戦後初期会議録

組織名
八重山議会
開催日
1949年03月09日 
(昭和24年)
会議名
1949年2月25日-3月9日八重山議会[7]
議事録
  三月九日
◎議長 開会致します。(午前十時二十五分)
 昨日の合同研究会の結果、削除訂正した予算案を発表しなさい。
◎会計課長 歳入歳出総予算額は一三、〇八三、七五九円であり最初の予算額との差は一〇四、五五三円となっています。次に歳入の部を申上げます。財務部収入所得税二、四五〇、〇〇〇円を一、九四二、一九七円に訂正、営業税一〇〇、〇〇〇円を七五、〇〇〇円に訂正、合計に於て一一、二九六、八九七円になっています。歳入合計が一三、〇八三、七五九円となります。
 次に歳出の方を申上げます。職員費に於て衛生部職員俸給を三〇七、二〇〇円に訂正、賞与を四八〇、〇三一円に訂正、計六、二四〇、四〇三円に訂正して下さい。
 総務部費の公報諸費を全部削る。退職慰労金三九、七六四円を加へ計に於て六八八、〇八一円に訂正する。
 次は刑務所の雑費一八、六二四円を二七、六二四円に訂正、付記欄の借地借家料を一五、〇〇〇円計二五一、八三三円に訂正、臨時教員養成所費はこれを削除、中学校費四二、一〇〇円、小学校費七三、七八〇円を新に加ふ。次は産業部費の建築費五五五、〇〇〇円を二〇、〇〇〇円に訂正、付記欄の刑務所三五五、〇〇〇円を削除、林業奨励費の二〇、〇〇〇円を一〇、〇〇〇円に訂正、付記欄の民有林造成用苗木代補助一〇、〇〇〇円を五、〇〇〇円に訂正、合計に於て一、八五四、七六〇円。
 次は財務部費の租税徴収交付金二〇〇、〇〇〇円を一三二、〇〇〇円に訂正、計七六〇、二〇七円に訂正する。予算費を二〇一、一九二円に訂正、歳出総合計は一三、〇八三、七五九円になります。
◎二番議員 意見を申上げます。電気課の主動機購入費が非常に高い様にある様な皆の御話でありますから、一馬力の単価を三〇〇円にして一ヶ年後に代金を支払ふ事にしたらどんなものですか。
◎議長 此の問題は後にして一九四九年度の一般会計予算案から片付け度いと思います。
◎十七番議員 諮問案第五号議案は修正可決し度いと思いますがどんなものですか。
○議員一同 賛成
◎議長 諮問案第一号より五号案までは関連性があるので修正案をみとめてもらった事に致し度いと思いますが御異議はございませんか。
○議員一同 異議ありません。
◎議長 第四号案を否決して貰いまして、さらに臨時教員養成所を廃止すると云ふ事ですね。
○議員一同 はい。
◎議長 それでは諮問案第六号に移ります。
◎十七番議員 予算と関連がありますので原案通りに認めてもらい度いと思います。
◎十番議員 それはそうはいかないと思います。
◎議長 議員各位の御話合いの結果の数字で承認してもらったものではないでせうか。
◎十番議員 前から申上げました様に竹富町は事情が異なりますので、竹富町は是非増員しなければいけないと云ふ議員の希望でありました。竹富町を四人にし大濱町を三人にして計十一人にしたらどんなものでせうか。
◎議長 以前の十一名の話合いは休憩中の事でありますからどうぞ意見を述べて下さい。
◎十六番議員 所得税の調査委員の定数が少い関係かわかりませんが、所得税に就ては毎年非難ごうごうたるものがあります。此れは根拠があるのか、ないのかわかりませんが、他人と比較して民政府にもんくを云ふのがある様です。竹富町は現在西表と小浜の者二人が、欠員の様でありますので、自分の島のものがすんだら帰ると云ふ具合で他の島の事はほったらかしにしてあります。それ故に出来得るならば各島々から出して貰い度いと思います。此の案を見るならば町の人員割をしてありますが、二十名位増員してもらっても良くはないかと思ふ。
○税務課長 其当時の皆様の御意向は先づ各市町に一名づつは増員して貰い度いとの御意向の様でありますので、竹富町も一名は増してもらったのであります。此の案より人員を増す事は経費が相当にかかりますので原案通りにしてもらったらと思います。何も多く増員したからと云ふて結果はたいした効果はないと思います。
◎十番議員 何も私は十一名とは出しませんでした。十三人とだしたのであります。
◎議長 多数決でいきませうか。
◎十二番議員 何も多数決で決定する必要はないと思います。
◎議長 休憩致しますから、互いに話合して決めて下さい。
◎議長 開会致します。議員多数の御意見でありますから調査委員を石垣市四、大濱町三、竹富町四、与那国町二計十三に改めて第六号案も承認して戴きます。
○議員一同 賛成
◎二番議員 特別会計の討議に入る前に今日の自由民報に八戸世帯程度の西表由布に二〇、〇〇〇円の経費をかけてある様にありますが、ほんとでせうか。其真相を明らかにして貰い度い。
○衛生部長 御答弁致します。西表島由布出張所管内の問題であります。西表島由布地帯はマラリア撲滅事業に最も困難な所である。由布出張所の職員は由布、フネーラ、タカナ、ユツンの四部落にまたがる地帯の撲滅作業を受持って居り、その海岸線延長は五里ないし六里もある。しかも一月末現在で由布だけで戸数五四戸、それにフネーラ、タカナ、ユツン各部落を合せば戸数は六八戸となり人口は由布九十三人、フネーラ十一人、タカナ十六人、ユツン五人で計一二五人である。それのみならず同地帯は竹富町の農耕地で云はば竹富町の生命線とも云ふべき地帯である。かかる重要地点に僅か三人の職員で年一八、〇〇〇円の費用でマラリアと戦っているのにかかわらず、自由民報紙は何故故意に戸数八戸とか人件費二〇、〇〇〇円余とかなる虚報を以て郡民を迷はそうとするのであるか了解に苦しむものである。しかも昨日係の職員がその実際を同紙の記者に示してある。私はかかる虚報をその儘掲載させた検閲の責任を警察部に問ふ、と述べれば警察部より答弁があった後衛生部長は更に立ち、かかる虚報を以て郡民を迷はせる自由民報紙の責任を議会の名に於て追及してもらい度い。
○天久警務課長 昨日十時頃柏(ママ)子木の政党の詰所なら党費で賄ふべき選挙準備なら私費で賄ふべき、八戸たらずの由布にも三人の職員月に一、九〇〇円年二〇、〇〇〇円の処をマラリア防遏課の職員より聴いて訂正方を求めたのであり、警察の方としては此の責任はないのであります。
○衛生部長 新聞の精神とも云ふべき社説に於て、かかる虚報をすると云ふのは、郡民を迷はせる自由民報紙の責任を議会の名に於て明らかにされん事を望みます。
◎十一番議員 公器である近頃の新聞は喧嘩記事が多い様で一般大衆がにがにがしく思っています。当局は如何なる方針のもとに検閲しておられますか。
○警察部長 新聞の検閲については従来旧法新聞紙法によって検閲を受けて来たのであるが既に日本に於ては同法が廃止されてをるが、八重山に於ける新聞の検閲は一昨年共産党に関する記事、掲載禁止の指令と昨年二月特別指令第二号によって検閲をなしているのである。指令第二号は軍政府に関する記事及軍政府の代行機関たる民政府及其職に当る者への不当なる批判等を示しておるので、警察部としては主として此の二つの軍指令によって検閲をなして来ておるが、警察としての立場からさらに公安風俗を害すると憂慮せられるが如き記事の掲載は一切禁止しておるのであります。
 最近八重山の新聞にはおもしろくない記事の掲載を見るのでありますが、此の事に就ては極力当部としても手をつくしておるのでありますが此の事に就てはさらに検討を進めて処置し度いと思います。
◎十一番議員 唯今の記事はどう思いますか。
○警察部長 調査の結果六八戸あると云ふ事はたしかでありますから新聞記者に記事の訂正をさせ度いと思います。
◎十七番議員 御尋ねします。もう一つ特別会計の予算がありますが此れは経理課の予算で提案されませんか。
◎議長 経理課の予算は今の処見通しがつかないから後に致します。経理課長が宮古に行っていますから帰ったらわかる事でせう。それでは事業部の特別会計に移ります。
◎事業部長 合同研究会に於きまして六月までの予算の編成をやれとの事で編成替をして六月三十日までの分を組んであります。其案には委員会費も退職手当も含めてあります。
◎二番議員 電気課の原動機の買上代が入ってない様にありますがどうなさいますか。
○事業部長 経理課より借入金四〇〇、〇〇〇円の内容の中に原動機の原価も入っているのであります。
○議長 一応課を追ふて順々にやっていき度いと思います。
◎十七番議員 事業部長の御話によりますと委員会の費用を計上してある様にありますが、工務課の費用に入っているのか。
○黒島事務官 合計が一三、〇五〇円でありますが、各課の職工費に含めてあります。
◎十七番議員 予算の形式から云ふても委員会を職工あつかいにするのか。
○黒島事務官 外の項目に其れに適当する項目がないからそう云ふ様にしてあります。
○議長 それでは訂正したら良いでせう。休憩致します。
○議長 開会致します。
○黒島事務官 委員会費を訂正してあります。
  (訂正箇所を説明す。)
◎十七番議員 此の八重山民政府特別会計歳入歳出を見まして議長に御尋ねしますが、此の事業部の特別会計は他の部と異なり特殊的なものである事は当局も議員も充分知っている事ではありますが、健全な財政を確立すると云ふ立場に於て僅か三ヶ月の予算の中に事業部各課は懇談会費を計上してあるが、必ず事業部の予算には此の費用を計上しなければ予算の編成は出来ないものであるのかどうか。又そう云ふ事をしなければ事業は出来ないものであるのか。政府交際費を二〇、〇〇〇円も引き其他各部の費用を削減しようとする時、独り事業部のみは此れを残してある理由をお聴きし度いのであります。
○議長 其件に就てはよく御存知の事と思います。
○十七番議員 存知ませんから。
○議長 事業部という処は多くの傭人を以て仕事に当らしめているのであります。私は事業家ではありませんが、事業と云ふのはすべての人が知っておられる様に事業の運営進展のためにかような事をするのが普通の様に考へられています。それでその事に就ては現在の事業部が初めてこう云ふ様な事をしたのではなく其れは設立当初からしているのであります。又民間事業家も其様な事はあたりまえ見た様になしている筈であります。こう云ふ様な費用によって潤をつけ、明日の働きに拍車をかける事であり、事業部運営上是非必要であります。事業部は今迄年三回していましたがどう云ふ風な御馳走でするのかは事業部長の方から御願い致します。
○事業部長 従来の事業部は毎月一回懇談会を開いていました。私が行ってからはあまり多い様に感じたので年三回にしたのであります。こう云ふ風な事は民営に於てはさいさいする筈であります。事業部がいくら官営とは云へ年三回位はやっても良いではないかと云ふ事で予算に計上した訳であります。報恩感謝をすると云ふ意味の事が古くから多くの企業家で実施されていたのであります。
 此の費用は人員の多い事業部では酒一杯に生豆腐と云ふ極簡素なものであります。
◎十七番議員 民間の製材所では製材をさせるなら其製材のハタガーは全部製材所が取っていて木材の主に返さない様でありますが、事業部ははたして其ハタガーが処分されて雑収入として計上されているかどうか製材課に働いている人夫達がちょいちょい家に持って帰るのを見受けます。ああ云ふ点をよく検討され、自己のものである事を認識されて雑収入によってそう云ふ様な費用は充分出ると思ふ。一方では一、〇〇〇、〇〇〇余の借金を持ち一方では三〇、〇〇〇円余の懇談会費を出すと云ふ事が甚だ矛盾な点がある様に感ぜられる。一方交際費を削らうと云ふ時事業部のみは従来のしきたりを其儘けいぞくされる事はどうかと思います。今少し吾が家の経済である自覚の基に事業を進められん事を望みます。
○事業部長 懇談会費に就て御懇切なる御注意がありますが製材のハタガーは雑収入として取り扱っています。先にも申上げた様に多数の人との懇談会費でありますので、その額が大きいとは思はれません。こう云ふ事をなくして事業を運営することはどうかと思はれます。
○議長 休憩致します。(午後零時十五分)
◎議長 開会致します。(午後一時四十五分)
 経理課の特別会計は今の処どうなるか。判然わかりませんのでいづれ宮古へ出張中の経理課長の帰府により特別会計の案を作り度いと思います。其承認は参事会の方にして貰ふと云ふ事にしてありますが良いでせうか。
○議員一同 賛成
○事業部長 先程事業部移管に関しての質問がありましたが其れに就きまして意見を申上げ度いと思います。
 それは事業部長としての意見であります。
○議員一同 それは既に合同研究の際話された事ではありませんか。
◎十五番議員 私が聴かふとする処は今回四〇〇、〇〇〇円と云ふ大金を二五〇馬力の主動機整備購入費に使用するのであるが、其れが若し破損した場合其負債の責任は誰が負ふのであるか。
○事業部長 此の借金は事業部の総上げ金(ママ)から補填するのがあたりまへではないかと思います。
○議長 事業部長の話の様にそうなるんではないかと考へるのが至当ではないかと思います。
◎十七番議員 本問題は将来に於て当局の答弁議員の意見として死語に亙る様な事のない様に其大要は議事録に記録すべきではないか。
◎議長 十七番議員の御意見の通り的確な記録を残すため唯今これは話さないでも良くはないかと申されました。事業部長の話等そう云った様な事も本会議で記録を残す必要があるんではないかと思いますがどんなものでせう。
○議員一同 賛成
○事業部長 命により致します。
 事業部長の私見であります。
  (最後に「事業部の解体其存否に就て」事業部長意見を記載す。)
◎十七番議員 唯今仮払の話が出ましたが此の仮払は一九四八年の仮払であるのか、それとも一九四七年のものであるのかお聴きし度いのである。
○事業部長 仮払のものは四七年度末には四三〇、〇〇〇円で、四八年十二月末には二三〇、〇〇〇円であります。
◎十七番議員 四三〇、〇〇〇円の膨大な金額がほんとの項目に処理されない理由は何にあるのですか。
○事業部長 四三〇、〇〇〇円と云ふのは数字であってどんどん切り替へられているのであります。
○黒島事務官 十二月三十一日現在に調査したもので内容はどんどん切り替へられているのであります。
◎十七番議員 年度を持ち越している移動はありませんか。
○黒島事務官 それはありません。
◎十七番議員 お聴き致します。
 どういふ種目に就て仮払としているのでありますか。
  (事業部長仮払の内容を説明す。)
◎十七番議員 大口はありませんか。
○事業部長 なねこ組に五〇、〇〇〇円、竹松組に五〇、〇〇〇円を貸してあります。これはいづれも材木を切り出す為に山に入っているのであります。
◎十七番議員 財産として残っているのはないか。
○事業部長 財産として残っているのもあります。
◎二番議員 発電機二一〇馬力の原価一五〇、〇〇〇円の減額交渉は出来ないものでせうか。
○事業部長 先程から議員各位が申上げられていますから是に対しましては善処し度いと思いますが、それは前にも申上げました様に其価格は多くの鉄工所の人々によって評価されたものでありまして、単なる事業部のみで評価したものではありません。
◎二番議員 一五〇、〇〇〇円で通しますか。
◎十七番議員 彼等は機械屋であって機械商人ではない。
○事業部長 二番議員の御意見を承はった上善処し度いと思います。
◎二番議員 船備材がある様に部長が云はれましたのでありますが、それを切り離してほんとの発電機用のもののみを取られる様にしたらどんなものですか。
○事業部長 議員各位の意見が纏まりましたらそれによって善処し度いと思います。
◎議長 先程から仲本議員の方から電気課の第一号機の破損について責任は誰にあるのか、其責任は誰が負ふべきか、其時の実状を機械主任の方から話して貰って責任を全部で決めて欲しいと思います。
◎五番議員 一応当時の的確な状況を当時の担当者、責任者から聴いて議員の態度をはっきりしようではないか。
○機械主任 実状を申上げ度いと思います。私は一九四五年電気課に入りました。其時から第三号気筒ピストンにひびが入っている事をたしかめ、又前から破損している事がわかりました。それはしめつけボルトでしめて使っていたものであります。徐々に運転している間に一九四七年十二月二十七日又電気溶接をしなければいけない様になり、電気溶接をしたので其後運転を継続しました。一九四八年五月十九日には分解掃除をして点検をした。何にも異状を認めないので運転を継続していたのでありますが二十時五分に破損したのであります。此れを其翌日其道の識者に見てもらったら此れは機械のつかれから来たものであると云ふ意見の一致を見ました。
 当時の模様を御話申上げますと疑音が生じたものですから当直者がハンドル停止して一〇回位回転して破損したものであります。生命が欲しいとか其他仕事がおろそかとか云ふ事ではなく、其当時当直者は停止の位置にあったと云ふ事は確実なものであります。其他の物のネヂの締めつけ具合が悪いかと云ふ事で責任を問はれるなら別問題ですが、機械のつかれから来たものでありますから責任はないと思います。
○議長 休憩致します。
  (休憩中議員と機械主任との間に一問一答あり結局機械の破損は必然的なものであって、唯良心的に考へて破損したと云ふ事で辞職の意思なきを議員は遺憾に思ふた様であるが、それは事業部長が既に電気課長も機械主任も辞表を提出する考へで、書面或は口答で部長に申上げたが事業部長としては破損せる機械が復旧出来るまでは踏みとどまって復旧事業に尽力する様にとの事である旨話されたので議員側も納得が行き、結局責任は別に問う必要がない様になった。)
◎議長 開会致します。今実際の取扱者から御話がありましたので其れで納得が行かれたことと思います。別に責任はないものと思います。
◎二番議員 原動機の一五〇、〇〇〇円に対する減額交渉は責任を持って下さる様御願い致します。
○事業部長 議員各位の意向として善処していかねばならないと思います。
◎十七番議員 電気課主動機が不時の災難に会い其れを復旧すべく日夜努力しておられる事業部の御苦心は同情すべきものであり、其機械以外には使へるものはないと云ふ建前からあれこれ手を尽しておられます。そう云ふた御努力御苦心に対し同情を申上げる者でありますが、事業部の民移管と云ふ大変動期に議員各位はそれに要した費用即ち二一〇馬力の購入費整備費を電気課の負債として引継がせるかどうか検討する必要があると思います。
 安心の出来るものなら議員が色々あれこれ申上げる必要はないと思います。が事業部の方で此の機械の保障(証カ)期間を来年と云はれていますので私達議員は其期間を一ヶ年としてはと思ふ者であります。又此の機械には発電に直接必要でない船備品がついているとの事でありますから、此の備品を別にして購入したならばと云ふ多数の意見でもありますから事業部長は考慮して欲しいと思ふ者である。
 尚多額の金を投じて購入整備した機械が万一其れが思わしくいかないので又破損する様な事がありましたら、今までの当局の御努力は水泡にきせねばならないと思います。此の機械の主人公は事業部に働いておられる優秀なる事業部の幹部であり、又機械其ものが傷物であり、又裸であると云ふ事を照らし合せても、そう云う機械は民政府以外に購入者が無いと云ふ事等をあれこれ考へ合せて見て馬力の単価を下げられ原価を一〇〇、〇〇〇円以内に引下げられん事を望む者であります。
○事業部長 船備品を取り除いて単価を下げる様充分善処し度いと思います。
◎十五番議員 希望を申上げます。電気事業は公益事業でありまして営利事業ではないのであります。そう云ふ意味から考へても電気の利用の恩典に与っているのは石垣市のみで、其電気に対する負債を平等に持つと云ふ事は考へられないものであります。此の問題は充分検討されてしかるべきものであって、其負債は当然需要者が持つべきものと考へます。来るべき事業部の民営移管に就て委員会が設けられる事でありませうが、此の際其負債をどうされるか充分研究して欲しいと思います。
◎議長 だいたい話合いが済んだ様であります。事業部の特別会計予算案はこれで御承認して下さるものと思いますがいかがですか。
○議員一同 賛成
◎税務課長 所得税を三割減じたものですから御手許の所得税の税率を改正し度いと思います。
  (改正案を読み上ぐ。)
◎二番議員 税率に対し御尋ね致します。賦課額が決定して其れに人員が決ってから税率は決定するものではありませんか。
◎五番議員 言いかへれば二、〇〇〇円と云ふものから出発しているが其れは適切なりやと云ふ事を議員は考へねばならない。
○税務課長 所得税二、〇〇〇円のものは総所得額が五、〇〇〇円のものであります。
◎十四番議員 議会開会当初から参事会の会計検査書の意見書を提出して其れに対する当局の処置如何を問はれている様でありますが新聞に出てる某課の大穴については郡民の注目の的となっている関係上問題を明らかにし郡民の疑惑をはっきりし度いものであります。
○議長 いづれ此の問題は司直の手によって明らかになると思います。
◎十四番議員 議長は司直の手によってと申されますが行政的処置には出られませんか。
○議長 いづれ早く起訴するかせないか研究中であります。
◎十七番議員 本議会で行政処分と申されましたがどの程度の行政処分をなさる積りでありますか。
○議長 今申上げました様に起訴致すことになりますとすぐ行政処分をする考へであります。其行政処分は単なる退職位ではすまされない積りであります。
◎十五番議員 税率の改正案に就て希望を申上げ度いと思います。私の申上げ度いと思ふのは土地家屋の賃貸価格の改正でありまして、一例を挙げて申上げますと土地の賃貸の価格が不完全なために他人の土地と自分の土地の税金を比較して何とか、かんとか云ふ者が多い様であります。即ち土地の価格利用に於て相当差違があります。それで昔の賃貸価格で税金を御決めになる事は不均衡ではないかと思います。
○税務課長 賃貸価格は昭和八年に改正して以後未だ改正されておりませんので、其う云ふ不備な点も出て来るだろうと思いますが、ほんとは改正しなければいけないのでありますが莫大な経費と人員が要るものであります。昭和八年八重山税務署に賃貸価格の改正で要した費用が五〇、〇〇〇円であり、あの当時より一〇〇倍も物価が高騰しているので約五、〇〇〇、〇〇〇円の予算の捻出と人員を約三倍位増員して下さるなら出来ない事はないと思います。
◎議長 別に御話合いになる事はございませんか、時間が来ている様でありますから閉会したらどんなものでせう。
◎知事 終戦以来当民政府予算は毎年軍政府より莫大なる援助を受けて賄って来ましたが、新年度より此の援助がなくなりますので、全住民の負担に依らざるを得なくなりましたので其財源を税収入に求むるに当り、可及的民負担を軽減する意味で又可及的新規事業の取止め、行政整理等を考慮に入れて新年度の予算を編成して今議会に提出した様な次第であります。
 議員各位に於ても亦御同様な御気持で十日余に亙り我家の家計を検討せらるる御気持で、我家である政府の予算案を充分に御検討、御研究になり、職員の減ずべきものは更に之れを減じ又部課の廃合すべきは之を廃合し、又民移管にすべきは移管準備をさせてもらふ事になり、茲に政府案を修正満場一致を以て認めて戴きました事に就て、衷心から敬意を表し且つ感謝申上げます。
 此の修正案こそは全住民各位が承認して戴きました予算であると信ずる者でありまして、此の上もなく喜んでいる次第であります。
 就きましては軍政府の認可を受けまして、全住民各位の幸福と繁栄の為最善の努力を払って執行することにより全住民の御期待に添い度いと思います。
○十七番議員 唯今知事さんから御挨拶がありました様に、今年度より軍配給物資益金三、三〇〇、〇〇〇円と云ふ大金がなくなり、是に代るべき歳入として税を民に賦課させねばいけない様になり、如何にして是を民に負担させるか、今年こそ八重山民政府の財政の危機に直面し如何にして財政を切り盛りしていくかと云ふ事で、当局と議員は苦心して来た様な次第であります。それで出来得る限りの人員を整理し冗費をはぶこうと云ふ事で、よぎなく行政整理をしなければいけない様になりました。そこで今まで薄給の生活をして公僕として八重山全住民のために働いて来られた人々に対し、今行政整理により職を辞されようとする人々に民政府首脳部としては如何に処置されるか非常に悩んでおられる事でせうし、又吾々議員も其人々の将来を考へなんとかして他の道に於て此の人々を救い、良い仕事を見つけて八重山郡の為に働かせる様特別の御考慮を御願い致します。又民間企業なり其他特殊事業などにその人々を向けて将来を見て貰わん事を希望致します。
◎議長 十三日間に亙り八重山全住民の為に、又民主主義の基盤確立のために議員各位を初め民政府職員は熱心に活発に真心を以て此れならば住民全体が喜んで負担出来ると云ふ新予算を編成して下さいました事を心から喜ぶ者であります。又六・三・三の学制改革は八重山教育史上特筆大書すべきものと私は信じます。各位は民主生活面に於て諸公の心情を披瀝してもらい、民政府は人民の政治たる事を自覚して充分責任を持つ事により、真に自由民主主義が確立せられるものであると思います。十三日間に亙り熱心に御検討して下さいまして有難う御座いました。それで閉会致します。(午後四時五分)

○事業部長 事業部の解体並にその存否に就て、議員各位の事業部解体に関する御意見に就て事業部長として事業部開設以来、現在に到る間に於ける実績並に事業部存否に対する意見を述べ度いと思います。先づ事業部の資産の造成及び蓄積の面に就て申上げます。
 一 一九四六年より一九四八年十二月迄に事業部自体により造成せる資産(建物、機械類、船舶、車輛、計器類)は金一、四〇七、七六二円六九銭であります。
 二 一九四六年より一九四八年十二月迄事業部管理に依る財産に事業部が補修せる金額は金三八四、一五二円八八銭であります。
 三 一九四六年度一九四七年度に民政府一般会計納付済額は金一、三〇二、六〇〇円であります。
 四 現在事業部の手持財産は(貯蔵品、原木、製品、未収金、仮払金を合せて)金二、一三七、八八五円六五銭であります。
 五 一九四八年十二月二十日現在の現金は金一〇五、七九二円六九銭であります。
 以上資産の造成及蓄積は合計金五、三三八、一九三円九一銭になります。
 次に負債の面に就て申述べます。
 一 初年度即ち一九四六年一月に民政府が事業部に投じた金額は金二二三、五〇〇円であります。
 二 一九四七年六月末軍政府よりの借入金は金七六〇、〇〇〇円であります。
 三 一九四七年一月より一九四八年十二月迄一般会計よりの支出の職員費は金五一五、八五四円六五銭であります。
 四 一九四八年九月経理課より借受けた金額は金三〇〇、〇〇〇円であります。
 以上負債の合計は金一、七九九、三五四円六五銭になっております。
 前の述べました利益金より此の負債一、七九九、三五四円六五銭を差引いた時は利益金三、五三八、八三九円二六銭となり、一九四六年より一九四八年迄事業運営に種々の事情があったにも拘らず、結局此の様に三、五三八、八三九円二六銭と云ふ莫大な金額を利得しておるものであります。三ヶ年間に於ける事業部の運営は寧良好であったと見て不可ではないと思います。尚又先程述べました資産金額中には購入当時の価格を上げてありますので、之を時価に見積る時は之又更に莫大な数字に上るのであります。
 尚一九四八年度の実績を見まする時、事業部の業績は成程不振ではありました。其原因は次の通りであります。
 一、製材課の七月五日の暴風雨に依る被害及機械修理に依る損害
 製材工場建設費
      金二一三、六九〇円
 補修整備費
      金 五〇、〇〇〇円
 二、電気課主動機破損に依る損害
 電灯料 入浴料減収
       二一〇、〇〇〇円
 三、燃料減配に依る運輸課の減収
        七二、〇〇〇円
 四、運輸丸修理に依る減収
       一三八、〇〇〇円
 五、発電所代品整備
       一〇二、六九七円
 六、元製材課負債弁済
        九五、六五六円
 合計    八八二、〇四三円
 等の事故に依る損害、減収がありました。
 是等の事故は平素の処置如何に依って、其被害、損害を軽減し得たであろう事も考へられるのでありますが又一面一朝一夕にして到来したものでなく、永年の管理、運営にも関係しているものであります。私は部長就任以来日尚浅い者ではありますが、器械の整備、早期修理及手入等に関し、鋭意努力して来た積りでありますが、斯様な事故が相続いて発生した事に就ては、極めて遺憾に思い責任を感じて居る者であります。然し斯様な事故の重なった年ではありましたが一九四八年度は決して赤字ではなかったのでありまして十二月二十日迄の純益金一、一九九、二八六円一五銭、三月末迄の予想純益金一、五九五、二五六円になります。けれども先程申上げた様に一九四八年度には器材の補修整備並に財産造成に此の純益金の大部分が使用されましたので一般会計への納付金は出来得ない状態にありますが、此の純益金の大部分は財産として厳として存在しております。而も此の財産は次年度に於て効果は大なるものがあると確信をしております。
 各位が良く御存じの通り如何なる事業でも毎年順調に運ぶものとは断定出来ませんが、事業部に於ても、斯くの如く悪条件があったにも拘らず、之を克服して来て居る次第であります。更に議員の言はるる事業部の民移管に対する意見に就て申述べます。
 事業部が存在する大きな理由の一つは民政府財源として一般会計に対する納付金にある事は厳たる事実であり、それで今回民移管の論議せらるる大きな原因は四八年度に於ける納付金の皆無と云ふ所にあると思います。
 之は前述の一九四八年度の実績通りでありまして、此の様な事故は毎年起る可きものでなく、而も今年度此の事故による補修整備の効果は前述の通り来年度に於て、大きく表はれて来る事と確信するものであります。今参事会員各位の意見書に於ける民移管に依る貸付料と事業部の一九四九年度の予算に依る利益金を比較対照しますれば、次の様であります。
 一九四九年度の事業部の予算は
 一般会計納付金
      八四〇、〇〇〇円
 減価償却費
      四二八、五六〇円
 借入金償還
      二一八、〇〇〇円
 計  一、四八六、五六〇円
 一般会計より受くべき職員俸給、賞与四二四、三九八円でありまして右差引額一、〇六二、一六二円は民政府の純収入になるのであります。
 次に参事会員各位の意見書に依る貸付の場合に於ける貸付予想額は最高額九八〇、〇〇〇円(八〇〇、〇〇〇円)(ママ)であります。
 参事会員の御意見による此の最高貸付金額は結局事業部の一九四九年度に於ける予定額と大差はありませんが、貸付に依る此の金額の納入に就ては聊か懸念する者であります。即ち民移管に依る経営にも種々の支障があると思はれるからであります。
 その理由の二、三を挙げれば次の通りであります。
 一、現在民営事業が官営事業よりも資材の獲得が充分円滑に行くとは思はれない。
 二、民営の場合、貸与財産の保管が充分出来るかどうか懸念する。
 三、民営は官営よりも製品価格、其他の料金が高騰する事に依り大衆に不利を与へる事を懸念する。
 四、一切同時に民営移管決定後に於て若し一部又は大部分に対し借受人無き場合之等のものを処理するに困難と思はれる。
 五、現在事業部の手持資材(貯蔵品材料)は時価大凡二、〇〇〇、〇〇〇円になりますが、之を買受け尚運転資金を準備して事業を運営する人幾人あるかを懸念する。
 六、事業不振に依り若し貸付金を納付し得ざる場合、如何に之を処理するかを懸念する。
 七、事業部を民移管する事により将来財産の管理が政府の癌となる事を深く憂慮す。
 以上の関係より見て又之迄本事業を運営し、而も事業運営の困難であった一九四八年度に於ても事業上利益があり、尚又同年に於て総ての設備を整備し一九四九年より全能力を発揮して順調に事業運営せんとしている時に当り、事業部を民営に移管せんとする事は慎重なる研究の上決す可きだと思います。
 私は決して民営移管を反対するものではありませんが、事業部の財産を何人よりも良く知って居る積りでありますので、此の財産の将来の運営を深く憂慮し之等本事業を運営して来た責任者として、移管に関する責任を明らかにし度いと思いまして以上の意見を申述べ、たとへ移管するにしても急速に実施するよりも準備期間を一年とし社会経済状態を見つつ順次に移管する事が至当だと思います。
 以上でありますが、議員各位の御希望に依り、六月末迄事業部として運営をなし其間に於て民移管委員会に於て準備をなし、七月より民間へ移管と云ふ事と決定しましたので三ヶ月分の予算書を編成して予算書を提出した次第であります。

  上記の通り相違ありません。
 一九四九年三月三十一日
八重山議会議員 大濱 用立(印)
     同上 山城 興常(印)
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