戦後初期会議録

組織名
宮古群島議会
開催日
1951年08月19日 
(昭和26年)
会議名
第6回宮古群島議会(定例会)[3]
議事録
  八月十九日(日曜日)
  午前十一時二十分
◎議長(玉城玄教君) 開会します。
 出席議員は七名、欠席二名です。提出された議案を審議する前に追加議案として下地敏之氏外八名から提出されたものがあり、更に砂川玄仁氏八名からも提出された議案がありますから、それについて御諮り致します。
 先づ追加議案第七十九号について説明して下さい。
◎下地敏之君 それでは琉球の日本復帰に関する決議について説明致します。
 吾々琉球人が大和民族であることは、尚家の記録、日本諸科学者の説、琉球を訪問した英国ビクトリアの僧侶、ペリー提督等の諸記録からしても事実であります。
 然し沖縄が歴史上長らく日支両属のように見えていたが、その当時は日本が政治行政が強化されないで、日本本土から遠くかけはなれていたため、支那に隷属したようでありますが、決してそうでないのです。
 明治十二年の廃藩置県で沖縄県となって以来、日本内地と同等に取扱われ、琉球からの鰹節、黒糖、織物等も日本で消費されているのでありました。その点からしても日本と琉球とが不可分であることが分ります。一九四六(五カ)年終戦以来三十度線以南は日本より離され交通は制限され、経済上多大の障害をうけて居りますことは民族永遠の非惨事であり、吾々は同一の経済の下同一の文化を持ちうることによってのみ民族の幸福と繁栄が達せられ、世界政策に協力し人類永遠の平和に貢献し得ると信じます。
 政府はこの実情に鑑み、議会の意志を尊重して速やかに関係方面に事情を訴え、日本復帰に努力して下さいますよう御願い致します。
 尚日本期成会によっても日本復帰は絶望でないということがいえるし、又講和条約草案の第二章や第三章にも人民の権利について記されてあるとおり全然望みがないのではありません。何とぞ皆様方の支持をお願い致します。
◎嵩原惠典君 只今の日本復帰に関する決議案の内容については全面的に賛意を表する次第であります。即ち第二次戦争の終結と共に琉球は日本の政治面と切り離されているが、琉球民の同一経済、同一文化、同一言語でありますから復帰することは自然の理であり、民族の繁栄幸福がもたらされるものである。
 吾々の復帰せんとする真意は米国の意志に添い日本に復帰することにより米国に協力することが出来るものである。従って私は全面的に決議案に同意します。
◎議長(玉城玄教君) この議案について外に異議はございませんですか。
 (「異議なし」の声あり)
◎議長(玉城玄教君) 全員賛成のようですから決議致します。
 (拍手あり)
◎議長(玉城玄教君) 施政一般に対し質問通告書が参って居りますがそれについて質問御願いします。
◎福里芳夫君 たくさん御尋ね致したいことがありますが日程の都合もありますので、質問を整理して経済だけについて二、三お尋ね致します。
 第一に宮古の自立経済の推進状況についてでありますが宮古の自立経済計画書の中には、物価政策がない、そのために経済の現状はチグハグになっているが、その解決についてどう考えますか御伺い致します。
 私の言わんとするのは、何も物価政策が物価統制を意味するというのではない。即ち現在ガリオア、商務資金等によってレートは引上げられ、又補給食糧の値上げによって物価は上りつつあるが、その裏付けする政策が見られてない。現在お互の生活は自立経済計画案の作成前よりも生活内容や賃銀ベースも次第に低下し、大衆の生活状態は日に日に悪くなって来て居ります。そういう事等から見ても全く自立経済計画案は自滅計画案と言わざるをえないのです。
 その計画案によって、琉球復興は縮小された形である。例へば貿易品が入荷しているにも拘らず、市価よりも高いのでわづかの人間しか取っていないが、それについて値下げ陳情とか色々とそれについての隘路の政策もない。もう一つは増産運動を強調しながら成績が悪い。大体役人が農民に増産をすることを図らうと思えば役人は技術的に教えなければならない。役人が農民、漁民を指導するということがおかしいと思う。今度の増産運動は漠たる政治的傾向より進められている。私が屡経験することだが、増産する心掛よりも如何にすれば物が早く売れるかと言うことを考えるべきであり、増産することを大きな声で叫ばなくてもよい、寧ろ増産したらどうするかということについての施策が必要であると思うがその点どうでせうか。
 尚昨日の委員会にもあった通り主食を郡外に持ち出すことはよくないということで輸入米で郡内の消費が足りるということを論議されたが、若しこの輸入米を政府が買上げ備荒食糧として確保するとき、食糧危機に到着する事になるが、当局の御意見はどんなものであるかお伺いしたい。
 もう一つは輸出品の奨励政策についてでありますが、政府も熱意を示されて唯一の宮古に於ける輸出物資である黒糖の消費税を撤廃したことに対し島民の一人として感謝するものである。これによって輸出品のコストの値下げが出来、飛躍的に輸出品は発展するものと思うが、そのコスト引下げによる数字的な各方面の指導をしてもらいたい。即ちコスト引下げにより指導研究をしてもらいたい。
 更に現在金融状況の逼迫の現状により大部金詰りとなっているが、政府として何か打つべき手はないものでせうか。例へば沖縄のように軍作業のない宮古においては、復興費を多くもらってそしてこれを早く完全に消費することも考えられる。優先的金融とか又は宮古上布工業の振興とか輸入品でも宮古に生産が出来ないものをとらないこと。例へば漬物、たくあん等も生産して金を逃がさない方策をとること。現在の状況で推し進めると自滅するか政府の魔術を使って経済的に行詰っている現状に対しどういう手を打つべきか又打たんとしているか伺いたい。
○経済部長(眞喜屋惠義君) 二番議員の御質問にお答え致します。先づ自立経済計画書の中に物価政策が考慮されてないというお話と現在の物価の変動に対しどう考えるかという御質問のようですが、当時金融委員会に於ては、そういう事は織りこまれていなかったのですが、その後、案を以て沖縄に出張し具体的な表をこしらえて差し上げたと思って居ります。それによるとガリオア資金等によって落ちていくものは当時の三千五百万円から四千万円として計画してあります。対外的物価高の目標もためしてありますし、立案した指数は一弗対百二十円の換算で計画してあります。何れにしても計画は中央政府諮詢委員会に対する答申であり、経済の自立ということを目標にした計画である。これ迄申し上げたのは軍により認められ、回転資金の融資として全面的に認められるようになった時有効となります。然し答申して以来十ヶ月になって現段階に於いて強力に実行して行くことになりましたが物価の変動で輸出入の調整がとれなくなり、物というよりも価格が高くなっている。然しどこまでも輸出産業を主とする根本的改革が必要となりますので何等かの打開策をとる考えです。食糧問題について島内生産の水稲、陸稲、いも、穀類等についても七月までの調査によりぎりぎり一杯となって金詰りとなって居ります。これもすべて物価の変動に起因するでせう。
 次に増産運動についてですが、増産しても販路がないといけないというようなお話ですが勿論増産に対する指導改良は実質を伴わない点が多分にあるが、今度からは日本との取引が可能のようで指導面も実際に出来るのでないかと思って居ります。
 第三番目の生産コストを下げる工夫はないかというお話のようですが輸出を推進するために、外国は今のところ日本を相手にしなければならないので、質の問題が課せられた処の大きな問題である。一例を黒糖に見ても質によりコストの引下げも出来るのである。そのために適期植付もなして収穫をし、原料生産の質をあげ又技術面の指導をなしたりして強力な販路をも求める計画である。
 第四の金融逼迫の実状は私達も考慮中でありまして、外貨の獲得を目標にし、輸出産業の奨励、上布の問題、貝殻の問題、更に復興費が落ちるようにすること等により、金融逼迫の農漁村に金が落ちることが出来るのである。尚この問題は今度琉球協同組合法により信用協同組合法も設立し資金についても信用貸により融資することにより金融の緩和を図ることが出来る。それから輸入品に対しては統制されているので、群島政府としてはどうすることも出来ない状態である。尚醤油漬物についても現在の琉球の工業では日本と太刀打ちすることは不安である。それで島内生産の保護に眼目をおいて業務が開始されるはずであり、今後皆様方の希望に添うよう最大の努力する計画である。簡単でありますが以上申し上げて御答弁にかえます。
○議長(玉城玄教君) 二番議員さんこれでよいですか。
○福里芳夫君 はい。
◎下地敏之君 第一に御伺いしたいのは自立経済計画についてですが、その中に製糖会社が立案があったと思っている。然し当時と現在とは事情が変り、その当時はガリオア資金で新に製糖工場を立てるというような話であった。その後沖縄製糖の事業家がおいでになり色々とお話があったらしいが、最初の立案はどうするか、沖縄南部製糖の通り株金募集とか自己資本を二〇%もつかってやると困難だと思うがどうするのか。早く手を付けないと、今迄の計画がふいになるが当局の考はどうかその点伺いたい。
 それから金融部面では別にくどくどしい質問はしないが農水関係において復金により金詰りを打開することや銀行ともよく折衝してその運営を円満に行くようにして一般庶民金融を図るようにしてもらいたい。現在銀行から金を借りることも限られたことになり又公益質屋でも質ぐさがなければ借りられないという現状になっている者もいる。それでこれを市街地信用組合法等によりその処置を早急にとる必要がある。それから新聞でも発表になったが、群島政府は軍政府への支払うべき金が一千二百万余円もあると承っているが、その内容、支払うべき対策について伺いたい。
 もう一つは申告所得税のことだが、今年度の所得税は昨年度の倍額で四百万円の課税をしなければならないとのことだが議会の議決を尊重するならば、三百万円しか議決しない所の後百万円の未賦課税をどうするか、その四百万円というのは確定かどうか。尚俸給生活者からは二百万円とり一般からはたった三百万円とると聞いているが全く不均衡である。少くとも倍額の四百万円は課税すべきで、その点全く不明瞭な感がする。あまりにも金持ちに頭を下げ過ぎはしないか。金のある者は力(金カ)で、力のある者は金(力カ)で奉仕すべきである。それに対する政府の意見はどうでせうか。
 次に統合政府の問題ですが、その事について知事は議会の意見を未だ聞いていないからと軽々しく申されたが、私は知事の考えは誠に感心出来ないと思います。中央政府の要望事項を何故に緊急に開いてでも議会に諮らなかったのか、充分議会と共に諮ることをしないのは民主主義的でないと断定するものである。これに対する御意見を伺いたい。
 それから増俸の遅延問題であるが、私は三月の議会で増俸するように求めたが、四、五、六、七、八月と長引いて居り、四ヶ月も五ヶ月も議会で決めたことを遅らせることは議会を尊重しないことになる。尊重するものであれば、さっさと決めて実行するようにしなければならないと思う。勿論金もなく又色々の事情もあったと思うが、それに対する御意見も伺いたい。
 次は判事の問題ですが、これも遅延している。色々と残された事件も何十件とあるが執行することも出来ないし、又三月以来支払命令を出して裁判に訴えても差押えするということも出来ない状態である。その他不動産問題、親族関係事件、殺人事件等幾多の事件が山積しているが、その遅延の理由と判事の任命に対する見解についてお伺いします。
 厚生協会の宮古支部は一つの公共事業であると思うが、その活動状況並寄附金の総額について御説明を御願い致します。
 もう一つは自動車の道路は現在では専用道路となっているが、その点はどう考えるか。その点もはっきりしてもらいたい。若し道路使用料を取るとしたらどの位としたらよいのか又どうすべきか。最後に復興予算について、民政官府と折衝の時予算は大変良いとほめられたが、福里議員は予算を少なくしようと要求したのでほめられたとおっしゃっている。実際にほめられた原因はどこにあるか又どうなったかこの点についてはっきりしてもらいたい。そして削られたとも聞いているが、それも説明して欲しい。
 尚もう一つは平良市の予算に対する補助金であるが、平良市の工事の施行は一体誰が主体となってやるのか、群島政府もこれに関係してやるべきか又やるのか。一千万円以上の金が調達出来なければ始めることは出来ないというような民政官府からの指令や示達でもあるのかどうか。それから復興費に対する問題であるが、認可になった部分や小中高校が半減された内容も詳細に説明して欲しい。
 次に主要道路の改修費の内訳も知らせてもらいたい。復興費の審議をする以上は議会にも示して審議させていただきたい。以上申し上げて質問に代えます。
○議長(玉城玄教君) 五番の質問が長く答弁も長いようですから午前中はそれだけにして引続き午後からにして休会します。
 (午後零時三十五分)
○議長(玉城玄教君) 開会します。(午後二時十五分)
 五番に対する答弁をお願いします。
○経済部長(眞喜屋惠義君) 経済部に関する三項目についてお答え致します。
 製糖会社の設立計画はしたが五番さんのおっしゃる通り当時とは大部事情が変って居ります。
 一番問題になるのは資金の問題であり、当時はガリオア資金が可能であるとの事でそれをあてにして居りましたが、類推すると資金の調達は宮古では不可能であることを感じます。勿論適当な甘蔗作を宮古に入れるということやかんきん作物を作るということ等は資金の調達上当然やらねばならぬが、今の所、それよりも外資導入の道を選んだがよいと思われます。然しその方法については慎重を要します。資金導入の形は島民自体の自立的経済よりも向うよりの投資等より外にないと思索(ママ)さし目下知事さんとも話を進めて居ります。幸に明高副部長が東京に行って居り、要路の人々とも会って居りますからその点は何とか解決出来ると思われます。
 第二は庶民金融についてですが、農業、水産業にかかわらず全業態に対し融資が出来るような形にしようと考えて進めて居ります。商業関係に対しては大体可能のようになって居りますので、その他の業者に対しても信用貸しが出来ると思って居ります。何とかして促進してやりたいのです。
 第三に民政官府に支払うべき金の大体は補給課関係でその支払う金は八、六八七、七四五円一三銭となり、それも一、六七四、八六六円九八銭の未収金と現金一九三、〇六四円三〇銭と在庫品の処分により支払の出来るようになって居り未収金というのは団体が大部分となっているので、それは何時でも徴収可能であり支払い出来ると思います。
○厚生部長(宮國泰誠君) 民政官府に支払うべき厚生部関係では大部分が薬品関係で未払いは四〇四、三八八円九〇銭となり、現金が四五、〇〇〇円、未収金が四三五、〇二五円七〇銭、在庫金(ママ)が三二九、五五二円一〇銭で総計八〇九、五七七円八〇銭で軍政府への未払金は大丈夫だと思われます。
○文教部長(垣花惠昌君) 文教部関係の未払金を申し上げると四月から学用品が一弗対一二〇円の換算になるという口頭で、どれがいくら、いくらという指定された金額はありませんでしたので確たる数字は申し上げることは出来ないが、推定単価で市価よりも廉く売って居りますので支払う自信はあります。
○財政部長(島田文雄君) 財政関係を申し上げます。
 申告所得税の予定額が三〇〇万より一〇〇万円多く四〇〇万円に賦課するとの事ですが、それについて御答え致します。その前に税法についてお知らせ致します。新しい軍政府からの指令により税の申告は予定申告と確定申告との二つに分れて居りまして、自分の一ヶ年間を自己算定で見積り、知らせるのが予定申告であり、更に翌年三月三十一日を以て確定申告をなし、その確定申告により若し自分の見積りが超過したら払戻しすることになります。尚詳しいことは来年の一月に開かれる所得税審議会によってはっきりしてきます。今度の四〇〇万円というのは予定であるので確定ということは出来ないのです。政府としても初めから確定してやるということは税法にもかなわないし、その人の所とか、一年間の所得とかを見て見積りしないとわざわいがあるので、むしろ見積を大事にとっているわけです。そして政府としては予算に達するように又あらゆる方面から算定する材料を蒐集したいと考えて居ります。それから財政部の引継当時の未払金ですが、全部で二四八、一三七円で前当局時代に一三三、四六〇円の負債でしたがそれも支払い、現在は残一一三、六七七円の未払となって居ります。
 尚沖縄出張所で買った三輪車の代金が一八九、〇三四円七〇銭でこれの代金はどうするか未だはっきりしません。又補給課関係ですが、元の補給部よりの未払金は八二六、五〇〇円で、この未収金は今の食糧会社の引継であります。そしてこの金は取って軍に支払うべきかどうか考慮中です。
 その外に乗用車、グレイダー、ブルドーザー等の特殊機械がありますが、どうなるかということは調査したいと思います。
○警察本部長(砂川武俊君) 警察本部関係の未払金については昨年六月の第一回目に受領した服装十九点、帽子四二点で金額にして一八八、〇〇五円四九銭、第二回目の十一月に受領した衣類その他二七点で金額にして三三二、九一四円七九銭総計五二〇、九二〇円二八銭となって居ります。それから三月末に貿易庁を通して未払代金の請求があったのですが、係員を派遣して照会したが、無償でやるべきであるとの事で、その手続に対しても心配するなという話であったらしいが未だはっきりと確定はしないから未払すると困るので出来るだけ早急に解決する考えである。
○副知事(東風平惠令君) 中央政府に対する要望事項を議会に諮ることをしないのは民主主義でないとの御話ですが、我々の考え方としては議会は議会として政府は政府として群島組織法に基づいてやらねばならぬもので、知事として議会の御意志も御伺いしなければならないし又我々としても、議会の意志を尊重しなければならないとのことで近々に研究協議会を開かねばならないと思って居る。次に増俸問題だが中央政府が出来、税制が確立しなかったし、又政府からどういう財源をもっていくべきかはっきりしなかったので今迄遅延していました。然し群島政府の財源に影響しないらしいし大体の見通しも付いたので四月に遡って発令する考えである。道路の問題ですが、現在自動車道路は指定してあるが、前の交通に関する自動車条例の施行規則により自動車を営もうとする者は計画書を出して営まねばならないので、成程外部から見ると独占の考えに見えるが決してそうではないのです。
 路線の使用料については初めてなので研究し充分検討する考えである。尚平良市の三大事業の問題ですが、前の議会の三大事業については議会に諮ることにしたが、その時負担が大きいので平良市を主体としてやるとのことで平良市では民政官府と折衝して、それに対する指令があってやる考えである。
○法務部長(久貝良順君) 判事任命についての問題であるが、判事の任命については群島民の人権、治安、経済関係にも影響しますので日夜考えて居りますが、早急に実現しないことに対し御詫び致します。当局としても一生懸命に努力しまして民政官府とも折衝し早急に解決したいと思います。これまでのびのびになっている具体的な事情を申し上げますと、知事さん、副知事さんも上沖の際に上訴裁判所とも折衝して五月二十三日には判事任命について代理判事を派遣して欲しいとルイス大佐殿へも折衝したが何ともないのです。更に七月二十五日に代理判事に対し折衝したが承認したという電報が来て欣喜雀躍して感謝の電報を打ち、七月三十日に代理判事について、琉球民政長官に対し派遣方について承認して欲しいという文書を以て折衝してありますので、民政官府の承認のあり次第決定するのでないかと喜んで居ります。
○厚生部長(宮國泰誠君) 厚生協会の活動状況としては先づ要救護者への無料診断をやって居り、それから要救護者並一般に対する巡回診療をやって居ります。これは久松学区に赤痢があるという関係でやって居ります。尚実際にはやっていないが、風水害とか罹災者への救急処置もやる積りで一般救急法、水難救急法もやって居ります。それから一般に対する社会奉仕の指導、婦人に対する社会奉仕の精神普及、青少年の指導もやって居ります。寄附額については総額金一七〇、八四三円六〇銭で一般寄附金四六、〇八〇円特殊家(篤志家カ)寄附金一二四、七六三円六〇銭となって居ります。それから今迄に支出した分は合計一七、五七〇円で、内訳は左の通り支出されている。要救護者の無料診断用として 一、二〇〇円也、久松巡回診療の費用として 一、四〇〇円也、風水害並衛生材料購入費として 六、〇〇〇円也、救急法講習として沖縄への派遣費 三、〇〇〇円也、衛生講話のため西城、下地、城辺へのトラック賃 一七〇円也、青少年指導として 五、八〇〇円也。
○知事(西原雅一君) 判事の任命が遅れたことについて、法務部長からお答えがありましたが、結局は宮古では適任者がなかったということになります。仲松判事を上訴裁判所に送り、その後心配して知人に手紙で問い合わせたり、又故嵩原諮詢委員に対しても交渉はさせてもらっていましたが、問題は俸給問題となり待遇をどうするかということになったわけです。その後あれこれと色々折衝したが適当の人が居らず誠に遺憾に思って居ります。然し何とかしなければならないと思って居ります。
 それから中央政府への要望ですが、法的にはどうであっても議会を招集する時間がなかったが、今後は単なる事務上の問題ならば出来るだけ今後もあることですから皆の御意見を聞いて御諮りする考えである。それから復興費についてでありますが、事業費として六、四〇〇万円要求しましたがその七割にも足りない四、〇〇〇万円しか令達されませんでした。それでポーター大佐殿にも聞き合わし民政官府の財務官にもいろいろと心配して相談したので宮古は大体認めて下さると思います。然し要求額に達しないのは大変遺憾にたえません。尚前に福里議員がお話がありましたが多分額が少いからほめられたのでないかということのようですが、決してそうではありません。要求額は全琉で一億九、〇〇〇万円でその中沖縄が八、〇〇〇万円、八重山が一、〇〇〇万円余、大島が四、〇〇〇万円余となり、その点から云えば宮古は割によいと思いますのでその点御含みとりをお願い致します。それに追加すべきかどうかは未だはっきり分りませんが、ポーターさんが那覇にいらっしやるのでどうなるかは心配ですが認可になるよう一生懸命努力する考えである。
○工務部長(高良憲松君) 工務部関係の民政官府への未払金について申し上げます。未払は雷管及手数料併せて二、八八〇円四〇銭であり、ブルドーザー代が八七、七六八円となって居ります。グレイダー、ショベル代の代金は未だ請求されて居りませんが、これは予算更正を御願いしてお諮りしたいと思って居ります。復興事業の内容について申し上げますと工務部の復興費による事業は先づ第一に予算額の令達があり工事の認可があって、第二に予算の示達、第三に工事の着手という順序に依り工事が始められます。予算の令達については御手許に差上げました予算書の通りです。その中工事の認可を受けて居りますのは、情報会館の一七〇万円、池間堤防修理の六六万円、裁判所修理の三〇万円、会議室の一、〇八二、〇〇〇円、計三、七四二、〇〇〇円となっている。これ等の工事は設計完了次第入札に附する手配が出来て居ります。それから学校道路について申し上げますと令達予算の範囲内で工事計画を立てて民政官府の工事認可を受けよという指令が民政官府から来て居りますのでそれぞれ計画を立てて申請中であります。即ち学校関係では、高等学校は農林、水産両高校の新築と男子高校の修繕を計画し、当初一一二教室の計画でありましたが予算が削られました。六五教室しか出来ないので現在申請中であります。尚小学校の方は主として修繕工事の方に振り向ける計画であります。現在増額の認可請求中であります。次に道路関係を申し上げると、群島政府の管理となるべき県道、郡道の改修に主力を注ぐ計画でありますが、現在の認可予算の令達額はこれらの主要道路の改修費で一杯です。尚農道は地元負担となっているので民政官府と折衝して工事に着手する考えで居ります。
◎福里芳夫君 それに関連して庶民金融についてでありますが、信用協同組合は農民、漁民や商工業者にも利用出来るということであるが、例えば平良市に於ては農村民に対する信用協同組合の設立とか市街地組合とかいうのは市街地にも出来るかどうか、又平良市ならば二つ設立可能かどうか御尋ね致します。
○経済部長(眞喜屋惠義君) 現在の協同組合は布令第四十五号で示されて居ります。この布令によりますと農業、水産業等に限定されておりません。それで協同組合によると職業上、結合上、住居上の三つの条件につながって居りますので農業、水産業に利用しているが、広範囲に決められた法案であります。それで信用協同組合のみならず外の業者にも利用出来ますので、その点充分可能性はあると思います。
◎議長(玉城玄教君) 討論はこれでつきましたので施政一般の質問はこれで終りまして、議案第七十七号、第七十八号を上程致します。
○厚生部長(宮國泰誠君) 議案第七十七号の第八条の第十三項は削除したがよいように思われますが。
◎福嶺紀仁君 議案第七十七号の第八条の中で構造設備等のことですが、内地あたりでは、大小便所がありますがこの条例の中には見えませんが、湯屋に限らず便所等を併置するように入れてもらいたいのですがどうでせうか。
○厚生部長(宮國泰誠君) 御尤もだと思います。従来の規定にもそういうようなのはなかったので我々は作らなかった。次の議会の時に適当に作って行き度いと思います。
◎議長(玉城玄教君) 議案第七十七号に対しては討論もつきたと思いますが決議してよろしいですか。
 (「異議なし」「賛成」の声あり)
◎議長(玉城玄教君) それではこの議案はこれで確定議に致しまして年月日を今日にして記入して下さい。
 次の第七十八号について御伺い致します。
 (「異議なし」の声あり)
◎議長(玉城玄教君) 次に砂川玄仁氏外八名から議案が提出されて居りますが、提案者は提出した理由の御説明を御願い致します。
◎砂川玄仁君 砂糖消費税法廃止について、その提案でありますが、本案件は委員会にも研究され又二番、五番の質問中にもあった通り群島外から入って来る外貨を入れるものは黒糖以外に生産物はないので苦しい財政ではあるが本郡の九割を占める農民のために生産者の意欲の向上と物資の保護上満場一致で決議して下さるよう御願い致します。
◎議長(玉城玄教君) 本案に対しては討論の必要はないと思いますが他に御異議はありませんですか。
 (「異議なし」の声あり)
 それでは決議致します。
 (拍手あり)
◎議長(玉城玄教君) それではこれを以て本議会を終ります。これで閉会致します。(午後三時十五分)

 一九五一年八月十九日
宮古群島議会議長 玉城 玄教(印)
    四番議員 渡久山知照サイン
    八番議員 福嶺 紀仁(印)
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