- 組織名
- 八重山議会
- 開催日
- 1947年07月28日
(昭和22年)
- 会議名
- 1947年7月28日八重山議会
- 議事録
- 一九四七年七月二十八日八重山議会会議録
諮問案第五号
籾買上ニ関スル件
米穀生産者ノ売却セントスル籾ヲ買上ゲ之ヲ非農家ニ配給シ以テ全住民ヲシテ米食ニ均霑セシムルト共ニ米価ノ維持及籾ノ島外横流ヲ防止セントス
一九四七年七月二十八日提出
八重山民政府知事 吉野 高善
諮問案第六号
食糧ノ郡外搬出及買占又ハ売惜行為等処罰ニ関スル規程ノ件
八重山列島住民ノ生活安定ヲ図ル為八重山列島内生産食糧ヲ確保シ、併テ島内ニ適応配給ヲ期セントシ本規程ヲ制定セントス
一九四七年七月二十八日提出
八重山民政府知事 吉野 高善
諮問案第七号
一九四七年度八重山民政府認可予算ノ件
南部琉球軍政府ノ認可ヲ経タル一九四七年度八重山民政府歳入歳出予算別紙ノ通リ
一九四七年七月二十八日提出
八重山民政府知事 吉野 高善
諮問案第八号
一九四七年自一月至三月八重山民政府決算報告ノ件
一九四七年自一月至三月八重山民政府歳入歳出決算別紙ノ通リ
一九四七年七月二十八日提出
八重山民政府知事 吉野 高善
八重山議会会議録
一九四七・七・二十八午後二時
出席議員
喜舎場永珣 宮城 信範
山城 興常 成底眞嘉良
大田 守松 大濱 用立
柴田 米三 新城 永吉
本若 榮包 大濱 賢仁
與那國 修 阿良 正二
欠席議員
玉代勢太郎 崎山 英保
玉城 仁榮 池間 榮三
仲本 信幸 幾乃 伸
参与出席員
翁長 信全 上間 貞俊
大山 眞整 宮良 賢副
崎山 用喬 與那國善三
眞玉橋朝珍 大濱 信光
大濱 信賢 當銘 正友
天久 朝美 石垣 英政
眞喜屋實清 神村 高裕
宮良 長重
参与欠席者
松田 長茂
二時開会ス。
◎知事 議員の定数が一〇名より一八名に軍政府より指定された。宮良長義議員は軍政府布告違反に依り懲役の刑に処せられて失格を致しました。
上間貞俊、大山眞整、松田長茂議員は辞任をしそれで現員五名となって一三名の欠員になったのであります。それで民政府では人物銓衡の上内申の処七月十日付で一〇名七月二十五日付を以って三名が軍政官に依り任命されたのです。
七月十日付任命になった議員は、大濱用立 柴田米三 崎山英保 玉城仁榮 新城永吉 大田守松 池間榮三 仲本信幸 本若榮包 阿良正二で、七月二十五日付任命されたのが、與那國修 玉代勢太郎 大濱賢仁であります。
七月二十二日付を以て各市村長を郡会参与に任命し、七月二十三日付を以て八重山郡会を八重山議会と改称し、従って郡会議員は議会議員となるのであります。
本日の出席議員一二名、欠席議員六名で定員の半数以上になって居りますので、唯今から八重山議会を開会致します。
参与員には各関係部課長、市村長を任命致しました。記録係には大濱孫佑を任命致します。
本会には民政府としては重要なる案を提出してありますので十分と御審議をして戴きたい。
尚民政府機構に基き総務部長が議長となり会に入ります。
(総務部長議長席に着く。)
◎議長 今度新議員が大分居られるから機構表により本議会のことを知って戴き、それから会議に入らうと思ひます。
(機構表による議会の項を読上ぐ。)
ではこれから諮問案に入ります。
(総務課長諮問案第五号を読上ぐ。)
◎土木農林部長 本年度は各農村共豊作であります。豊作で出来た籾の維持を図り生産者を保護し、非農家にも米食をさせて全郡民が米食に均霑せしめ、更に籾の郡外横流を防止する為に民政府で籾を買ひ上げて配給したいと思ひ本案を出した次第であります。
買ひ上げの方法としては
(一) 民政府は各農業会をして籾買上及精米の配給を代行せしめるのです。
(二) 籾買上の価格は、時価を以て買上げるのを原則とするが、標準価格及最高最低価格は内定したいと思ひます。
(三) 籾買上の際は、検査をなして標準による等級に分けるのです。
秕歩合が一割以下の籾ハ合格とし、一割以上一割五分以下を格外とするのです。籾の検査は当該農業会の農業技術員が之に当るものとします。
(四) 各市村農業会は集荷状況籾価格について相互に緊密なる連絡を持って籾買上げに就て異状の現象を招来せない様に留意をする。
(五) 各農業会は集荷状況籾代金支払状況につき週末に民政府に報告をなして常に民政府及上級農業会の監督の下に此の事業を遂行する様にする。
(六) 買上げ実施に当りては各市村の実状に則り各農業会に於て方針を定め上級農業会民政府の協力により此の事業の遺憾のない様にする。
資金経理に就ては
(一) 軍政府資金二、五〇〇、〇〇〇(ママ)円を民政府は籾買上げ資金として借受けた上銀行に預金する。
(二) 民政府は各農業会と協議の上各市村の実状を参酌して資金の割当をする。
(三) 郡農業会は毎旬毎の必要資金を民政府に要求し其引渡しを受け各市村農業会の要求により資金の引渡をなす。
(四) 各農業会の該資金は別途会計とし資金の経理に就ては民政府及上級農業会と密接な連絡及指導監督を受けること。
配給の方法は
(一) 買上籾の保管及配給は各農業会に於てこれをなすこと。
(二) 配給は買上籾の量により九月以降来年の四月迄の各月に割当て適量宛非農家に配給するものとすること。
(三) 配給量及配給時期、配給価格、範囲等は民政府土木農林部、商工経理部、農業会と協議の上で決定をする。
(四) 精米の際の籾摺精白歩合は七二%とする。
資金の返還方法は
(一) 各農業会に引渡したる資金中買上籾の集荷の見込がなく該資金の消化が不可能となった場合は民政府に返還する。
(二) 軍政府の命に依り資金の返還は九月、十二月、三月、五月の各月になるので配給に依り回収せる資金は前記各月の末日に於て市村農業会は郡農へ郡農は民政府へ返還するものとする。来年五月末日までは全額返還する様計画するものとする。
(三) 該資金の運転により得たる手数料の中民政府上級農業会へ納付すべき割合は協議の上決定して資金の返納期毎に之を納付するものとするのであります。
◎柴田議員 八重山の現在の経済状況に於て米の価格を最高、最低に決めるのは最も困難なものでありませう。農家にしても最低のものでも最高に売りたがるでせう。又最高、最低の価格を決めても又更に他から最高の価格の上を行く値段で出て行く様なことがありはしないかと心配される。
吾々議員は命により議員として出たのであるが出たからには郡民の心を心としてやる決心である。それで本問題は最も重要なる問題で籾の価格を内定しても更に其上を行く価で他に飛んで行くのではないかと思ひます。それをなくす為に罰則が設けられる様になっていると思ひます。それで先づ罰則の方から先に考へた方が良くはないかと思ひます。
○議長 食糧は布告によって知事の認可以外には郡外に持出すことは禁止されていますから、今柴田議員からの話の様に罰則と照し合して考へられても差支へないと思ひます。
◎宮城議員 価格はどこで内定するのか農業会でか、民政府でか、又農業会と連絡をとられたか。
今一つは資金の返還は命によりとのことだが軍政府の命によりですか。
○議長 価格は民政府と農業会とよく連絡をとり時期により決定をする。資金返還は軍政府の命によるのです。
(軍政府よりの電を読上げる。)
◎山城議員 民政府は本年度の籾の収穫高をどの位に見ているか。
○土木農林部長 吾々が調べたのを読み上げます。水稲は石垣市では収穫面積が三九〇町四段で反当り一石一斗三升計四、四一一石五斗。大濱村は三七四町三段、反当り一石五升で計三、九三〇石二斗、竹富は三九九町八段、反当り一石〇斗一升計四、〇三七石九斗、与那国が一八五町二段で反当り一石一斗計二、〇三七石二斗で合計面積は一、三四九町七段で反当り一石六升で一四、四一六石八斗であります。
陸稲は石垣市が二二町反当り四斗八升で一〇五石六斗、大濱村四一町九段で反当り五斗六升で二三四石六斗、竹富村が六町一段で反当り六斗三升で二八石四斗、与那国はなし。合計七〇町では反当り五斗二升、三六八石六斗。水稲、陸稲の総合計が一、四一九町七段で一四、七八五石四斗であります。
◎山城議員 籾買上げの資金の二、八〇〇、〇〇〇円は利子がつくのであるか、又は無利子か。
○議長 無利子です。
◎山城議員 買上げて直ぐ配給することは難しい。九月に金を返還すると云ふことは困難ではないか。それで買上げて配給するのは食糧事情から考へ農家の換金必要状況から見て十一月以降が良くはないか。又配給と云ふことに就て現在種々の配給の実際面は各市村がやっているし又精しいことと思はれる。又各市村は配給について知って居なければならないと思ひますが、此の配給方法について各市村役場は除かれているが如何なる理由であるか。
○農務課長 唯今の山城議員のお尋ねにお答致します。九月頃から一般農民も手持食糧の融通が窮屈になってくるので今月から買上げて第一回配給を九月にするのであります。又資金返還を軍政府より籾を消費者に配給して三ヶ月毎にする様にとのことであるのでこちらとしては九月を返還期にした方が最も良い様になっているのです。
◎宮城議員 農業倉庫に籾を入荷して時価が上った時に売りたいと思ふ人があるとしたら、それも考慮されているかどうか。
○農務課長 農業倉庫法による委託は考慮に入れていないのです。
◎柴田議員 最高、最低価格は此の席で決定するのか。
○農務課長 実は此の席で最高最低価格をつくって貰ひたくないのです。それは此処で最高価格をつくるとブローカーがすぐ其上を行くからであります。それ故に農業会と協議して最低価格をきめたいと思ひます。
(籾を農業倉庫に委託して良いかどうかにつき座談となり農業倉庫に委託することは売惜行為になるかに就て警察部長よりそれは売惜行為にならないと談をなし農業会自体が委託販売することはさまたげないと大方話はまとまった。)
◎大濱用立議員 農業倉庫法が問題になっているが今年は豊作で農業会としても農民の収益を保護してやりたいと思ふが農業倉庫法による委託販売は不可能であります。其理由は農業会として資金がなく又倉庫の設備もない為に委託してやることが出来ず、すぐ其場で決算をやっているのであります。
幸に民政府が本年農民の為に此の事業をやって居られるが此の事は来年も更に恒久的に農民が前借のない様に保護し全住民をして米食に均霑させて貰ひたいのであります。
◎山城議員 本案は誠に時宜に適し又農民の為にも最も良い案と思ひます。唯最も重要な点は生産者の生産意欲を昂揚させて貰ひたいと云ふことです。戦時の供出時代に於ては供出を強いて生産者のことを考へずに生産者の生産意欲を殺いだのであります。本案は農民を保護し全住民米食に均霑せしむると云ふことで供出時代とは其精神が全く異っているのでよく農民に理解せしめ民政府又農業会も細心の注意をなし農民に細い所にも手を差し伸べて喜んで買上に応ずることが出来る様罰則等に依らず生産者の生産意欲の昂揚を図って本案が完(ママ)を結ぶ様にして貰ひ度い。また手数料とあるがその事に就て具体的に示して貰ひ度い。
○農務課長 手数料に就ては現在研究中であります。然し生産者から手数料を取ることはしない。それは配給の際の価格に入れらるべきだと思っています。
◎山城議員 配給は非農家とあるが其他はしない積りであるか。
○農務課長 現在配給は非農家と考へている。
◎宮城議員 農家で米作をしない農家もあるが、非農家となれば米作しない農家には配給されないことになり、米食の均霑と云ふことにはならないが其点非農家としないで適正と云ふことにしたらどうか。
◎山城議員 唯今の宮城議員の言はれたことは尤もだと思ふ。戦争中の供出時代に非農家に配給と云ふことで農民は供出し非農家は配給を受け農民の中で米食しない者があった。非農家は米の配給を受けるので農民に米作をせず非農家になった方が良いと云ふ考へを起させ生産意欲を殺いだことがあるから非農家と云ふことはやめて適正とした方が良いと思ふ。
(外の議員も之に賛意をなす。)
○議長 唯今の御意見は御尤もです。非農家とせず適正と致すことにします。
(皆賛意をなす。)
◎柴田議員 折角二、八〇〇、〇〇〇円を得て仕事をすることになったが成功すれば何でもないが若し思ふ様にならない場合は民政府が其補填をすることになり結局は全住民に其補填はかかると思ふがその時はどうするか。
○議長 二、八〇〇、〇〇〇がうまく行けばそれで良いが若しうまく行かなければ其時はどうするかと云ふことですね。其事に就ては生産者・消費者の面を十分と考へて、買上げ配給するのですから若しそれが現在の物価変動の著しい経済状態でうまく出来ない場合はその補填は全住民が負担することは当然と思ひますから其点十分御含み下さい。
(全員賛意をなす。)
◎柴田議員 此の事はうまく行けば良いが若しうまく行かない時に吾関せずと云ふ事になれば全くいけないと思ふ。その点全郡民が其責を負ふ決心は持って貰ひたいと思ふ。
◎宮城議員 買上げた価格が台湾貿易でも開かれ郡外から米が安い値段で入って来た時に、郡外よりの安い値段の米を買ひ此処で買上げ配給する米は買はないと云ふことになりはしないか。
○議長 其事に就ては民政府としても十分研究して大丈夫と思ひ此の案は作ったのであります。
○商工経理部長 台湾との貿易が開かれても主要食糧は貿易品の中に入っていないから安心して貰ひ度い。
◎山城議員 買上げの時に農民が持って来る籾をすぐ移す入れ物につき考へているか。
○農務課長 その事に就ては考へています。軍政府に袋を五、〇〇〇枚お願ひしてあるがまだ返事がないのです。それで商工経理部が此の間麦粉を配給した七〇斤入れの空袋をお願ひして二、〇〇〇位は出来るだらうと思ひます。
◎山城議員 各市村共に米作は一段と熱心になっている。又今日、米は最も大切なものであり郡外からも入らないしどうしても自ら作らなければならない様になり又米作は利益が多いと知り農民は非常に熱心になっている。戦時中の供出時代の様にされたら農民はよい気持ちでないだらう。入れ物、秤等を十分考慮されて生産者の為に細い事まで考へて貰ひ度い。そして農民が喜んで買上げに応じ一面郡外移出を禁止し一面非米作者にも米を与へる様にして貰ひ度い。
検査するとあるが農業会に実際それだけの技術員がいるか心配される。それで民政府で十分考へて監督して貰ひ度い。以上考慮された上で賛意を表するものである。
◎議長 二、八〇〇、〇〇〇円を借り受けたるに就き私達も十分考へて此の案を作ったのであるが万一損失が来たら郡民共に心配して貰ひたい。
(全議員賛意の中に第五案は了承を為す。)
◎議長 では第六案に移ります。
◎警察部長 先づ制定の理由を申します。八重山は今年は豊作とはいへ未だ自給自足に達しては居らず今尚米軍の食糧補給をされている現状であります。食糧の郡外持出しは禁止されて居り取締の強化を厳にしているが一部悪質商人や悪質ブローカーの手を経て食糧が無計画に郡外に持出されている。又米価の値上りを見越して悪質商人の方では売惜み買溜をしているから其れに対し適当なる措置を講ずる為に本規程を制定する必要があると思ひ本日提案した次第である。本案は悪質商人、悪質ブローカーを対象とするものであり又この規定を以てするのは有害行為を防止せんとする為である。
それで本規程をこれから逐条審議して行きます。
(草案の逐条説明をなす。)
第一条は目的を示してあります。(読上ぐ。)
第二条は取締の対象物を示したのであります。これに加工品を加へたのは主食物、食糧を加工して持出す恐れがあるから入れたのであります。
第三条(読上げる。)
第四条営利を目的とする買占売惜行為であり悪質商人等の有害行為であります。
第五条許可を有するものであります。
第六条(読上ぐ。)
重いとも思はれません。此の位は適当だと思ひます。
第七条(読上ぐ。)
◎喜舎場議員 現在郡外に石垣島の裏より又は離島よりブローカー、商人を通して持出していることを聞くのであるが何とかして其れを持ち出す者ばかりでなく其行為を助けている者にまで適用して貰ひたい。
○警察部長 共犯者、幇助者もよいが又外に条を設けてはっきり示してもよいと思ふ。出来るだけ民家の理解と協力を得て取締りたいと思ふのだがブローカーによる搬出があるので最後の手段としてこの規定を作ったのである。
◎柴田議員 第六条の次に幇助者をも入れた方が良いだらう。
○警察部長 前に新聞に出したものは草案でありまして決して生産農家を対象とするものではありません。此の取締り範囲外と思って心配しないで下さい。新聞に出した隠匿売惜しみ、買溜と云ふのは営利を目的とするものであるから左様承知しておいて貰ひたい。
◎宮城議員 本案は簡潔最も要を得ていると思ふ。形式的に第二条は主要食糧とは米穀、麦類、豆類、甘藷類並に其他の加工品を謂ふと限定して其後は唯主要食糧でよくはないか。又規程とせず民政府令とでもされたらどうか。
(それから本問題につき種々と座談があり結局主要食糧取締令と話が落ち着き又違反者、幇助者についても意見が出て第六条の第二項に幇助者の取締を明文することとなる。規程よりは民政府令とする方が良いと云ふ意見が多くなった。)
◎警察部長 唯今のお話の様に主要食糧取締令と致しますか。
(全議員賛意をなす。)
幇助者については第六条第二項に「第三条第四条の違反行為を幇助したる者亦同じ」として良いですね。
(全議員賛意をなす。)
◎議長 規程とか民政府令とか之ら名称はこちらで研究致して良いですか。出来るだけ本案に伴ふ様に致します。
(本案全議員賛意の中に了承をなす。)
◎議長 では案の第七号に入ります。
(総務課長案を読上げる。)
◎山城議員 前の予算案はどうなったか。
○議長 前のものは取消しになって一年分の予算を至急編成して出せとのことで作成して出したのであります。十分期間がなかった為に議会にも諮る余裕がありませんでした。
◎財務部長 前に分割予算を提出してあったが其後一年分の予算を作って出せとの事で部長会議を為し一年分の予算の編成をしたのであります。軍政府の指示により復興予算外は当民政府が負担することになったので財源等の関係上各部長の要求通り十分予算に計上することが出来なかったのであります。民政府の収入としては商工経理部の収入、逓信部の収入、財務部の収入だけでそれで各部の要求を満足させることが出来なかったのであります。本予算は最も必要経費には重点を置いて編成しました。それは試験場設置の費用、癩患者の宮古への送還費、学制改革に伴ふ実業青年高等学校設置の費用を入れたので其他の事が思はしく行かなかった。
◎柴田議員 予算を見て思ふが人件費は之で少くはないか。職員の俸給はこれで生活出来るか。
○議長 人件費はほんとに少ないのですが財源がないので困っています。勿論現在の俸給で生活が出来ると云ふのではありません。
◎柴田議員 それでは自分の職務に心を十分入れて働くことは難しいのではないか。生活が出来る様に又職員が職務に心を十分入れて働ける様にもっと増俸する必要はないか。賞与もないと云ふ話だがそれは事実か。
○議長 賞与も廃止になっています。
◎柴田議員 それでは余りに気の毒である。
(議員達は軍政府にお願ひして賞与は何とかして支給する様にしたらどうかと話し合っている。)
賞与もないとなれば軍政府に賞与が出る様に願って見たらどうか。これは吾々全議員の総意である。軍政府にも増俸賞与が出る様に吾々全議員の総意が出ていると云ふことを再三話して見たらどうか。
○議長 唯今の皆様の御話は誠に有難うございます。
実は所得税の収入から幾らかを職員に増俸する積りでありましたが、前にヘイドン閣下来島のとき裁判所、警察署、郵便局を至急修理せよとのことで、其方に廻して増俸出来なかった。又軍政府より経理課員を増員せよとのことで、それに六〇、〇〇〇円の人件費が要ることになり、増俸することが出来ずに困っている。
(全議員それにつき座談に入り結局軍政府には吾々全議員の総意で増俸賞与を出す様に願出ている事を民政府より話して貰ひ財源の方は民政府が研究した方がよいとの意見に一致した。)
○議長 では軍政府にも皆様の御意見を十分話しそして吾々は又財源の方を研究致します。
◎山城議員 桟橋の歳出はどこから出るか。
○財務部長 税関より出すことになっています。
◎山城議員 出荷税、入荷税は項を別にすべきである。
(議長、復興予算認可の電があったのでそれを発表す。)
○議長 復興予算が認可になりましたから財源が幾らか浮くと思ひます。それを十月頃にでも職員の増俸に当てさせて貰ひ度い。
(全員同意をなす。)
◎宮城議員 議会の通知状と共に議員にこんな予算案は配布して貰へば考へて準備し意見も出るが今日此の場にすぐ案を出されたのでは一寸すぐと意見も出ない。
◎山城議員 本案を見て遺憾に思ふことは水産費が一項も出ていない。本郡で一番水産業が大切だと云ふて奨励して居って水産業に関する項が入っていないのは残念である。今少し水産業の項でも出して置く必要があるのではないか。
○商工経理部長 商工経理部で調査費があるがそれで水産業の事もやっているので別に予算の項目には現はれていない。
◎山城議員 解りました。然し軍政府から見た時に全く予算に見えないから水産業に関心がないとでも思はれたらこれは残念である。せめて水産業の項でも出して貰ひ度い。
○商工経理部長 解りました。今後そう致します。
◎山城議員 水産業者にも其製品を担保にして銀行から借りて企業の進展を図りたい。
○議長 今度籾の買上をやって見て次は水産業にする積りであります。
○山城議員 是非そうやって貰ひたい。
◎柴田議員 度量衡器の検査をして欲しい。
○警察部長 私達の方でも取締るのに困難をしています。検査原器がなく困っています。
○商工経理部長 実際今度量衡の原器がなく完全なる検査をすることは困難だが商工経理部でも出来るだけ正確なもので近く検査をする準備をしています。
◎宮城議員 これから予算案を作る時は議員の方からも委員(の様なもの)を挙げて民政府と共にしたらどうか。
○議長 これ迄は全く予算を作るのにゆっくりした余裕がなかったが次の追加予算の時は議員の方からも出て貰ひ共に予算を作って貰ひ度いと思ひます。
(以上で第七案は了承)
◎議長 第八案に入ります。
◎財務部長 歳出と歳入が釣合はなかったらと心配し考へて歳出をやりましたらうまくとれた様であります。
○議長 一月から三月までの予算に懇談会費と予算を組んで誤解を招く様であったので其後減らしてあります。そして雑費としてあります。
○山城議員 前に懇談会費に就て苦言を呈してありましたら今度は相当減らしてある様で結構だと思ひます。
◎大田議員 電気課、運輸課、造船課等の納付金は予算額、決算額がきちんと合っているが事業しているのに金がそんなにうまく合ふことはないだらうと思ふが。
○議長 多くなる時もあり少なくなる時もありそれで出来るだけ多く出させる様にと思ひ会計検査を行っている。
◎宮城議員 米軍よりの食糧に就きどんなものは少なくどんなものは多くとか云ふ様に軍政府に云ふ必要はないか。
○知事 沖縄本島で酒の打合せがあり、食糧より酒を造っているが食糧は不足しないかとのことに就き不足はしていないが主食糧の配給はなくても油、メリケンコ類、雑穀類、衣料は送って貰ひ度いと談話の時に話して来た。
○議長 食糧の事に就ては十分考慮して進言したいと思ふ。
◎宮城議員 以前県に於ては参事会員があり会計には会計検査員があった。民政府にもそれに準じたものを作って貰ふ考へはありませんか。
○議長 それは設けても良いと思います。各課の会計検査は今の処財務部がやって居ります。今の御意見は議員の方でつくってやって貰へないかと思ひます。
◎山城議員 積極的に議員からも出して会計検査をして貰ひ又其他の事も見せて貰ひ互に切磋して行く様にして貰ひたい。
尚会計は銀行もあるから民政府口座をつくり現金出納をして貰ひ各部収入も其日に銀行に払込む様にした方が良いと思ふ。最近面白くない話もありますがそんな事も未然に防げると思ひます。
○会計係 銀行は民政府の銀行課として財務部に入っているので現金出納は銀行がやっています。
◎山城議員 先の主要食糧取締令に付随して聴きたいが民政府では酒醸造業者にどの位あてがふ予定ですか。主要食糧ですから民政府でも大まかな方針で何はどの位、どの位ときめて置く必要がないか。
○知事 今のお話に関して私の方から御参考迄に申上げます。一九四七年の八重山での酒の醸造量は六〇〇石、原料米では二一〇石、粟では三〇石、甘藷では三〇〇、〇〇〇斤で其割合は米が全生産高の一、三%、粟が全生産高の二、八%、芋が〇、五%であります。
○農務課長 今年の一期作の収穫高は全八重山住民が一人一日一合五勺食べるものとして酒造、餠、種籾用を除き六箇月分ある見込です。
○議長 本日は有難うございました。
◎山城議員 此の議会は一年に二、三回しかないから与へられた問題ばかりでなく各種の問題を持ちよられ八重山にとって重要なる問題を捉え民論としてやって行き度い。そして此れ等諸問題につき吟味して其の実現を図って行きたいと思ひます。
○議長 御意見を尊重して行きたいと思ひます。
(全議員和解の中に全案了承を為す。)
◎知事 長時間に亙り民政府としての重要事件を審議して戴きまして有難ふございます。
之を以て閉会致します。
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