- 組織名
- 宮古議会
- 開催日
- 1948年07月26日
(昭和23年)
- 会議名
- 第8回宮古議会[1]
- 議事録
- 第八回宮古議会会議録
一九四八年七月二十六日午前十時第八回宮古議会を宮古民政府に招集す
附議事件左の通り
議案第三十七号 一九四八年度宮古民政府歳入歳出追加予算議定について
議案第三十八号 一九四八年度特別会計モータープール歳入歳出追加予算議定について
議案第三十九号 一九四八年度特別会計公益質屋歳入歳出追加予算議定について
議案第四十号 特別会計船浮事業費廃止について
議案第四十一号 特別会計復興事業部費設置について
議案第四十二号 一九四八年度特別会計復興事業部歳入歳出予算議定について
議案第四十三号 特別会計電気事業部費設置について
議案第四十四号 一九四八年度特別会計電気事業部歳入歳出予算議定について
議案第四十五号 国庫出納金端数計算法改正案について
◎議長(與儀達敏) 開会宣告(午前十時)
只今より第八回宮古議会を開会致します、今議会には先般の補欠選挙により選出された新議員を交へての議会で殊に婦人議員も加はり清新、溌刺、新味を添へております、何卒新議員におかれても真剣なる御審議なされるやう御願ひすると共に議員各位の御健闘を御祈り致します
次で書記をして左の報告をせしめる
報 告
今期議会に参与を命ぜられし者左の通り
官房長 下地 惠位
文教部長 砂川 惠敷
農林部長 與儀 喜文
経理部長 池村 實秀
財務会計部長 平良 義雄
復興事業部長 東風平惠令
経済部長 本永 透
厚生部長 奥平 朝親
警察部長 下地 寛忠
逓信部長 富山 常仁
公衆衛生部長 謝敷 宗吉
電気事業部長 當間 九思
総務課長 垣花 惠用
土木課長 眞喜屋惠永
任 命
事務官 垣花 惠三
同 波平 惠喜
議会書記を命ず
一九四八年七月二十六日
宮 古 議 会
報 告
去る七月十日議会倶楽部の決議に依る八重山暴風見舞電報に対し八重山議会より左記の通り返電がありましたから報告致します
記
当地方の暴風被害に対し御鄭重なる御見舞を賜り感謝に堪えず衷心より御礼申上げます
八 重 山 議 会
宮古議会宛
次で書記出欠議員の報告を為す
全員出席
◎議長(與儀達敏) 議事録署名人を決定したいがその方法はどうしたらよいかを諮れば
(「議長指名」の声あり)
議長指名と云ふ意見がありますが御異議はありませんかと再び諮りしに
(全員「異議なし」を唱ふ)
御異議はないやうですから議長で指名します、十八番(嵩原重夫)と七番(福嶺紀仁)にお願ひ致します
◎九番(亀川惠信) 議長に御聞き致します、私は前議会において議事録の重要性からして署名人は責任感の強い者をと強調したが偶然にも私が署名者に指名せられ恐縮して居ましたところが前議会の議事録は今もって今日に至るまでそれに接して居りません、少くとも議事録は軍政府報告する前に署名人の署名を要するものと思ひますが次期議会に至るまで出来ないその辺の事情を承りたい
○議長(與儀達敏) 議事録はここに出来ていますので後で点検して戴き度い、軍政府には未だ報告してありません、今回の議事録は通常議会のもので厖大なものとなっていますので整理をするのに相当の時日を要しました、議事終了後御上げ致します
◎九番(亀川惠信) 議事録が次の議会まで出来ないと云ふことは常識上考へられないことである、従来署名人は如何なる時期に署名していたか御聴きしたい
◎議長(與儀達敏) 前議会の議事録は研究会の記録も入れたので整理するのに一月もかかっています、それに選挙等もあったので事務に輻輳を来たし早急に完成することが出来ませんでした
本日の日程を御諮り致します、午前中は上程議案の説明をなし午後は南静園、集団農場の視察を為し引続き農林学校に於て開かれる煙草の試喫会に臨みたいと思ひます尚明日は休会して個人研究をなし明後日より本会議を開きたいが如何ですか、と諮れば
○十六番(垣花惠辰) 明日からすぐ本会議に入っては如何
○議長(與儀達敏) 只今の意見はどうですか
○十七番(砂川玄仁) 私は個人研究をする必要はないと思ひます、綜合研究会に移りたい
○議長(與儀達敏) 只今の十七番の意見は如何ですか、と諮れば
○十八番(嵩原重夫) 私は十七番の意見に賛成致します
(「個人研究必要」の声多数あり)
○十七番(砂川玄仁) 日程は休会して協議しては如何か
○議長(與儀達敏) それでは休会して日程を協議します
(休会を宣し、日程について協議をなす)
◎議長(與儀達敏) 開会致します、只今協議した通り個人研究を明一日はすることにして明後日午前十時より本会議を開くことにします、只今より議案を配付します
(書記議案を配る)
次に知事の挨拶があります
◎知事(具志堅宗精) 本日第八回宮古議会を招集し追加更正予算案をお諮りするに当り所懐の一端を申上げる機会を得ました事は小職の光栄とする所であります
さて現下の郡民生活に於て最も憂慮せらるるのは食糧問題であります、即ち昨年来の二回に亙る季節外れの暴風についで一月は降雨量例年の一二一ミリに対し僅かに三三ミリ、三月の発育期に於ても例年の降雨量二二九ミリに比し四、五ミリ、五月に於て例年の二二六ミリに対し六六ミリといふ超変体ぶりでこの変体的気象状況に支配されて農作物の生長は阻害され食糧の窮迫はその度を加へて来たのでありますが更にこれに加へて今次の颱風による潮害は沿岸全地域に及び而かも降雨量二〇ミリと云ふ状態で、為に五月・六月植の甘藷は大半全滅に帰し従って九月以降の食糧事情は深刻を予想される状態となったのがそれであります、この天災下にあって如何にして郡民生活を維持し治安を確保するか、私は機に臨み変に応ずる軍政府当局の御援助の下あらゆる方策を傾倒してこの難関を克服し度い決意でありますがここに更めて申上げたいことはこの天災に由る窮状を軍政官に於かれても痛く御心配され軍政官自ら御調査を遂げられ然も数次に亙って上級軍政府に折衝されて六月以降島内生産物に依る自給を緩和され二月、五月、六月に於て三、四五九、〇〇〇ポンドの食糧を放出更に一人当り二七〇カロリーを三四〇カロリーに増配の恩典を与へられる等郡民を飢餓より御救ひ下されたのみならず莫大なる衣料品、医薬品を放出下されたことは全く感激に堪えないところで八万郡民はこの御厚情を斉しく肝に銘じ御恩に酬いるところあらねばならぬと思ふのであります
現在は軍政府の有難い放出食糧に依って主食を辛うじて維持しているのでありますが、前にも述べましたやうに九月、十月は島内生産の欠乏は深刻を極める筈でありそれに軍政府よりこれ以上の食糧増配は世界全地域に至る食糧放出の関係で全く困難であります故、郡民各位はよくここに思を致され農家と云はず非農家と云はず殊にブローカー生活を一擲し寸土あらばこれを活用し男も女も蹶(嘘カ)って各自の食糧を幾分なりとも自給されこの危機克服に奮起されんことを要請して止まない次第であります
民政府としても一段と荒蕪地の開墾を進める一方この非常緊急対策として島外よりの食糧移入を企図しこれが購入資金として一、〇〇〇、〇〇〇円を予算化したのでありますが、郡民の生活を確保することは至上最高の責務であります、以上軍政府にもお縋りし有ゆる努力を捧げやり抜く覚悟であります
序に申述べるのでありますが本郡農業の隘路は種々あらうが先づ水と林にその支障があらうかと思ふのであります、今次の暴風に依って防潮林が急務なることが一層痛感されます、年々歳々繰返される風害は拱手傍観を許さざるものがありますので民政府としてこの際防潮林の造成に乗出すべく五ヶ年にて全郡を緑化する施業案を樹て今着々実行に移しているのでありますが先づ東海岸一帯を第一次に造成し逐次全島に及ぼす積りであります
地元部落民各位も又全農家各位も耕地保護のために否食糧確保のために強力なる御協力が願い度いのであります
猶水の問題たる耕地灌漑の懸案はゲスリング軍政官殿の非常な御援助に依りビヤード技師の御計画に依って白川田の湧水を利用し集農を中心に灌漑施設をすると共に平良市の上水道にも利用したい計画を進めてをります
これが資材入手に依って実現すれば乾燥地農業の隘路が緩和される手がかりとなる筈で期待大なるものがあります
猶予算案には簡易水道を計画計上してありますがこれは継続事業の第一着手であり逐次拡大して行くべく計画してあります
次に申上げたいのは昨年度米軍政府御当局の絶大なる御援助と莫大な医薬物の放出によって大々的に実施していますところのマラリア防疫作業は愈々軌道に乗って本月迄に終了した排水路並に亜溝(ママ)は延五三キロ投薬アテブリン四八九、〇〇〇錠撤布せるDDT一七七缶に達し、これに旱魃の影響もあって新患者の発生殆どないと云ふ状況になっておりますのでこの機を逸せず引継ぎ徹底的に防遏作業を行ひ五ヶ年計画を以てマラリアを完全に根絶すべく新たに平良、城辺、下地に防遏出張所を設置しこれを予算化したのであります、マラリアと共に恐るべき癩の惨事があって郡民保健上由々しき事態にありますので南静園の復旧完了すればこの機会に於て未収容患者を収容し病魔に悩む同胞を労ると共に無癩の楽土をつくり度いと思ひまして癩予防費を計上し御協賛を願った次第であります
次に復旧工事並に建築用材、薪炭の給源であります所の船浮伐採事業でありますが、今回特別会計復興事業部予算案として全面的に新出発をし予算を編成替しました、船浮林の伐採は何といっても運材施設、荷役施設に懸ってその成敗がありますので今度施設を拡充すべく計画してあります、この軌道施設と接岸荷役の設備が完了すれば月二、六〇〇石以上の生産搬出が充分出来る見込であります、復旧費は約一九、〇〇〇、〇〇〇円学校を初め各施設の復旧がこの伐採事業に依存するのでありますから全力を傾注して努力致し郡民各位の御期待に副ひたい決意であります
さてこの外御協賛を願ってありますのは道路費に一、六三〇、〇〇〇円、友利港改修費に一八〇、〇〇〇円、慈善病院建築費に七八〇、〇〇〇円、種畜購入に四六〇、〇〇〇円、農林及水産学校の建築費に一、一三〇、〇〇〇円がその主なるものであります、沖縄連絡事務所、機業振興費、図書館費、久松部落送電設備費等も若干計上してありますが昨年度に於て出発した公益質屋の事業が利用者五、二二七人、貸付金額一、七八三、六〇〇円に達し、その庶民金融機関としての使命が高度に達せられていますので今回一、〇〇〇、〇〇〇円に増資すべく追加繰出を計上してあります
今回の追加更正総額八八三万六千余円この内事業費が七八四万三千余金額の九〇%であります、これが充当財源は主として配給物資取扱益金でありまして新に郡民の負担を増したのではありません
以上計画しました諸案につき概略を申上げましたがこれが御協賛を得て実現されますならば郡民生活の上に寄与すること大であると確信するものであります
どうぞ議員各位の御慎重なる御審議をお願ひして止まないのであります
(議長書記をして提出議案の朗読をなさしむ)
◎議長(與儀達敏) 議案第三十七号以下第四十五号まで一括上程して第一読会に入ります
○番外(総務課長垣花惠用) 議案第三十七号を詳細に亙り説明す
(次に議案三十八号は経済部長本永透、議案三十九号は厚生部長奥平朝親各々説明す)
○議長(與儀達敏) 議案第四十号、四十一号、四十三号は手続上の案でありますから説明は省くことにして四十二号を復興事業部長より四十四号を電気事業部長より説明されたい
(復興事業部長東風平惠令、電気事業部長當間九思各々説明す)
これで提出議案予算関係は説明を終りました、午前中はこれを以て休会致します(午前十一時四十五分)
○議長(與儀達敏) 開会致します(午後一時)
経理部の決算が出来ていますから主管部長から説明せしめます
(経理部長説明す)
◎十八番(嵩原重夫) この決算報告は一九四六年五月一日より一九四八年三月三十一日までのものになっており本表中に当期剰余金とあるのは二十三ヶ月間のものであるか当期とは一年毎のものであるか
○番外(経理部長池村實秀) その期間二十三ヶ月分であります
◎十八番(嵩原重夫) それでは雑貨の部の衣料、雑貨の当期間はいつからいつまでか
○番外(経理部長池村實秀) それは記入してある期間でその時からしか入荷がなかったからであります、従って当期剰余金の所の当期は入荷後の期間を意味しています
○議長(與儀達敏) これから一般政務に対する質問に移りたいと思ひますが如何
◎二十一番(玉城玄教) 一般質問に移る前に動議を致します
軍政府に対し食糧増配陳情の動議を提出致します、吾々は軍政府の御同情によりその日その日を過して来たが最近の天候異変、旱魃、暴風の襲来等によりcd級に於ても自己の生産だけでは生活出来ず実に悲惨な状況にあるのであります、勿論島内開発に全力を尽すのでありますが天候には抗することが出来ず到底自給不可能でありまして自由貿易の出来ない今日おすがりすることの出来るのは偏に軍政府より外にありません、これを議会の意志として郡民に代って食糧増配の陳情を致したいと思ひます
◎議長(與儀達敏) 只今二十一番より軍政府に対し食糧増配の陳情書を提出したいと云ふ動議がありましたが如何ですか
(一同賛成す)
◎二十一番(玉城玄教) 万場一致で賛成の様ですから陳情文の草案は議長に一任して作成をお願ひ致します
◎議長(與儀達敏) 文案は私の所で作成し再開議会で決議する様に致します
(「異議なし」の声多し)
本日の日程はこれから南静園、集団農場、農林学校を視察することにお願ひして本日はこれで散会致します(午後二時)
上へ戻る