戦後初期会議録

組織名
沖縄群島議会
開催日
1951年08月29日 
(昭和26年)
会議名
第10回沖縄群島議会(臨時会)第二部委員会 1951年8月29日
議事録
第十回沖縄群島議会第二部委員会
 一九五一年八月二十九日〔第一日目〕於政府会議室
  午前十時二十分開会
○委員長(玉城泰一君) 本日の委員会を開会致します。出席六名、欠席三名であります。
 昨日の本会議に於て本委員会に付託になりました事件の審議を致します。先ず最初に議案第七十三号沖縄群島割当土地に関する臨時処理条例案を議題といたします。本条例は最も重要なる案件で本条例施行により土地所有者と土地使用者間に直接の利害関係を生ずる問題だけに、住民も吾々議会としても又当局としても本問題については大いなる関心と細心の注意とを払って来たのでありまして、本案の審査に当っても一応休会をして当局と共に慎重研究をした上本会(ママ)に於て表決した方がよいと思いますが如何ですか。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
○委員長(玉城泰一君) では休会をして、みっしり研究する事にいたします。
  午前十時三十分休会

  午后三時四十分再開
○委員長(玉城泰一君) 開会いたします。本日の研究会はこれで終了いたしまして明三十日本会議を開いて審議する事にいたします。これで散会いたします。
  午后三時四十二分散会

一九五一年八月三十日(第二日目)
  午前十時十分開会
○委員長(玉城泰一君) 開会いたします。出席六名、欠席三名であります。昨日研究いたしました議案第七十三号を議題といたします。昨日当局と共に慎重研究いたしましたので説明を省略して質疑に入ります。
○山城興起君 第一条の文面についてでありますが、本条例が布告第四号に基いて成案されている条例として一見してよくわかるために第一条の文面を次の様に修正したら如何かと思います。勿論法文上の内容に関しては何んら変更ありません。
  第一条を「この条例は現在所有者以外の者が占有し且つ所有者の法律上の承諾もなく保有してをる土地(以下割当土地という)について一九五一年四月十六日附の米国民政府特別布告第四号第二条の規定に基いて、土地所有者と土地使用者との権利義務に関して臨時の調整を図ることを目的とする」
 と置替えたいのであります。
○法務課長(牧野博嗣君) 第一条の文面については法制審議会に於ても色々論議され意見もありましたが原案通りにしてありますので、御説のように修正しても差支えありません。
○宮城久栄君 賃借料は何時から取るか。
○法務課長(牧野博嗣君) 第二条により四月一日を以て契約と見做すことになりますので四月一日に遡ることになります。
○新里銀三君 布告第四号第一条の一により六ケ月は所有権若しくは使用権を行使してはいけないとあるので第二条は布告第四号に抵触すると思うが如何ですか。
○法務課長(牧野博嗣君) 布告第四号第一条の所有権の行使をしてはならないとあるは英法文を調べて見ると占有権の誤訳であります。法文に於いて和文、英文に相違ある場合は英文を以て本体とするので抵触しないと思います。
○玉城泰一君 占有権と所有権とはどう違いますか。
○法務課長(牧野博嗣君) 占有権とは所有権者でなくても何か自己の目的のためにする意志を以て物を所持する権利を云うのであります。所有権は使用、収益、処分をする権利を有する者であります。
○稲嶺盛昌君 第二条第二項についてでありますが、本条例は四月一日土地所有権認定による土地に関する臨時処理条例であるので、四月一日以前の事項に関しては触れないで土地所有権認定四月一日以後の処理をした方が適当だと思います。依って第二条第二項はかえって紛争を起す項となるように思われますのでむしろ削除した方がよいと思います。
○法務副部長(金城信範君) 第二条第二項を認めないと云う事になりますと、例えば四月一日以前で所有者と使用者と契約を成し金銭の支払もなしてあった場合、使用者は本条例により四月一日以前は認めないことになっているから払戻をしてくれと要求するかも知れない。那覇辺りでは五ケ年契約とか何んとかで相当相互間の契約があるやに承っておりますので、第二項を削除することになれば却って紛争を多くすることになりはしないかと思います。尚所有権と云う事は戦後に於ても継続しておるのでありまして、一九五一年四月一日を以て其の所有権が確認されたと云う事に過ぎないのでありまして、第二項は生かして所有者の立場も考慮した方がよいと思います。尚軍は軍使用地に対しては終戦当時より支払うと云っておりますのでそれとの関連もありますし、所有者使用者間の別段の契約設定は認めた方が妥当だと思います。
○玉城泰一君 契約を認めると云う事は四月一日以前の所有権をも認めると云う事になりはしませんか。
○法務副部長(金城信範君) 先にも申し上げましたように確認がされないだけで所有権は戦前戦後継続して居ります。
○委員長(玉城泰一君) 第三条第一号第二号の問題について公聴会其の他に於て得た参考資料がありましたら承りたいと思います。
○稲嶺盛昌君 第三条は所有者、使用者間に直接大きな問題でありますがために、社大党としても問題を重大視し最も貸借関係の多い那覇、美里、糸満に於て公聴会を開いて住民の希望意見をまとめて来ましたが、美里、糸満に於ては当局案通り希望しておりましたし、那覇は二ケ年を希望して居りました。尚本案を決定付ける参考資料として、美里、糸満に於ける希望意見、去った三月に於ける議会の意見、中央土地所有権認定委員会の意見、政府当局の提案が一致しておりますので本案の期間が最も適当だと思います。
○山城興起君 第五条についてでありますが、市町村賃貸料評定委員会の構成分野、委員の賃貸料評定に対する基準目標、又は参考となるべき目標等、尚第二項の府令で以って定めんとする委員会規程の内容等について腹案があれば御説明を願いたい。
○法務課長(牧野博嗣君) 第五条に関しては別に府令を以って規定したいと思って案を準備してありますが、何分問題が大きいから一応議会に諮問してから成案にしたいと考えております。府令で規定せんとする主なる内容を申上げますと、委員の構成は委員の数五名以上、十五名以下、資格は代表的土地の貸主、及び代表的土地の借主、それに学識経験者を加えた者を以って委員とし、委員は市町村議会の同意を得る事にしたいと思います。賃貸料評定に関しては位置、環境、地形、地質、利用状況、等級、賃貸価格、附近類地の売買価格、通常収穫する主作物の量及び其の価格等を勘案して評定するようにしてあります。一応府令案を読み上げますからそれによって御研究の上第五条の御審議を願います。
  (草案朗読、記載省略)
○新里銀三君 使用者は所有者の権力に圧えられるおそれがあるから使用料に対しても当局に於て基準を示してやった方がよくはないかと思います。
○法務課長(牧野博嗣君) 土地の状況其の他の事情は地元がよく知っているから中央で基準を示す必要はないと思います。委員の構成、評定の目標を示すようにせばそれでよくはないかと思います。
○玉城泰一君 府令は諮問にしてから成案するとの事だが、諮問にしなくても委員会或は全体会議に於て検討をした上府令として公布しても、結果に於ては同じだから何もそんなに仰々しくする必要はないと思います。
○新里銀三君 第六条の鑑定委員は誰が選任するか、資格はどんなものか。
○法務課長(牧野博嗣君) 鑑定委員は裁判(ママ)の諮問委員でありますので従って裁判(ママ)が選任し、資格は裁判(ママ)の裁量によるのであります。
○委員長(玉城泰一君) これで質疑を打切りまして討論に入ります。何か御異議ありませんか。
○山城興起君 本案は昨日休会中に於て慎重に研究され、尚本日、これまで色々質疑もされましたので討論の余地はないと思います。依って本員は本案に対する修正の意見を申上げ各位の御賛同を得て表決したいと思います。修正の個所を申上げます。
 第一条「この条例は一九五一年四月十六日附の米国民政府特別布告第四号に基いて、現在所有者以外の者が占有し且つ所有者の法律上の承諾もなく保有してをる土地(以下割当土地という)について、土地所有者と土地使用者との権利義務に関して臨時の調整を図ることを目的とする」とあるを「この条例は現在所有者以外の者が占有し且つ所有者の法律上の承諾もなく保有してをる土地(以下割当土地という)について一九五一年四月十六日附の米国民政府特別布告第四号第二条の規定に基いて土地所有者と土地使用者との権利義務に関して臨時の調整を図ることを目的とする」と置替える。
 第三条第二行目の「従はなければ」とあるを「従わなければ」と修正。
 第六条二行目中「土地使用者の」とあるを「土地使用者との」と、同条同行中「調はない」とあるを「調わない」と修正する。
 附則の「公布の日から施行する」とあるを「一九五一年十月一日から施行する」と修正し、その他は原案通りといたします。
○委員長(玉城泰一君) 只今の山城委員の修正意見に対し御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(玉城泰一君) 御異議ないと認めまして本案は山城委員の修正意見の通り一部修正の上其の他は原案通り可決いたします。

○委員長(玉城泰一君) 次は諮問第十号警察官職務執行法案について、諮問第十一号行政代執行法案についてを一括して議題といたします。当局の説明を求めます。
○警察本部次長(西平宗清君) 諮問第十号について簡単に御説明申上げます。公安委員法(ママ)により警察は表面的には民主化されたようでありますが、実務に於て適用する法規がないため旧行政執行法により執行せざるを得ないため実質に於て何ら民主化されてなく、矛盾の点もありましたが、今回新しい職務執行法により名実共に民主化された警察行政が実施されることになるのであります。よろしく御審議の程を願います。
○警務課長(長山一雄君) 警察官職務執行法は旧行政執行法の第一条から第四条迄を適用しておりますので警察官として必要な職務執行法のみを採択した場合、旧行政執行法の第五条、第六条、第七条が適用されなくなるので此処に諮問第十一号として行政代執行法案を提案したわけであります。
 尚議会としても新しい日本法規の採択執行方を要望して居りましたので、本案は最も民主的な線に副うた法案と云う風に考えております。之が現在日本において施行されて居る法案であります。よろしく御審議を願います。
○委員長(玉城泰一君) 諮問第十号、同第十一号の二件も一応休会をして研究の上本会議で審議決定したいと思いますが如何ですか。
  (「賛成」と呼ぶ者あり)
○委員長(玉城泰一君) では休会をして研究することにいたします。
  午后一時三十分休会

  午后二時四十分再開
○委員長(玉城泰一君) 開会いたします。諮問第十号、同第十一号を一括して議題といたします。休会中において研究検討を加えましたから質疑を省略して討論に入ります。何か御異議ありませんか。
○新里銀三君 本案二件は休会においても検討もしたし、又説明の通り非民主的旧法を脱し新しい時代に即応する民主的法に切り替ると云う事は議会としても希望しているところであり、又本案は最も適当なる案と思いますので原案通り可決答申する事にいたしたいと思います。
○委員長(玉城泰一君) 新里委員の只今の御意見に御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(玉城泰一君) 御異議ないと認めまして左の通り答申案を作製したいと思います。

 答申第十号
  警察官職務執行法案について
 一九五一年八月二十八日諮問第十号首題の件原案通り発布方米民政府へ進達せられたい。
 右第十回沖縄群島議会の議決により茲に答申する。
  一九五一年  月  日
   沖縄群島議会議長知花高直
沖縄群島知事 平良辰雄殿

 答申第十一号
  行政代執行法案について
 一九五一年八月二十八日諮問第十一号首題の件原案通り発布方米民政府へ進達せられたい。
 右第十回沖縄群島議会の議決により茲に答申する。
  一九五一年  月  日
   沖縄群島議会議長知花高直
沖縄群島知事 平良辰雄殿

 只今読み上げました答申案に対し御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○委員長(玉城泰一君) 御異議ないと認めます。依って諮問第十号、同第十一号は原案通り発布進達方答申することに可決致します。
 本日の委員会はこれで閉会致します。
  午后三時十分閉会

 一九五一年九月三日午前十時六分開会
◎議長(知花高直君) 開会いたします。出席十五名、欠席五名であります。
◎議長(知花高直君) 諸般の報告をいたします。今期議会の初日に於て議決された沖縄の日本復帰について善処方陳情の件、陳情電文ならびに手続きについては議長一任となっておりました。つきましては議長に於て調製の上打電いたしておきましたから報告いたします。書記長をして右電文を朗読いたさせます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

  電文
 宛: サンフランシスコ会議々長
 発: 沖縄群島議会議長
 サンフランシスコ会議の際における各国全権の貴重な資料にするため沖縄群島においては全有権者の七〇%以上に上る署名簿をダレス米特使並に日本全権吉田首相宛送付した。それは沖縄全住民の平和と幸福が母国日本に復帰する事によってのみ得られるという熱願の事実を証明するものである。よつて沖縄群島議会は多数住民の意志を代表し茲に沖縄の日本復帰について貴官の善処方を陳情いたします。

  電文
 宛: 日本全権吉田首相
    ワシントン政府ダレス特使
 発: 沖縄群島議会議長
 サンフランシスコ会議の際における各国全権の貴重な資料にするため沖縄群島においては全有権者の七〇%以上に上る署名簿を貴官宛送付した。それは沖縄全住民の平和と幸福が母国日本に復帰する事によつてのみ得られるという熱願の事実を証明するものである。よって沖縄群島議会は多数住民の意志を代表し茲に沖縄の日本復帰について貴官の善処方を陳情いたします。

◎議長(知花高直君) 割当土地に関する陳情書、軍用土地使用料支払等に関する陳情書二件が、議長宛に参っておりましたので二件とも第二部委員会に付託しておきましたから報告いたします。
 書記長をして右二件の陳情書を朗読いたさせます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

  一九五一年八月二十九日
   那覇市七区七組
    代表者 上岡作太郎
   那覇市六区二四組
    代表者 友寄隆源
     外一二三名
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  割当土地に関する件(ママ)陳情書
沖縄は敗戦の結果政治経済文化等凡ゆる面が破壊されたる為其復興を速かにせんが為に爾来今日迄軍並に群島政府及び議会で日夜御奮闘なされて居られる事は吾々は感謝に堪えない次第で御座います。今回政府の割当土地臨時措置条例制定の当局案の内容を新聞其他より側聞しまするに米民政官府の布告第四号を以て所有権の行使は西暦一九五一年四月一日より六ケ月間を猶予期間として同年十月一日より効力を発すると規定されて居りますので、一般民衆も地主、借地人も既に諒承して居りますのに当局は紛争の恐れがあるという予想のみを以て之を更に期限延長の案を立てられて居る様で御座いますが、利害関係の大きな問題なるが故に期限延長で果して紛争が防止出来るか否かは疑問で御座います。割当土地問題に就いて今日迄新聞記事によりますと、政府、政党、其他の機関が地主の立場を考慮されて居る点が発見されない事を遺憾に思う次第で御座います。土地割当当時と今日とは最早状勢が一変致し、凡ゆる面が軌道に乗り平常化いたしたる今日、権利の行使も認め義務の履行も負はした方が得策と存ぜられます。
権利は押え義務を押し付けると言ふ事こそ紛争の原因を来たすものであります。何卒賢明なる議会に於きまして、吾々地主の声を反映させまして条例案の期限延長を致さず、布告第四号の規定通りに御決定下さらん事を陳情いたします。
    (以下省略)

  陳 情 書
祖先並びに吾等が血のにじむ様な努力を繰返して求めて来た吾等の最大にして唯一の財産たる土地は、軍用地となり止むなく吾等は吾等の所有する土地を離れ、他の非軍用地に居住せしめられた。これ偏えに米国の世界政策に基く人類平和の維持のためと吾等も又協力するにやぶさかではない。然してそれは現在迄布告第四号に基いて吾等の立場が擁護されていたからである。十月一日を以て同布告の効力が無くなると同時に、吾等は現在使用している宅地並に農耕地の使用料を支払いさせられ、且つ群島政府割当土地臨時処理条例施行に依る制約を受け、たえず所有権者より立退要求をされはせぬかとおびえて生活せねばならなくなる。
吾等軍用地内に土地を有する者も同じく四月一日に所有権証明書を交附されているが、布告第四号第三条に依り吾等の土地のみが所有権使用権の行使を停止されている。勿論軍用地の性質上止むを得ぬ処置と吾等も思っている。然し乍ら軍用地(ママ)土地使用料の支払がなされない限り、布告第四号の効力解除と同時に、吾等が一方的負担を背負はされ且つ安定した居住権を持たない住民となり、土地なき民として流浪し、たえず生活の脅威と戦はねばならなくなる。吾等は所有権は飽くまで尊重さるべきと確信しているが、然し罪なき人民が国家社会の政策のため一方的にその土地の所有権を停止するの止むなきに至つた時、必らずやそれに対する保護と替地の確保が並行して行はるべきと確信し、且つ吾等の当然の権利として要求する。吾等は布告第四号の第一条第二条の効力解消並に第三条に依る所有地の所有権使用権停止に依り生ずる吾等の当然の権利として左記二、三項の通り群島政府割当土地臨時処理条例の中に織込み、吾等をして安心立命して生業を営み得る様御考慮払われん事を切望し、且つ左記第一項の軍用土地使用料支払いの早期実現方を陳情するものであります。
    記
一、軍用土地使用料の早急な支払
二、軍政府よりの軍用土地使用料支払迄軍用地に土地所有権を有する住民に対し借地料の免除若しくは延期
三、軍用地に土地所有権を有する住民に対し現居住宅地並に生業を営むに足る宅地、田畑確保の保障(ママ)
右陳情致します。
  一九五一年八月三十日
   署名人代表
   越来村胡差区二七班
     桑 江 朝 幸
       他署名人一同
沖縄群島議会議長殿
    (署名簿は省略)

◎議長(知花高直君) 第一部委員長、第二部委員長からそれぞれ陳情案、意見書案送付について議長宛に文書が参っておりますので、書記長をして朗読いたさせます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

   一九五一年九月三日
    第一部委員会
     委員長 石原昌淳
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  陳情案並意見書案送付について
左記三件の陳情案並意見書案を別紙の通り今期議会に提案方取計われたいので送付致します。
    記
一、マージ台風被害対策に関し陳情書を提出することについて
二、沖縄果菜類輸入禁止の解禁方促進に関する件につき陳情書を提出することについて
三、マージ台風被害対策に関し意見書を提出することについて
    (別紙省略)

   一九五一年九月三日
    第二部委員会
     委員長 玉城泰一
沖縄群島議会議長 知花高直殿
  陳情案送付について
軍用土地使用料の支払等に関する陳情案を別紙の通り今期議会に提案方取計われたいので送付する。
    (別紙省略)

○議長(知花高直君) 付託事件の最終案並びに陳情書意見書案を配布いたさせます。
  (書記配布)

◎議長(知花高直君) 本日の議事日程を報告いたします。
  議事日程第二十号
 第一、沖縄群島割当土地に関する臨時処理条例制定について
  (知事提出議案第七十三号)
 第二、警察官職務執行法案について(知事提出諮問第十号)
 第三、行政代執行法案について
  (知事提出諮問第十一号)
 第四、軍用土地使用料の支払等に関する件につき陳情書を提出することについて(第二部委員長提出陳情第九号)
 第五、マージ台風被害対策に関し陳情書を提出することについて(第一部委員長提出陳情第十号)
 第六、沖縄果菜類輸入禁止の解禁方促進に関する件につき陳情書を提出することについて
  (第一部委員長提出陳情第十一号)
 第七、マージ台風被害対策に関し意見書を提出することについて(第一部委員長提出意見第一号)
 以上であります。

○本日の会議に付した事件
 日程第一、沖縄群島割当土地に関する臨時処理条例制定について
  (知事提出議案第七十三号)
 日程第二、警察官職務執行法案について
  (知事提出諮問第十号)
 日程第三、行政代執行法案について
  (知事提出諮問第十一号)
 日程第四、軍用土地使用料の支払等に関する件につき陳情書を提出することについて
  (第二部委員長提出陳情第九号)
 日程第五、マージ台風被害対策に関し陳情書を提出することについて
  (第一部委員長提出陳情第十号)
 日程第六、沖縄果菜類輸入禁止の解禁方促進に関する件につき陳情書を提出することについて
  (第一部委員長提出陳情第十一号)
 日程第七、マージ台風被害対策に関し意見書を提出することについて
  (第一部委員長提出意見第一号)

◎議長(知花高直君) 只今から本日の会議を開きます。

◎議長(知花高直君) 日程第一の議案第七十三号を議題と致します。本案は第二部委員会に審査を付託してありましたので、委員長の審査結果の報告を求めます。
 修正案(ママ) 沖縄群島割当土地に関する条例として(ママ)臨時処理条例(案)
 (一九五一年九月二十八日付沖縄群島公報第四十号に登載済に付省略)
 (注 二七九頁に掲載)
◎第二部委員長(玉城泰一君) では第二部委員会に於ける審査の経過を報告致します。本年四月一日、土地所有権が確認されて、この所有権証明書が交付されました。従って割当土地の所有者は何時でも自分の土地に対して使用収益、処分の全支配権を握る法律上の権利が保障されたのであります。
 若しそれまでに割当土地の所有者、使用者の紛争を解決する処置がない場合は使用者と地主との混乱を来たすだろうということを心配して、去った三月の議会ではこの事を防止するために是非軍の方から布告を公布して欲しいという答申書を出したのであります。
 それに依ってこの布告の第四号が公布された訳ですが、その布告の四項(ママ)によるとその前文の中にこういうことが書かれています。「沖縄議会(ママ)(群島議会カ)その他から進言があったので紛争を解決する際裁定の一助にでもなればと思ってこの布告を公布すると書いてあります。つまりこれを参考にして群島政府が紛争解決条例を公布することが出来る。又布告の第二条には沖縄群島政府は、群島組織法によって割当土地使用料の限度を指示し使用者との間の紛争解決について、必要、且適当な法を制定することが出来ると明記されています。
 これによって、布告第四号は本議会の条例制定の参考に供するものであり、又議会での条例制定は布告第四号第二条に基く権限であって、決して軍布告の違反でも越権でもないということが明らかになります。この条例審議に当って各方面から陳情が出ていることは、今先書記長の朗読によっておわかりの通りであります。その中には割当土地の明渡し期間の六ケ月を三年に延長したのは越権である布告違反だ、又賃貸料の限度を明記しないのは布告違反だという意見がありましたが、これは布告を誤解していると思われるので審議経過の前にこの点明らかにしたわけです。審議の経過でありますが、条例案の中で最も重要な点は二つであります。即ち、第三条の土地明渡しの猶予期間の問題と第五条の土地使用料の限度の問題でありますので、委員会では先ず逐条審議の前にこの点についてまとめたのであります。第三条の土地明渡しの猶予期間は建物の場合は三年、耕作の場合は一年半となっていますが、これは色々意見も出ましたが、結局原案を認めることになりました。その理由としては先に三月の議会で答申した場合にも建物は三年となっていますし、尚中央土地所有権認定委員会からもこういう陳情が出ていますが、この中にも三年となっています。更に本議会開会前、これは極めて重要と考えましたので各地区の主な所で公聴会を開きましたが、那覇が二年を主張した以外は殆んど三年の原案を認めている訳であります。そういう理由に依って、建物の場合は三年、耕作の場合は一年半と決めた訳であります。次に第五条ですが、これは成程布告に使用料の限度という言葉が出ていますが、これは是非これを条例の中にはっきりさせねばならないと解釈する人もありますが、然しこの布告四号は参考でありまして、必要且適当と認められる法を制定する権利が群島政府に与えられているので使用料の限度を金額をもって示すことが適当と認められるならそれを示す。それよりもっと適当と思われる方法があればそれに随ってよいという訳で、この原案には使用料の限度を示すことはしないで、各地区を量位(単カ)とする賃貸料を評定委員会に於て基準を示し、その基準に随って当事者が任意に契約を結ぶ。それで意見が一致しない時は巡回裁判所に廻すという順序になっていまして、委員会でも原案のまま認めたわけであります。成程、賃貸料の限度を決めることができればそれに越したことはありませんが、実際問題として一つ一つの市町村について条例で限度を決めることはとても出来ないと思ったからであります。各地区に於ける公聴会でも限度は是非決めて欲しいという強硬な意見があったのでありますが、以上の理由で各市町村の評定委員会に任せることにしたのであります。
 賃貸料評定委員会の組織性格については別途府令を以て定めることになっていますが、その案を当局に聞いたら委員会の組織は各市町村毎に五名乃至十五名の委員を以て組織する。この構成は借主、貸主及び学識経験者をもって組織する。それは議会の承認を得た上で市町村長が任命することになっており、賃貸料の評定基準になるのは位置、環境、地勢、利用価値、収穫物、その他が賃貸料の標準を決める内容になっております。これも大体委員会の方では原案に賛成した訳であります。そしてこの二点の審議は終って逐条審議に移ったのでありますが、その結果は字句を変えただけで、内容の訂正は加えません。もし報告誤りや訂正事項がありましたら他の委員の方からお説明をお願いします。
○議長(知花高直君) 御質問、御意見があれば伺います。
◎祖根宗春君 今委員長から報告があった中に公聴会を開いて各地区の世論等についても発表がありましたが、本員の仄聞する所に依ると、それは社大党の公聴会であって常任委員会の公聴会ではないから、議会の常任委員会は群島組織法第六十二条に依ってこういう利害関係の伴う重要法案については委員会の権能として当然公聴会を開くべきだ。その規定を適用すべきであったにも拘らず、あの発表は社大党の公聴会をそのまま委員会の経過報告書に持出したことは政党活動と議会の委員会活動を混同したやり方だから是正して欲しい。それから、公聴会を開く場合は組織法第百四十一条の三項に依って二十日前となっています。この分担金に関係のない今の割当土地臨時処理条例などの法律は関係ないので組織法第六十二条によって直ぐに開くことが出来る。随って第二部委員会としては議会常任委員会の名前で公聴会を開き、その経過を報告し、世論をまとめて議会に発表するのが順序と思う。これは今後議会運営の合理化を期する点についてこういう問題を提起して今後の参考資料として注文致す訳であります。それでもう一つは三月の議会でこの問題について軍にこういう割当土地に対する軍の制限を出して欲しい。そして軍が四号の規程で布告して九月で四ケ月の期間が切れるということになっているので、こういう重要問題について地主側、借地人側或は軍用地と色々利害関係が複雑であります。だから群島政府の提案にしてもこういう問題は二ケ月前、出来れば第九回の議会あたりに提案して戴ければ予猶(ママ)はあるし、従って公聴会を開く予猶もある。一般関係住民も更に研究してもっと立派な法律案が出来ると思うが、期間が短いため常任委員会として公聴会を開く予猶がない。議会としてもこういう問題について相当責任を負うべきだと考えるので、こういう重要問題の提案には政府も相当期間をおいて欲しかった。この二つの希望を申し述べてこの条例制定の趣旨に賛成致します。
○第二部委員長(玉城泰一君) これは極めて重要な法案だから公聴会を開くべきではなかったか、組織法第六十二条で当然開かねばならないのに開かなかったのは委員会として手落ちではないかという意見でありますが、第六十二条の規定は開くことが出来るという規定で、開かねばならないという規定ではない。公聴会を開く場合は百四十一条の分担金を課する場合に限られている。なお開くことが出来るというのだから開くのも構わないが、もし開くなら十四番さんがいった様に二十日以前に招集状を出さねばならないという関係があるので、この議会は一月以上延長しなければならなくなるという関係があって、それは予算その他にも関係することであるし、吾々としては会期中に開いても、二部委員会の名において開いても、又社大党が開いても公聴会は公聴会で住民の意志が聴けることに相違ないと思ったので、その案の中で最も重要なのはどこかということを検討して賃貸料の限度と猶予期間というこの二点について住民の意見を徴する為公聴会を開いたのでありまして、重要問題を軽く見たということにはならないと思う。
◎仲里誠吉君 本条例が、去った合同審議会に掛られた時はこの案に対し賛意を表したが、その後那覇にある借地人協会に呼ばれて色々質問されたが、その中で本員は回答し得ない疑義がありましたので当局に訊すため希望を申し上げたい。それは条例の順序を追って質問しますが、第四条の第二条一項に基く建物の所有を目的とした土地の場合は宮城議員からも質問が出たが、こういう場合も考えられる。建物が腐朽の結果ちょっとの風でも倒れる、而もそういう家に限って貧困者で、その場合地主が法外な値段を持ち出した時困る。これは戦前の様に恒久的本建築の場合なら法で保護されているが、腐朽によって倒れたとか壊れたという場合はどうなるか伺いたい。それから五条の評定委員会について希望を申上げたい。那覇には現在借地人協会があるが、それに做らって各地に出来るんぢゃないかと思われるが、この案を作製する場合、借地人代表を必ず入れるよう規定して欲しい。
 又十三条だが、使用者という言葉に疑義がある。例えばAという地主からBという男が土地の割当を貰う。そこに自分の家を建てる。そしてその後、親戚友人などで田舎に住んでいたのが那覇なら那覇に移りたいが敷地がない。又あっても法外な権利金を吹掛ける。それを見かねて自分の借りた土地を一分(部カ)譲る。この場合は善意をもってなしたのだ。所有者は使用者に対し明渡しを要求することが出来るがこの場合は二人に分れている訳だ。一番最初の元使用者と後から譲って貰った者、次使用者という言葉を使った場合、元使用者に明渡しを要求するのか、次の使用者に要求するのかそれを伺いたい。
 これは直接関係はないかも知れないが、現在復金を利用して家を建てたいという希望者が増しているが、融資を申込むと当局では地主の承諾印が無いと出来ない。それで地主の所に行くが、賃貸価格が決らないから法外な値段を吹掛ける時もあるし、折角の所金が出ないで泣き寝入りする以外に途はないが、この場合に何らか法規で保障する必要はないか。この賃貸価格は各市町村の賃貸料評定委員会で決められる場合、これは割当土地の場合にのみ通用するが、それ以外の土地にも適用されるか。以上の点を伺ってその上でこれに対する賛否を決めたい。
○法務課長(牧野博嗣君) 建物が腐朽して倒れた場合には直に消滅するかという質問だが、結局人為的な方法によらず自然倒壊した場合は、常識的な判断によって災害同様な条件におかれた場合なら賃貸条件はそのまま存続させるべきだと思う。それから五条については御希望に沿いたいと思う。十三条の場合において、割当てを受けたものが身寄りの使用を許して使用者が二人ある場合は、最初の割当を受けた者が市町村長と連絡なしに勝手に入れた場合はあくまでも市町村の割当というのが基準になると思うが、その場合は矢張り入れる前に諒解を受けるべきだ。その上、一応地主について諒解を求めるのが最善の道だと思う。それから評定された賃貸料が全般に及ぶか又は割当土地にのみ対して通用されるかという質問についてはこれは飽くまで割当土地の基準であって、賃貸料というものは割当土地に限られると解釈致します。
◎仲里誠吉君 そうすると割当てられた土地以外は適用されないとなると極めて不合理な点が出て来るのではないかと思う。というのは割当てられた土地の場合は、評定委員会の決定した公定価格を適用するとなると、一方は自由相場で一方的意志によって釣り上げられるが、一方は公定となると同じく所有権を認め、尊重されるといいながら面白くない。これは当然全所有地に及ぶべきだと思う。
 十三条の場合、身寄りの者を入れるにしても、市町村長、所有者に事前に挨拶があって然るべきだということだが、それは常識上もっともだ。場合に依っては地主に挨拶にいった場合、法外な条件を付けられることも有り得るし、又今まであった。その場合、地主の条件に応ずることが出来ない場合は非常手段に訴える場合もあるが、その場合は当然土地の所有者、使用者、双方とも保護する必要があると思う。このように修正したらどうか。又は善意を以って土地の使用権を譲った時とこのように修正してはどうか。
 それから回答が抜けた点があるが、それは建築資金の融資を申し込み地主の承諾印を求める。その場合賃貸価格が決っていないで地主は法外に吹掛ける。そういう場合は臨時条例若しくは何等かの形で保護する方策を講ずる必要はないか。
○法務課長(牧野博嗣君) 最初の御質問の賃貸料は一般に及ぼす必要はないかという意見だが、これに就いてはこの条例を制定する群島政府の権限として、割当土地のみだが、地主側から不当な賃貸料の請求の恐れがあるのでこれは平等に適用せんといかんという御意見だが、これは暴利取締りなどによって規制出来る。この点は他の法律で是正出来るから結局この賃貸料は割当土地に止めても差支えないと思う。又権限の面からも割当土地のみとなっているから、そうしか出来ないと思う。今一つ、善意で割当土地を譲った場合だが、途中から入った考えに対しては、地主は飽くまでも二義的で市町村が権限を持っている。それで割当て出来た筈だ。その上四月一日で改めて賃貸契約を結ぶということになると、契約を結ぶ時地主が矢張事実を認めておれば契約は成立したものと見做される訳だが、今のことは四月以降のことになる。
 復金の場合だが、この条例の趣旨からいっても、飽くまでも普通の状態に返るのが建前だが、自由を放任するのは許されないという見解のもとに法律というのは生れてくる訳だ。復金の場合、これは早く普通の状態に返して地主と借地人との契約に返して行かねばならないと思う。
 そのために地主側としても、不慮の損害の負担にならない恒久的建築物を建てるということによって支障を来すことはあるし、又猶予期間中に復金からの金を借りなくとも住居条件が充されるという面も考えられる。
 だからそういう場合は家が災害によって倒潰するか、腐朽して改築しなければならないという場合は別だが、現在の居住条件を居住が維持出来ればそこまでいかず普通に返るのを上策と思う。
◎新里銀三君 今の課長の説明にはなかったが、もう一回念を押したい。例えば之は四月一日からだから、その前に土地割当てを受けた私が敷地に余裕があるために、二、三名に貸した場合、市町村長は新里だけに貸したように地主と契約するか、或は二、三名に貸したようにするか、この点はこの法律施行前の儘と見做し二、三名にも同様に割当たものとみなすか、それをお願いします。
○法務課長(牧野博嗣君) 今の事例は沢山ありますが、これは飽くまでも最初の条例(事カ)に従うべきだ。
そして途中に色々な事が起ったら当然十三条の規定を受ける解釈です。
◎新里銀三君 そうなると大きな問題だ。現在、数名に貸した人があるが、十三条を直に適用すると所有者が明渡しを要求されるがこれを何とか緩和するよい方法はないか。
○知事(平良辰雄君) 今の問題は事務的なものではっきりは分りませんが、大体布告というものが保護しようというのは割当土地であって、それ以外は出来ないと思う。それ以外は市町村長の証明があれば別だが、割当土地に限定されるので行政便法としてそういう問題は条例でそこまでいくのはどうかと思う。
◎議長(知花高直君) 進行いたします。議案第七十三号は委員長の審査報告通り可決することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って議案第七十三号は委員長報告通り一部修正可決いたします。
◎仲里誠吉君 只今可決になりました条例に関連致しまして表明したい。それはこの間の処理条例に関する合同委員会の席上でも決ったが、この案が決ったら議会の代表者を決めて副長官の所に行ってこの件について会見するという申合せでありましたが、それに関連して意見を申上げたい。というのはこの問題については一般民が極めて重大な関心を持っていますので議会としても極めて慎重な態度で審議した訳だ。所が軍が使用料を何時払うかというのが問題である。
 それについて吾々民間側としても何時払うか又どういう事で払うかという極めて重大な不安であります。これは議会の正式な記録として取っておいて欲しいからいうのですが、重要な点は軍が単独で土地使用料を決めるという点だがそれから発生して色々な不安、疑問が出て来る。それはいうまでもなく軍が単独で使用料を決めるという矛盾だ。それは資本主義社会では所有権が認められ保護されている。従って紛争は所有者自体が所有権の使用人双方の意見のみに基づき解決しなければならないが、今の沖縄では使用者の軍が単独に使用料を決定するという不安がある。二番目には単独で使用料を決定する方法に対する不安だ。それはまず各段階の相互があるし、その段階に於いて四、五段階もあろうが、その刻み方の技術に対しても疑問を持つ。次は支払額に対する疑問だ。何故なら軍の財政金融政策と吾々民間人が考える財政金融政策の間に開きがある。何故なら軍の政策は財政資金による投資を少くして金融資金による投資を殖すことに変っている。というのは、補助金を少くして復金を増やすということになる。
 その結果は例えば農業、水産業に於ける基本施設が、貧弱になる。而も重要な点は補助金にしても、復金にしても、これは見返り資金だ。これはガリオア物資の売上げ代金を行政的な方法で吸い上げた金である。従ってこの勘定は住民等しく関心を持っている。補助金を少く、復金を多くすると基本施設が貧弱になりその結果はダム、防風林、護岸などが貧弱になり、年々犠牲が多くなる。或は同率の犠牲を繰り返す。そういうことは社会全体としての総資本が減るということになる。更にこれの表現を変えると結局資本の蓄積が少くなっていくか、或は増加しないので社会全体として総資本は増加しない。或は減少する。こういうことになる。所が吾々民間側の希望としては財政資金を投資する額だ。基本施設の改善という形でやる資本蓄積である。従って社会全体としての生産物の増加を意味するものと思う。そういう訳で軍の政策と吾々の希望する政策の間に開きがあるということから又一つの不安が生れる。所が、軍の約束している土地使用料支払いは見返り資金以外に出すことは出来ない。見返り資金から土地使用料を出すとインフレーになるというが、これは根本的な誤りだ。
 三番目の不安は土地使用料は果して払うべき金が出るかが不安だ。つまり軍の円資金が最近窮屈になっていると思うからだ。これの具体的数字は時間がないので省くが二、三ケ月前の新聞記事に軍はPXにある色々な物資を一般住民でも円をドルに切換えるということが載っていたが、これは民間の持っている円を吸収したい、又そういう段階まで来ている。この原因は私の想像だが、中央政府への財政的援助がある。数億にのぼる援助を既にやり、又これからも続けることになっている。又軍労務賃も引上げねばならない。かりにこれを三十%位い上げるとしても現在の労務者の数は七、八千にのぼると見られる。更に輸出(入カ)の増大によって輸出(入カ)代金を払わねばならない。それからこの間の暴風の災害対策費も払わねばならない。
 以上の諸点から円資金は窮屈になっているが、このため土地使用料が希望する程払って貰えるかどうか不安に堪えない。次は支払い方法に対する不安だ。土地所有者に対して一時で全額払うかどうか、その折衝面に対する不安だ。四番目の不安としては支払い時期に対する不安だ。
 一斉に支払うか或は時期を遅らし段階を刻んで払うのかどうか、以上の不安がある。
 最後に軍の土地使用料協定機関に対する不安だ。これに沖縄人は参加を許されていない。これは先程もいったように所有権は如何なる場合でも尊重されねばならない。当然沖縄人の代表の参加が要請されるべきだ。次に政治の原則からいって、民主々義の歴史というのは政治に参加する人民を拡大するということにあるから当然参加しなければならない。以上の点から軍の単独による使用料の支払いには非常に疑問があるので吾々としても議会代表を送って吾々の不安の旨を話し、はっきり確答を得べきだと思う。問題の性質上正式に記録をのこす必要から以上申述べます。

◎議長(知花高直君) 日程第二、第三の諮問第十号、諮問第十一号を一括議題と致し第二部委員会における審査の結果の報告を求めます。
◎第二部委員長(玉城泰一君) 経過の報告を致します。警察行政の民主化のために公安委員会制度が布かれ警察制度は画期的改革の下に発足したが、警察官の日常勤務の基本になる法律が、明治時代の行政執行法がその儘現在も尚適用されている状態だ。現在の警察行政が新旧二つの法律の下におかれているという現状の不合理を除くため改正されたのがこの二つの法案であります。委員会ではこの必要を認め原案を無修正の儘答申することに意見が一致したのであります。委員会において決定致しました答申案を二件読上げます。
  (第二部委員長「玉城泰一君」答申案朗読)

   答 申 案
答申第十号
  警察官職務執行法案について
一九五一年八月二十八日諮問第十号首題の件原案通り発布方米民政府へ進達せられたい。
右第十回沖縄群島議会の議決に依り茲に答申する。
  一九五一年九月三日
    沖縄群島議会議長
       知 花 高 直
沖縄群島知事 平良辰雄殿

   答 申 案
答申第十一号
  行政代執行法案について
一九五一年八月二十八日付(ママ)諮問第十一号首題の件原案通り発布方米民政府へ進達せられたい。
右第十回沖縄群島議会の議決に依り茲に答申する。
  一九五一年九月三日
    沖縄群島議会議長
       知 花 高 直
沖縄群島知事 平良辰雄殿

◎議長(知花高直君) 只今第二部委員長から審査の結果報告があって答申案二件が読み上げられたが、この答申案二件について御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。従って諮問第十号、第十一号は夫々答申案通り答申することに可決いたします。

◎議長(知花高直君) 日程第四の第二部委員長提出の陳情第九号を議題と致します。書記長をして陳情案の朗読を致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

陳情第九号
  軍用土地使用料の支払等に関する件につき陳情書を提出することについて
軍用土地使用料の支払等に関する件について別紙の通り陳情書を提出致したく議会の議決を得たいので提案する。
  一九五一年九月三日提出
    第二部委員会委員長
       玉 城 泰 一
宛  米国琉球民政副長官
経由 沖縄民政官
発  沖縄群島議会議長
題  軍用土地使用料の支払等に関する件
首題の件につきましては曩に第三回議会の議決によって本議会から之が実現方促進の陳情を致し御回答を得たのでありますが今回沖縄群島割当土地に関する臨時処理条例が民政府の認可を得て公布され十月一日以降実施された場合民間側においては本年四月一日から土地所有者と土地使用者との間に賃貸借料の請求支払が行われることになりますが、独り軍用地の土地所有者のみが取残され片手落になりはせんかと心配しているのであります。偶々本件について越来村胡差区二七班桑江朝幸外三八名から本議会宛陳情の次第もありますので特に左記事項について善処方御取計下さる様お願致す次第であります。
    記
一、軍用土地使用料については沖縄群島割当土地に関する臨時処理条例公布と同時に支払いができる様に取計つて貰いたい。
二、使用料の評定については沖縄人からもその代表者を参加させて貰いたい。
三、軍用地に土地所有権を有する住民に対し現居住宅地並に生業を営むに足る宅地、田畑確保の保証方取計つて貰いたい。
右第十回沖縄群島議会の議決に依り茲に陳情致します。
  一九五一年九月三日
    沖縄群島議会議長
       知 花 高 直

◎議長(知花高直君) 陳情第九号に対して御異議ありませんか。
◎具志頭得助君 異議はありませんが、那覇に於ける軍用地はどこからどこまでが軍用地かはっきりしない。例えば琉銀では最近軍用地でないということが分って那覇市に通達されたということだが、このように枠で囲まれた分が軍用地かどうかはっきりしない。この点軍に訊して貰うようお願いしたい。
◎議長(知花高直君) 他に御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 異議ないものと認めます。依って陳情第九号は原案通り可決致します。

◎議長(知花高直君) 日程第五の陳情第十号を議題と致し、書記長をして陳情案の朗読を致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

陳情第十号
  マージ台風被害対策に関し陳情書を提出することについて
マージ台風被害対策に関し別紙の通り陳情書を提出致したく議会の議決を得たいので提案する。
  一九五一年九月三日提出
    第一部委員会
      委員長 石原 昌淳
別紙は議長に一任
○議長(知花高直君) 提案理由の説明を求めます。
◎第一部委員長(石原昌淳君) マージ台風が三日間にわたって荒狂ったために、潮時と暴風ががち合って未曾有の大損害を蒙ったことは既に新聞紙上に発表されていますが、その重要性と緊急性に鑑み二十八日の議会本会議でその実状を視察しましたが、その結果、状況は惨たんたるものがあり、それが復興に及ぼす影響を考える時、現在及び将来のために一日も早く対策を確立して実行し速かに復興を図ることを痛感致しました。その対策として次の諸事項について軍当局の特別の配慮をお願いしたく陳情書を提出したいと思っています。まず第一に復興費を以て恒久的復旧工事を一日も早く実施して欲しい。理由は暴風被害の復旧整備が沖縄の交通、産業、文化の復興に基本的な重要事業であり、而も地理的関係から更に暴風の来襲が予想されるが、この儘の状態で再び襲来を受ける時の被害は想像に絶するものがあると思います。緊急な復旧を要すると思うが、その復旧は民の財力では到底不可能であり、戦前もこういう復旧工事は日本政府によって実施されていたので、この際是非とも復旧費によって恒久的復旧工事が出来るよう軍に特別の御配慮を陳情したいと思う。第二に今度の暴風でもそうだが、暴風の度毎に多くの船舶が難破沈没して被害を蒙ったが、戦前は西海岸では那覇が唯一の避難港であったが、現在は軍が使用しているため暴風酣になって始めて避難が許される状態です。これでは避難は間に合わないし、暴風警報の発令と同時に避難出来る様に那覇港を解放して欲しいというのであります。それから沖縄には数年に亘って放置されている船舶が護岸にのしあげて非常な被害を出していますので、先にも陳情しましたが今度の場合からも早急に取除くよう特別の配慮を願いたいと思う。
 四番目に排水施設、設備の改善を要望したい。排水施設の不備のため道路を破損し又は流して非常な被害があります。この排水施設の整備改善に特別の御配慮を要望するものであります。以上四点について特別の御配慮を得たく陳情致したいのですが、陳情文案は議長に一任致したいと思いますが皆さんの御賛成を願います。
◎議長(知花高直君) 只今委員長から提案理由の説明があったが御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って陳情第十号は原案通り可決致します。

◎議長(知花高直君) 日程第六の陳情第十一号を議題と致します。書記長をして陳情案の朗読を致させます。
 (書記長「新垣良正君」朗読)

陳情第十一号
  沖縄果菜類輸入禁止の解禁方促進に関する件につき陳情書を提出することについて
沖縄果菜類輸入禁止の解禁方促進に関する件につき別紙の通り陳情書を提出致したく議会の議決を得たいので提案する。
  一九五一年九月三日提出
    第一部委員会
      委員長 石原 昌淳
宛 日本政府 農林大臣 通商産業大臣
発 沖縄群島議会議長
題 沖縄果菜類輸入禁止の解禁方促進に関する件
沖縄農村経済振興のため果菜類を日本に輸出することは戦前の実績から見ても又今後の日琉貿易の上からも緊急にして重要なることは今更申すまでもないことであります。然るに現在日本植物防疫法により沖縄の果菜類が日本への輸入禁止品に指定されておりますことは誠に遺憾に堪えないところであります。その理由とするところは瓜実蝿の存在によるものとされておりますが、瓜実蝿の存在については昨年十二月以降毎月調査致しました結果、別表の通り沖縄群島においては絶対に之が存在しないことが確認されております。今後もこの予防対策をして本群島植物防疫条例によって対外輸出入植物の検疫を厳重に実施し尚その万全を期したく、日本より植物防疫の権威者を招聘し植物防疫の完璧を期することも考慮中であります。何卒右事情御賢察の上本群島産の果菜類等の輸入禁止を解禁して戴く様第十回沖縄群島議会の議決により茲に陳情いたします。
  一九五一年九月三日
    沖縄群島議会議長
       知 花 高 直

  瓜実蝿せい息実態調査
一、調査年月日 一九五〇年十二月十九日から二十六日まで
二、調査場所
 圃場、宅地、原野及び市場、果実、同貯蔵品、蔬菜、果菜類の主要産地並に船舶出入の激しい港湾部落。
三、調査官
 農林省農事改良局病害虫専門家   東田端技官
 与儀中央農業研究指導所病害虫科長  安里技官
 沖縄群島政府経済部農務課係官   仲宗根技官
 沖縄園芸組合聯合会係官       比嘉技官
四、調査町村
 糸満、豊見城、小禄、兼城、真和志、中城、北中城、与那城、勝連、具志川、美里、読谷、南風原、東風平、首里、浦添
五、調査要項
(一)薬剤使用調査
 成虫に対し誘致剤を使用し成虫の誘致調査を施行した。
(二)ウリミバエの冬期の状態並に越冬状況等農業専門普及員、村当局及び業者から聴取した。
(三)寄生しやすいコロ(ママ)科、ナス科及びマメ科植物の花ツボミ、未熟果、中熟果について外部及び内部の調査を行った。
(四)本調査は一九五〇年十二月十九日以降毎月施行した。
七、薬剤使用による成虫調査
 一、調剤及び使用法
  焼酎五〇cc、食用酢四〇cc、黒糖二〇瓦、密柑一個(果汁)、水二六〇cc、以上の合製液をヤブ地四ケ所に撒布する。
 二、過熱(ママ)バナナ実使用
  過熱のバナナを縦にさき、高さ一米位のヤブ地の木につるして置く。
 三、調査場所…調査各村に於て
 四、調査時間…十時間
 五、結果…集来したコン虫にはウリミバエはいなかつた。
八、聴取状況
 一、終戦後島外船舶の出入が頻繁なためウリミバエ等の侵入が懸念されたため常に注意を払ひ、一九四九年十二月から現在までウリミバエはいない。
 二、町村当局並に農事改良普及員、当業者も細心の注意を払つて毎月調査を進めているがいない。
九、概評
 圃場、宅地、原野及び市場、港湾、船舶、果実、貯蔵品、果菜等に就て徹底的調査を行つたが、該虫はいない。
「尚ウリミバエの侵入があるとすれば、目下成虫は生存期中であるから、誘致剤に集来するはずであるが、集来しないのは恐らく該虫のせい息がないことを確証づけるものと思はれる。」

◎議長(知花高直君) 只今の陳情第十一号原案に御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って陳情第十一号は原案通り可決致します

◎議長(知花高直君) 日程第七の意見第一号を議題といたします。委員長の提案理由の説明を求めます。
意見第一号
  マージ台風被害対策に関し意見書を提出することについて
マージ台風被害対策に関し別紙の通り意見書を提出いたしたく議会の議決を得たいので提案する。
  一九五一年九月三日提出
    第一部委員会
     委員長 石原 昌淳
 別紙は議長に一任
◎第一部委員長(石原昌淳君) 意見書を提出したい理由は先の陳情提出の理由と同じで暴風被害の早急な復旧を要望したもので、要望事項は大体次の通りにしたい。速かに暴風対策委員会を設置して対策を立てること。第二は恒久的復旧対策に対する要望だが、その一つとして災害復旧について全般的に調査し、この計画は事の緩急軽重の順で左の諸点を勘案して年次計画として欲しい。
 (イ)公道については交通量その他交通上の重要度などに従い順位を策定すること。
 (ロ)交通上の安全と維持管理の利便のため、カーブの緩和又は路線の変更等も考慮すること。
 (ハ)護岸排水工事については、住民居住地区の安全確保を図ること。受益量との比率並に受益量の比較、住民生活に及ぼす影響策(等カ)を考慮すること。
 次は避難港整備促進について
 今度の台風で本部の渡久地港では被害が殆どないのに、避難施設の不備な糸満では七十五隻の中五十二隻が沈没、破損の被害を蒙っている。これに鑑み避難港整備の促進が痛感されます。工事の施行についての要望だが、その一つとして恒久的工事として充分堪え得る計画をして欲しい。つまり戦後は資材に乏しい関係や、予算などの関係から終戦後施行されたものが殆ど大部分壊されている現状です。こういう状態はサイの河原の石積みで意味がない。年次計画で完成するよう計画して欲しい。次に地元の愛護責任の強化を図るため、工事に対する地元の負担を考慮して原則として工事の施行は地元の責任でやって欲しい。大体以上の点を考慮して計画を速かに樹立して欲しいということを政府当局に要望したいと思う。しかしこの意見書は充分成案を得ていないし又この他に更に皆さんの御意見を得てそれも中に追加し、意見書の文案は議長一任として御賛同を得たい。
◎玉城泰一君 只今の報告の中に避難港整備について意見書の提案があったが賛成です。暴風当時糸満港にあった船舶は七十五隻だが、その中暴風後完全に浮んでいたものは二十三隻だ。三分の二以上の損害で殆ど全滅といってもいい。その被害は修繕費だけでも六百九十五万五千円と見込まれており、更に海岸を距たる三百メートルの田圃の中に五トンと四トンの船が二隻も打上げられているが、その他暗礁に乗り上げたり、道路に打上げられた船を下す費用並にその修繕期間中漁民の休業による損害を加えると、一千万円近い損害となっています。又本部港内には当時八十隻以上の船があったが一隻の被害もなかったという話を聞いて、私は漁港の整備というのが如何に漁船のために重要で且緊急を要するかということを感じた。これについて糸満町民はマージだけでなく、クララでも四十二隻の被害を出し寧ろ今回より損害は一千万を突破している。糸満といえば魚、魚といえば糸満を思うほど漁で内外に聞えているが、漁港はまだないということは非常に不思議だ。沖縄の経済復興はその地理的条件から考えて、水産業の発展に期待する所が大きいのだが、これには是非港の整備が必要であり緊急と思う。貿易庁輸入課の調査によると今年六月から七月までの二月間に民貿易による海産物加工品、缶詰類、乾魚、コンブなどの輸入は千八百四十七万七千八百四十円です。僅か二ケ月の間でこうですから一年間にするとこれの六倍、即ち一億一千万円以上の水産物が日本から毎年入って来る勘定になります。これは申告所得税と同額となります。水産業の発展を強調しなければならない沖縄で、左(ママ)の状況は経済自立を急ぐ今日、見逃すことは出来ないと思う。
 斯かる意味からも漁港の整備は緊急を要すると信ずるものであります。港のない糸満の現状は一進一退ではなく一進二退であります。以上の理由で石原議員の説に賛意を表するものであります。
◎仲村栄春君 本件並びに陳情十号と関連して要望します。委員長からの発表もあった通り、今回の被害は西海岸地域では殆ど前古未曾有という損害だ。従って委員長が提案したように、災害復旧対策委員会の設置を提唱したが、その委員会並びに当局、議会を代表して陳情に行かれる代表の方々に要望するが、年々歳々宿命的に襲う台風の被害が如何に大きな%を示しているかは今更申上げませんが、今度の被害でも特に損害を蒙った国頭の被害状況を見た場合でも吾々は全琉を一円とした農業共済保険が速かに制定発表される様希望したい。その点御配慮願いたい。
◎祖根宗春君 今回の暴風被害地を巡って先ず第一に惨状は目も当てられない。暴風対策に対して遺憾に思う点は暴風警報の伝達経路が無かったことだ。若し警報が事前に沖縄各市町村の末端まで徹底しておれば船の沈没などはもう少し防げたと思う。それから住民の避難についても、もう少し分っておれば避難のしようもあった。或は与根の損害なども充分防げたと思う。最初の模様では大きな被害は来ないだらうというので安心していた所をやられた。これを機会に警報伝達の徹底方を当局の方で考究して欲しい。
 次は従来復興予算による工事の責任は工務部の直轄事業としてやっており、町村は何ら分らない。それでこれに対する町村側の協力も薄かった。それに後の管理維持にしてもなっていない。そのため壊された所もあるのに放任されている。これは明らかに不徹底だ。これから考えても或程度町村に任しておいた方がいい。工事も落札にしないで市町村長を責任者として技術的指導は群島政府でやって欲しい。そしてやった後の管理も町村工事は町村長にして欲しい。更に軍当局に対しても戦災の復旧だけがアメリカ人の責任ではない。暴風の復旧もアメリカから費用を出して欲しいということをどこまでも強くくい下って実現して欲しい。それから工事施行の順位についてだが、従来ややもすると順位について問題も出る。特に二億と見られる護岸、道路、その他の施設物の予算が速かに貰えれば全部要求通り復旧するが、その何分の一しか貰えない場合、どこを優先的にやるか、群島政府だけで決めないで先の委員会制度を活用して誰が見ても妥当な順位にして戴きたい。又工事によってその地方が受ける利益よりは寧ろ他の所に費用を使った方がいいと考えられる所も出てくる筈だが、そういうやり方の内容についても検討して戴きたいと思う。それから沖縄では特に台風などの被害の大きい所は本島内の他の移住に適する土地が相当ある筈だし、更に八重山でも遊んでいる土地があるからこんな所への移住も将来の恒久的対策の一つとして考慮して戴きだい。以上の点要望します。
◎議長(知花高直君) 本意見第一号は第一部委員長が述べられた御趣旨に従って意見書を提出することに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
◎議長(知花高直君) 御異議ないと認めます。依って左様に決し議長において意見書を調製の上知事宛発送することにいたします。
 午前はこれで散会して午後一時から再開いたします。
  午前十一時五十九分散会

 一九五一年九月三日
  午後二時十一分開会
○議長(知花高直君) 開会いたします。午後の出席十八人、欠席二人であります。

◎議長(知花高直君) 提出案件全部を可決いたしました。炎暑の候マージ台風の被害の実態調査をなされ、尚又委員会では真剣に付託された案件を適当に御審議になりましたことを厚く御礼申上げます。議案、諮問案並びに陳情案全部を終了いたしましたので、今期議会はこれを以て閉会いたします。
 閉会に当って知事の御挨拶があります。 (拍手)

◎知事(平良辰雄君) 今度の議会で皆さんがマージ台風の被害対策について十分御関心を以て、そして今後の政府のこの処理について意見書も出されているようでありますが、意見書の趣意は私共も大いに賛成するところでありまして、皆さんの御期待に副うように早くこれを具体化したいと考えております。その外、又民政府に対する陳情も私共も兼々主張しているところでありまして、相共に陳情の貫徹に努力したいと考えております。有難うございました。
  (拍手)
  (午後二時十四分閉会)
  出席者は左の通り
 議長 知 花 高 直 君
 議員
  稲嶺盛昌君 仲村栄春君
  石原昌淳君 普天間俊夫君
  宮城久栄君 平良幸市君
  玉城泰一君 具志頭得助君
  長浜宗安君 山川宗道君
  祖根宗春君 山城興起君
  新里銀三君 新城徳助君
  崎山起松君 野原昌彦君
  仲里誠吉君
 知事      平良 辰雄君
 総務部長    幸地 新蔵君
 経済部長    呉我 春信君
 工務部長    渡嘉敷真睦君
 厚生部長    宮城 普吉君
 知事室事務局長 宮城 寛雄君
 総務副部長   稲嶺 成珍君
 法務副部長   金城 信範君
 警察本部次長  西平 宗清君
 法務課長    牧野 博嗣君
一九五一年十二月六日
  沖縄群島議会議長
    知 花 高 直 捺印
一九五一年十二月七日
  会議録署名人
    宮 城 久 栄 捺印
一九五一年十二月八日
  会議録署名人
    山 城 興 起 捺印
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