戦後初期会議録

組織名
宮古議会
開催日
1948年02月13日 
(昭和23年)
会議名
第7回宮古議会[3]
議事録
  二月十三日
◎議長(與儀達敏) 開会宣告(午前十時二十分)
 出欠を報告致します、出席十八名、欠席三名です
 本日の日程は先日お話の軍政府へ提出する感謝状文案に就て御審議を御願ひし更に残った議案説明の後、各部の事業報告、事務報告を聴取して予算案の第一読会に入りたいと思ひますが如何にと諮れば「全員異議なし」と呼ぶ
 御異議ない様ですから決議文案の審議を致します
 議長次の通り決議文案を朗読す
  決 議 文
米国軍政施行以来、八万島民悉く崇高なる自由と博愛の大道に蘇り食糧、衣料、医薬、燃料の間断なき放出と莫大なる復旧費並に嶄新なる機械力の御援助によって愈々飢えず凍えず各々その生を安んじその面目を一新せんとしつつあるは、これ偏へにマクラム中佐殿外軍政官諸官の特別なる御高配と御努力の賜にして全島民斉しく肝に銘じ感激に堪えざる所なり、然るに昨年来二回に亙り来襲せる風潮旱害は意外にも深刻を極め食糧危機必至の実情にあり、島民挙ってこの危機克服に懸命の努力を払ひつつあるも尚憂慮深きものあり、希くばこの事情を御洞察賜り食糧物資の放出方御配慮あらん事を懇請して止まず、ここに全住民を代表し謹んでマクラム軍政官殿の御温情と御善政に対じ深甚なる謝意を表する次第なり
右決議す
 一九四八年二月十三日
宮古議会 議 長 與儀 達敏
     副議長 玉城 玄教
 この文案で如何ですかと諮へば
  (「異議無し」の声あり)
 御異議は無い様ですから此の文案を決議文として軍政官に提出します
○九番(亀川惠信) 従来感謝文とか陳情文に対しては私達は比較的関心を持たなかったのでありますが感謝文を郡民の気持を表すものでありまして吾々はもっとそれに関心を持つべきであると思ひます、又将来の思ひ出と致しましても必要でありますのでその写を一部配って貰ひたい、猶出来ますれば翻訳文も配って貰へば語学の勉強を希望する人には幸甚と思ひます
○二十一番(玉城玄教) 只今の決議文は全郡民の気持を代表するものでありますからもう一度朗読の上全員起立し拍手喝采を以て決定したい
◎議長(與儀達敏) それでは全員起立を御願ひします
  (決議文を朗読すると全員拍手喝采をなす)
 議案の説明に移ります、議案第三十五号に就て文教部長の説明を御願ひします
○番外(文教部長) 全員に配ってある教育基本法案及学制改革案により詳細に説明す
○九番(亀川惠信) 法律案を審議する責任感から誤謬を訂正す、基本法第六条中「全体の奉仕者」は、「全体への」であると思ひます、又教育法十一条の「懲戒」は「心」が落ちている、第四条の設置廃合の「〓」は「〓」ではありません、それから教育法の条文は六十二条に分れ数が多過ぎるのでもっと少くしたら如何
◎議長(與儀達敏) 字句の訂正をして下さい、猶今の意見は審議会の時お願ひします、次に議案第三十六号生活保護規程に就て主管部長の説明を御願ひします
○番外厚生部長(下地徹) 上程議案に依り説明す
○九番(亀川惠信) 只今の生活保護規程の第七行目の最底(〓カ)の底(〓カ)にニンベンが付く筈ですが
◎議長(與儀達敏) 御訂正下さい、以上概略的議案説明はこれで終り次に事業報告並事務報告に移ります
  (書記 事業報告書、事務報告書を配布す)
 農林関係に就て農林部長の説明を御願ひします
○番外(農林部長與儀喜文) 報告書に依り集農、樹苗圃、種畜場及食糧増産等に付き報告す
○議長(與儀達敏) 正午ですからこれで休会致し午後は昼食後直ちに再開致します (午後零時五分)
◎議長(與儀達敏) 再開宣告(午後一時十一分)
 午前に引続き事業報告を聴取します
○番外(産業試験場長眞喜屋惠義) 報告書を読上げ説明す
○番外財務会計部長(平良義雄)財産に付き報告あり
○知事(具志堅宗精) 只今皆様に差上げてある財産目録にはアメリカ製トラック、道路修繕機、マラリア撲滅用諸機具、DDT、アテブリン等は当然目録に入ることと考へます、又西表の三、四〇〇町歩も本郡の大きな財産でありますが、これも落ちているので後で記入して上げます
  (続いて工務部長より報告書に依り報告あり)
○番外(総務部長與儀達敏) 保管中のトラックの状況並に最近入手致しました器械類等も報告書に記入されて居りますから後で御覧下さい
◎議長(與儀達敏) 次に公衆衛生部に御願ひします
○番外(公衆衛生部長代理マラリア防遏課長謝敷宗吉) マラリア撲滅はマラリア病源をなす原虫を撲滅するか、又はこれを媒介するマラリア蚊を撲滅するかにあるのであります、当防遏課では去年一月から十月迄のマラリア防遏方法は防蚊対策として春秋二回の清潔検査施行の際特に藪伐採を断行せしめ尚臨時に沼や水溜或は水田等孑孑発生の場所の清掃作業を指導すると共にDDTの撒布に依る孑孑撲滅作業を実施しています、マラリア原虫対策としては発熱する者に対し投薬と同時に血液検査を施行しマラリア原虫を証明する者に対し服薬を強制し伝染源たるマラリア原虫の消滅を図る方法を実施しましたが血液検査を行った数が二二、七七五名であります、孑孑撲滅のため軍政府から受領せるディーゼル又はケロシン四二ドラムで平良市が八ドラム、城辺町が二ドラム、下地村が三ドラムDDT液として撒布しました、九月二十三日アテブリン錠を六、三七九、二〇〇錠を受領しましたが、これでマラリア地帯人口二二、二〇〇人で一ヶ年に平均人口十四割即ち三〇、〇〇〇人発病者となっても十ヶ年分の治療薬となりますので当分薬品の心配はありません
○番外(総務部長與儀達敏) 公衆衛生部関係の報告書の水系図中赤の部は来年度施設を要する部分であります、水系の徹底的な施設をするために予算にも組んであります、又文教部関係は御手許の報告書を御覧下さい、厚生部関係も印刷してありますから御覧下さい、慈善病院も本年度は強化拡充をなし徹底マラリア撲滅を期したいと思ひます
◎議長(與儀達敏) 官房長より知事の活動状況を伺ひたい
○番外(官房長下地惠位) 知事が民政府運営のため或は楽土建設上各方面との折衝殊に軍政府との折衝は実に涙ぐましいものがありまして茲に知事の努力は酬ひられて楽土宮古は着々として建設せられつつあるのであります、知事が如何なる方面に活動しているかと云ふことは皆様の御手許に差上げてある報告書によって伺ふことが出来ることと思ひますと前置して、知事就任以来の活動状況を報告書に依って説明す
◎議長(與儀達敏) 次は経理部の報告を部長に御願ひします
○番外(経理部長池村實秀) 本日までの業務報告をなしますと先づ極めて困難な配給状況が軌道に乗りつつあることを感謝致します私達は配給の適正円滑を期するため配給物資の査察員、価格の統一、倉庫とダンプの整備、配給店の事務一元化等に依りまして現在に至っています、これまで度々遅配がありましたがこの理由は私達業務に携はる者に対する理由でなく衛生関係や、その他土木関係等のためでありました、又特配に就きましてはそれを無くしたいと考へて居ります、特配ではなくして優先配給として最も必要な者に対して配給するといふ様な点に努力目標を置きまして改善すべきものは改善致しています、昨年一月には食料品の欠配がありましたが二月降后(ママ)は欠配なく只遅配があるだけでありまして島民に迷惑を掛けた事は少いと思ふのであります、又事務並保管方面に於ても良好であり、軍政府よりも八重山をも指導せよとの話も受け、知事より表彰もされ経理部員は一大誇りを持ちまして邁進致しているのであります、只過去一ヶ年の内に四回に亙る盗難事件がありましたことは心から御詫び申上げます、警察部のお蔭によりこの事件も全部判明化したことに対しては警察部に対し感謝致して居る次第であります、又配給数量に於きましては知事さんの挨拶にもありました通り食糧六、四三七、三二一封度、衣料一七六、一五九点、雑貨八六五、五二六点、燃料五、九四九ドラムを取扱って来ました、来年度の計画を申上げると昨年十二月一日付軍布告に依り食糧自給体制の確立を期さねばならぬのでその対策としては非生産的闇商人の撲滅、本郡の生産と消費とを直結致しまして生活安定を図ると共にその要領としては経理部の繰越益金を最高度に活用して甘藷、塩、鰹節等の集荷配給を計画しているがその資金としては二百五十万程度を見積って各部と連絡の上実施したいと考へています
○知事(具志堅宗精) 一寸附言致します、優先配給は動もすると誤解を受けるので私が曾て国頭地方に居りましたときに毛布の配給を公平にせよとの軍命令によりまして一枚の毛布を小切れにして配給した実例があります、要するに優先とは特別な衣料については需要者も違ふのでありまして例へば雨具類は職域から考へてどうしても警官に要るし紙類は新聞社にといふ事例もあるのであります、他の物資に就ても例へば雨具、履物は議会人、新聞人といふ指導的立場にある人々にやるし又貧民階級に対しては鰹節をやり南静園患者にも同様に優先に配給をしています、又集農の芋は官公吏に一回だけはと考へ配給しました、池間、大神等にも優先的に配給してその代り魚類を出させて貰ふと云ふことも考へています、集農の切干甘藷も一万斤程あるのでこれも適正な配給方法を考へています
◎議長(與儀達敏) 以上をもって事業、事務報告を終り日程を変更して本日はこれで散会致したいと思ひますと諮れば
  (全員「異議なし」と云ふ)
 御異議ない様ですから休会致します (午後三時三十分)
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