戦後初期会議録

組織名
八重山群島議会
開催日
1951年11月23日 
(昭和26年)
会議名
第6回八重山群島議会(定例会)[3]
議事録
一九五一年十一月二十三日開議

議事日程第三号
  午前十時二十五分開議
 第一 議案第七十九号 一九五二会計年度八重山群島政府一般会計歳入歳出補正予算案の審議について
 第二 議案第八十号 一九五二会計年度八重山群島政府特別会計歳入歳出補正予算案の審議について
 第三 議案第八十一号 群島政府旅費支給条例の一部改正について
 第四 議案第八十二号 八重山群島警察本部長任免条例制定について
 第五 議案第八十三号 八重山群島公安委員補充選任について同意を求める件
 第六 議案第八十四号 群島財産取得について
 第七 議案第八十五号 群島財産処分について
 第八 群島財産取得について報告

議決の顛末
◎議長(潮平寛保君) 全員御出席ですから開会いたします。(午前十時二十五分)
  (書記長(田盛正雄君)参与の報告をなす。別記の通り)
◎議長(潮平寛保君) 議案第七十九号を上程いたします。
  (書記長(田盛正雄君)議案第七十九号一九五二会計年度八重山群島政府一般会計歳入歳出補正予算案の審議についてを朗読する。)
◎副知事(當銘正友君) ただ今提案された一九五二会計年度一般会計歳入歳出補正予算案について、その大綱を説明申し上げます。
 既定予算一四〇、九五六、四七〇円に対し、二、七六四、五八〇円を削減して一三八、一九一、八九〇円に補正しました。その具体的な数字は審議の際御説明中し上げます。
 歳入補正の大綱について、歳入にあっては若干の余裕をもって今年度は出発したのでありますが、次の理由によって十分なる運営をなす歳入を確保することが出来ない現状にあります。
 一 前年度民政官府支払に係る俸給三五〇余万円は誤りであるので返戻せよという命令を受けたこと。
 二 酒の日本輸出に伴う戻税の申請があるので外貨獲得の上から許可し、政府歳入は削減したい。
 三 酒、ビール、煙草等は中央政府がその歳入として扱っているので重複課税を避けたい。
 四 群島間運輸業は特別事業税の対象外となった為、削減しなければならない。
 歳出補正の大綱について
 一 懸案の市町村財政調整交付金は、財源の捻出ができず、財産処分、既定予算の削減などをなして漸く四〇万円を計上することを得た。若し、誤払俸給の返戻や酒税改正案の通過があれば、相当額を計上し得たと思うが唯今の財政力ではこの額は最大の努力の結果である。
 二 他の経費の増減は、条例、予算により実績計画済み等勘案の上必要欠くことのできないものだけに限って計上してある。復興会計について、既定予算を本日現在における認可済額に補正した。先程申し上げた市町村財政交付金捻出のため、財産処分をせなければならぬので、その財産の処分について申し上げます。
 一 民生丸 民生丸は前政府から引継未了となっており、政府としては事務処理上支障を来しているので当時の事業部長大濱英芳氏に対し、早急に引継いで貰うよう数度に亘って口頭又は文書で督促しているが、未だに実現できない状態で何時引継いで貰うか見通しがつかない状況にあります。政府が調査したところ、該船は宮古の松原海岸に水浸しとなって廃船状態である。これをこのまま放置すれば自然腐朽して無価値のものになる事は明白でありますので、一日も早くこれを売却処分して歳入に計上することが良策だと考えられます。
 二 団平船 この船は前八重山民政府時代通事浩氏傭船によるもので現在鳩間海岸にあり、廃船状態にあり、通事氏が石垣港に持ってくることになっているが何時実現できるか見通しつかず、このままでは該船は自然腐朽して後は無価値のものになるので早急に売却処分したい。
 三 運輸丸 前八重山民政府より引継いだ運輸丸は目下修理のため、宮古井上造船所に入渠中であるが老朽船で修理の連続という状況で修理費に相当の経費がかかり、収支相償わない状態であるので早急に売却処分して財源に充てたい。
 四 運輸丸小伝馬 これも前述の通り運輸丸と同様、早急処分の必要に迫られております。
 五 製材倉庫 この倉庫は十坪の小屋でしたが相当傾いて今にも倒れそうな状態でしたので危険家屋として取毀して片付けてあります。材木や壁板は相当腐朽し、殊に壁板は全然使用不能の状態であり、倉庫は他にもあるので、この残材及び瓦を売却したいと思います。
 六 黒潮丸機関 この機関は従来民政官府財産として処理して来たが同府の指示によって本年九月二十二日より群島財産として取得することになりましたので売却処分に付して財源に充てることが良策だと考えられます。
 只今申し上げた財産の処分については後で御承認をお願いします。
◎佐久眞長助君 只今参与から御説明なった外に財産処分出来るものはありませんか。
○財政部次長(石垣直文君) 現在のところはこれだけであります。外に議決を要しない小さいものが幾分あります。
◎佐久眞長助君 来る四月から群島政府は廃止されることになるので、群島政府の財産をそのままおけば中央政府の財産に引継がれるのではないかと思われます。これだけ群島民の膏血によってつくった財産であるから成るべく各市町村へ譲渡或は売却処分されては如何でしょうか。
○石垣用中君 休憩をお願いします。
○議長(潮平寛保君) 休憩いたします。(午前十時四十分)
  (休会中に議案第七十九号一九五二会計年度一般会計歳入歳出補正予算案について話し合いをなす。)
◎議長(潮平寛保君) 開会いたします。(午後零時三分)
 この補正予算案の第三八款刑務所費第三項一般運営費第二目宿直賄料を一一、八三〇円に訂正し、第五項刑執行費第五目刑執行雑費を一一、三九〇円に訂正し、この通り修正可決したいと思いますが如何ですか。
  (「異議なし」の声多し)
◎議長(潮平寛保君) 議案第七十九号一九五二会計年度八重山群島政府一般会計歳入歳出補正予算案は只今申し上げたように修正可決いたします。休会します。午後は一時開会します。(午後零時六分)
◎議長(潮平寛保君) 開会します。(午後一時十五分)
 議案第八十号を上程いたします。
  (書記長(田盛正雄君)議案第八十号一九五二会計年度八重山群島政府特別会計歳入歳出補正予算案の審議についてを朗読する。)
◎企免所長(竹原孫恭君) 企免所の歳入歳出補正予算について説明いたします。既定予算が六六三、三九〇円、更正予算が九六、〇二〇円、補正予算七五九、四一〇円であります。
 歳入補正では企免手数料七〇、〇〇〇円の増となり、雑収入の項は既定予算には項目がなかったけれども先の議会で証明料、免許証再交付手数料徴収することに議決になったので新に項目を雑収入として加え、この件数一〇件分二〇〇円と、前政府当時××××の横領した金二五、九五〇円を入れ、二六、一五〇円にしてあります。繰越金は一二〇円の減となっています。
 歳出補正では中央企業免許所支出に九六、〇二〇円の増で七五九、四一〇円となり、予備費に五三、九八〇円の減で一五、一六〇円、一般会計納付金一五〇、〇〇〇円の増で五五〇、〇〇〇円となっております。
◎石垣用中君 補正予算の理由をお聞きしたいのです。
○議長(潮平寛保君) 休憩します。(午後一時二十分)
  (休会中特別会計歳入歳出補正予算案について質疑と話し合いが行われた。)
◎議長(潮平寛保君) 開会いたします。(午後一時三十分)
 議案第八十号について御異議ありませんか。
  (「異議なし」の声あり)
◎議長(潮平寛保君) 御異議ないようですから議案第八十号一九五二会計年度八重山群島政府特別会計歳入歳出補正予算案の審議については原案可決いたします。
 議案第八十一号を上程いたします。
  (書記長(田盛正雄君)議案第八十一号群島政府旅費支給条例の一部改正についてを朗読する。)
◎厚生部次長(三島保夫君) 本案について申し上げます。
 保健所が新しく設置されたので新しく官職が定められ、これに伴って旅費支給条例の一部改正を提案したのであります。この条例案の第一〇条及び第一四条の別表(旅費支給表)の二級の職員欄に「医官」「薬剤官」を加え、三級の職員欄に「獣医官」「婦長」「看護婦」を加えとしてあるが、三級の職員欄から「獣医官」「婦長」を削除し、「薬剤官」の次に「獣医官」「婦長」を入れるように訂正したいと思います。
○議長(潮平寛保君) 休憩します。(午後一時三十五分)
  (休会中に議案第八十一号群島政府旅費支給条例の一部改正について審議する。)
◎議長(潮平寛保君) 開会いたします。(午後一時五十五分)
 議案第八十一号の改正条例案は二級の職員欄に「医官、婦長」を加え三級の職員欄に「薬剤官、獣医官、看護婦」を加えると訂正、但し、二級の職員欄の婦長は、アメリカの示すそれ相当の教育を受け、資格条件を具備したものとし、政府は内規をつくってこれによることにして、修正可決したいと思いますが如何ですか。
  (「異議なし」の声多し)
◎議長(潮平寛保君) 御異議ないようですから議案第八十一号はただ今のように修正可決いたします。
 議案第八十二号を上程いたします。
○書記長(田盛正雄君) 議案の第二条中の「基本規程に基き」は誤りですから「基本規程の定める」に訂正を願います。
  (議案第八十二号八重山群島警察本部長任免条例制定についてを朗読する。)
◎副知事(當銘正友君) 提案の理由を申し上げます。
 現行八重山群島警察本部長任用条例は群島組織法第一二六条に基いて一九五一年六月二十八日制定公布されたものでありますが、組織法の第一二六条には「警察本部長は公安委員が議会の定めた規程に基いて任命する。」となっていたので任用条例の制定を見たのであります。しかしながらこの規定の「任命する。」という言葉は「任免する。」と云う言葉の誤訳であることが明らかにされ、民政官府から文書を以て罷免に関して条例の改正をするようにと指示があり、又公安委員会に対し、口頭を以て助言もあったので、ここに改めて任免条例を制定し、現行の任用条例はこれを廃止するよう提案した次第であります。
◎大山眞整君 公安委員長に御説明を願います。この条例の第二条にある一定の事由についてくわしく御説明していただきたいのです。
○公安委員長(翁長良整君) 警察職員の罷免については警察基本法第二条に一定の事由がある場合とあります。一定の事由は警察基本規程の八九条に警察職員は刑法の宣告、懲戒の処分又は左の各号の一に該当する場合の外は、その職を免ぜられることはない。一 勤務実績のよくない場合、二 不具廃疾により、又は身体若しくは精神の衰弱により職務をとるにたえないとき、三 傷痍をうけ、若しくは疾病にかかりその職にたえないため、又は自己の便宜により退職を願出たとき、四 その他その官職に必要な適格性を欠く場合、五 定員の改正により過員を生じたとき、その外に停年制の場合もあります。という事由の発生した時これを罷免することができるのであります。本部長もこの事由によって処置するのが当然であるので、この第二条を規定したのであります。
◎佐久眞長助君 勤務の成績のよくない場合の解釈について承りたい。
○公安委員長(翁長良整君) 実際の場合の例として職務執行を命ぜられても、これを執行せないときとか、事故がないのに事故と偽って執務しないとか、勤務先にあるべきもので、許しもなくして任地をはなれているとかいろいろあると思います。
◎石垣用中君 この警察基本規程は公安委員会が制定したことになっているが公安委員のみでつくったのですか、又公安委員会でどうでも改廃出来ることになっているのですか。
○公安委員長(翁長良整君) そうです。公安委員会でつくったもので、何度でも改廃できることになっています。
◎石垣用中君 組織法第一二六条には警察本部長は命令の規定に基いて公安委員が選任又は解任することになっているのであって、この基本規程は公安委員のつくったものであり、今この条例が通過しても基本規程が改正されたら又、この条例を改正しなければならぬことになるのではないかと考えられます。この基本規程制定には群議の意見も加わるべきものであると思います。公安委員会ではどうでもこの基本規程の改正はできるようになっているから、群議の承認を受けた基本規程としなければこの条例は認めることはできないと思います。
○議長(潮平寛保君) 休憩します。(午後二時十分)
  (休会中に警察本部長任免条例案について審議する。)
◎議長(潮平寛保君) 開会いたします。(午後二時二十五分)
 議案第八十二号について御異議ありませんか。
  (異議なし)
◎議長(潮平寛保君) 議案第八十二号は御異議ないようですから原案可決いたします。
 議案第八十三号を上程いたします。
  (書記長(田盛正雄君)議案第八十三号八重山群島公安委員補充選任について同意を求める件を朗読する。)
◎副知事(當銘正友君) 提案の理由を申し上げます。その前に、前公安委員翁長信全氏が辞任された理由について一言申し上げたいと思います。その理由はある新聞で翁長信全氏が何かの圧力によって辞任されたかの如く報道され誤解を招いているからこの議場でその理由を明らかにしたいのであります。翁長信全氏が提出された理由書がありますから読上げることとします。
 「一九五一年七月中旬南西製材所の社員古藤実富氏は『自分は沖縄に引き揚げたいから自分の権利を引きついではくれないか。』という相談をしばしば受けた。私の長男信吉も同様社員であるが、古藤氏の話に応ずるようすすめた。当時同社は石垣中学校の復興事業を引き受けていたが、これから赤字を出すことが明らかであった。しかし私は同社に入って会社を興そうと決心した。これによって会社社員を助けるばかりでなく、八重山の復興事業にも資し得ると思った。しかし公安委員長という重要な職にあっては私の決心を果すことは不可能であることがよくわかったので外の委員に御負担をかけることを恐れたが八月中旬退職願を提出した。かくて私は公安委員を退職したのである。」と以上のようになっています。翁長信全氏が退職されたことについては一般から誤解されていたがその真実はただ今の理由の通りであります。
 今度、同意を求める大濱寛行氏について欠格条件の有無を調査しました処、組織法第一二〇条の第三項以下の欠格条件をもっていないし、又公安委員としても最適格者であると認めるのであります。なお、本人の履歴を申し上げますと、
 「大正九年三月二十六日登野城小学校卒業し、大正十二年八月三十日には試験検定により准教員免許状受領、同十三年五月二日には新城小学校准訓導拝命、同十五年十二月五日には試験検定の上尋常小学校本科正教員免許状受領、昭和三年三月三十一日には石垣小学校訓導拝命して、与那国、川平、大濱と各小学校を歴任したのであります。昭和八年一時休職したが又半年して同年八月八日に復職し、同日付で退職したのであります。昭和十三年三月三十一日には宮古郡久松小学校代用教員拝命、同年十二月三十一日には同校訓導拝命、翌十四年四月一日には登野城小学校訓導拝命、同十九年四月には依願退職して同月二十五日石垣市農業会副会長に選任し、同二十二年十月二十九日任期満了により退職したのであります。一九四八年七月二十八日石垣市産業組合解散に当り清算人に選任され、一九五〇年十一月十五日清算終了につき自然退職となり、一九五一年四月一日から現在、琉球石油株式会社八重山支店次長兼経理課長をつとめて居られるのであります。一時自由党幹部に籍をおいていたが本年八月三十一日を以て辞任して党との関係を絶ち、一九五一年九月二十六日に公安委員の補充に選任されて現在警察の指揮監督に奮闘しているのであります。組織法による欠格条件がなく、本人の履歴、社会における経歴からいっても公安委員として最適任者であると認め選任してあるから、各位の御同意をお願いする次第であります。
◎大山眞整君 ただ今副知事からの御報告により同意するものでありますが自分の所信を述べたいと思います。この公安委員選任の問題はこれまで自由党、民主党と感情的闘争が行われて来ましたが、政治はどこまでも群島民の幸福のために行われるべきものでありまして、党的に感情闘争がつづけられては群島民幸福への政治はむづかしいことでありますので、この際我々は大同団結して政府の施策面にも協力していくべきであると考えるのであります。この度中央政府樹立に際して両党が社会大衆党へ合流を見たことは群島民としてよろこびにたえないところであり、議員としても感謝致すものであります。公安委員としても余命いくばくもなく、我々議会も三、四月までと思われます。平和な八重山をつくるために互に同情し合って、将来のために、適任者と認め同意するものであります。
◎潮平寛保君 三番議員として発言します。
 近頃警察幹部に疑獄事件が発生したことは誠に遺憾であります。いやしくも取締りに当る警察にかかる事件があるだけに群島民が深く関心を持っているのであります。こんなに警察が頽廃し、紊乱している今日、その監督をして行く上には魄力と強力あるものでなければこの頽廃している警察を粛正していくことはできないと思います。かかる見地と八重山の官紀粛正する上において魄力と強力を持っている大濱寛行氏を適任と考えて同意に賛成します。
◎古見石人君 本人の適格条件は参与からの御説明により、よく承知しました。本人を最適任者と自分は認め、原案に賛成するものであります。
◎石垣用中君 本問題は議会毎に問題になっていることであります。組織法の第一二〇条の不適格条件は具えていないので、敢えて反対はしないが、この人よりはあの人が適当でないかという意見も自分は持っているが、しかしそれではいつまでも承認できないことになるし、又原案賛成者が多いようですから採決によってはっきりときめていただきたいと思います。
◎議長(潮平寛保君) それでは採決いたします。御賛成の方は手を挙げて下さい。
  (挙手四人 三番、五番、六番、七番議員)
 採決の結果四対二で賛成者が多いから、議案第八十三号は原案に同意することに決します。(午後二時三十八分)
 議案第八十四号群島財産取得についてを上程します。
  (書記長(田盛正雄君)議案第八十四号群島財産取得についてを朗読する。)
◎財政部次長(石垣直文君) 石垣中学校敷地内にある元八重山中学校の建物その他について、ただ今読み上げたように寄附採納の願出があるので採納する議決を願います。
  (「異議なし」の声多し)
◎議長(潮平寛保君) 御異議ないようですから議案第八十四号群島財産取得については原案可決いたします。
  (副知事の申出により、文中の「採納したいと思います。」を「採納する。」に訂正す。)
 議案第八十五号を上程いたします。
  (書記長(田盛正雄君)議案第八十五号群島財産処分についてを朗読する。)
◎財政部次長(石垣直文君) 元八重山中学校校舎其の他につき議案通り石垣市へ無償譲渡することを議決願いたいのであります。この件は石垣市長よりも無償譲渡方の申請がありますのでこの際譲渡したいと思います。
◎佐久眞長助君 原案に賛成するものであります。他の町村は不満かも知らないが他町にも中学校が出来ていることだし、又この学校は主として石垣市民の多大の寄附によってできていることだから、将来は地元の石垣市に譲渡するのが穏当ではないかと思います。
◎古見石人君 この学校は主として市住民の寄附によって出来たとおっしやるが群島民全体の寄附によって出来た財産であります。これをそのまま石垣市へ譲渡することは次の議会まで研究を要することであると思います。
◎大山眞整君 八重山に中等学校を設置するには当時宮良長詳氏が期成会長として奔走し尽力され、群島民に呼びかけ群島民からの寄附によって出来た財産であることは五番議員の説のとおりであります。その寄附に当っては各市町村に割当て、各市町村は各戸に割当て、しぼり出して醵出してつくった学校であるから、石垣市へのみ譲渡することは離島の議員として決議しかねるのであります。各町村に帰って、町村長、有志等とも打合せ、研究してでなければ決することはできないから保留にしたいと思います。賛否は三対三のようで今決することは出来ないことになります。
○副知事(當銘正友君) 先程この学校は石垣市の多くの人々の多大な寄附で建設されたと言われたが、この学校は全郡民の浄財によって出来たものだと承知しています。石垣市の多額の負担については有難いことであるが、全郡を通じてそれぞれ資力に応じ、気持によって寄附の多少はあっても、それは八重山郡民の浄財でできたことは事実であります。
 しかし、石垣中学校が現在この校舎を持っているために、この校舎があったために復興工事による新校舎が出来ず、復興工事の建築率が最も低いことになっている状態でありますから、この問題はよく御検討を願ってこの寄附にかかるこの学校及び附属物は復興工事も含まれていると解されて、市に譲渡方御配慮をお願いしたいのであります。
 地元にある学校であるし、各位が市に譲渡することを議決されて、その気持でお帰りになり町村長、有志方とも話して御賛意を得られるようお願いするのであります。
◎大山眞整君 今の副知事のお話でよく承知しました。群島民の財産だからとて各市町村がこれを崩して持って行こうということでなく、希望通り地元の石垣市へ譲渡されるかも知らないが、私共は離島の議員であって一議員の一存に行かず、一応町村に帰ってよく話し合って円満に解決できると思いますから、次の議会に本件はまわしていただきたいのであります。
○議長(潮平寛保君) 休憩します。(午後二時五十五分)
  (休会中に群島財産処分について話し合いをなす。)
◎議長(潮平寛保君) 開会いたします。(午後三時十分)
 議案第八十五号群島財産処分については保留にいたします。
○副知事(當銘正友君) 離島選出の議員三人に申し上げます。
 本問題は何れに決するにせよ所有の所在は政府であるので、中央政府へ統合になる前までに譲渡処理を済せなければならぬと思い、急いでいますから各位は早く調査を進められ、帰られたら町村長、有志方へもよく政府の意思を納得するようお伝えになり、話し合って賛意を得られるようお願いする次第であります。
◎議長(潮平寛保君) 次に群島知事から議長宛群島財産取得について報告書が来ていますので報告していただくことにします。
◎副知事(當銘正友君) 群島財産取得について報告申し上げます。
  群島財産取得について
  報告書
 従来八重山民政官府財産として処理されてきた左記財産は同府の指示により一九五一年九月二十二日付八重山群島財産として取得することになったので、これを公売に付し歳入に計上したことを報告いたします。
    記
 黒潮丸機関 三十馬力ダブル
 一九五一年十一月二十三日
  八重山群島知事 安里積千代
 八重山群島議会議長殿
 黒潮丸の船体がこわれたので、その機関だけをとって民政官府財産として処理されて来たの
を、その期間が経過したので群島財産として取得したものであります。その公売代金は補正予算の歳入に計上され、市町村財政調整交付金に振り向けられることになっています。
◎議長(潮平寛保君) 各位にお諮りいたします。市町村制第九章第一五八条第三項第三号による委員として、地方行政に学識経験を有する者を議員外から一名議会が指名するようになっていますが、まだ議会から指名してなかったので地方自治委員会構成上支障を来たすから至急報告するよう知事から照会があります。それで適任者を議員外から一名指名していただきたいのであります。議長の腹案としては地方行政方面の学識経験者としては前石垣市長翁長信全氏、前大濱町長上間貞俊氏を適任と見ていますが翁長信全氏は南西製材所の仕事の関係で公安委員の公職を辞任されて居られるので上間貞俊氏にお願いしては如何かと思っています。
◎久部良正三君 ただ今議長の案による方でよいと思いますから賛成します。
  (「賛成」の声多し)
◎議長(潮平寛保君) 上間貞俊氏を地方自治委員会の委員にお願いすることにします。
◎議長(潮平寛保君) 次に復興工事の認可に関して議会として陳情書を出してくれとのことで、その案が来ていますから読み上げてみます。
  陳情決議 八重山群島議会
 八重山群島より提出された一九五二会計年度復興予算中学校建築三九校一三、八〇〇、〇〇〇円の予算案が提出され、そして中二四校分一〇、〇五〇、〇〇〇円が認可されました。
 群島全議員は右認可された一〇、〇五〇、〇〇〇円を今回群島の計画による、より広い全群島にゆきわたるように分配使用することを認可して下さることを希望することを決議し、ここに右希望が通るように陳情いたします。
 以上のような文を十一月二十三日付、群島議会議長外全議員連署で八重山首席民政官経由で琉球民政副長官宛に提出したいとのことであります。
◎議長(潮平寛保君) 休憩します。(午後三時二十分)
  (休会中に(一)復興工事の件認可についての陳情について話し合いをなす。(二)議長から竹富中学校独立認可についての陳情書の朗読があって話し合いをなす。)
  竹富中学校独立認可についての陳情書
 一 現在竹富中学校は竹富東端に位置し、小学校と相当の距離を以てへだたり、独自の校舎や運動場を有して併設校ではありますが実質的には、独立の形態を備えております。
 一 実業高等学校が存置された過去に於ては石垣、大濱、与那国と共に独立校としてその実績を挙げて参りましたが、六・三の学制実施とともに以上四校の中で独り竹富のみが小学校に併置されました。傍系である実業高等学校がなお独立校であった事実に鑑み、正系であるべき中学校が小学校に併置されたことは遺憾にたえません。従って群島一市三町の中、竹富のみが現在独立の中学校を有しておりません。これは教育の機会均等等の立場からも寧検討されなければならない問題であります。
 一 生徒在籍数も同町内の他の中学校よりも多くあります。
 一 独立によって職員組織が充実強化され、顕著な教育効果を期待することができます。
 一 各種の運動競技を初め、対外的諸行事は石垣市に近接している地理的関係上、常に同町内の他の中学校の代表として参加して参りました。
 一 独立の齎らす生徒の矜持と誇りは多大なるものが期待できるのでありまして、それはやがて美しい校風を樹立する基になるものであります。
 一 部落民の独立を要望する声は実に熱烈であります。
 右の諸事項は夙に関係御当局に一度ならず陳情致して参りましたが、今や特に全琉的統合政府が樹立の機運にある情勢下何卒特別の御詮議御検討と寛大なる御取計いを以て一九五二学年度より独立校としての御認可を賜わりますよう右謹んで陳情いたします。
 一九五一年十一月十九日
 竹富小中学校長  前新加太郎
 竹富部落会長、竹富区長
 竹富小中学校PTA会長
          與那國 修
 八重山群島議会議員
          大山 眞整
 竹富町会議員、竹富壮年会長
          前濱 重雄
 外部落内団体代表 十六名連署(略す)
 八重山群島議会議長宛
◎議長(潮平寛保君) 開会します。(午後三時三十分)
 復興工事の件認可についての陳情については、工務部でその文案を訂正して起草し、後で更に各位におはかりするようにします。
 竹富中学校独立に関しての陳情については如何お考えになりますか。
◎大山眞整君 竹富中学校は生徒数百名余りで校舎もあり、職員も小学校と別であるが小学校に併設され、校長兼任となっています。校地は元の実業高等学校の跡で小学校から三町程離れ、教育上に不便を感じていますので独立校にしていただきたいのであります。
 これが中央政府統合になった時独立校にすることは困難になると予想されますので群議の各位がこの陳情の趣旨を認めていただきまして、この際竹富中学校に専任の校長を置き、ぜひ独立校にしていただきたいとお願いする次第であります。
○文教部指導課長(喜舎場英勝君) 竹富中学校は小学校に併置ではあるが、校舎も別、職員も別であり、小学校長が兼務となって居りますから、専任の校長一人を認めていただけば独立校となって陳情に副うことになります。
◎佐久眞長助君 竹富中学校独立については賛成しておきましょう。
◎大山眞整君 現在竹富中学校は白保中学校より生徒数も多いのでありますから、この点御考慮下さいまして教育の機会均等の上から、この陳情が実現するようお願いします。
○副知事(當銘正友君) 中学校独立の陳情について、今竹富中学校は併設校と制度の上でなっているので、校長の兼任により施設を共に利用することができると考えられますが、専任の校長を置いて独立の形にしたいという陳情の趣旨も諒とされるのであります。
 考慮されるのは名実共に独立校とすることは予算関係であって、中央政府統合に当り予算がどうなるか疑問であります。七月からは中央政府が予算をつくることになっているから、今この問題の処理はしばらく日数を要するものと見ています。その間に出来なければ統合の時でも陳情の趣旨、議会の希望に副うようしたいと考えます。
◎議長(潮平寛保君) 議会はこの独立の陳情に対し同情するのであるが予算関係にあることだから政府の善処方をお願いします。
◎書記長(田盛正雄君) 離島航路補助に関する意見書が来ていますから朗読いたします。

   八重山群島内離島航路補助に関する意見書
 離島竹富町、与那国町民は生活を維持し向上するために、いわゆる政治、経済、教育、文化の中心都市である石垣市との交通連絡を頻繁にすることが最も大切であります。そのためには竹富町、与那国町より首都石垣市へ通ずることが何よりも必要であります。
 現在町内海運業者の大部分は小さな限られた自己或いは借入資金によって業を営み、月四、五回離島、石垣間を往復して町民に海路の便を与えていますが、その経営状況は至って貧弱で経費だおれになることが多いので、これを援助して離島交通の充実を図りたいと思います。ややもすると離島航路の問題は小に附される傾向がありますが、離島民の経済を左右する重要な問題でありますから事情御賢察の上是非郡内離島航路船に対し、相当御補助下さる様お取計い下さい。右の通り意見書提出いたします。
 一九五一年三月五日
八重山群島議会議員 大山 眞整
    同     古見 石人
    同     久部良正三
八重山群島知事
          宛
八重山群島議会議長

◎副知事(當銘正友君) ただ今の陳情については尤もなことだと思われます。
 離島の方々が交通運輸面に不便不自由を来し、生活面にも困っておられるのでこの離島航海船補助の問題は政府としても考慮しているけれども、これも予算関係で実現を見ることができない状態であります。この問題も統合政府への要望として出来れば七月から賄われるよう中央政府へ予算計上方を要求し、その実現を期したいと考えています。
◎議長(潮平寛保君) 本問題は以前から政府へ折衝して来たのであるが出来ないということになっています。中央政府へ統合が持ち上った今日、政府として補助金を計上しておけばよいと思います。もしできれば市町村補助と同様に補助しておけば中央政府へ統合の際には中央政府に対し、今までこんなに補助をして来たからと予算の計上方に対し進言することができ、好結果を得ることになると思われます。
◎大山眞整君 副知事の御考慮ある言葉に対し感謝いたします。予算の形式でもよいから、ただ今議長がいわれたように中央政府統合の時には、今までこの通り補助して来たから中央政府の予算にも計上してくれと折衝され、これが実現されるようお願いいたします。
○副知事(當銘正友君) 航海船の問題で各位にお願いしたいと思います。本群島は離島が多く、郵便物の遅延等で離島民は不便不自由を感じているので、政府としても郵便物が停滞しないように郵政庁に対し、離島航海の船舶に補助をして輸送の回数を多くし、便宜を与えてもらうよう話し合いをしたいと思っています。この面に対しても中央政府へ対し補助方のお願をしたいと考えて居ります。御助言をお願いする次第であります。
◎古見石人君 当局に対し御意見をお聞きしたいと思います。近頃警察の幹部に疑獄事件があって検事の取調べを受けていると聞いています。これは何れ正、不正ははっきりするでしょうが、事実でなければ結構ですが警察官の任にある者が疑惑を受けることは遺憾に思うのであります。この件で民衆は不安を感じていますが公安維持上この件につき当局の御意見を承りたいのであります。
○副知事(當銘正友君) ただ今の件は新聞紙上の報道によることであるが政府としては行政的立場において調査し処置するつもりであります。
 司法面においては政府は関知せないことであって、その取調べについては司法関係になされているので詳細の事は存じないのであります。しかし、警察は知事の統轄下にある故、行政的立場から政府として放任することはできないから、法務部に照会し調査もして適当な措置をとることにしています。
○公安委員長(翁長良整君) 警察の監督の責をもつ公安委員として申し上げます。ただ今警察の不祥事件が議会の問題になったことを遺憾とするものであります。新聞に報道されたので監察員にその実情を調査させて来たのでありますが最近にして漸くわかって来たのであります。
 その内容については申し上げることはできないが、いやしくも法を守り、住民に法を守らせる職責にあるものが、かかる不祥事件を惹起したことは遺憾とするところであります。
 行政的の責任をどんなにして問うべきか、公安委員としても慎重を期し、規程の示すところにより処分し、措置をとらなければならぬと考えております。
◎議長(潮平寛保君) 本日はこれで休会します。(午後三時五十分)
  (休会して次の話合いをして退散する。一 議会から民政官府に提出する陳情文の作成について、明日午前九時、工務部で起草した案について議会にはかること、一 明日大濱町方面の視察をなすこと。)
  (午後三時五十五分閉議)

 本日の会議に付した事件
議事日程第三号
一 日程第一 議案第七十九号
 一九五二会計年度八重山群島政府一般会計歳入歳出補正予算案の審議について
一 日程第二 議案第八十号 一九五二会計年度八重山群島政府特別会計歳入歳出補正予算案の審議について
一 日程第三 議案第八十一号
 八重山群島政府旅費支給条例の一部改正について
一 日程第四 議案第八十二号
 八重山群島警察本部長任免条例制定について
一 日程第五 議案第八十三号
 八重山群島公安委員補充選任について同意を求める件
一 日程第六 議案第八十四号
 群島財産取得について
一 日程第七 議案第八十五号
 群島財産処分について
一 日程第八 群島財産取得について報告
一 地方自治委員会委員の指名について
一 復興工事の認可に関して陳情書提出について
一 竹富中学校独立認可についての陳情書について
一 八重山群島内離島航路補助に関する意見書について

出席者次の通り
一 議員
八重山群島議会
    議 長  潮平 寛保君
    副議長  大山 眞整君
    議 員  石垣 用中君
    議 員  佐久眞長助君
    議 員  古見 石人君
    議 員  久部良正三君
一 参与
八重山群島副知事 當銘 正友君
 厚生部長    崎山  毅君
 文教部長    宮城 信勇君
 工務部長    宮良 英副君
 会計長     宮良 永益君
 企免所長    竹原 孫恭君
 税務署長    西石垣正行君
 財政部次長   石垣 直文君
 主計課長    浦崎永八郎君
 経済部次長   石垣 英政君
 地方課長    中山 正行君
 厚生部次長   三島 保夫君
工務部主席次長  宮城 光雄君
 公安委員長   翁長 良整君
 指導課長    喜舎場英勝君

一九五一年十一月二十四日開議

議事日程第四号
  午前九時五十五分開議
第一 復興工事の認可に関しての陳情書について

議決の顛末
◎議長(潮平寛保君) 一番議員、四番議員はまだ見えませんが過半数ですから開会いたします。
 (午前九時五十五分)
 議会から民政官府に提出する陳情書の草案ができていますからお諮りします。
  (工務部主席次長(宮城光雄君)陳情書の案を朗読する。)

      八重山群島議会
一九五一年十一月二十三日
主題 一九五二琉球会計年度軍補助金学校建築費について陳情
経由 八重山首席民政官
宛  琉球民政本部副長官
 一九五一年三月に八重山群島政府より提出されたRFY一九五二年度GIA予算は同年六月琉球民政本部財政部において審査の際三九校の建築費一三、八〇〇、〇〇〇円の中、我々は一九五一年七月十三日付二四校分一〇、〇五〇、〇〇〇円の資金を認可された。
 一 然しながら当年復興工事において二四校に限定される校舎は群島全体の見地から絶対に公平ではない。何故なればその他の一五校は非常に大きな支障を受けることを余儀なくされるであろうし、学力の向上は茲に不可能となるであろう。
 二 それ故に示達認可された二四校の個々の工事計画を縮小し、制限された資金で以て三五校に適正割当の上、工事をなし教育が均等に施されることが要望されるのである。
 三 そして残り四校は予算額と実際工事契約額との差額が生ずるであろうところの剰余金からの振替充当金で以て建直し、三九校全部に行きわたることが計画されている。
 ここに八重山群島議会は上記の公平賢明なる群島政府の計画に賛同して満場一致で可決し、全議員の署名の上、本計画が実施されるよう期待し、陳情する。
 八重山群島議会議長外各議員署名

◎古見石人君 ただ今読み上げられた通りで結構だと思います。
  (「異議なし」の声多し)
◎議長(潮平寛保君) 議会提出の陳情書はただ今読み上げた通りに決定し、後ほど署名捺印して提出することにいたします。
 今期の議会はこれで閉会します。(午前十時三分)
  (午前十時三分閉会)

 会議に付した事件
一 日程第一 復興工事の認可に関しての陳情書について

 出席者次の通り
一 議員
八重山群島議会
    議 長  潮平 寛保君
    副議長  大山 眞整君
    議 員  古見 石人君
    議 員  久部良正三君
一 参与
八重山群島副知事 當銘 正友君
工務部長     宮良 英副君
工務部主席次長  宮城 光雄君

 右会議の顛末を記載し相違無きことを証するため茲に署名す。
 一九五一年十一月二十四日
  八重山群島議会
     議長  潮平 寛保
   同 議員  佐久眞長助
   同 議員  大山 眞整
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