戦後初期会議録

組織名
沖縄民政府
開催日
1948年04月22日 
(昭和23年)
会議名
軍民連絡会議 1948年4月22日 目録詳細 画像を見る
議事録
軍民連絡会議〔四知事会議案協議・軍政府協議事項〕

  四月二十二日(木)午前八時半
  於軍政府会議室
  沖縄・大島・宮古・八重山の各知事、通訳、秘書列席。各民政府の係将校と打合。
  沖縄群島
  出 席 志喜屋知事、比嘉通訳、津嘉山秘書課長。
  軍政府 ラブリー少佐。
連絡事項
 軍政府
  昨二十一日(水)軍政府ではクレーグ大佐、ドートリー大佐を中心に各部長が集って四知事より提出された議案に対して協議をしました。各民政府の毎日の行事(事務)が取上げられて協議された。
  四知事が一緒になって協議すると時間がかゝるから各民政府の係将校で協議をし、若し問題があれば提出して貰いたい。然うすると又皆で協議をします。
  クレーグ大佐の話によるとヘードン准将は又昨日から気分が悪いと云はれて居るが、而し押して本日午後三時半には民政府に行かるとのことであります。
 ◎明金曜日知事がヘードン准将を訪問されることについては(送別記念品贈呈パナマ帽)クレーグ大佐が今ヘードン准将の所へ行かれて居るから後程に御知らせします。
 一、インフレー対策として通貨切替の件
  此の件は昨日の軍政府将校会議の議題に取上げられなかった。何故なれば此問題についてはクレーグ大佐及軍財政部でやられて居るので論議以上に進捗して居ます(公表されない様に)。
 二、建築資、特に板類輸入の件
  此の問題に付ては悲観的な報告しか出来ませぬ。
  東京から帰へって来たホーイ大尉等の話によると現在沖縄には九〇〇棟程度の資材しかない。既に軍政府としてはペンキ、セメント、窓硝子、材木を要求したが孰れも得られなかった。日本と約束した材木があるので之を要求して居るが、之さへも得られないではないかとのことである。
  西表にも松材はなく堅い木材しかない。此の堅い木を伐採して居るが一ケ月に四、五万ボールドフィートしか伐採出来ない。
  西表で伐採しても結局沖縄の手に入る迄では二ケ月を要す。一所伐採したら又別の所に機械を移転したりするので極僅かしか伐採出来ない。四、五万ボールドフィートで四、五百棟の建築しか出来ない。
  此の解決を有利ならしむるには国頭の官有林を伐採する様に経営する外はないとの結論に達した。
  米国でも木材は非常に欠乏して居る。
  縦令米国から輸入するにしても材木の値段が高く又予算もないのである。
 三、家畜の輸入
  此の問題は明るい希望が有てる。
  ジョルダン少佐の話によると幾らかの豚が輸入されて来る。オーストラリヤからの牛は二、三週間の飼料を準備してから輸入する。
  ジョルダン少佐の話によると種々の家畜が琉球以外から入れることが出来る。
  米国は沖縄復興のため農業方面に当てられたものの中第一家畜、第二肥料、第三種子もの類の順序に予算は割当てられて居る。
  其他南北琉球で家畜を奨励し彼等の必要以外のものは沖縄本島に入れる様、大島・宮古・八重山の各隊長と打合して居る。
  目下経済統制のため南北琉球から出し渋って居る。
  何か家畜について問題はありませぬか。
 志喜屋知事
  布哇から送って来ると云ふ豚の輸入促進方を御願ひします。
  南北琉球からも豚の輸入方を早く御願ひします。
 軍政府
  布哇からの豚が五〇〇乃至一、〇〇〇頭送って来るとの話はあったが何か故障があったのではなからうか。或は輸送の関係ではなからうか。
  縦令米国からの船で輸送するにしても其船は既に米国で満載になって来るから布哇では乗せきれないでせうか。
 志喜屋知事
  然らばM・Gの方から船を出して貰ふことは出来ないでせうか。
 軍政府
  此の豚はM・Gで買ったものでないから然うするわけにはいかない。
 志喜屋知事
  家畜は主に牛馬を輸入して貰いたい。
 軍政府
  ジョルダン少佐も牛・馬が問題であると云って居るから種牛・種馬が主として輸入されるだらうと思ふ。
 四、副食物輸入の件(肉類・油類)
  チェース大佐との協議であるが希望は与へられない。マック司令部を通してでなければ返事は出来ない。
  其他の食糧増配はチェース大佐の得た報道によれば、米国から余分に送られたとのことがないので希望は薄弱である。
  只油類は少し程入るが之も要求の半分でもない。
  チェース大佐としては油類を余計送る様要求して居る。
  食糧品が余計要求出来ない理由は、米国で生産するものは欧州、日本、朝鮮、比津賓、沖縄等に分与するのである。
  米国でも配給制をやって居るので窮屈である。知事は此の点につき何か質問はありませぬか。
 志喜屋知事
  部長会議で協議して文書を以て提出します。
 軍政府
  軍政府でも油類が不足で椰子油でも手に入れたいと考へて居る。
 志喜屋知事
  ブラジル、アルゼンチン等からも食糧等を送りたいと云って来ますが、現在の所米国の船を通して来るので困難の様である。之を国際的に直接南米から輸送は出来ないものでせうか。
 軍政府
  船がないし貿易が出来ない関係から困難である。
 五、日用雑貨品輸入の件
  全然見込がない。チェース大佐の話によると全然入って来ない。
  ホーイ大尉も日本から入って来ない。貿易の費用を以て日用品を買ふことは出来ない。食糧の外は輸入困難である。
  人口の割合からすると日本の個人々々よりも沖縄の方が昨年は余計に貰った。
 志喜屋知事
  日本は戦前のストックがあったからそれでも良い方であらう。
  日本から小包が送られることになって居ますが。
 軍政府
  日本の逓信省の許す範囲の品物は送られるでせう。
  日本も国内で不足する品物は送ることが出来ないだらうと思ふが。
    以上提出された問題の回答。
 軍政府
  昨日全琉球の経済統一の件が打合された。
  先般の経済会議で決定された件はマック司令部で承認されることになった。文書が来たら又各部で研究して実施することになって居る。
  マック司令部から承認されて来るものは自由販売の件であらう。而し不足を来すものに対しては統制することになるだらう。
  自由販売が出来るからと云って米国食糧品及本島生産品を他に売出してはいけない。注意すべきことである。
  大島、先島を通して台湾、日本、朝鮮等に売出すことがあってはならない。必要以上のものが出来た場合は貿易庁を通して輸出する様にしなければならない。
 志喜屋知事
  物資が他へ流れ込むと云ふ問題は通貨が日本や台湾等と異なれば防ぐことが出来ると思ひますが。
 軍政府
  経済会議で此の通貨切替へとのことも関係があるかどうか。
 軍政府
  貿易は過去数ケ月琉球内では活発でなかったが自由経済になると活発に動くだらう。又日本との貿易も然うなるだらう。日本との取引は困難になって来た。
  日本から来るものは多いが之に対する沖縄からの見返品が少くてバランスが取れない。従って輸入品が減少することになる。
  然うすれば弗をバックとして取引したいと経済部でも研究して居る。ホーイ大尉の後任が来られて居るから其方が解決するだらう。
  日本から取れなくとも米国やマニラからも取れるが而し日本とバランスの取れる迄は困るだらう。
  今迄で日本から多く輸入して居た関係上日本からがよいと思ふが。
  台湾との貿易を軍政府としても文書を以てマック司令部に提出してあったが其文書をマック司令部で未だ見なかった様であったが、ホーイ大尉が今度行った時取上げて支那政府に回付したとのことであるから多分実現するのではなからうかと。
 ◎漁業の件。漁業は希望を有てる。
  現在漁具は不足であり網については日本も不足を来して居るが、米国から日本に綿を入れると其綿を以て網を作る。然うすると今年は沖縄にも相当量の網が入ることになる。
  五〇〇万ボールドフィートの造船資材を入れる資金が出来ました。
  製氷機五個注文してあるから六ヶ月以内に来るだらう。
  全琉球の中魚量の多い所に余計割当てられることになるだらう。
  沖縄、南北琉球の漁場は全琉球を一円として出漁してよいことになる。但し他の列島へ上陸して根拠を有ってはいけない。
  又沖縄及南北琉球の漁業者は孰れの水産連合会に販売することが出来るが、而し個人々々に販売することは出来ない。
  沖縄住民の使用する寄港地として那覇港の北側をライカムに願って居るが未だ許可が来ない。
 ◎陸上輸送の件。此の件については明い希望は有てない。
  戦争前にあったバスを数台注文し上層部も許可をしたから近い中に来るだらう。
 志喜屋知事
  鉄道は如何なりますか。
 軍政府
  鉄道は軍政府でも取上げて活動して居るが、何時とは判然とし〔て脱カ〕居ないが、今年中には米国、マニラから一部は得られるだらう。
  其他の車輛は注文して居るが新しい車は見込がありませぬ。
  古いものは相当多量にあるが部分品がありませぬ。
  而し注文はしてあるから多分六ヶ月後には来るでせう。其後は車もよくなるでせう。
 ◎ガソリンの件。ガソリンは思はしくありませぬ。
  軍政府の要求の1/3しか来ませぬ。現在使用して居る量よりも少くなります。
  之れ以上輸送については考へられませぬが出来るだけ善処しませう。
 ◎久米島及大東の無電の件。久米島及大東の無電の件につきバーネット様(通信部隊長)の話によるとマック司令部の許可を待って居ると。許可なり次第何時でも開始する様準備をして居ると。
 ◎マック司令部からの代表者の話によると近代式な大きな放送局を設置したいとのことであるから近い中に立派なものが出来るでせう。
 ◎郵便切手は印刷もし荷造りして送らうとして居るが沖縄との貿易のバランスが取れない為め送るのを待って居る。近日中東京に行って精算して取寄せることになって居ます。
 ◎知事公選の件。知事公選については四知事共同意見であるから研究して進めたい。
  何時とは云へないが今年中には選挙やりたい考へである(今の所公表されない様にされたい)。
  市町村長選挙の様に大急ぎはしない。最後の段階であるから慎重にやりたいと思ふ。
  沖縄が純行政費をやる様になったら沖縄の四知事が同じ様にしたい。
 ◎課税の件。四政府の課税についても沖縄と同様に変更した。
  琉球銀行の開店は五月一日の予定であります。南北琉球の支店の開店も五月一日の予定であります。
  銀行が五月から開くので各事業の運営資金は当銀行から貸出すことになって居る。
 ◎衛生の件。過去一ヶ年で非常に完成された。
  例 屋我地愛楽園の増設。結核病院、精神病院の設立。チブス・種痘の予防注射の如き。
  マラリヤも減少した。次年は益々よくなるのではないか。
 ◎教育に関する件。日本で教科書が印刷済みで輸送されんばかりである。相当量で生徒が銘々教科書を持つことになる。
  教科書は六・三・三の制度に准じて編成されて居るから全琉球同程度に教育されるだらう。
  鉛筆や白墨が不足して居るから注文してある。之等が来ると学用品は大抵解決される。
 ◎警察に関する件。スキウス様の話であるが、全琉球に亙って警察が協力する必要があるから、各警察部から五人程軍政府に集って協力する件を議したいから各知事も協力して貰いたいと。
 ◎以上が昨日軍政府に於て協議された件々であります。
 志喜屋知事
  民政議員及知事の公選を今年中にやらるとのことであるが早く実施されんことを御願ひします。
 軍政府
  軍政府としても早くやる様努力します。案を作成して互に協議もし地区の範囲等もあり、又各候補者が各離島迄で行って意見の発表等もあり、用紙や鉛筆等の準備等もあるから然う早くは出来ない。
  軍政府としては今から準備にかゝります。
 志喜屋知事
  全琉球を一円としてやらるのですか。
 軍政府
  四政府別々にやる考へである。米国の州知事の選挙の様にやります。
  平和会議後は四知事の上に又政府を作るか。
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