件付になっておりますのでその条件によって編成したのであります。尚詳細に亙っては質疑によって御答え致します。よろしく御審議を願います。
○委員長(石原昌淳君) 質疑に入ります。
○祖根宗春君 本予算の経費節減の理由即ち当初予算に於てゆとりのある編成だったのか、或は節約してねん出したのであるか。
○主計課長(板良敷朝基君) 別表の通り消費的経費から圧縮したのであります。即ち備品、消耗品、油脂燃料費、薪炭費、賃貸料等より節減したのであります。備品あたりは年度計画でありますので、がまんして貰う様にしてあります。
○祖根宗春君 歳出経常部第二部知事室事務局の七〇、九〇〇円の減は大きいがどう云う訳ですか。
○主計課長(板良敷朝基君) 十二月以降の油脂燃料費を工務部の臨時部で賄う様になったからであります。
現在迄油脂燃料の基本消費量の明確なる設定がなかったが今回工務部でその基準量の設定をしたための減と台数減の節約であります。
○平良幸市君 第五部の建築費を減じて印刷費へ二一六、〇〇〇円増した理由と第六部の経済部費の説明を願います。
○主計課長(板良敷朝基君) 倉庫を造る予定を止めて税務署の印刷費へまわしたのであります。税務署では今回の徴収条例の制定によって、滞納告知書其の他の印刷が当然必要となったのであります。
○経済部長(呉我春信君) 今回の経済部関係の追加更正は最初行政費で以て賄っていましたが、農林省より二、五五九、二八七円の補助金が参りましたので之と編み替えて行政費は別に廻わしたのであります。農林省よりの補助金は第六部第一款第一〇項の予算説明欄3、12、23、6、7、8、による説明の通りであります。第一一項移殖民奨励費は講和会議も終了しましたので本格的な移殖民奨励をしたいと云う趣旨で五〇万円海外協会への補助金として追加したのであります。主として移殖民に関する印刷物を発行したいと考えて居ります。
○石原昌淳君 第二項(一一カ)の移殖民奨励費は予算面よりは直接政府がやる費用のように解されるが海外協会への補助金であれば然可く明記して頂きたい。
○経済部長(呉我春信君) 第二項(一一カ)は海外協会への補助金でありますので、御説の通り海外協会への補助金と明記することに致します。
○仲村栄春君 補助に対して三分の一とか三分の二とかの補助率があるが何を根拠にしているか。
○経済部長(呉我春信君) 補助率の根拠は利益の上る事業又は廻転の早い事業、遅いもの等を勘案してやっているのであります。工業面等には二割程度を補助しております。
○祖根宗春君 農林省からの補助金は使途を指定されているが、移殖民奨励費はどこからねん出したか。
○経済部長(呉我春信君) 使途は明細に指定されているが残りの費用はここで適当に運営しております。移殖民奨励費の五〇万円は農業研究指導所俸給からねん出してあります。
○祖根宗春君 第七部第九項第一目の復旧工事費は土木費に計上してあった一、〇〇〇万円の予算とはどう云う関係にありますか。
○主計課長(板良敷朝基君) 土木費は颱風被害復旧工事費とは関係ありません。
○祖根宗春君 今回の颱風被害復旧工事個所の選定の場合、順位はどう云う風にして決めたかその方針を伺いたい。
○土木課長(伊佐真人君) 奥武、与根の二ケ所の工事はこれは軍より直ぐ復旧する様に指令されたのであります。糸満は漁港として総工事費の一割五分は町負担であります。町村工事は二割乃至一割五分の町村負担であります。港湾は二割、特に地元の利益を受ける所は一割、公共性を帯びる所は補助率を下げてあります。
○石原昌淳君 第九部第四款の増はどう云うわけですか。
○主計課長(板良敷朝基君) 第九部第四款刑務所費の百万円余の増は囚人六〇〇人の予定が現在一、二〇〇人に増加したため、主としてその食糧費の増であります。
刑務所費の増額に対しては第九部の法務部内の予算範囲内に於いてやりくりしてねん出しております。
○祖根宗春君 刑務所職員が薄給のため、職務をおろそかにし囚人が逃げたと云う事だが外の部との均合(ママ)はどうか。
○主計課長(板良敷朝基君) 別の部との均合(ママ)はそう違いませんが警察部とは開きがある様です。
○新城徳助君 刑務所職員の手不足のため現在八〇〇名余りの囚人の内四〇〇人程度しか就働しないとの事だが、囚人一人七十五円の収人がある様だが税外収入も減る事になるので考慮する必要があると思います。
○石原昌淳君 刑務所費中諸手当迄削減を加えてあるが無理はないか又従来より悪くはならないか。
○法務部事務官(我謝秀文君) 諸手当の減は今迄の分を節約したのでありまして、今迄よりは悪くはならないと思います。
○平良幸市君 囚人の作業収入は増額の見込みがありますか。
○法務部事務官(我謝秀文君) 増額の見込みはありません。
○平良幸市君 第十部警察部予算中油脂燃料費、衣料費の減じた理由と通信費の増について御説明を願いたい。
○警察本部次長(西平宗清君) 油脂燃料費の減は、土(十一カ)台分の燃料節約による減で、衣料費の減は衣料の購入見合せによる減であります。通信費の増は通信費の値上りによる増で別の部は七月に追加してありましたが、警察部は今回追加を御願いしたわけであります。
○仲村栄春君 警察部の回答では派出所を計画していたが造り得なかったとの事だが、地方に於ては派出所はなくてもよいと云う御考えですか。
○祖根宗春君 駐在所、派出所の費用を予算化して貰いたい。
○財政部長(仲宗根秀俊君) 御説の駐在所の件については警察部からの要求もありましたが、警察のみでなく其の外にも適用すべきであるとの事で、現在の群島の財政では総ての要求を充たすのに困難な状態でありましたので、今後然可く考慮に入れる積りであります。
○崎山起松君 泡盛の移出に対しても補助の政策を考慮して頂きたいことを経済部に要望致しておきます。
○委員長(石原昌淳君) 臨時部の質疑に入ります。
○平良幸市君 第二部総務部費の移動費は一千万円の減になっているが不足はしないか。
○財政部長(仲宗根秀俊君) 不足の場合は追加致します。
○仲村栄春君 臨時部で九百九万六千円余り削減になっていますが、余ると云う意味で減じたのですか。
○財政部長(仲宗根秀俊君) 最初に令達したのが多いようだったから減じたとの事であります。その内から学校関係を考慮するとの事であります。
尚減じた理由として、資材は買入れたが買手がないため廻転資金に困難を来たしている様であります。知事、部長として、この九百余万円から災害復旧費並に学校建築費を出して貰う様、要望致しました処、考慮するとのことであります。
○委員長(石原昌淳君) 尚別に質疑ありませんか、質疑がなければ討論を省略して表決致します。
○委員長(石原昌淳君) 本案を原案通り可決する事に御異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(石原昌淳君) 御異議ないと認めます。依って議案第八十二号は原案通り可決致します。
○委員長(石原昌淳君) 本日の委員会はこれで終了致します。
午後二時三十分閉会
一九五一年十二月二十日(第三日目) 於議会々議室
午後一時開会
○委員長(石原昌淳君) 只今から第一部委員会を開きます。出席八人、欠席二人であります。
○委員長(石原昌淳君) 本日は付託事件中審査未了になっておりまする沖縄群島税徴収条例案の審議を致しますが、最初に軍との折衝経過に付きまして財政部長の説明を聴取致してから審議に入りたいと思います。
○財政部長(仲宗根秀俊君) 只今議題になりました沖縄群島税徴収条例案につきましては、此間本委員会の審議に際し色々疑義があって即ち各種税条例中賦課に関する条項が本案に規定されておりました。重複記載があったので吾々の方で軍に折衝致し了解の下に削除修正を加えまして原案を印刷替致したのであります。皆様に配付済の原案を振替えして頂きまして、今回の分で更に御審議を願うことに致しました。どうぞよろしく御願い致します。
○委員長(石原昌淳君) これでは只今配付を受けました原案を一応全条文朗読願いましてそれから逐条的に質疑を進めることに致します。
(主税歳入課長事務取扱「祝嶺春徳君」朗読)
○委員長(石原昌淳君) 本議題の質疑に入りますが、逐条的質疑に入ります前に一応全般的の質疑を先に致します。
○祖根宗春君 年度初めなら兎角、群島政府も後二、三ケ月の期間しかないので、本条例はつくらないで従来通りの司法処分で措置した方がよいと考えるがどうか、又本条例案は日本の国税徴収法に比較して不完全であり、斯様な不完全なものを議決するのもどうかと思う。それから五二年度申告所得税の課税は地方別に、業種別に不公平にしてでこぼこが多く不満の点が多く、特に南部地区は平均高過ぎる。前年度の六倍平均になって、而も再査定の要求も十分処理されてなく一般民の不満の声が多い。そう云う時に強行規定を作って行政処分をすると云うことは妥当でないと思うがどうか。本案は時期遅れであるので従来通りの司法処分、告発で処理して貰った方がよいと考える。出来得れば審議未了にして中央政府に引継いだ方がよいと考えるが、当局の見解を伺いたい。
○財政副部長(久場政彦君) 司法処分に依ると長く掛るので困る。どうしても行政処分でないといけません。本案が不完全と云われるが日本の法規の内で現在の沖縄群島税に適する分を取捨選択して立案してあり、不完全ではない。五二年度申告所得税にむらがあり、不満あるのは事実で、吾々の方は異議の申立に対して現在善処中であり、吾々の方は何も無理一方的に決まった税金を取り立てるために本案を作ったのでなく、賦課の適正は期して行き、法規に基いて処理をするものであります。本条例の時期を失した点は誠に遺憾に思うが、一応予算も編んで来たので、税収入面の確保強化を図る意味から、是非本条例を設定致したいのであります。
○祖根宗春君 五二年度所得税の不当課税のため、本条例を設定し強行に之を実施することは一般の税務当局に対する反感を招くおそれがある。税務官の横暴な態度は一般の反感を買っておる。余りに官僚的で異議申立てのため税務署に行くと頭からおさえつけるといった態度で大方は泣寝入の形である。殊に最近の新聞に報道された某パンパンガールの「税務官吏に貞操を奪はれ自暴自棄になってパンパンに転落した」と云う告白の記事があった。それから税務官吏の無銭遊興等色々聞いているが誠に遺憾に思うが、これに対する当局の今後の措置について伺いたい。
○財政副部長(久場政彦君) 従来の司法処分は人権上の問題で調査かれこれで期間的長く掛ったのでありまして、これを早く処理する必要から本条例に依り、行政処分を行い、税収入の成績を上げたい。尚税務官吏の態度については吾々の方では十分注意しているのでありますが往々にして若い血気にはやり、一般に対し非難される様な態度を取る者があって、誠に済まないと思っております。今後充分気を付ける様に致します。
○仲井真元楷君 滞納処分については司法処分にしろ行政処分にしろ十分納得のいく様に注意して貰いたい。それでこの条例審議に際しては十分各委員において吟味して納得のいく迄やりたいが、原案の内容の訂正が再び可能であるかどうかを伺いたい。
○財政副部長(久場政彦君) 今迄のは理論上はっきりしたため、軍の諒解を得て修正したが、今期議会で内容はその儘で可決していただく様う御願い致します。
○長浜宗安君 前の原案には税務協議委員会の規定があったが今度の分はそれがないが。
○財政副部長(久場政彦君) 税務協議委員会の規定は税の賦課に関する規定であって、徴収条例に規定すべき筋合のものではないので削除されたのであります。
○財政部長(仲宗根秀俊君) 税の賦課と徴収は不可分であり、今迄賦課の税法はあったが徴収関係の法規がなかったので集成刑法によって司法処分でやっていたのである。八重山群島では旧法に依って税を賦課しているので、徴収面は日本の旧滞納処分法でやっている。司法処分では非常に長引く、近く群府も解消するので中央政府に移ることになるが、群島政府としては過去の滞納は出来る丈整理して中央政府に引継ぎたいと云うのが吾々の念願であります。その意味からして、行政処分に依り徴税成績を挙げる様う善処したいので本案を提案したのであります。五二年度の申告所得税の再査定については今迄に相当件数処理済でありまして、異議申立に対しては極力善処致しております。
○崎山起松君 申告納税の原則は納税義務者の人格を尊重することが立前であり、沖縄ではアメリカ見た様に納税思想がよくない、不当の申告をしたり、滞納したりする。勿論完納であれば徴収条例は必要としない、納税の義務を履行しない者については処分することは当然である。ただ本員の要望することは税額の調定について十分意を払い公平な課税をして欲しい、そうすれば納税成績は向上する。
○祖根宗春君 五二年度の申告所得税の成績を見まするに北部の成績は良好である。それは税額が少いからである。北部十七ケ町村の調定額が七〇〇万余円で、糸満町だけでも一千万円を越えていると云うことは南部の税額が不当であることを物語っている。不当であるからには納税者の気持も汲んで再査定の上これを解決してから本条例を出した方がよいと思うがどうか。
○財政部長(仲宗根秀俊君) 南部の不当としているものでその儘ほったらかしているのではなく、異議申立は総て処理しているのであります。
○祖根宗春君 申告所得税は確定申告でなければ処分出来ないと思うが見解はどうか、それから四十八年度の所得税の滞納について本条例を適用するか、当局はこれにふれるかふれないか。
○財政部長(仲宗根秀俊君) 五二年度申告所得税の確定は来年五月になっている。納期経過後差押処分は出来る。然し公売処分は確定後でしか出来ない。
○財政副部長(久場政彦君) 四八年度分の所得税滞納者についても、此の条例が出れば、処分して行かなければならないと思う。
○新城徳助君 四十八年度所得税については、その税額を半額にすると云うことを前の宮里財政部長は言明した様うに聞いたが。
○財政副部長(久場政彦君) 半額にして貰う様軍に申請したが軍から何の回答もないのです。半額にすると云う言明ではなく、軍に申請するといわれたのです。
○平良幸市君 此の条例は制定後中央政府に引継がれることになると思うが、中央政府で吾々群島議会が議決したこの条例に依り四八年度の滞納税金についてピンピン(ピシピシカ)処分せられては、沖縄住民は非常に困ることになる。それからこの条例の標題は沖縄群島税徴収条例となっているが群島税と称せられるものは群島組織法発布後の諸税と見て、四十八年度の所得税は群島税にはならんと思うが、此の条例の適用範囲を明確にするため附則に規定を挿入する必要はないか。
○財政部長(仲宗根秀俊君) 御説の通り此の条例の適用範囲の規定は附則に挿入する必要を認めます。四十八年度所得税につきましては既納の税金は軍収入となっており軍の方では既に使って仕舞っている。払戻も出来ない様であります。尚滞納者については、所在不明、財産破産のものもあって手の付け様もないと思います。
○委員長(石原昌淳君) 本案の全般的質疑は大体これ位に致しまして、各条文について逐条的に質疑を進めることに致します。
○委員長(石原昌淳君) 第一条の質疑に入ります。
(「質問なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(石原昌淳君) 第二条に移ります。
(「質問なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(石原昌淳君) 第三条に移ります。
(「質問なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(石原昌淳君) 第四条に移ります。
○仲村栄春君 第四条は徴収延期の規定であるが減免の件はどうなりますか。
○財政副部長(久場政彦君) 減免の方は賦課の面で規定すべきであります。
○委員長(石原昌淳君) 第五条、第六条、第七条一括しての質疑に入ります。
○仲村栄春君 第七条の七日の期限は余りに短かい様な気がするがどうか。
○財政副部長(久場政彦君) これは納税義務者が書類受領を拒んだ時、居住所不明等の場合の公示送達の期限で七日間で結構だと思います。
○委員長(石原昌淳君) 第八条、第九条、第十条に移ります。
(「質問なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(石原昌淳君) 第十一条に移ります。
○仲村栄春君 本条第十号、第十一号は一括して第十一号に含ましめて規定してはどうか。
○財政副部長(久場政彦君) 第十号は農業生産面に支障を来たさしめない様に特に規定されたものであり、一括するよりは矢張り原案通りの方がよいと思います。
○委員長(石原昌淳君) 第十二条、第十三条、第十四条、第十五条に移ります。
(「質問なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(石原昌淳君) 第十六条に移ります。
○山川宗道君 天然及法定果実とは例えばどういったものか。
○財政副部長(久場政彦君) 豚の子、鶏の卵は天然の果実で、金利とか株の配当とかは法定の果実であります。
○委員長(石原昌淳君) 第十七条、第十八条、第十九条、第二十条、第二十一条、第二十二条、第二十三条、第二十四条、第二十五条、第二十六条、第二十七条、第二十八条、第二十九条、第三十条を一括しての質疑に移ります。
(「質問なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(石原昌淳君) 第三十一条に移ります。
○崎山起松君 会社が解散した場合はどうなりますか。
○財政副部長(久場政彦君) 会社が解散した場合は清算人がやります。
○委員長(石原昌淳君) 次は第三十三条、第三十四条、第三十五条に移ります。
(「質問なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(石原昌淳君) 附則に入ります。先程平良委員から適用範囲に関する規定を入れる必要ないかとの質疑がありましたが、当局の方もその必要を認めておられる様ですから後刻お諮りすることに致しましてこれで質疑を終了致します。休会致します。
午後四時〇分休会
午後四時三十分開会
○委員長(石原昌淳君) 開会致します。議案第八十三号を議題と致し討論に入ります。
○平良幸市君 本条例案につきましては、先刻来各委員から活溌な質疑が行われたのでありますが、従来の司法処分では人権上の問題で調査かれこれ長く掛るので成績が挙らない。どうしても行政処分でなければならない。それから群島政府が近く解消せられるので、出来る丈滞納を整理して、中央政府に引継ぎ度いとの念願の下に本条例を制定して、極力納税成績を挙げたいとの当局の熱意とその趣旨を諒として賛意を表する者であります。尚現在の滞納者に於ては本当に悪質者と思われるものもあって、どうしても行政処分によって強行に処分をしなければ、納税思想に悪影響を及ぼすことになります点を考えまするに、本員はどうしても本条例を制定する必要を認めるのでありますが、然し本条例の適用範囲については、どうしても附則に挿入する必要がありますので、附則の「この条例は公布の日から施行する」とありますのを「この条例は公布の日から施行し沖縄民政府が賦課した一九五〇年以降の税から適用する」に修正して、その他は原案通りに、本案一部修正の上可決せられんことを望みます。
○祖根宗春君 本員はこの税徴収条例制定については反対するものであります。その理由としては、
一、税法制定が実質的に議会の権限外であるのに徴税法のみ制定するのは不合理である。
二、時期外れである。三月迄存続する群島政府の仕事として完璧を期せられない。滞納処分の差押えしても公売は五月以降の確定申告によるから、それに携はる職員はいない。
三、四十八年度所得税未納者に対する処置が放棄されている。
四、五二年度申告所得税の課税は地区別に税務署別に業種別に不公平にしてでこぼこが多く、不満な点が多い。特に南部地区は平均高過ぎる。予算は前年度比三倍であるが、南部は六倍平均になって過重である。
五、日本の国税徴収法の如く完璧を期したものではない。又犯則条例も制定しないと片手落である。
六、集成刑法の処分規定と本条例と二本建ての法規があるのもよくない。集成刑法の税の処罰条文を廃止すべきである。
以上の理由で本条例制定に反対致します。
○仲村栄春君 本条例制定が時期的に遅れたことは誠に遺憾に思うが、近く解消せられる群島政府の後始末をつける。即ち悪質の滞納者へ対し行政処分を以て強行に実施し、出来る丈けの滞納整理をやって中央政府に引継ぎたいとの当局の熱意に対し敬意を表するものであります。祖根委員は色々理由を挙げられ本条例制定に反対せられたが、就中、五二年度の申告所得税の不当課税の問題については、当局の方では極力善処せられている様であり、異議申立に対する査定について別途努力して貰う一方、本条例は之を先程平良委員の動議の通り附則を一部修正の上可決することに本員は賛成するものであります。
○委員長(石原昌淳君) 只今本案一部修正可決の意見と制定反対の意見が述べられたのでありますが、討論を終了して表決に入ります。
○委員長(石原昌淳君) 本案を平良委員の御意見通り一部修正の上可決することに賛成の方挙手を願います。
(挙手者多数)
○委員長(石原昌淳君) 挙手者多数と認めます。依って本案は附則を修正して可決致します。これで本委員会に付託されました案件全部を終了致したので、本委員会を閉会致します。
午後五時十分閉会
上へ戻る