戦後初期会議録

組織名
沖縄民政府
開催日
1947年11月14日 
(昭和22年)
会議名
定例部長会議 1947年11月14日 目録詳細 画像を見る
議事録
定例部長会議〔物価・機構改革・知事公選〕

  十一月十四日(金)午前九時
  出 席 志喜屋知事、又吉副知事、島袋官房長、山城、護得久、平田、新里(文化代)、嘉手苅(農代)、糸数青(商代)、大宜見、桑江、當銘、山口(水代)、山田、安谷屋、仲村、前門、宮良(工代)、池宮城(工代)、山城(補代)、比嘉秀、仲原(開代)、當銘(財)、伊志嶺(司)、原國(貿)の各部長。
協議事項
 島袋官房長
  軍との連絡会議事項報告。
   1 諸物資(いも、水産物、メリケン粉等)の価格引上指令受領。
   2 農連による薪炭の一手販売の文書取消方依頼す。文書にして提出せよとの事。
   3 選挙を何時施行出来るや尋ねたるも、不明。
   4 機構改正案は十二月一日までに必ず提出せよとの事(各部予算をも明記)。
   5 SCAPの命であるが成人教育を文化部から文教部に移せとの事(指令は目下軍で作成中)。五百万弗分位の道具、器材(ラヂオ放送機、受信機、映写機、印刷機等)を送るとの事。
   6 情報課の役員を知事で選任しておくこと。
   7 大島の博覧会へ知事が行くかの質問に対し、知事は行かないが、知事の代理として、財政部の宮里財政長が行く旨答へた。
   8 月曜日ムーア少将が来た時、知事、副知事が面接したが、復興成績特に農耕方面は優秀であると、護岸の復旧に就ても努力するが、禁止地域で解禁したいところがあったら調査して出せとの事。
   9 先に提出した公休日に関する文書の返事を要求したら、今ライカムへ送ってあるから、先方からの返事があり次第通知するとの事。
   10 先に軍から、日曜日は車を動すなといふ通達があったがそれに関し、知事や部長は住民の指導旁運動会や競技会等へ行くが、知事・部長の車だけは動ける様にしてもらひたいと陳情したら、文書にして提出せよとの事。
 糸数青(商務)
  物価は大体二割五分位の値上になってゐる。
 大宜見部長
  物価が上るなら、賃銀の引上方を軍へ進言する必要はないか。又賃銀の引上により金融の悪循環を来さざる様。一方では生活安定委員会や他の島内生産品の配給ルートを確立することが一般の生活を安定させる為に極めて重要であると思ふ。関係部はよく連絡して研究して貰ひたい。
  一例として肥料の配給を生活安定委員会で握って供出しない時はその配給を停止する等の措置を取ったら如何。
 安谷屋部長
  行財政整理を政変と考へ、部長以下総更迭し、民から人材を登庸し、又民の声を取りあげ政策化し、知事が白紙になって、全沖縄から人材をとりあげる事。
  財政が自弁になれば議会の権限が増すことは当然である。社会一般に希望を与ふるために、この件の実現を期すべく、知事で軍の方へよく理解せしめる様に御尽力願ひたい。
  財政整理に就ては知事の方で、予算の一部を復興費に入れるなり、或ひは民政府の或種の機関を民営に移すなり、営団組織等にするなり等、出来るだけ一般予算から切り離す様努力せられたい。
 志喜屋知事
  部長、課長が変はることは不可能であると思ふ。
  それより志喜屋が退いた方が難関突破に早道であり、又その方が円満に全てを解決することになると思ふ。
  各部長が退いて、知事が選ぶことは不可能であり、又全部残ることになる。
 安谷屋部長
  全部更迭でなく民からも登庸して欲しいといふ意味である。
 志喜屋知事
  市町村長選挙の次に、沖縄議会・知事の公選があるものと予想せられたが、軍の方ではそう考へてゐないらしい。選挙委員会での選挙カードの市町村長欄の次に、議員並知事の欄を設けたら、軍から消せと詰問せられた。
  又、軍政府の選挙に詳しい方に知事公選の事を話したら、この事は正式にはクレイグ大佐へ取次ぐ事は出来ないとの事であった。
  大島・宮古・八重山の知事はかわった。大島は先の知事の急死により、副知事中江氏が任命により新知事になった。又、宮古では知事がかわる時選挙してゐないらしい。
  知事公選の命があれば、非常に好時機と思ふ。
  部長が全部更迭といふと、軍の方では「スト」として解釈しないか心配である。
  部長方でよい道――軍の誤解を招かず、民の心を安んずる――をお考へ下さる様。志喜屋の心としてはやめさすことが大嫌である。自分が退くのが捷径だと思ふ。知事不在の折でも部長で会を催す等して御研究願ひたい。
  軍政府が国務省に移管される時が絶好の機会だと思ってゐましたが、それも話だけになってしまひ、時期を考へてをりましたのが、今までづるづるに残ってしまひました。
 前門部長
  知事公選と議員選挙の事をクレイグ大佐へ判然進言したのですか。
 知事
  まだそこまではいってをりません。
 前門部長
  沖縄の現在の状態は軍政下の自治である。知事を公選した上の自治――それが各部長の意見であり、民論であり、沖縄の政治を明朗化する問題として発表したら如何。公選により知事が変ることが順序であると思ふ。
  政変といへば、知事がやめ、部長がその後の責任をもつものであるが、今回のはそうでなく、単なる機構の改革として、十七の部から九乃至十の部に縮める時に起る自然退職といふ形であり、辞表を予めまとめる必要はない。
 護得久部長
  公選といふことは望ましいことであるが、公選そのものが、現在の民政府に較べて、民心をより安定させ、民をより明朗にすることが出来るか否かを考へることが大切である。戦の後では衣食住すべての方面に不平があり、如何なる知事、如何なる部長でも五一万住民を満足せしめる事は出来ないと思ふ。
  租税に就てであるが、沖縄住民は現在税金を収めてはゐるが、実際はそれは沖縄人自身の力によって得た利益から出してゐるのでなく、軍の資産を運用して得たものから出してゐるのである。
  ハワイは百年来アメリカの領土であるに拘らず、未だにその長は大統領の任命である。
 山城部長
  現在沖縄は軍政下にある事を熟考すべきである。
  現在の一挙一動が沖縄の処分問題に影響する。最後まで知事と協力一体となって、申しあぐべきことは申しあげ、最後の決定は知事でやる(明朗に)。
  政府の第一義は民を福にすることである。
 安谷屋部長
  政治効果と人心の明朗化のために、沖縄議会は人員は今の通りでも、民政府の経費が自弁となった時或程度の議決機関になることを希望する。
 島袋官房長
  沖縄と日本では、非常な違ひがある。日本は主権を有するが沖縄にはない。
  十二月一日までに機構の改革案を軍へ出す様になってゐる。各部の意見をまとめて知事にさしあげてあるから補佐の任は終へてゐると思ふ。各部別の予算案をも合せて報告しないといけないので十五日までには決定しなければならない。この知事採決を最後案とし度い。
 當銘会計長
  戦のためにマラリヤが蔓延したのであるから、衛生費の一部を復興費に計上したら如何。
 又吉副知事
  軍の経済部で商務、農務、水産、総務の各部長、農連会長と軍側で会議があった。いも四万ポンド外土地生産品を軍へ供出せよとの事である(指令は何れ知事へ送付するとの事)。    以上
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